~過去物語~「愛依篇」

~過去物語~「愛依篇」




第一話「抹消。。」




城の地下。
そこには罪人を一時的に拘留しておく牢獄が設けられている。
裁判の判決を待つ間は基本的にこの牢獄で罪人は過ごすことになる。
もちろん、牢獄内には簡易的なトイレと、簡素なベットとも呼べない寝床があるのみ。
今は夜だというのに、その牢獄の奥から叫ぶ声が聞こえてくる。


カスム
「おい!!誰か、誰か居ないのか!!!
夕食ぐらい用意できんのか!??」



その男の名はカスム。
ほんの数日前までこの国の大臣だった男だ。
彼の声は牢獄中に響いていた。
が、今が夜だからなのか、それとも『盛夏祭』の後片付けなどに追われているからなのか誰の声も返ってこない。
カスムは舌打ちを一つして壁にもたれかかり、鉄格子越しに外を忌々しく見やると


カスム
「クソ・・・何故私がこんな目に・・・!
全部、全部あの役立たず共のせいだ!!
『神獣』を操れるなどと宣って、その口車に乗った結果がコレだ!!
ふざけおって!!!」



カスムは思い切り地面を叩く。
そんなことをしても手を痛めるだけで何も得るものなどない。
鈍い痛みをジンジン伝えてくる手を適当に振り乱しながら天井へと視線を泳がせたと、
その時


カッ・・・カッ・・・!


足音だろうか・・・
そんな音が牢獄中に響いていた。
その音は少しづつだがこちらに近づいてきている気がする。


カスム
「だ、誰だ!!?衛兵か?」



反応は無い。
しかしその答えを知るのはスグだった。
カスムの牢の前に一人の男が現れた。
その人物は柔和そうな微笑みを浮かべてた一人の優男だった。
しかし、その微笑みからとは裏腹に全く隙が無い。
そしてもっとも不釣合に感じたのはその右手に装着された鋭い鉤爪だ。
男はカスムを鉄格子越しに見ながら軽く会釈をする。


ドレイク
「どうも、カスム大臣・・・。
ああ、今は違いましたね。カスム。」

カスム
「ドレイクか・・・何をしに来た?」

ドレイク
「なーーに、博士に頼まれましてね・・・」



ドレイクは左手をポケットに入れると、中から鍵の束を取り出す。
その鍵を鉄格子に入れると、


ガチャン。


鉄格子の鍵が開く。
カスムは目を見開くと、スグサマ鉄格子の扉を開け放ち外に飛び出す。
スグにドレイクに向き直ると


カスム
「わ、私を助けに来てくれたのか!!
それならそうと早く・・・」

ドレイク
「いえ、違いますよ?」

カスム
「え?」



ドレイクは瞬時にカスムの首を掴むと、そのまま再度牢内にカスムを引き込み壁に叩きつける。
そして顔を歪めながらカスムの頬に鉤爪を押し当てる。
鉤爪の先端が食い込んだ部分から血が滴り落ちていく。


ドレイク
「私は博士から後始末を頼まれたんですよ・・・。
口を割られでもしたらこちらとしても面倒なので。」

カスム
「な、何故・・・!!
わ、私はずっとお前たちに協力し続けてきた!!
た、確かに今はこんな所に居るが・・・判決は私に有利に運ぶように話が済んでいるのだ!!
その判決後に私は隣国に亡命する!!
そして今以上の権力を得る備えがある!!
わ、私を殺すのはまだ早いと思わないか!!?」

ドレイク
「なるほど・・・まだ利用価値がある、と?」

カスム
「そ、そうだ!!
だからもう一度協力し合おう!!
な、仲間ではないか!!」

ドレイク
「ああ、そうですね。
確かにその方がメリットは大きいでしょうね・・・でも、」



ズブっ!!!


そんな肉を貫くような音が聞こえたかと思うと、ドレイクの顔に鮮血が飛び散る。
カスムは自分の腹部に手を添える。
そこからは信じられない勢いで血が出ていた。。
ドレイクはカスムの腹部から鉤爪を引き抜く。
すると栓を抜いたようにそこから血が吹き出す。


カスム
「な、何で!!ど、どうしてぇえええ・・・!!?

ドレイク
「私は、殺しが楽しめればそれでいい・・・。
交渉をする相手を間違えましたねカス、ム。」

カスム
「う、嘘だ・・・
こんな、こんな幕引き、嘘だぁぁああああああああああああああああ!!!!!



ゴトリ。


突如カスムの首が転げ落ちる。
首と離れた頭部は血の跡を残しながら牢獄内をしばらく転がっていく。
それがドレイクの前で止まると、ドレイクはその頭部を足で思い切り踏み潰した。


ブチャッ!!!


そこら中に脳しょうやら、歯、目、肉片が飛び散った。
カスムの頭部は完全に影も形も無くなってしまう。
そこに残ったのは首無しの死体だけになる。


ドレイク
「呆気ない・・・やはりこんな一方的な殺し、楽しくもなんともない。」



ドレイクは牢屋から出ると、真っ直ぐに通路を進んでいく。
そして不意に空間を撫でると、


グバァ!!


空間が裂ける。
それは何の比喩表現でもなく、本当に空間そのものが裂けた。
上下に裂けたその空間に足を踏み入れながらドレイクは呟く。


ドレイク
「そう、殺るなら・・・もっとギリギリの殺し合いがしたい。
あぁ・・・、早く、早く殺し合いたいなぁ・・・メダ・カーチス・・・。」



妖しく、奇しく微笑みながら一人の男の名を呟く。
その一言を残し、ドレイクの姿は空間の彼方に忽然と消えた。








優太
「えーーーー・・・みんなグラス持った?
え、まだ?もういいよメンドイから始めるぞ!!
とりあえず・・・『盛夏祭』終了お疲れ様でした!!
今日は疲れとか吹っ飛ぶくらい騒ぐぞ!!
カンパーーーーーーイ!!!!!



優太は中身が飛び散ることなど構わず手に持ったグラスを高らかに振り上げる。
それに合わせるようにそこに居た全員のグラスが高らかと掲げられた。


「カンパーーーーーーイ!!!!!!」


『盛夏祭』の後片付けも終えた夜。
ここ暁館で盛大な打ち上げが催された。
流石に王城でやったような豪奢な物には程遠いが、
『暁の地平線』フルメンバーと『天統べる煌星』、『華々の冠』の一部、そしてアルヴィス等、
あの『盛夏祭』前夜の戦いを共にした面々が集まっていた。
料理は由紀や愛依にエリスの三人がもの凄く頑張って用意してくれた。
何でも王城のパーティの時に持って帰ってきた一部のメニューを自分で分析してレシピに起こしたらしい。
なので並んでいる料理の中には何か普段は見ないようなメニューも多く並べられていた。
すみれとかすみも自前の料理を持ってきてくれたのでなんやかんやで結構普通にパーティっぽい催しになっていた。
暁館の一階には無駄に広いホールがあるのでそこで開催しているのだが・・・
こんなだだっ広い所何に使えば良いんだよと思っていたのだが、こういう使い方もありなのかと思った。
とりあえず零した飲み物を拭きながら優太もその空気を楽しんでいた。


優太
「いやーーー、てか何でオレが乾杯の音頭とか取らされてるの?
ぶっちゃけオレじゃなくてクソジジイがやればよかったじゃん。」

アルヴィス
「若い時に何でも経験しておくもんじゃって。
それに、お前何だかんだで『盛夏祭』中はまるで仕事しとらんかったろう。
それの代わりじゃ代わり。」

優太
「うっ・・・!
それを言われると何も言い返せないぜ。
そりゃあちょっと無理して動けなくなったのは悪かったと思うけどよ・・・」

アルヴィス
「ああ、それなんじゃがのう・・・
優太お前、最後の最後で身に纏った『魔氣』の色が変わっておったが・・・何かしたのか?」

優太
「え?ああ・・・えっとーーー・・・
何か気絶してる間に、何か精神世界?見たいな所で『黒炎龍』って奴と話したら・・・」

アルヴィス
「なに?『黒炎龍』、じゃと?」

優太
「ああ、何かそう言ってたぞ。
それで起きたら『魔氣』の感じが何時もと違くて・・・
何て言うか、力が溢れ出してきて逆に怖いくらいだった。」

アルヴィス
「なるほどのぅ・・・話は分かった。
なら、明日出掛ける前にちと久しぶりに指導してやろう。」

優太
はぁ!!?
別に要らねぇよ!!
あの後だって別に変わったこと無いし、『魔氣』も普通に戻ってたし・・・!!」

アルヴィス
「いいから、明日の朝は何時もの湖のほとりでじっくり指導じゃ・・・
今回の戦い方を見て、やっぱり一から鍛え直した方が良いとも思っとったしな。」

優太
「嘘だろ・・・もう終わったと思ったのに・・・」

アルヴィス
「ま、諦めるんじゃな。」

優太
「あ、そういえば出掛けるって何だ?クソジジイ出掛けるんだったら無理に指導とか・・・」



『アルーーーー!!!!
こっちきて一緒に飲めこの野郎!!
一人で気取ってんじゃないよーーー!!』



アルヴィス
「巴か・・・スマンがワシは行くぞ。
明日の朝、湖のほとりじゃぞ。」

優太
「うーーーっす・・・。」



誰から見ても分かるくらいに落胆しながら優太は適当にテーブルに並べられた料理を皿に取った。
とりあえずお腹が空いていたので、腹にたまりそうな肉系をチョイスして皿に山ができるくらい積み上げる。
そして適当に椅子に腰掛けると料理を食べ始めた。
何か信じられないくらい美味しく感じた。
そこへ、誰かが近づいてくる。
この気配は、


メダ
「何だ、随分とテンション低いな・・・」

優太
「ああ・・・何か明日からまたクソジジイの指導もとい、修行が再開するらしくてさ・・・
マジテンション上がんねぇ・・・」

メダ
「お前なぁ・・・あのアルヴィスさんに教えてもらえるってのがどれだけ名誉なことか分かってるか?」

優太
「知るかんなこと!!!
オレはもっと静かに夏休みを過ごしたかったんだよ!!
・・・季節的には冬向かってますけど!!」

メダ
「はぁ?
今は夏だろ、何の話ししてるんだ・・・」

優太
「いや、リアルタイムの話を・・・」

メダ
「いや、だからリアルタイムが夏だろ。
サマーなうだろ・・・」

優太
「そんなツイッターで呟く感覚で夏アピールすんじゃねぇよ!!!」

メダ
「それはそれとして・・・
その指導って奴、オレも一緒に行ってもいいだろ?」

優太
「え・・・お前なに、そっち系なの?
オレを落とすためにオレと行動しようって感じ??」

メダ
「お前それ以上くだらないこと言ったらその口貫くぞ・・・
オレはなぁ、ネロ一筋なんだよ!!!」

ネロ
「もうメダってば大声で何言ってるのよーーー!!
普通に恥ずかし嬉しいじゃない!!!」



突如背後からそんな声が聞こえたかと思うとメダが思い切りはっ倒されていた。
メダも気を抜いていたのか背後からのネロの張り手に気付かなかったらしい。
ネロは何だか左右の頬に手を当てながら恥ずかしそうに身をよじっている。
なんだろう、見てて微笑ましいような、爆発しろとか言いたいような・・・
何かそんな訳の分からない目で見つめることになった。


メダ
「お、お前な・・・
話しかけるならもっと普通にしろって・・・痛ぇだろ!」

ネロ
「いやーー、あんな大声で私への愛を叫んでたメダも悪いと思うんだーーー。
愛だったら、今夜ベットの上で私だけに囁いて欲しい・・・なんちゃってーーー!!!」

メダ
「何であたかもお前とオレが一緒のベットで寝るみたいな感じになってるんだよ・・・」

ネロ
「え、違うの?
嫌なの?
他の女が居るの!!?

メダ
「何でそんな一人で盛り上がってるんだよ!!
オレはお前一筋って言ってるだろ!!!」

ネロ
「やーーもう!!
そんなハッキリ言われると恥ずかし嬉しいでしょメダのバカーーー!!」



またも何か夫婦漫才みたいなのが始まってしまったので適当に優太は席を外すことにした。
何と言うか、お幸せに・・・


メダ
「優太!!
オレも明日行くからな!!
ちゃんと待ってろよ!!」

優太
「分かったよーーー。
待っててやるから今夜頑張りすぎて遅くなるなよーーー。」

メダ
「ああ!!」

優太
「今夜頑張るってところ否定しないんだ!!!」



何かもう色々嫌になったので逃げるようにその場から走り去った。
べ、別に泣いてなんかないんだからね!!



「優太さん!」

優太
「ん、蓮か・・・なんだ?」


「はい、皆さんにお出しするケーキの試食をしていただこうと思いまして・・・」

優太
「え、オレでいいのか?
もっと味の分かる奴に頼んだ方が・・・」


「え、えっと・・・これは優太さんのために・・・
あ、いえ!優太さんの舌を信じて頼んでるんですよ。」

優太
「そうか?
まあ、蓮にそんな風に頼まれたら断れないな・・・で、どれを味見すればいいんだ?」


「はい、えっと・・・これです。」



蓮は持っているトレイに視線を落とす。
優太も釣られて視線をトレイの上に向けた。
そこには十個くらいのカップケーキが乗っていたのだが・・・
その真ん中に置いてあった一つだけは何故か他と違って装飾に力が入っていた。
端的に言うと、苺が乗ってたり、ポッキーとか数本刺さってた。
蓮は迷うことなくその中心に置いてあるケーキに手を伸ばし、


優太
「あ、あの蓮さん・・・そ、それだけ他と違くね?」


「え、そんなことないですよ~~?」

優太
「え・・・だって色々余計な物が多く乗ってるし・・・
誰がどう見ても気合の入り方が違うのが見て取れるっていうか・・・」


「・・・・・何で優太さんってこういう時だけ観察力高くなるんですかね・・・」

優太
「え、なんて言った?」


「こ、コレはですね・・・
その、ゆ、優太さんだけの特別仕様で・・・」

優太
「特別?何で?」


「そ、そこら辺は何でもいいじゃないですか!!
と、兎に角味見してください!
他より確かに色々違いますけど、基本同じですから!」

優太
「そ、そうなの・・・?
まあいいか・・・じゃあいただきます。」



優太はフォークで端の方を少し切り分け、それを口に運ぶ。
口の中にホワイトチョコの風味がほのかに広がっていく。
しかしホワイトチョコと言っても甘すぎず、程よい甘みだ。
コレだったら甘いのが苦手でも普通に食べられそうな感じだった。
マフィン部分もしっとりしていて風味も豊かだった。
もの凄く簡潔に感想を述べるとするなら、


優太
「蓮、これは凄く美味しい!」


「そうですか。
お口にあって何よりです。
では、他の方にも配ってきますので私はこれで・・・」

優太
「うん、何でオレのだけ特別仕様なんだか結局分かんなかったけど美味かったから何でもいいやーーー。」


「鈍感通り越してただのバカに見えてきましたね・・・」









カタカタ、カタカタ
と、何かをタイピングするような音だけが響いている。
明かりは少なく、基本的にディスプレイの光だけが唯一の光のような空間だった。
そのディスプレイの前には一人の男が座っている。
男は白衣を身にまとい、眼鏡までかけている辺り研究者、または医者を思わせるような男だった。
男は画面から目を離すことなく、後ろに立っていたもう一人の男に話しかけた。


カリスト
「ちゃんと始末はついたんですか?」

ドレイク
「おや、私にお気づきだったか・・・」

カリスト
「ええ。
まあ、この部屋に入ってくると私の端末に信号が送られて、ソレが振動するからですがね。」

ドレイク
「なるほど・・・
気配を消していたので何故気付かれたのかと思いましたが、そういう訳でしたか。」

カリスト
「そういう訳ですよ。
それに、貴方が声を発しているからそこに居ると分かりますが・・・
喋ってくれなかったら本当に居るのか怪しい所でしたよ。」

ドレイク
「ふふふ、どうやら私も完全に回復できたようですね。
見立てではもう少し時間がかかると思いましたが・・・
博士の処方してくれた薬のお陰ですかね。」

カリスト
「ああ、あの薬ですか・・・。
人間が飲んだらその苦しみに耐えられなくて使用できない奴だったんですが・・・
貴方には効果覿面だったらしいですね。
流石は、『悪魔の血』を飲み干しただけはあります。」

ドレイク
「あの薬も最初は苦しくて死ぬかと思いましたよ。
まさか私の治癒が追いつかないほどに体中の細胞が死んでいくとは・・・
一歩間違ったら死んでいましたね。
それに比べれば、今回の薬は苦いだけでしたよ。」

カリスト
「ちなみに、あの『悪魔の血』も私の作品なんですよ・・・」

ドレイク
「ほぅ、そうだったのですか。
それは初耳でしたな。」

カリスト
「そうでしょうね。
私自身も自分が今までどれだけの作品を作ってきたのか覚えきれていませんからね・・・」

ドレイク
「その内の一つが、彼ですか・・・」



ドレイクはそう言うと、ディスプレイの奥を見やる。
そこには何も存在しない。
しかしそれは見える範囲ではの話である。
その奥は円柱状の空洞が空いており、その下には数々のカプセルがひしめく様に並んでいる。
その一つに、通常ではありえない巨躯を持った人物が一際大きなカプセルに入れられている。
カリストのタイピングが終わる。
それにつられるように、カプセル内のその巨躯を持った男の瞳が開かれる。


カリスト
「これでまた一つのプロジェクトが終わった・・・か。」

ドレイク
「で、博士・・・今回は何を完成させたのですか?」

カリスト
「『魔力』と『氣力』の効果を併せ持った第三の力、通称魔神力(まじんりょく)の開発実験ですよ。」

ドレイク
「それは、『魔氣』とは違うんですか?」

カリスト
「根本的には一緒だが、違いがあるとすれば・・・
その強大な出力、そして扱いやすさです。」

ドレイク
「ほう・・・」

カリスト
「『魔氣』と言うのは・・・
『氣力』の素質を持ち、尚且つ才能の様な物がなければ体得できないものでしたな。」

ドレイク
「そうですね。」

カリスト
「この『魔神力』は単一で『魔氣』と同じ、いやそれ以上の力を引き出すことができる。
二つの相反する力をコントロールしなければならない従来の『魔氣』と違い、単一であるが故に扱いは簡単になります。
まあ、通常はこの『魔神力』の出力に耐えられず肉体が崩壊してしまうんですがね。」

ドレイク
「彼が、その完成系だと?」

カリスト
「彼は元々プロトタイプとして作りました。
しかし、彼以上に『魔神力』を使いこなせる者は存在せず・・・
結局は数々の犠牲・・・いや、実験の末にようやく完成が見えたので彼にその力を与えたんですよ。」

ドレイク
「それはそれは・・・さぞ、楽しい殺し合いができるんでしょうね。」

カリスト
「おっと、まだ彼は扱い方を熟知してませんからな。
手合わせはまた今度にしてもらえますか・・・
これから、シュミレーションも兼ねて機能実験もしなければなりませんしね。」

ドレイク
「そうですか。
それは残念だ・・・。
そうそう、あの腕輪の実験結果ですが・・・」

カリスト
「アレの欠点は最初から分かってました。
実際に使ってみてもその点以外に見当たらないので問題無いでしょう。
既に完成させましたよ。」

ドレイク
「仕事が早いですな・・・それなら安心です。
それでは、私はこれで失礼しますよ・・・
次の仕事が待っているのでね。」

カリスト
「精々気をつけて行ってきてください。
貴方を失うと計画が頓挫してしまいますからね・・・」

ドレイク
「私を殺しきれる者などこの世に存在などしませんよ・・・
それに、まだ殺し合いたい相手が居るのでね・・・
彼が成長しきるまで、死んでも死にきれませんよ。」



ドレイクは不敵に微笑むと、空間を切り裂きその彼方に消えていく。
それを見送ったカリストは機器の電源を切る。
すると、その空間は完全な闇に覆われた。






第二話「龍帝。。」






東の空から太陽がのぼる。
その光が何か凄く眩しく感じる。
朝とだけしか言われてなかったので何時なのか分からなかったから行けなかったやーーーとやろうと思ったが・・・
何故か四時くらいに部屋に押しかけられメダ共々無理矢理連れてこられた・・・
アルヴィスにはメダも一緒にやるということを伝えていなかったはずなのだが・・・まあ、眠かったので思考は途中で停止した。
昨夜はそれなりに遅くまでワイワイガヤガヤやっていたので、ほとんど全員が暁館に下宿していた。
優太は眠い眼を擦りながら適当にストレッチをしていた。
メダはメダで既にスイッチが入ったのかテキパキと準備体操をしている。


優太
「ふぁ~~~~・・・ねむ・・・」

メダ
「何だ、だらし無いな優太・・・」

優太
「うるせぇな・・・
お前と違って朝から起こしてくれる彼女も居ないオレは、ギリギリまで寝てたから寝覚めが悪いんだよ・・・」

メダ
「いや、オレもギリギリまで寝てたし・・・
ネロを起こさないように起きるのはそれなりに大変だった・・・」

優太
「別にそんなの簡単だろ・・・
物音立てないようにソっと出てくればいいんだろうが・・・」

メダ
「あ、いや・・・
その、なんだ・・・えーーーと・・・」

優太
「???」

アルヴィス
「ネロに抱きつかれていたんもんだから、それをほどくのが大変じゃったんじゃよ。」

メダ
「ちょ!!?アルヴィスさん!!?」

優太
「結局一緒のベットで朝までですか!
お前はそう言う奴じゃないって信じてたのに!!」

メダ
「お前はオレの何を信じてるんだよ!??
いや、ね、ネロの奴が無理矢理入ってきてだな・・・」

優太
「あーーーー・・・あるわ。」

メダ
「だろ?アレ回避不能だよなーーー。」

優太
「そういう話なら分かるぜ・・・
流石に嫌だ何て言えないからな・・・」

メダ
「むしろ嫌なんて言った日には文字どうり朝まで離してくれない・・・」

優太
「そうか・・・お前もやっぱり大変なんだな。」

メダ
「ああ・・・。」

アルヴィス
「ヘタレの馴れ合いはもういいかの?」

優太
「誰がヘタレだクソジジイ!!
ただでさえ短い寿命縮めてやろうか!?」

アルヴィス
「今のお前が相手では一秒も寿命が縮む気がせんわい。」

優太
「何だとこの野郎・・・」

メダ
「優太の目も覚めた所でそろそろご指導のほどお願いできますか?
アルヴィスさん。」

アルヴィス
「うむ・・・そうじゃのう。」

優太
「後で覚えてろよクソジジイ・・・」

アルヴィス
「優太・・・お前、今すぐ『魔氣』を使えるか?」

優太
「無理。」

アルヴィス
「じゃろうなぁ。
では、コレを飲め。」



アルヴィスはポケットから十円ガムを思わせるような物を取り出す。
それを優太に手渡す。
優太は訝しむように見てからハッとしたように思い出す。


優太
「あ、コレ・・・時計塔の時に食べたスゲェ苦い薬か・・・?」

アルヴィス
「『氣力』を活性化させる薬じゃ。
あの時、お前はコレを飲んだことで内なる『氣力』を完全に目覚めさせたのじゃ。」

優太
「へぇーーーそうだったのか・・・。」

アルヴィス
「本来、『氣力』を持たぬ者が服用すると人体に悪影響が出るんじゃが・・・
今のお前が食べても『氣力』が発現するだけじゃ。
安心して食え。」

優太
「そうか・・・じゃあ・・・」



優太は口に丸薬を放り投げる。
そして噛むことなく飲み込んだ。
前回、口内で噛み砕いてしまったせいで散々な目に合っているので今回は丸飲みすることにした。
喉を異物が通る嫌な感覚を感じた後、


ブワッ!!


体の奥底から『氣力』が湧いてくるのを感じる。
優太は気持ちを落ち着け、全身に『氣力』を纏い、その上から『魔力』を混ぜ込むように纏っていく。
次の瞬間、優太の全身を赤いオーラが覆った。


アルヴィス
「ふむ・・・やはり赤色か・・・」

優太
「だろ?
この前の時みたいな黒いオーラにならねぇんだよ・・・
アレは一体、何だったんだ?」

アルヴィス
「アレは『魔氣』を超える『魔氣』じゃろう。」

優太
「は?」

アルヴィス
「見せてやろう。
これが、『魔氣』を超える『魔氣』・・・魔氣・龍帝(イクシード・ドラグオン)』!!!



アルヴィスの全身を白銀の輝きが覆う。
優太の『魔氣』がちゃちに見えるほど、その全身から並々ならぬ力が溢れ出しているのが分かった。


優太
「す、スゲェ・・・
な、何だよそれ・・・す、ス●パ●サイヤ人2か?」

アルヴィス
「似たようなものかのう。
これは流石のお前でも一朝一夕では使えるようにはならん。
何せ、内に住まう龍の力を100%引き出すのがこの『魔氣・龍帝』じゃ。」

優太
「ああ、なるほど・・・
それを無意識に使ってたからオーラの色が変色したってことか?」

アルヴィス
「そういうことだと思うがの。」

メダ
「あ、あの・・・
お、オレも『氣力』を使えるでしょうか?」

アルヴィス
「それは分からんのう・・・
誰でも使えるものではない。
まずは素養があるか確かめる所からじゃな。」

メダ
「は、はい!!
よろしくお願いします!!」

アルヴィス
「メダの方針は決まったのう。」

優太
「オレは『魔氣・龍帝』って奴を習得することか?」

アルヴィス
「いや、それよりもお前は『具現武装』の習得を優先しろい。」

優太
「ふぉーむ?」

アルヴィス
「『魔氣』をある程度使える様になった者が最初に通る道・・・
それが具現武装(フォーム)
読んで字のごとく、武装を具現化させることじゃ。」

優太
「具現化?武装???」

アルヴィス
「まあ、最初からそれはハードルが高いじゃろうから・・・
まずはコレくらいできるようにならんとのう。」



アルヴィスは『白龍』を抜くと、その刀身に『魔氣』を込める。
そしてゆらりとそのオーラが揺れたかと思うと、オーラが何かを型取り始める。
アルヴィスは湖の方に向き直ると、その刀身を軽く振るう。
すると刀身から白い龍が出現し、湖を駆け抜けていく。


優太
「な、何だ!??
な、何も無い所から龍が飛び出した!?
って、アレ?
これ・・・どこかで見たような。」

アルヴィス
「お前も使ってたじゃろう。
あの『天想黒龍牙』こそ、『魔氣』による具現化の力を使った技じゃ。」

優太
「そ、そうだ!!
あの時は無我夢中で、何が何だか全然覚えてねぇけど・・・
確かにオレも、黒い龍を具現化させていた・・・
アレが、『魔氣』の具現化・・・」

メダ
「具現化と言えば・・・
奏が使っていた『具現神器』も同じですか?」

アルヴィス
「そうじゃのう。
じゃが、アレは具現化の中でもランクの高い代物じゃ。
神器、つまり神の道具を具現化させるほどの力な訳じゃからのう。」

メダ
「あ、あの技ってそんなに凄い物だったのか・・・
あまりにも軽く使うものだから実感が湧かない・・・。」

アルヴィス
「これから優太が覚える『具現武装』じゃが・・・
奏ちゃんが身に纏っていた漆黒のマントがあったじゃろう。
あんな感じの物をイメージにより作り上げるのじゃ。」

優太
「え、あのマント自前じゃなかったのか・・・」

アルヴィス
「あれは『具現武装』じゃよ。
アレを身に纏っている間のみ本来の力を100%発現させられるようじゃのう。」

優太
「お、オレもマントとかを纏うのか?」

アルヴィス
「そうイメージすればそうなるが・・・
普通は個々人で違う形になるものじゃな。
ワシの場合は西洋の鎧を具現化させる。」

優太
「なるほど・・・。
つまり、特撮物的に言う変身をする感じか!?」

アルヴィス
「イメージ的にはそれで間違いはないのう。」

優太
「うーーん、でもオレ仮面ライダーとかよりセイバーの方が好きだなーーー。
あ、でもライダーはライダーでもFateのライダーはどの時代でも・・・」

アルヴィス
「お前は一体全体何の話をしてるんじゃ?」

優太
「すんませんこっちの話です。
つまり、キャストオフしろってことか!!!」

アルヴィス
「いや、お前のキャストオフ何て誰も見たがらないじゃろ・・・」

優太
「よし、そうと決まればまずコツとかパッと教えてくれよ。」

アルヴィス
「ブブブでバーーーッ!!
でブシャーーー!!!って感じじゃ!!」

優太
「なるほど、分かった!!!」

メダ
「何が!??」

優太
「え、分かんないのか?」

メダ
「具体的に何をどうするのか今ので伝わった時点でお前の発想力凄すぎるわ!!」

優太
「ま、オレは一人でモクモクとやるよ。
メダはクソジジイに『氣力』の使い方教われよ。」

メダ
「ほ、本当に大丈夫なのか?」

アルヴィス
「優太なら心配ない。」

メダ
「え、あの説明で本当に理解したって言うんですか?」

アルヴィス
「いや、初めに例で見せたじゃろ?
アレで十分なんじゃよアイツには・・・」

メダ
「え?」

アルヴィス
「アイツは見切る能力に長けておるみたいなんじゃ。
以前ワシとの修行中、技を二つか三つ奪われたからのう。」

メダ
「それ、本当ですか?」

アルヴィス
「ああ、本人に聞いた話じゃが・・・
優太の奴、上級肉体強化術の三種全てを一度見ただけで習得したらしい。」

メダ
「そ、そういえばアイツいつの間にか使えるようになってて・・・
アルヴィスさんに教わったものだと思ってました。」

アルヴィス
「ワシが教えたのはそれをさらに強化する方法じゃ。
ワシが教える頃には『鋼猿』以外、ほとんど完成系に近かったよ。」

メダ
「・・・『魔氣』も、見ただけで覚えたんですか?」

アルヴィス
「ああ、二日でマスターしおった時は流石のワシも驚きを隠せなかった・・・。
じゃから、『具現武装』などスグに習得して『龍帝』をあっと言う間に使いこなすまでなってくれるじゃろうて。」

メダ
「・・・・・」

アルヴィス
「なーーに、アイツは物覚えが良いだけじゃ。
習熟させるにはそれなりに時間を使う。
焦らずとも、メダは総合力ではまだ優太に・・・」

メダ
「よし!!!アルヴィスさん!
早速指導、お願いします!!!
負けてられませんからね!」

アルヴィス
「(・・・・・。ふっ、何も心配いらなそうじゃのう。)
よし、では始めるぞ!
知っとると思うが、ワシの指導は厳しいぞ?」

メダ
「大丈夫です!!知ってます!!!」

アルヴィス
「なら早速はじめるかのう。」






エリスの朝は早い。
雇われメイドとして朝からエリスは忙しいのだ。
毎朝五時には目を覚まし、庭の掃除を始める。
それが終わってからは館内の掃除。
各部屋の掃除は朝食の後だ。
掃除は毎日欠かさずやっているので暁館はかなり清潔を保っている。
正直毎日外観からして、キラキラエフェクト掛けても良いんじゃね?ってくらいピカピカだ。
掃除を手早く済ませたエリスは厨房に向かう。
大体今が六時なので一時間で朝食を準備すれば大丈夫だろう。


エリス
「あ、そういえば今朝はお客様がおられるんでした・・・
一時間でちゃんと全員分用意できるでしょうか・・・」



エリスは内心心配しつつも胸の前でガッツポーズを取ると、厨房に入る。
すると・・・
何故かムワっと熱気を感じた。
厨房内には何とすみれとかすみが既に居り、これまた何故か料理を作っていた。


エリス
あ、あわわわわわわわわわわわわ!!!
すみれ様!かすみ様!な、何故イキナリ・・・!
と、と言うかそれは私の仕事ですから!」

すみれ
「あ、エリスさん。
ついクセで早起きしちゃってね・・・。
外見たらエリスさんが起きてたから、掃除してる間にこっちはこっちで朝食を用意しようって・・・」

かすみ
「うん・・・そんな感じだよ~~~、私達に任せとけ~~~ムニャ・・・」

すみれ
「かすみーーー、ここで寝るなーーー。
寝るなら準備終わらせてからにしなさい。」

かすみ
「ふぁーーーい、おねえちゃん・・・」

すみれ
「と、言う訳なのでここは私達に任せてください。
エリスさんは食堂の方を準備しておいてくれますか?」

エリス
「は、はい・・・それではお言葉に甘えて・・・
優太様すみませんエリスは本日朝食をお作りすることができませんでした・・・この失態はまた別のことで・・・



エリスはテンションダダ下がり状態になりながら食堂の扉を開けた。
すると何故か中から食器を並べるような音が聞こえてくる。


ネロ
「あ、エリス。おはよーーーう。」

エリス
「ね、ネロ様・・・!?
な、何をしてらっしゃるんですか・・・?」

ネロ
「えーー?いや、メダが朝早くから出かけるからついでに起きちゃってね・・・
とりあえず適当に食器でも並べようと思って・・・」

エリス
皆さん何で私の仕事を取るんですかーーーー!!!

ネロ
え゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!???
な、何故そこで泣きながら立ち去る!?
私、何か悪いことしたのかな!??
もしかして使っちゃダメな食器とか並べてた!??」

エリス
「いえ、完璧すぎて文句の付け用がありません!!
私、もうやる事無いので綾香様起こしてきます!!!」



と、言いながらエリスは泣きながら食堂を後にする。
朝から暁館中にその声は響き渡り、良い感じの目覚ましになったらしい・・・








由紀
「そう言えば優太は?」



何気なく朝食を食べ始めてから由紀はそのことに気づいた。
どこを探しても優太が居ないのだ。
パンを口に運びながらネロは軽く返す。


ネロ
「優太くんなら・・・メダと一緒にアルヴィスさんの指導を受けに行ったわよ。」

由紀
「指導?ああ・・・また修行始めるんだ。
じゃあ、帰ってきた時はヘトヘトか・・・
今日から行くのに、大丈夫なのかな?」

ネロ
「ん?ああ、そう言えばアレって今日からだったっけ?」

由紀
「そうだよ。
準備とかが必要無いから言われないと忘れちゃうよね。」

ネロ
「そうね。
と言うか、ここに居る人達全員で行く訳でしょ?
軽い修学旅行だよね。」

由紀
「修学旅行何てよく知ってるね・・・。」

ネロ
「外の世界の娯楽漫画とかにはよくあるシチュエーションだからね。」

由紀
「ネロって外の漫画読むんだ~。何読んでるの?」

ネロ
BT●●OMとか。」

由紀
爆殺遊戯キターーーーーーーーーーー!!
修学旅行全く関係ないです本当にありがとうございました!!」

ネロ
「あと・・・T●L●VEるダ●ク●スとかも参考程度に読むかなーーー。」

由紀
「さっきとの落差が激しいーーー!!
てか何の参考にするつもりなんでしょうかねぇ!?」

ネロ
「でもまあ、面白ければ何でも好きかな!!」

由紀
それを最初に聞きたかったよ!!
最初と二個目のインパクトが強すぎて最後の〆がスンゴクヘボく聞こえるよーーーー!!!

ネロ
「由紀ってツッコミ上手いね。
優太くんみたいだから安心してボケられるよ~~。」

由紀
ふざけんなよぉおお!!
私も普段はボケキャラなんだよ!!
ツッコミせざるを得ないから仕方なくツッコんでるだけだよ!!!
つーかツッコミ疲れるよ!常に全力なんだもん!!
優太、いつも一人でツッコミさせてごめんなさいでしたーーーー!!!


「わーー、何か朝から楽しそうだね~~。
私も混ぜて~~~♪

由紀
マジで勘弁してくれよぉおおおお!!
唯の天然入ったらもう捌ききれないよ!
優太と違って・・・私、ツッコミ慣れてないもん!
さっきから一回のセリフで何度も何度もツッコんでるとこ見れば分かると思うけど・・・!
もう一杯一杯だよおおおおおおお!!!!!

千草
「え?おっぱいおっぱい??

由紀
一杯一杯だって言ってんだよおおおおおおおおおおおお!!!
おっぱいなんて嫌いだああああああああああ!!!


「本当に大変そうですね・・・
と言うか何故そこまでおっぱいを毛嫌いするんですか?」

由紀
「いやーーー、ぶっちゃけ世の中の男ってほとんどが脳内おっぱい天国じゃん?
もう嫌になるよね・・・」


「いえ、むしろ私は急にシラフに戻って普通に語り出してる由紀さんに嫌気がさしかけてますけど・・・」

由紀
「もう少しさ、他の部位に目とか向けろよって感じ?
お尻とか太ももとか、うなじとか鎖骨とか、腋とかおへそとか・・・!!
おっぱい以外にも一杯あるんだよ魅力的な部位はぁぁああああああああああ!!!

千草
「ああ・・・これは恒例の壊れちゃった展開ですねーーー。」


「もうメンドくさいのでほっときましょうか。」



その時、食堂の扉が開く音がする。
そこから顔を出したのはメタクソに疲労困憊している優太とメダだった。



「あら、優太さん。
早かったんですね・・・」

優太
「そうかな・・・もう時間の感覚とかマジねぇ・・・」

メダ
「今日ばかりは優太と同意見だ・・・」

エリス
「だ、大丈夫ですか優太様・・・」

優太
「だ、だいじょーーぶさ・・・
そ、それよりオレとメダの分の朝食・・・」

エリス
「はい!スグにお持ちしますね!!
あ・・・ご飯とパンどちらになさいますか?」

優太メダ
「「米!!!!!!!!!」」

エリス
「かしこまりました。量の方は・・・」

優太メダ
「「釜で!!!!!!!!」」

エリス
「大盛りですね。承知しました。」

由紀
「おうおうおう!!
優太!よく帰ってきたじゃんよーーーー!!」

優太
「なんだよ由紀そのテンション・・・
朝からどんだけメンドくさい絡み方だよそれ・・・」

由紀
「優太もどうせおっぱい野郎なんでしょ!??
正直に言っちゃいなよユーーー!!!」

優太
「え?オレ別におっぱいが一番好きではないけど・・・
て言うかそもそも女の子をパーツ分けして見てないし・・・。
オレはその子の全部を愛するのが普通だと思うぜ。」

由紀
「え・・・ほ、本当?」

優太
「本当だよ・・・そんな胸の大小で好きとか嫌いなんて中学生じゃあるまいし・・・
あーーーー、腹減ったーーー。
エリスーーー!まだーーー?」

由紀
「ゆ、優太・・・!
やっぱり優太は分かってるよーーー!
やっぱり世界で一番大事なのはだよねーーー!!」



由紀はテーブルなどお構いなく優太に飛びついてくる。
盛大に目の前の食器とか跳ね飛ばしていたけど由紀の視界には入ってないようだ。
この時、かすみがもの凄くショックな表情を浮かべていたことに誰一人気付くことはなかった。


優太
「お、おい!!由紀止めろよ!!
つかお前朝飯ひっくり返してるから!!
凄くもったいねぇぞ!!」

由紀
「愛の前には、食欲なんて些細な物だよ!!」

優太
「すんません!!
オレ愛より食が欲しいです今この時だけは!!!」



蓮や千草達は慣れているのか何も言わずに朝食をとり続ける。
完全に隣でドンチャンやられてメダは少々辟易する。
助け舟を出す余裕は無い。
予想以上に肉体の疲労が限界を超えている。
これだけなら龍と戦ってる方が楽だと思うほどだ。


ネロ
「ところで・・・メダはどっち派?」

メダ
「あぁ?どっちって・・・」

ネロ
「おっぱいとお尻。
腋とおへそでも可!!」

メダ
「どれも要らねぇ・・・
どれかと言うと、時間が欲しい・・・」

ネロ
「はいはい。
真面目だね~~メダは。」

メダ
「時間って言っても・・・『ネロとの』時間だけどな・・・」

ネロ
「私かーーー!!
私との時間なんて作ればいくらでもあるよ!大丈夫だよ!!
なんならコレから・・・」

メダ
「今は・・・飯が食いたい・・・」

ネロ
「じゃあご飯の後にちょっと時間があるから・・・
買い物付き合って欲しいんだけど大丈夫?」

メダ
「ああ・・・いいよ。」

ネロ
「良かった。じゃあ約束ね。」

メダ
「うん・・・」

優太
「おいメダ!!お前隣でイチャついてねぇで仲裁しろよ!!
戦友のピンチを助けるのも戦友の役目だろ!!」

メダ
「オレから見たらお前も十分イチャついてる風に見えるわ・・・。」



そうこうする内に賑やか?な朝食は終わる。
そしてそれぞれがそれぞれの生活に戻る・・・カニ見えた。






第三話「休暇。。」






優太
「で・・・オレ達は何処へ行くというのかね?」


「海だって~~、楽しみだねーーー。」

優太
唐突ーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!
つか今年も同じような時期に同じような話持ってきやがって!!
狙ってんのか!?狙ってんのか!!???」



一同(『暁の地平線』、『天統べる煌星』、『華々の冠』、『海風の憑代』メンバーの一部)は何故か列車に乗り込んでいた。
さきほど説明を受けたのだが・・・
蓮の父親、つまり国王様から直々に別荘とか借りたらしい。
て言うか国王様が「ちょっと早い新婚r(ry(ここで蓮が平手打ちで黙らせたらしい)」とか言って別荘を貸してくれたらしい。
誰との新婚を想定したアレなのかは聞いたけど結局教えてくれなかった。
そのことを聞いた時の蓮は普段からは考えられないくらい慌てふためいていた上に、耳まで真っ赤にしていたけど・・・
何だったんだろう・・・。
と、優太は一人思案していた。


ジリリリリリリ。


発車の合図だろうか・・・
けたたましいくらいのベルが鳴る。
そして軽い揺れと共に景色が動き始める。
いや、自分たちが動いているのか・・・
優太は外の景色を見るのを止め、瞳を閉じる。
正直半端じゃない睡魔に襲われているのだった。
それもそのハズ、今朝はもの凄い早起きだったし・・・
『魔氣』の具現化は相当難度が高く、正直一長一短でできそうにはなかった。
アルヴィス曰く、優太は『強化』の術技の会得、習熟スキルは高いが・・・
『具現化』させる能力は軒並みのようだ。
それでもたった数時間で『魔氣』をある程度自在に操れるようになったのは凄いことらしい。
まあ優太自身そんなことはどうでも良かった。
今はただ・・・この睡魔に身を任せることにした。


アルヴィス
「そうは問屋がおろさんがのう。」

優太
「あぁ?」

アルヴィス
「寝るのは何時でもできるじゃろう?
ちょいとワシの話に付き合え。」

優太
「・・・・・・」

アルヴィス
「黙って寝ようとするない・・・。」

優太
「何だよーーー・・・どんだけオレにスパルタンな教育を受けさせたいんだよ・・・
そういうのは奏に頼めよ・・・」

アルヴィス
「いや、意味分からんからのう・・・」

優太
「いやだってアイツの戦闘モデル、クレイトスやし・・・」

アルヴィス
「分かる人どれくらい居るんじゃソレ・・・」

優太
「良いんだよ分からなくたって・・・
てか何だよ、どうでもいい話ならマジ後にしてくれよ・・・」

アルヴィス
「優太・・・お前、『竜牙』の代わりはどうするつもりじゃ?」



『竜牙』・・・
優太が少し前まで使っていた日本刀だ。
神獣ヴァルヴェルド戦の最後に限界を向かえ、刀身が粉々に砕けてしまっているのだ。
今は代わりにそこら辺で適当に手に入れた日本刀(モドキ)を持ち歩いているが・・・
こんな模造品みたいな物では優太の強大な力を集約させただけで粉々に砕けてしまう。
早急に『竜牙』の代わりになるような物を探さなければならなかった。
まあ、当然ながら・・・アテなど無い。


優太
「どうって・・・この休暇から帰ったらボチボチ考えるさ。」

アルヴィス
「それでは遅いのう・・・。」

優太
「じゃあどうしろって言うんだよ・・・
これから行く所に凄い鍛冶師でも居るのかよーーー・・・」

アルヴィス
「居るよ?」

優太
「冗談も大概に・・・」

アルヴィス
「冗談ではないぞ・・・。
この『白龍』を作った鍛冶師じゃ・・・腕は確か何じゃよ。」

優太
「何だよその取ってつけたような展開・・・
でも『竜牙』みたいに頑丈で、よく斬れる刀を打てる様な玉鋼なんて普通無いと思うぞ。」

アルヴィス
「それもあるぞい。ホレ。」



アルヴィスは白い包みを投げて寄越す。
優太はそれを受け取り、その包みを開ける。
中から出てきたのは白い塊だった。
どこからどう見ても金属のようには見えない。
むしろ骨のような感じがする。


優太
「何だよコレ・・・骨みたいに見えるけど・・・」

アルヴィス
じゃ。」

優太
「何の?」

アルヴィス
ヴァルヴェルドの。」

優太
はぁ!!?

アルヴィス
「ちょいと拝借しておいた。
それを素材がわりに持って行ってみろ・・・
きっと奴のことじゃ、スグに一本打ってくれる。」

優太
「な、何か至れり尽せりな展開だな・・・」

アルヴィス
「ま、お前にはできるだけ早くに現場復帰して欲しいからのぅ。
大会の参加申し込みも、もうしてしまったし・・・」

優太
「え?最後の方何て言った?よく聞こえなかったんだけど・・・」

アルヴィス
「気の所為じゃよ・・・さて、ワシはもう行くとするが・・・」

優太
「んーーー、そうか・・・オレはじゃあ寝る。着いたら起こして・・・」

アルヴィス
「覚えてたらのう。」







ゆっさゆっさ・・・。


『・・・ちゃん・・お・・ちゃ・・・!』


誰かに体を揺すられるのが分かる。
聞き慣れた声で語りかけてもきている。
優太はうっすらと目を開きながら声の主の方向を向く。


優太
「んーーー・・・誰だ?」

愛依
「私だよ。おにいちゃん・・・。」

優太
「愛依ーーー?」


「ついでに私も居るぞ。」

優太
「奏?えっと・・・何だ、もう着いたのか?」

愛依
「うん、おにいちゃんが起きないからとりあえずみんなは先に行ってもらったよ。」


「お前のせいで私まで巻き添え食って置いてけぼりだよ・・・どうしてくれんだよ!!」

愛依
「とか言ってるけど、カナちゃんもさっきまで熟睡だったよね。」


「愛依、それは言わなくてもいいんだよ?」

優太
「とりあえずみんなは先に行ったのか・・・
それじゃあオレ達も行くとするか。」



優太は席から立ち上がり、列車から出る。
すると潮の匂いとともに潮風が吹き抜けた。
見ると、駅のホームから海が一望できた。
かなり開けた場所で、周囲には大きな屋敷の様な物以外は見当たらない。
どうやらあの浜辺に面した場所に建っているのが今日から泊まることになる蓮の別荘のようだ。
優太はホームから出ると、大きく伸びをする。
そうすると何だか今朝の疲れが抜けていくような気さえした。


優太
「ん、西の方にあるのは・・・町か?」

愛依
「うん、セントレアの町だよ。
漁業が盛んな町で、結構有名なんだよ?」

優太
「へぇーーー。
じゃあ、あそこに居るのかな・・・鍛冶師。」

愛依
「鍛冶師?」

優太
「ああ。ちょっとジジイに聞いてな・・・
腕の良い鍛冶師が居るみたいなんだよ。」

愛依
「あの町に居る鍛冶師って言ったら一人しか知らないけど・・・
ダイヤおじさん、そんなに凄い鍛冶師さんだったんだ・・・」

優太
「え、愛依知ってるのか?
だったら話が早いや・・・後で場所教えてくれないか?」

愛依
「それはいいけど・・・
おじさん知らない人からの仕事は受けない人だからなーーー。」

優太
「え、なにそれどゆこと?」

愛依
「かなり職人気質な人だったから・・・一元様お断りを信条にしてて。」

優太
「そ、そうなのか・・・てか詳しいな愛依。」

愛依
「うん、昔・・・ここに住んでたから。」

優太
「住んでた・・・って、それってつまり・・・!」

愛依
「私の、生まれ故郷なんだよね。あの町・・・」



その時、優太達の間を海から潮風が吹き抜ける。
風になびいた愛依の髪が顔を隠し、表情を伺うことができなくなった。
今、愛依はどんな顔をしているのだろうか・・・
その後、特に会話も無く少し気まずい雰囲気の中、三人は別荘へと足を運ぶのだった。









「とりあえず、海に飛び込みたいと思います。」

優太
「おう、好きにすればいいと思います。」



奏は優太の部屋に突然飛び込んできたかと思うとそんなことを言い出した。
何でオレに宣言しに来たんだとか内心思いながら、優太は自分の出掛ける準備を手早く済ませる。


優太
「で、それをオレに宣言することに何か意味があるのか?」


「いや、愛依を探してるんだけど・・・どこに行ったか知らないか?
と言うか、てっきりユータと居ると思ったんだけど・・・」

優太
「はーー?愛依なら部屋か、唯の所じゃないのか?」


「両方行ったんだけど居ないんだよ。
電話にも出ないし・・・
だからユータの所だと思ったんじゃないか・・・」

優太
「なるほどな・・・でもここに愛依は来てないぞ。」


「そっかーーー。
とりあえず他を探すことにするよ・・・
てかユータは何の準備してるんだ?」

優太
「ああ、町に行ってこようと思って・・・」


「さっき話してた奴のことか?
何でまた鍛冶師に・・・」

優太
「新しい刀を打って貰いたいからだよ。
この前、今まで使ってた奴折れちまったからな・・・」


「そうだったのか。
使い方が荒いから壊すんだよ・・・もっと丁寧に使ってやれよなーーー。」

優太
「それはもっともだな・・・」


「兎に角、愛依が見つかったら連絡くれ。」

優太
「ああ。見かけたら声かけておくよ。」







カッカッ。


優太は部屋から出ると、玄関ホールに降りるための階段を降りていた。
この別荘は見た目に違わぬ内部構造で、上に三階、下に一階それぞれ階層を持っている。
横にも広く、廊下はせいぜい端まで100m以上ありそうなものだ。
横幅だけなら完全に学校クラスである。
部屋も大小様々な物が各階に10以上は点在し、どこに何があるのか覚えるだけでも大変そうだ。
何でお金持ちってこうやって無駄に広くしたがるんだろうか・・・。
とりあえず二階は男連中が使い、三階女性陣が使うことになったらしい。
一階は『暁館』と同じく、食堂や大浴場があるようだ。
ほとんどの奴らは海へ遊びに行っている。
今この別荘に居るのは優太と所在の分からない愛依、それを探してる奏、自室で一人読書に励んでいた蓮、同じく自室で必死にエロゲー(大音量)をやっている千草、二階テラスで昼間から酒盛りしていた女将のみである。
とりあえず皆思い思いの休日を過ごしているようである。
優太は玄関扉に手を伸ばし、片側の扉を押す。


ズズっ。


片方の扉が開き、外の景色が飛び込んでくる。
そこには白い砂浜と、青い海・・・
そして、色とりどりの水着の少女達が遊んでいる姿が見える。
優太はそれを確認だけすると、扉を閉め町に向かうため駅へ歩きだそうとした。
その時、


??
「待って!!おにいちゃん!」



後ろから誰かに呼び止められた。
誰か、と言っても・・・
自分を兄と読んでくれる人物は、この世にはもう一人しか居ない。
優太は振り返りながら少女の名を呼ぶ。


優太
「愛依、か。何だ?」

愛依
「その・・・私も着いて行っちゃダメかな?」

優太
「セントレアにか?別にいいけど・・・
愛依、奏が探してたぞ・・・
一緒に海で遊びたがってたぞ。
そっちはいいのか?」

愛依
「あ、そうなんだ!
じゃあちょっとカナちゃんに連絡してみるね。」



愛依はポケットから携帯を取り出す。
そして早々と慣れた手つきで操作し、携帯を耳元に持っていく。
一回鳴ったか鳴らないかのタイミングで奏が出たようだ。
どんだけ素早いんだよアイツ・・・
とか思っていると話がついたのか、愛依は携帯を仕舞う。


優太
「なんだって?」

愛依
「カナちゃんも一緒に行くって。」

優太
「え、マジで?」


マジだよバカ野郎!!!



愛依の後ろに滑り込むようにして奏が飛び込んでくる。
正面扉を蹴り開けて出てきた。
手加減はしているからか一応壊れてはいなさそうだ。



「お前と愛依を二人でイチャラブさせてやるわきゃねーだろ!!!
愛依とイチャラブするのはこの私だーーーーーーー!!!

優太
「まーーーた面倒な誤解しちゃってるんですけどこの子・・・」

愛依
「あはは・・・おにいちゃんと出かけてくるからって言っただけなんだけど・・・」


「愛依!騙されちゃダメだ!!
こいつはこんな顔して平然とエロいことしてくる鬼畜な奴なんだ!!
気を抜いてるとスグおっぱい揉まれちゃうぞ!!羨ましいことに!!!」

愛依
「あ、あはは・・・お、おにいちゃんだってワザとやってるんじゃないと思うよ?」

優太
「おお、愛依・・・わかってくれるか!!
そうなんだよ!
何時も何時も不幸な事故が重なってそういう事態にになってるんだよ!」


シャーーーラップ!!
愛依が優しいからって事故に託つけて愛依を触り倒そうなんて私が絶対に許さん!!
お前に触られるくらいなら・・・今から私が触り倒してやるーーーー!!!



そう言うと背後から愛依の体に抱きつくと、奏は両手で愛依の体をまさぐり始めた。
と言うか完全に胸とか鷲掴みにしてた。
凄く目の毒だったので一応目を逸らしながら、


優太
「お、おい奏・・・あんまり愛依に変なことするなよーーー・・・」

愛依
「そ、そうだよ!
こ、こんなことしちゃダメだよカナちゃん!!」


「ふへへ、嫌がる愛依もカワ愛依なーーーーー!!」

愛依
「いや、そういう問題じゃなくて・・・!
あ、そこ・・・!抓っちゃダメ~~!!」


「て言うかまた愛依ブラジャーつけてないのか?
愛依のサイズでつけないと将来・・・」

愛依
わーーーーーー!!わーーーーーーー!!!



何か奏がもの凄くアレな発現をかました気がしたけど・・・
とりあえず聞こえなかったことにしておこうそうしよう。


優太
「と、兎に角行くぞ・・・駅から列車で行けるのか?」

愛依
「え、えっと・・・町への列車はここからだとあんまり来ないんだ。
今からだと歩いて行った方が早いと思うよ。」

優太
「そっか・・・じゃあ歩くしかないな。
あつそーーーー・・・」


「えーーーー・・・歩くの?うげ。」

優太
「何なら一人、海で遊んでてもいいぞ。」


「お前と愛依を二人っきりで行かせるくらいなら・・・!
私が太陽の元に晒されて灰になる方がマシだ!!!
ま、実際はダルくなる程度だけど!!」

優太
「いや、限り有る命は大事にしようよ。」







第四話「刀を求めて。。」







「暑い・・・」

優太
「それは夏だものーーー、暑いよーーー・・・」


「う、うっせーーー・・・そ、そういうことじゃなくて・・・
ま、マジで・・・と、溶ける・・・!」

愛依
「ほ、ほらカナちゃん、ダレてないで頑張って歩いて・・・!
も、もう少しで着くから・・・!!」


「いくら愛依の頼みでも無理だ・・・
も、もう歩けない・・・マジで溶けるーーー・・・」



奏は頭から湯気を上げ、その場に倒れこむ。
つばの広い麦わら帽子を被り、日傘までさし、愛依に団扇で扇いで貰っているのにも関わらず町を残り数歩と言う所で根を上げてしまう。
もう一歩も動けないと言った感じでその場に留まるものだから道行く人に奇異の視線を送られた。
優太は別に平気だが、傍で介抱している愛依の方が何だか恥ずかしそうだった。
優太は一つ溜息をつくと、掌に『魔力』を集める。
青い色をした『魔力』が少しづつ形を成していく・・・
拳大まで固まらせたソレを優太はハンカチに包む。
そしてソレを奏の首筋にあてがった。



―――――――ッ!!!!???
冷た!!!」



奏はスグサマ跳ね起きる。
そして優太の方を睨みつけると、



「テメ・・・イキナリ人の首筋に何当ててくれてんじゃーーーーーー!!!

優太
「いや、氷だけど・・・」


「マジふざけんなよ!!とっとと寄越せよ!!!」

優太
「ああ、やるからとっとと歩け。
オレは良いけど愛依が恥ずかしそうだろ・・・」


「あ・・・それもそうか。
ユータが辱めを受けるのはまるで構わないけど・・・
愛依を辱めるなんて私が許さん!!てかむしろ私が辱めたいです!!!

愛依
「あはは・・・ま、まあカナちゃんが元気になったなら良いんだけど。
それよりカナちゃん、おにいちゃんにお礼は?」


「は?何で??」

愛依
「おにいちゃんが作ってくれたんだよ?その氷。
ハンカチまで出してもらって・・・ちゃんとお礼はしないとダメだよ。」


「えーーー・・・、これくらいするのは別に当然というか・・・」

愛依
「カナちゃん・・・聞き分けのないこと言うと・・・
これから毎日カナちゃんのご飯に納豆付けます。」


べ!??い、いや・・・それは・・・そのーーー、い、嫌だっていうか?」

愛依
「じゃあちゃんとお礼しようね。」


「あ、ありがとうございました・・・」

愛依
「はい、よく言えました~~。カナちゃん偉いね~~。」



そう言いながら愛依は奏の頭を優しく撫でる。
奏は口元をニヤ付かせながら満面の笑みを浮かべていた。


優太
「さて・・・とりあえず着いた訳だが・・・。」



優太は周りを見渡す。
王都と違ってやはりそこまで大きな街ではないようだが、港と隣接しているからか旅人やらがわんさか居るようだ。
店の多くが海鮮物の品を並べており、そこら中から魚の匂いがする。
個人的にあまり得意な匂いではないのだが・・・
これはこれで雰囲気を満喫するには調度良い感じがした。



「お腹空いた・・・」

愛依
「そういえばお昼まだだったね。」

優太
「何なら何か食うか?調度オレも腹が減ってて・・・」


トマト料理!!!

優太
「またお前はそういうこと言う・・・
こういう港町に来てるんだから、こういう時は魚介系メニューをだな・・・」


「そういえば、この前約束した最高級トマト料理奢ってくれるってのをまだして貰ってない訳だが・・・」

優太
「そんな約束したっけな・・・」


「約束は破らないんじゃなかったのか?え?この前しっかり約束しただろ!!!」

優太
「いや、覚えてるけどさ・・・
そんな都合良く最高級トマト料理を出してくれるような店が・・・」

木村
「今だけ限定!!『サンライトハートメイトゥ』を使った料理を先着三名様までご注文承ってまーーす!!
ご注文はお早めに!!早い者勝ちですよーーーーーーー!!!」

優太
ご都合主義展開キターーーーーーーー!!!!!


「『サンライトハートメイトゥ』!??あ、あの伝説の・・・!?」

優太
「おっとここに来て伝説とか訳の分からない設定飛び出しましたーーーー!!」


「何でも、もの凄く太陽光を浴びて太陽の如き波紋を蓄えた奇跡のトマト!!
一口食べただけで吸血鬼を一瞬にして灰に変えてしまうという逸話さえある伝説のトマトだ!!!」

優太
「いや、まあそりゃあ太陽の波紋流れてたら吸血鬼は灰になりますよね。
てか、凄くピンポイントな伝説だな・・・」


「マジ食いたい!!
おい、ユータ!アレ食べよう!!!」

優太
「えーーー・・・?
だってお前、アレ食べて灰になったらどうするんだよ・・・」


「トマト食って死ねるなら・・・我が生涯に、一片の悔い無し!!!」

優太
「お前の人生本当にそれでいいの!??
まあ、まさか本当にトマト如きで死ぬ訳ないか・・・。
愛依、アレでいいか?」

愛依
「私は何でもいいよ、おにいちゃんとカナちゃんの良い物で決めて。」

優太
「決まりだな・・・すみませーーーん!!その料理三人前お願いしまーーーす!!」









エリス
「あれ、お昼を召し上がるのは皆様だけですか?」


「え、ああ・・・まだ外で遊んでいる人も居ますからね。」

千草
「海って遊ぶより観察することに意味があると思ってるからさ私・・・」

女将
「若いうちに遊んでおく方が色々と得だよ。
休める時に休む、これ鉄則さ。」

エリス
「他の方々の分はどうしましょう。」


「後で軽く摘める感じの物だけ持っていけばいいんじゃないですかね。」

エリス
「そうですね。今朝働けなかった分、ここで挽回します!!!」


「頑張るのも良いですけど・・・
一応休暇の一環で来てるんですからエリスさんも暇を見て・・・
いえ、暇を作って休んでくれていいんですよ?」

エリス
「優太様からも同じようなことを言われているので大丈夫です。
私も、明日からは少しづつですが暇をもらって骨休みします。」

千草
「それがいいよ。
人間なんだから適度に力を抜かないと死んじゃうからね・・・。」

女将
「それはあるね。
アタシも国王様直々の招待と聞いたから店のことは全部任せて来た訳だしね。
来たからには楽しまなきゃあ損ってもんだよ。」

千草
「あれ、そういえばユウ君は?」


「え、外に居るんじゃあないんですか?」

千草
「うんやーーー・・・ここから見た感じ浜辺には居ないね。
あ、ゼオラの奴がポロリ・・・」


「そんな取ってつけたような描写説明いらないですから・・・」

千草
「それもそうだねーーー。
あ、それを見てアラドが鼻血吹いて、それに対してゼオラが鉄拳を振るっている。
そして何故か良い雰囲気に・・・」

女将
「青春だねーーー・・・。」

エリス
「水着がポロリといくと・・・最終的に良い雰囲気になるものなんですか?」


「いや、確実に良い雰囲気にはならないので間違っても実行はしないでください。」

千草
「エリス水着持ってきたーーー?」

エリス
「いえ・・・今まで海と言う所に縁がなかったので持ってないんです。」

千草
バカ野郎!!!そのおっぱいは何のためについてるんだ!!?
ユウ君に見せつけるためじゃないのか!???

エリス
えぇ!!?み、見せ・・・!??」

千草
「エリスみたいな子が水着・・・!
尚且つビキニで四つん這いになって迫ったらユウ君もきっと喜ぶはずだ!!
否!!喜ばない方がおかしい!!!
だってそうなったら谷間とか、重力で垂れたおっぱいとか夢一杯で・・・!!」

エリス
「み、水着!?ビキニ!??四つん這い・・・!!??
それってどういった状況でするものなんですか!??
通常ありえない組み合わせな気がするんですけど!!!」

千草
「そういう状況に・・・男はハァハァ興奮するんだよ・・・。
もうそうなったらユウ君の手がエリスの体を優しく、時に激しく愛撫して・・・
初めて感じる、くすぐったさにも似た甘美な感覚にエリスはドンドン落ちていって・・・
グヘヘ妄想が波紋疾走するぜ!!」


「千草さん、まるでエロゲ廃人のようですよ・・・。」

千草
「いやーーー、すみません正にそのとうりです。。」


「はいはいそうですか・・・。
所で・・・それって本当に効果あるんですか?」

千草
「うーーーん・・・
一概にそうとも言い切れないけど、ユウ君だったら軽くノックアウトできるんじゃね?
普通にユウ君エロいから。」


「そうなんですか・・・時には色仕掛けもあり、覚えときます。」

千草
「お、レンチー行っちゃう!?
もしかしてユウ君にアタックかます気マンマン的な!?」


「そ、そんなつもりなんて無いですよ・・・。
今は、これくらいの距離感の方が安心できますし・・・」

女将
「でもあんまりトロトロしてると誰かに取られるかもしれないよ。」

千草
「おおっ!経験者は語る的な感じですね・・・」

女将
「まあ私は黙ってても男共の方から寄ってきたからね・・・。」

千草
「うわ、全く参考にならない経験話キターーーー。」

女将
「でも、狙った相手は確実に落としにいってたよ。
なんやかんやであの頃は若かったねーーー。
思えば、あの人と結ばれたのもこんな時季だったか・・・。」

千草
「そして昔語が始まった・・・これは長そうだ。
私は部屋で食べることにするぜ・・・みんな達者でな!!」


「そういうことなら私も・・・」

エリス
「え・・・それだと私だけ残るハメに・・・」

千草
「「あとはよろしく。」」

エリス
「えーーーー!!?こんな時だけ丸投げですか!???」









木村
「お待たせしました・・・
本日限定SUNライトハートメイトゥ波紋疾走スパゲティ(サンライトハートメイトゥオーバードライブスパゲティ)です。」

優太
「すいません。それただのナポリタンじゃないんですか?」

木村
「そうとも言いますね。会計はこちらになります。」

優太
「ん・・・?三つで・・・二万四千円!????
ひと皿八千円かよ!!!ナポリタンのくせに!!」



と、値段についてツッコんで居ると突如として視界の端に凄く眩しい光を感じる。
何かと思いそちらを向くと・・・
奏の目とか口とか耳の穴とかから物凄い光が溢れ出していた。
て言うか心なしか奏の体が溶けかけているようにも見える。



シュゴォォオオオオオオオ!!!!!!

愛依
わぁぁあああああああああああああ!!!
何かカナちゃんが溶け始めてるぅぅううううう!!!!」

優太
ぎゃああああああああああああああ!!?マジかよ!!
奏、今すぐ食べるのを止めるんだ!!何か色々不味いから!!」


ぐっふ・・・!!だ、大丈夫だ・・・
溶けそうになるくらい美味いってことだからな・・・!!」

愛依
「え、本当に大丈夫?さっき、目とか耳とか口から凄い光が迸ってたけど・・・」


「これくらいで私がくたばるわけないよ・・・
て言うかマジ美味いなこのトマト!!
流石は伝説のトマト!!溶けるくらい美味い!!!」

優太
「いや、実際太陽光で浄化されて溶けかけてましたからね・・・」


シュゴォォオオオオオオオ!!!!!!

愛依
「ほ、本当に大丈夫かな・・・
食べ終わったら居なくなってた何てないよね・・・大丈夫だよね、おにいちゃん。」

優太
「さ、さあ・・・何とも言えないが、とりあえず本人も大丈夫って言ってるし・・・」


シュゴォォオオオオオオオ!!!!!!

優太
「でも流石にコレはコレで周りの視線がキツイ気がしてきた。」





そんなこんなで終始、目耳口から光を迸らせていた奏だったが・・・
終わってみればなんて事ないように満足そうな笑みを浮かべているだけだった。
優太は会計を済ませると店を後にする。


木村
「ありがとうございましたーーー!」

優太
「マジで二万四千円取られた・・・マジありえねぇ、『サンライトハートメイトゥ』・・・!!」


「さあ!!お腹も膨れたし、とっとと用事済ませて帰ろうぜーーー!!」

愛依
「カナちゃんご機嫌だね。」


「ああ、本当に美味しかったからな。
ユータ、奢てくれてありがと!!美味しかったぞ!!」



普段の無愛想な奏と同一人物とは思えないくらいの笑顔を浮かべながら礼を言われる。
大事な何かを浄化されたんじゃないかと内心心配になったが、嬉しそうな奏を見てると不思議とどうでもいいと思えた。
本当は、奏もこういう女の子らしい所とかがあるんだなと、改めて思った。


優太
「・・・まあ、お前が満足してくれたなら良いんだけどさ・・・」


「で、どっちに行ったらいいんだ?」

愛依
「うん、目的の鍛冶屋さんはあの丘の下に・・・」



その言葉を最後まで言うことなく、愛依の視線はある一点で止まった。
優太と奏は愛依の視線の先、丘の上にある小さな教会に視線を向けた。
その教会は年季が入っているのか、所々が黒く煤けているように見えた。


優太
「愛依、どうした?あの教会がどうかしたのか?」

愛依
「えっ!??
あ、ううん!!な、何でもないよ!」


「・・・。」

優太
「とりあえず丘の下、丘の下・・・
あ、もしかしてあの煙突のあるレンガ造りの家か?」

愛依
「うん、そうだよ。早く行こう!」



そう言うと愛依は一人、足早にその家へ向かって走り出した。
まるで何か思い出したくない何かから逃げるように。
優太と奏はお互いの顔を見やるも黙って愛依の後を追った。






キィ。


扉を開け、中に入るともの凄い熱気が中から外へ流れ出た。
中は完全な密閉空間で、風が一切入っていないようだった。
外も相当の暑さだが、ここはそれ以上に暑く感じる。
愛依はカウンター奥に向かって声をかける。


愛依
「ダイヤおじさーーーーん!!!居るんでしょ!?」



『誰だ馴れ馴れしい!!!
今仕事中だ!!後にしろ!!!』



愛依
「私だよ、ウイだよ!!仕事の依頼で来たの!!」



『ウイ・・・ウイちゃん!!?ちょ、ちょっと待ってろ!!!』


ドタドタともの凄い足音が響いたと思うと、奥から中年くらいの男が顔を出した。
肥満気味と言う訳でもないが、お腹がポッコリ出ている小太りの男だった。
男は愛依を一瞬見やると、目を微かに潤ませながら


ダイヤ
「ウイちゃん、本当にウイちゃんか・・・!!お、大きくなったな・・・!」

愛依
「うん、そりゃあアレからもう六年だもん・・・」

ダイヤ
「六年・・・そうだな。
あの放火事件からもうそんなに経つんだな・・・。
そりゃあ大きくもなるな~~。」

愛依
「え、放火?」

ダイヤ
「そうか、ウイちゃんが勘当された後の話だからね・・・」

愛依
「勘当・・・?」

ダイヤ
「お父さんに勘当されたんだろ?きっとその罰があたったんだ・・・
こんないい子を勘当するから、放火事件なんかに巻き込まれて・・・」

愛依
「お、おじさん・・・その話、詳しく聞かせて!!」

ダイヤ
「別にいいが・・・
マイさんが言うにはお父さんとお母さんを殺して金品を奪っていった挙句、家を燃やされたらしい。」

愛依
「そんな風に、隠したんだ・・・」

ダイヤ
「え?」

愛依
「ううん、何でもないよ。こっちの話・・・」

ダイヤ
「ところで、マイさんにはもう会ったのか?
ウイちゃんのこと一番心配してたんだよ?」

愛依
「え、えっと・・・
こ、これから会いに行こうかなとは思ってるけど・・・」

ダイヤ
「会った方がいい良いぞ。
たった一人の家族じゃないか・・・」

愛依
「うん、分かってる。
それより、仕事の依頼なんだけど・・・」

ダイヤ
「あ、ああ。で、何の依頼だ?」

優太
「用があるのはオレなんだ。」

ダイヤ
「誰だお前・・・」

愛依
「あ、『外界人』何だけど・・・優太おにいちゃん。
私の今住んでる家の家主さんなの。」

ダイヤ
「なるほど・・・そこら辺は後で詳しく聞くとして・・・
何でオレに依頼を?誰かの紹介か?」

優太
「アルヴィスって人からの紹介だ。
この町に居る鍛冶師なら、いい刀を作ってくれるって言われたから来たんだ。」

ダイヤ
「アルの奴の紹介か・・・ふん、まあ良いだろう。
で、どんな刀が欲しいんだ?」

優太
「なるたけ頑丈で・・・良く斬れるのが良い。」

ダイヤ
「無茶苦茶な奴だな・・・硬さと鋭さはまるで正反対の場所にある要素だぞ・・・。
二つとも満たすとなると相当希少価値の高い素材がいる・・・」

優太
「素材は・・・コレで頼む。」

ダイヤ
「ん?コイツは・・・!!
ど、どこでこんなの手に入れた!?龍素材じゃないか!!」

優太
「見て分かるのか?」

ダイヤ
「見れば分かるわ!!コイツから立ち込める力の波動・・・並大抵の力じゃない!
こんな力強い波動を出せるのは龍素材しかありえん!!
何十年と鍛冶師やっとるから分かる。」

優太
「それなら話が早いや。
それで作れる最高の日本刀を作ってくれ。
金は・・・あんまり無いけど・・・」

ダイヤ
「金か・・・そんなの要らん。」

優太
「は?」

ダイヤ
「こんな希少価値の高い素材を使って仕事をさせてもらえる・・・
それだけでオレの名が上がるってもんだ!!
代金は要らねぇ!!是非オレに一本作らせてくれ!!!」

優太
「そう言ってもらえると助かる!
オレも予想外に昼食代が高くついて手持ちが無くてさ・・・」

ダイヤ
「できるだけ急ぐが・・・早くても一日はかかるぞ。」

優太
「そんな早くできるの!??
精錬とかってもっと時間かけてやるもんだろ・・・」

ダイヤ
「もうそんなアナログな時代ではない。省ける場所は省く・・・
しかしそれでいて従来よりも優れた物を創りだす、それが今の時代に生きる鍛冶師の仕事よ。」

優太
「そ、そんなものなんだ・・・」

ダイヤ
「超特急でやれと言われれば今日中にできるが・・・」

優太
「あ、良いです。
できるだけゆっくり作ってください・・・何かこっちが心配になるんで。」

ダイヤ
「そうか・・・。
なら明日の今頃にはできてるから取りに来い。」

優太
「分かった。じゃあ、頼むな。」

ダイヤ
「任せておけ。」







優太
「まさかそんな早く完成するとは・・・
一週間くらいは待たされるものだと思ってたが。」

愛依
「ダイヤおじさんは早くて良い仕事するで有名だから・・・」


「しかし一日できるのは早すぎやしないだろうか。
個人的には一抹の不安を隠しきれないんだが・・・
ま、ユータの問題だから最終的にどうでもいいんだけど。」

優太
「それはまあ、明日になれば分かることだろう。
それより・・・愛依、マイさんってのは?」

愛依
「え?」

優太
「さっきダイヤって人が言ってたじゃないか・・・
マイさんって家族がいるんだろ?会いに行かなくて良いのか?」

愛依
「あ、えっと・・・それは・・・」

優太
「居るとしたら・・・あの教会かな。」

愛依
「な、何で・・・?」

優太
「愛依、あの教会見てから様子がおかしい。
それに、さっきからずっと教会の方を気にしてる風に見えるがな。」


「愛依・・・私も今回ばかりはユータの言いたいこと分かる気がするぞ。
会いたいなら会って来ればいいじゃないか。」

愛依
「・・・・・会えないよ。だって、私は・・・」

??
「ウイ?」



そんな時だった・・・
後ろから愛依の名を呼ぶ声が聞こえたのは。
愛依はその声にスグに反応する。
そしてその声の先に居た人物へ、何とも言えない表情を浮かべている。
それは、しまったとか、そういう会いたくなかったかのような感情が見え隠れしている。
優太と奏は一瞬遅れて声の方向を見やる。
そこには20そこそこの年齢と思われる女性が立っていた。
黒い修道着に身を包んで居る辺り、教会に住んでいるシスターさんなのだろうか。
シスターは愛衣を見つめながら


??
「ウイ?ウイでしょう?」

愛依
「あ、う・・・・」

優太
「愛依?」


「ど、どうしたんだ・・・愛依?」

??
「ウイ・・・やっぱりウイなのね!!ウイ!!!」



シスターは愛依に向かって駆け寄ってくる。
愛依は一瞬、後ろに退きかけたがスグにそれを止めた。
愛依を抱きしめ、愛おしそうにその後ろ髪を撫でる。
その姿は、傍目から見ても感動の再会に見えた。


優太
「あ、あの・・・失礼ですけど、どちら様ですか?」

??
「はっ!!私ったらつい・・・失礼しました。
私、丘の上の教会を預かっているマイ・ハレヴィと申します。」


「え、という事は・・・も、もしかして愛依のお、お姉様?」

マイ
「はい、ウイは私の・・・たった一人の妹です。」

愛依
「・・・・・・」







第五話「瑠依。。」






由紀
「おお、流石は港町・・・新鮮な海の幸が多いね。」

エリス
「そうですね。
でも朝早く来た方がもっと良い物が買える、とさっきの人は言ってましたけど・・・」

由紀
「それなら明日は朝早くから来てみる?」

エリス
「それはいいですね!
そしたら優太様に新鮮な魚をお出しできますね。」

由紀
「あーーーー、こういう事言うの何だけど・・・
優太、魚苦手だよ?」

エリス
えーーーーーーーっ!!?
い、今まで魚料理を作っても美味しそうに食べてくれてましたよ!?」

由紀
「かなり頑張って食べてたんだよ・・・。
まあ、食べられないほど嫌いって訳でもないから大丈夫だけど・・・」

エリス
「それだと、夕飯のメニューを変えた方が・・・」

由紀
「ああ、大丈夫大丈夫。
優太用にちゃんとメニューは考えてあるから。」

エリス
「由紀さんは凄いですね。
ちゃんと優太様のこと理解していて・・・」

由紀
「えーー?ちょっとエリスより長い間一緒に居るからだよ。
エリスだって、スグにこれくらい気を使えるようになるって。」

エリス
「そうでしょうか・・・
優太様は好き嫌いとかあまり言われないので・・・
何でも食べられると思ってました。」

由紀
「うーーーん、まあ私がこっそり苦手な物を除けて渡してただけなんだけどね・・・」

エリス
「そ、そうだったんですか!?」

由紀
「あーーーー、まあ優太も人並みに嫌いな物あるからね。
食べられなくても問題ない物が大半だから大丈夫だったりするけど・・・」

エリス
「そ、その・・・由紀さん。
優太様の苦手な物、後で教えていただけませんか?」

由紀
「うん、いいよ。
優太のことなら何でも聞いて!」

エリス
「まるで優太様のお母様のようですね。」

由紀
「え、ごめん・・・せめてそこは、
『流石はこの作品のメインヒロイン!!もの凄い正妻オーラです!半端ねぇです!!』
とか言って欲しいんですけど・・・」

エリス
「あ・・・それと、由紀さん・・・」

由紀
「ん、なに?(渾身のボケを流された・・・)

エリス
「水着が・・・欲しいんですけど、一緒に選んではいただけませんか?」









教会の中はやはり閑散としている物で、特に今は誰も居ないからか静かなものだった。
優太達はマイに連れられ、教会まで来ていた。
談話室に通され、適当にソファーに腰掛ける。
談話室と言っても、どこぞの隣人部とは違い不要な物はまるで無いシンプルな物だった。
間違ってもテレビとかげ~む機は無いし、残念そうな人間など居やしなかった。
そんな時、お茶を持ってマイが帰ってくる


マイ
「すいません、何も無い所で・・・」

優太
「いえいえお構いなく・・・
おい、愛依さっきから黙ってどうした?」


「お腹でも痛いのか?
もしかしてさっきの料理気に入らなかったのか?」

愛依
「ううん。そんなことないよ・・・
ごめん、私・・・ちょっと外出てくるね。」



そう言うと愛衣はさっさと立ち上がって扉の方に向かうと一目散にその場を立ち去ってしまう。
優太と奏ですら唖然とするような事態である。
マイからすれば気分を害してしまったかもしれない。
が、


マイ
「ウイは、元気でやっているんでしょうか?」

優太
「え、あ、ああ・・・それはもう、問題ないですよ。」



なんて事ないようにマイは振舞う。
まるで、こうなる事が分かっているかのようだった。
優太は軽く奏を小突く。


優太
「奏、愛依を追いかけないのか?」


「追いかけたいけど・・・
それ以上に今は、お姉様と親交を深めておきたいかな!!!」

優太
「へぇ・・・なんでまた?」


「いや、ポイント稼いで気に入られれば愛依との交際を認めてくれるかと思って・・・」

優太
「凄く不純な理由だなオイ・・・」


「それに・・・
ああいう時にはあまり他人がどうこう言うべきじゃないんだよ。」

優太
「え?」


「とにかく、今はお姉様から事情を聞こう。
何か愛依について聞けるかもしれないしさ。」

マイ
「それで、気になってたんですけど・・・」

優太
「あ、はい。なんでしょう・・・」

マイ
「ユウタさんは、ウイの彼氏さんなんでしょうか?」

優太
「いや、違いますが・・・強いて言うと、義理の兄です。」


「どちらかと言うと、私が愛依さんの彼氏兼彼女ですが・・・」

マイ
「ふふふ、ウイは面白いお友達ができたのね・・・良かった。」


「おいユータ、これはもしかして好感触なんじゃないか?
このまま行ったら結婚とか認めてもらえたりして・・・」

優太
「お前ちょっと黙ってろ・・・」

マイ
「あの子は・・・私について、何か言っていましたか?」


「素晴らしいお姉様だと伺ってます!!!」

マイ
「それが本当だったら・・・どれだけ良かったんでしょうね。」


「い、いえ・・・!そんなこと・・・!」

マイ
「あの子の態度を見れば分かります。
あの子は、まだあの事を引きずっているんですね・・・」

優太
「あの事?」

マイ
「やはり聞いてませんでしたか・・・」

優太
「な、何があったんですか・・・
何でも良いんです、教えてくれませんか?
オレ、これでも義理の兄なんで!
妹が何かに悩んでいるなら、力になってやりたいんです!!」

マイ
「・・・・・・私からは、何も言えません。
あの子が話したがらないのなら、知られたくないと思ってるんだと思います。
それを私が言うのはお門違いだと思うんです。」

優太
「そう、ですか・・・」

マイ
「でも、私はあの子を本当に愛しています。
あの子がここを出て行ってからの六年間、一日だってウイを忘れた日なんて無かった・・・
大きくなったあの子の元気な姿を見れただけで、私は満足です・・・」

優太
「本当にそれだけでいいんですか?
愛依に事情を話せばきっと・・・」

マイ
「いいんです。
あの事で傷ついているとしたら私じゃなくてあの子なんです・・・
ユウタさん、カナデさん・・・あの子を、ウイをどうかよろしくお願いします。」

優太
「・・・・・・」



それっきり、優太も奏も何も言えなくなってしまう。
お茶を飲み干してから、二人は軽く挨拶をしてからその場を去った。
これ以上ここに居ても、何も進展などしないと思ったからだ。
二人は愛衣が待つであろう外へと歩みを進めた。








ドレイク
「は?ロザリオ、ですか?」

カリスト
「ええ・・・六年前でしたか・・・
売買の契約を済ませていた品があったのですが・・・
その受け取りをしに行って来て下さい。」

ドレイク
「そのロザリオに何か特別な力でもあるのですか?」

カリスト
「それ事態に意味などありませんよ。
必要なのは中身です。」

ドレイク
「・・・何が入っているのです?」

カリスト
「何でも良いじゃないですか・・・
まあ、正直な話そんな物には何の興味も無かったんですよ。
興味があったのは、それと一緒に手に入るはずだった少女の方だったんですがね。」

ドレイク
「ほう、貴方が興味を示すような少女ですか。」

カリスト
「何でも、雷の『魔力』を扱う事のできる少女らしいんですよ。
しかも、かなり高位の力を行使できるとか・・・
少なくとも、私の興味を引くには十分なレベルの、ですよ。」

ドレイク
「確かに・・・雷など聞いた事がない。
かなり珍しい部類に入る『魔力』ではありますね。」

カリスト
「この世にはの四属性以外にも伝承のみですが・・・
・・・そしてと呼ばれる『魔力』が存在しています。
今までにも何人か雷の『魔力』を持った人物を手に入れた事もありましたが・・・
どれも実験できるほどの強い力を持っていなかったんですよ。」

ドレイク
「・・・既に失われかけている力なのかもしれませんね。」

カリスト
「そのとうりです。
ですから、高位の雷魔術を行使できると言う彼女は絶好のサンプルと言うわけです。
術者の脳内を調べれば少しはその力の解明が進むでしょう。
そうすれば人工的に雷の『魔力』を生成する事も可能かもしれません。」

ドレイク
「なるほど。
それで、私にその二つの回収を頼みたい、と?」

カリスト
「端的に言うとそのとうりです。
ロザリオの方はまだ教会にあると思います。
ですが、少女の方は手がかりがありません。
自力でどうにかしてもらうしかありませんね。」

ドレイク
「とりあえずその少女の名前は分からないのですか。
それだけでも探す手間が省けるのですが・・・」

カリスト
「六年前の話ですからね・・・
確か、ウイとか言いましたかね。」

???
「おい、カリスト!!この血全然上手くねぇぞ!!」



暗闇の向こうからそんな声が聞こえたかと思うと、そこから現れたのはとても目つきの悪い男だった。
銀色の髪を後ろで三つ網にした、瞳が紅く煌めいた男がズカズカとこちらに歩み寄ってくる。
さらにその身には、裾のボロボロになった黒いマントを羽織り、きわめ付けにその口元からは鋭い犬歯が覗いている。


ドレイク
「カシム・・・居たんですか。」

カシム
「ドレイクか・・・
お前仕事があるとか言ってなかったか?」

ドレイク
「今から行く所ですよ。」

カシム
「遠いのか?」

ドレイク
「遠くても関係ないでしょ?
この力があれば・・・」

カシム
「そういやーーそういうのもあったな・・・。」



カシムと呼ばれた男は怪しく微笑むとその犬歯を見せつけながら、


カシム
「ちょっくらオレも連れて行けよ。
どうせなら人間の血が飲みたかった所だからな。」

ドレイク
「はぁ・・・別に構いませんが。
良いのですか?『吸血鬼』のあなたは日の光が苦手ではないのでしたかな?」

カシム
「はっ!!一体全体、何世代前の吸血鬼の話をしてるんだよ・・・
オレは既に太陽の光で灰になるような前時代的な『吸血鬼』とは違う!!
まあ、ダルくはなるけどな。」

ドレイク
「克服できてないじゃないですか・・・」









教会の外に出るとそこには愛衣が柵に寄りかかるようにして眼下の町を見下ろしていた。
特に何かをするでもなく、黙って一点だけを見つめているようだ。
優太はそんな愛衣に軽く声をかける。


優太
「愛依、大丈夫か?」

愛依
「あ、おにいちゃん・・・カナちゃんも・・・」


「どうしたんだよ、愛依。
何か様子がおかしいぞ?」

愛依
「ちょっと・・・嫌な事思い出しちゃって・・・」

優太
「・・・・・」


「そっか・・・
私は愛依に何があって、どうしてお姉様を避けているのか分からないけど・・・
何か力になれることがあったら言って欲しいな。
その・・・友達じゃないか、私達。」

愛依
「カナちゃん・・・
ありがとう、心配してくれて。」


「い、いや・・・別にたいした事無いよ・・・。」

優太
「なあ、愛依・・・」

愛依
「ん?なぁーに、おにいちゃん。」

優太
「マイさん・・・愛衣のこと凄く心配してたぞ。」

愛依
「うん、分かってるよ?」

優太
「いや、分かってないよ・・・
分かってるなら、何であんな素っ気ない態度取るんだ?」

愛依
「それは・・・」

優太
「マイさん言ってたぞ・・・
愛衣のこと、今の今まで一日だって忘れた事ないって・・・
これがどういう意味だか、分かるよな?」

愛依
「・・・・・・・うん。」

優太
「じゃあ、やることは分かってるよな?」

愛依
「分かってる・・・分かってるけど・・・
でも、やっぱり・・・私にそんな資格無いよ。」

優太
「資格?資格って何だよ・・・」

愛依
「私は、おねえちゃんから大事な人達を奪ったの・・・
自分の意思と関係無かったとは言え、私がこの手で奪ったことに変わりなんて無いの!!!」


「え・・・?」

優太
「どういう、ことだ?」

愛依
「・・・・・・ごめん、これ以上は・・・が話すよ。」



言葉の途中から人が変わったように口調が変わった気がした。
さっきまで伏せ気味だった顔が上がる。
そこには愛依の顔をした、何か違う誰かが居た。
具体的に言うと、雰囲気が完全に違う。
全身から感じる愛依とは思えないような『魔力』を感じた。
普段から温和で引っ込み思案な愛衣は『魔力』をこんな他人に分かるほど体から漂わせたりしない。
そしてきわめつけに、愛依の瞳の色が左右異なる色に染まっている。
右が赤、左が青色をしている。
いわゆるオッドアイという奴だ。
カラーリング的にも中学生が好きそうな配色である。


愛依?
「で、ユウにいと奏は愛衣の何が知りたいんだい?」

優太
「は?いや、て言うか・・・
お前、誰だよ・・・」


「そ、そうだ・・・愛依はどうしたんだよ!!
あ、でも愛依が演技してるとか?」

愛依?
「もっともな質問だね・・・その質問の答えは簡単だよ。
私は、愛依のもう一つの人格・・・
紛らわしいから一応、愛依は私のこと瑠依って呼んでるよ?」

優太
「るい?」


「何か胡散臭いな・・・」

瑠依
「信じてよ奏ーーー。
私達友達でしょーー?」


「ふざけるな・・・私の友達は愛依だ・・・。
お前みたいな奴じゃない。」

瑠依
「あら、残念・・・。」

優太
「で・・・
その瑠依さんがオレ達に何を教えてくれるんだよ。」

瑠依
「そうだねーーー・・・とりあえず何でも聞かれれば答えるよ?
あの子、こういったこと話したがらないからさ・・・」


「とりあえずお前のことをもう少し詳しく聞かせろ・・・
話はそれからだろ。」

瑠依
「うーーーーーん・・・
具体的に言うと、美魚と美鳥みたいな関係かな。
実際はあそこまで変な関係じゃないけどねーーー。」

優太
「ネタバレ乙。」


「は?意味不明だぞ・・・」

優太
「今度リトバスのBlu-ray買うからそれを見ろ。」


「アニメネタかよ・・・」

瑠依
「正しくはPCげ~むネタでーーす。。」

優太
「で、その美鳥モドキさんは何でオレ達に愛依のことを話したがるんだ?」

瑠依
「あの子の理解者になって欲しいから。」


「な、何かエロい響きだな・・・」

優太
「お前の脳内誤変換も大分末期だが大丈夫か?」

瑠依
「あの子はね・・・父親と母親を殺したんだよ。」

優太
「「は?」」

瑠依
「まんまの意味だよ。
まあ、殺したのは私だけど・・・」


「おま・・・っ!!ふざけるのも大概にしろ!!
それ以上バカげたこと言うならこの場でその舌たたっ斬るぞ!!!」

瑠依
「できないことは言わないほうがいいよ奏ーーー・・・。
この体は愛依の体なんだよ?
それってどういう意味だか、ちゃんと分かるよね?」


「このっ・・・!!!」

優太
「待て奏・・・!そんな安い挑発に乗るな・・・。」


「だって・・・!!コイツ愛依を人質に取ってるようなものだぞ!??
そんな相手にこれ以上愛依の体を好き勝手させられるか!!!
むしろ私が好き勝手したいよ!!!

優太
「お前もシリアスっぽい空気の中でそういう自分の願望挟むの止めろ!!
空気壊れる!!!」

瑠依
「ははは!やっぱりユウにいも奏も面白いね。
ずっと愛依の中から見てるだけだったけど、生で見るとやっぱり違うなーーー。。」

優太
「お前もお前でシリアス発言後におちゃらけるの止めろ・・・
もう完全に台無しだ。」


「とりあえず・・・
アイツが愛依と同一人物だけど、別人格の胸糞悪い野郎だってことは分かった。」

瑠依
「ま、今はそれで十分かな。」

優太
「で・・・お前が愛依の親を殺したとかって言う話は?」

瑠依
「ああ・・・ついカッとなってやった、でも後悔はしてない。」


「お前ふざけんじゃねぇ!!
そんな理由で命を奪って良いと思ってんのか!?」

瑠依
「じゃあ・・・ちゃんと理由があったら命を奪うのもアリなの?」


「状況にもよるかな。」

優太
「って何を納得しとるか!!ダメに決まってるだろ!!!」

瑠依
「今回の話は、そんな感じの話なんだよ。
私は愛依で、愛依は私だから私には愛依を守る義務がある・・・
だから、愛依に危害を加えようとする奴らは・・・
例えそれが血の繋がってない親だろうが何だろうが容赦しない・・・。」

優太
「また気になるワード飛び出してきちゃったよ・・・
で、結局何があったって言うんだよ・・・」

瑠依
「少し、いや・・・結構重い話になりそうだから・・・
とりあえず次回に続く!!!!!

優太
「「衝撃のオチキターーーーー!!!!!」」









第六話「遠雷の記憶。。」






私たちは別に何てことのない家庭で育った。
あえて違いがあるとするなら・・・
血が繋がってないと言うことだろうか。
私はお父さんとも、お母さんとも血の繋がりが無い。
詳しい事は子供だったからなのかよく覚えていない。
でも、それでも私は満足していた。
例え血が繋がっていなくとも・・・本当の家族みたいにお父さんもお母さんも接してくれていたのだから。
私には三歳上のおねえちゃんが居る。
おねえちゃんは優しくて、私が何かを壊しても私を庇って代わりに怒られるなんてよくあった。
それでも、おねえちゃんとは仲が良かった。
失敗ばかりする私を、血の繋がりも何も無いそんな私を、本当の妹みたいに優しく相手してくれた。
そんな普通じゃない部分もありながらも、私はその家庭で満足のいく生活をおくれていた。
そう、あの日までは・・・






アレはそう・・・夏の昼下がりだった。
遊び疲れて帰ってきた私は水浴びでもしようと着替えを取りに家に帰ってきた時のこと・・・
自分の部屋から着替えを持って外へ出ようとした時、ふと談話室の扉が開いていることに気づいた。
家では扉を開けっ放しにしていると怒られた。
私も昔から散々やっていたので身に染みていたのか、スグに閉めに行くことにした。
自分がやった訳ではないが・・・これでまた、おねえちゃんが怒られるのも嫌だったのだ。
扉を閉めに傍まで寄って行った時、中から聞いた事もない声が聞こえた。


『これは前金です。』
『・・・・・』
『これでは不服ですか?
では、これでどうでしょう。』



何のことだかはまるで分からなかったが、私は恐る恐る中を覗き見た。
そこには黒いコートに身を包んだ男と、お父さん達が居た。
テーブルの上には見た事もない量のお金が置かれている。
お父さん達はお金を見つめながら・・・


『い、いくら積まれても・・・譲る訳にはいかない!』
『そうですか・・・これでも不満ですか。
では、これでも考えは変わりませんか?』



男はコートに手を突っ込むと机に置かれている量と全く同じ量のお金をさらに置いた。
お父さん達の目の色が、変わった気がした。


『何ならまだ出せますが・・・財政難でお困りなのでしょう?
娘さんに満足にご飯も食べさせてあげられないと、以前話していましたよね?』

『だ、だが・・・!』
『あなた・・・!もう変な意地張らなくてもいいじゃない!!
マイを生かすには、こうするしかないのよ!!!』

『な、何を言うんだ!!
そのためにウイを売るなど!!』



何を言っているのだろう・・・
私を、売る?
何で?どうして?血が繋がってなくても、私達は家族だって・・・そう言っていたのに?
アレは、嘘だったの?


『こちらとしてもあまり時間が無いのでね・・・
できるなら早めの決断をお願いしますよ。』



そう言うと男は立ち上がる。
そして部屋を出るために扉へ向かってくる。
私はとっさに物陰へ隠れた。
男はそのまま立ち去っていった。
お金だけを机に残して・・・
そして・・・


『ねぇ、あなた・・・』


お母さんが切り出した。
私はどうする事もできず、ただその場に座り込む事しかできない。


『もう、無理なのよ・・・
これだけあれば何年かは食べるに困らないわ。』

『食べ物ならダイヤ辺りに分けて貰えばいい。
お金なら、これからどうにかする・・・』

『いつまでそんな綺麗ごと言ってるの!!
あなただって分かってるんでしょ!?
これ以外に道は無いって!!』

『しかし、しかし・・・!!』
『私達の娘はマイだけでしょ!!?
あんな捨て子一人と家宝を手放すだけでマイを守れるなら・・・!!』



捨て子?
やっぱり私は・・・
本当の家族じゃないってこと?






その後の事はよく覚えていない。
気付くと私は部屋のベットで横になっていた。
もしかしたらアレは夢だったのかもしれない。
そう思うことで現実から逃げたのかもしれない・・・
私は身を起こす。
が、何故か眩暈がして姿勢を保てない。
私は再度ベットに倒れこむ。
眩暈だと思ったが、今は頭が痛む。
ズキズキとではなく、どちらかと言うとガンガンと言った感じだろうか。
まるで、頭の奥から何かが出てくるような・・・
そんな奇妙な感覚だった。


『あんまり現実逃避は良くないと思うよーー、ウイ?』


そんな声が聞こえる。
部屋を見回すも、誰も居ない。
不思議に思いつつも、問い返している自分が居た。


『誰?』


『私か?私は今、ウイの中から語りかけているんだよ。』


『私の中から?あなたは、一体・・・』


『私はルイ・・・もう一人のあなただよ、ウイ。』



コンコン。。


その時、部屋の扉をノックする音が響く。
私は咄嗟に扉の方向を向き、


『は、はい!誰?』


「おねえちゃんよ、ウイ・・・。
入ってもいい?」



『いいよ、入って。』



そう言うとおねえちゃんはスグに入ってくる。
そして心配そうにベットに寄ってくると、


『どうしたの?大丈夫?』
『う、うん・・・平気・・・。
ちょっと眩暈がしただけなの。』

『え、本当に大丈夫?
もうすぐお夕飯だけど・・・食べられそう?』

『き、今日は要らない・・・このまま寝るよ。』
『そう・・・。ねぇ、ウイ・・・』
『なに?おねえちゃん・・・』
『・・・・・ごめん、何でもないわ。』



それだけ言うとおねえちゃんは踵を返し、扉の方へ歩を進める。
部屋から出る直前、こちらを見ると申し訳なさそうに口だけ動かした。
何故か、『ごめんね』と・・・言われたような気がした。




『ウイ・・・最初に言っておくけど、アレは夢じゃないよ。』


『アレ?』



その後、私は声の主、ルイと名乗るもう一人の自分と話していた。
あの時は、心が不安定になっているから聞こえる幻聴か何かだと思っていたのだろう。
私はその声の話を素直に聞いていた。


『お父さんはまだ良いとしても・・・
お母さんの方はウイを売る気満々みたいだよ。』



『な、何言ってるの?
アレは私の夢で・・・お父さんもお母さんも・・・』


『夢じゃないって言ったよね?
多分、お母さんはスグにでもウイをあの男に引き渡す気だよ。
あの後、お母さんが男を追いかけて話をつけているのを聞いたから・・・』



『う、嘘・・・!そんなの嘘だよ!!
何であなたがそんなこと知ってるのよ!!』


『それは・・・ウイが心を閉ざして意識失ったから代わりに私が出て行動したからだよ・・・』


『嘘だ!!そんなの、そんなの・・・嘘だよ!!!』


『嘘じゃない!聞いてウイ!逃げなきゃ駄目だよ!!
今夜にもアイツらがウイを連れ去りにくる!!』



『嫌!!何も聞きたくない!!全部デタラメよ!!!!』


『本当なの!!
ここから逃げないと何をされるか分かったものじゃないよ!!!』



『うるさい!!私は、私達は家族なんだもん!!
血が繋がってなくても・・・家族だって!!そう言ってくれたんだもん!!
だから、私を見捨てたりなんて・・・!!!』



コンコン。。


ノック音。
スグに声が聞こえてくる。
この声は、


「ウイ?いいかしら?」


お母さんだった。
ウイは助けを求めるように扉を開け放った。
そこに・・・お母さんの後ろに黒いコートを着た男が居ることも知らず。


『え?』


ウイの思考が止まったのが分かった。
ウイは無意識に後ずさる。
その後を追うようにお母さんが詰め寄る。
ウイの両肩を掴むと、お母さんは言った。


『ウイ・・・あなたはコレからこの人と一緒に違う家で暮らすのよ。』


そう言い放った。
お母さんの眼はもう光を失い、死んだ魚のような黒く濁った色をしている。
ウイはもう何が何だか分からなくなり、ただ震える事しかできない。
本当は、「どうして?」とか、「嘘だよね、お母さん!」とか言いたい筈なのに・・・
恐怖と不安がウイの口を塞いだ。
ただウイの眼から涙が零れ落ちる。


『何も不安に思うことは無いわ・・・
この家に居るより快適な暮らしができるの・・・あなたの為なのよ?
お母さんはあなたの幸せを願っているのよ・・・ウイ?』



何も考えられなくなっているウイをもう見ていられなかった。
私は、ウイの心を引っ込めると自分の心と入れ代える。
ウイの心に触れただけでウイの気持ちが全部流れ込んできた。
裏切られた事のショックで心に大きな傷ができてしまっていたのだ。
その痛みも苦しみも・・・全ては・・・


『お前の、せいだ・・・!!』
『え?』



バリッ!!


青白い閃光が瞬く。
お母さんの腕目掛け、強烈な電流を放った。
瞬間お母さんの腕が私の肩から吹き飛ぶ。


『ぎゃああああああああああああああ!!!!???』


悲痛な悲鳴を上げその場にうずくまる。
電流を喰らった腕には凄まじい火傷痕ができている。
それで済んだだけまだ良いだろうと個人的には思った。
私は、黒コートの男へ視線を向ける。


『こ、これが雷の力か・・・!!』
『ウイに手を出すな・・・もし、抵抗するって言うなら・・・』



私は一瞬だけお母さんの方へ視線を向ける。
そして再度男へ視線を向き直すと睨み返した。


『ぐっ!!』
『悪いけど、お母さんだからコレで済んでるけど・・・
お前は赤の他人だ。
手を抜いてやる義理は無い・・・
殺されても、文句言うなよな。』



黒コートの男はスグに逃げ出した。
見た感じ戦えるタイプでは無さそうだったのもあるが・・・
私の力について知っているのなら下手に戦うのがどれだけ危険かを知っているからの行動だろう。
私はもうこの家に居られない。
もう、ここにウイの居場所などない。
部屋を出て、階下へ向かおうとした時・・・


『ウイ!!!!!!!!』


そんな声に呼び止められる。
それはお母さんだった。
手にはどこに隠し持っていたのかナイフを持っている。
それを私に向けると、


『親に手を上げるなんて何て子だ!!
今まで育ててやった恩も忘れて!!!』

『ウイを売ろうとしたくせに・・・今更、母親面?
笑わせるないでよ・・・』

うるさい!!
元はと言えばお前が全部悪いんだよ!!!
あんたが居たせいで、マイに満足のいく生活をおくらせてあげられなかったんだ!!』

『じゃあ明日からは、ウイを売ったお金でおねえちゃんを幸せにしてやってよ・・・』
『言われなくてもそうするわよ!!
あんたなんて・・・あんたなんて拾わなければ良かったのよ!!!
あの時、見捨てて見殺しにすれば良かったんだ!!!



そう言うとお母さんがナイフを持ったままこちらに向かってくる。
一種のパニック状態なのだろうか・・・
正常な思考をしていないのは分かった。
でも、それでも・・・向かってくるなら・・・
ウイをこれ以上傷つけるって言うなら・・・!


『例え、相手が母親だろうと・・・容赦なんてしない!!!


右手をお母さんに向ける。
そして、次の瞬間激しい雷の閃光を放つ。
お母さんは、全身を激しく痙攣させ、その場に倒れこんだ。








瑠依
「と、言う訳で・・・
命からがら逃げ出した私達は『外界』で唯ねえの親に拾われて・・・
今はユウにいと一緒に住んでいると。」

優太
「そんなことが・・・いや、て言うか・・・本当に母親を殺したのか?」

瑠依
「私は殺したつもりは無いけど・・・
生きてないってことは、死んだんじゃないの?
ほら、放火騒ぎとかあったみたいだし・・・」

優太
「随分適当だな・・・」

瑠依
「あんなの家族じゃない・・・
自分達のために愛依を売るような奴らに・・・情けをかけてやる必要なんて無いよ。」


「愛依・・・」

瑠依
「本当は愛依をここに近付けたくなかったんだ・・・
でも、愛依はアレ以来、私に対して心を閉じちゃってさ・・・
私の声、届かなくなっちゃってたんだ。
お陰で愛依に嫌な事一杯思い出させちゃったよ・・・
できればずっと、忘れてて欲しかったあの記憶を・・・」

優太
「すまん。」

瑠依
「ユウにいが謝ること無いよ。
だって知らなかったんだもん、しょうがないよ。
悪いのは私なんだ・・・
愛依を守るためとは言え、愛依の手でお母さんを殺させたんだから・・・
恨まれたって、文句は言えないよ。」

優太
「・・・・・」

瑠依
「とにかく、話聞いてくれてありがと。
やっぱりユウにいと奏には愛依のこと分かってて欲しかったから・・・
じゃ、私は帰るね。
愛依のこと、よろしく。」



そう言うと、栓が抜けたように愛依がガクンと体勢を崩す。
優太はスグに愛依を支えるように近づく。
愛依は瞳を開ける。
その瞳の色は元の色に戻っており、愛依が戻ってきた証に思えた。


愛依
「あれ、私・・・」

優太
「愛依、大丈夫か?
急に倒れるからビックリしたぜ・・・」

愛依
「・・・・・もしかして、瑠依に会ったの?」


「え、愛依なんで・・・」

愛依
「だと思った・・・瑠依が出る時、私の記憶が一時的に途切れるんだよ・・・。
実際、今の今までの記憶が無いし・・・、何か聞いたの?」


「えっと・・・」

優太
「ああ・・・愛依の過去に何があったのか聞いた。」


「おい!!そんな直球・・・!」

愛依
「そっか・・・じゃあ、分かったよね・・・私がおねえちゃんを避ける理由。
おねえちゃんには、たくさんの負い目があるんだ・・・
お母さんを殺しちゃった・・・
今まで築いていた物全部滅茶苦茶にした・・・
それなのに自分はのうのうと生きてるんだよ?
こんなの・・・許されるわけ無いよ。」

優太
「それは違う!!」

愛依
「何が違うの!?だって、だって・・・!!
おねえちゃんだって口ではどうこう言いながら・・・
私のこときっと恨んでるに決まってるもん!!!」

優太
「ちゃんと話もしないうちから決め付けるな!!
マイさんは、愛依のことを本当に・・・!」

愛依
「もういい!!何も聞きたくないよ!!!
おにいちゃんのバカ!!!!!!!!



そう言うと愛依は優太の手を振り解き、町の方へ走り去ってしまう。
優太は呆然としつつも、愛依の走り去った方向を見つめる事しかできなかった。


優太
「・・・・・奏。」


「なんだよ。」

優太
「オレを、殴らないのか?」


「そだなーーー・・・。
本当はそうしたいけど、今は何だか・・・ユータの言いたいことも分かるから・・・」

優太
「そっか・・・。」


「私は愛依を追いかけるけど・・・ユータはどうする?」

優太
「オレは・・・もう一回マイさんと話してみる。」


「ふーーん。なんでまた?」

優太
「今なら、マイさんから話が聞ける気がする・・・
そしたら、マイさんの本当の気持ちも分かる気がするんだ。」


「分かった。
じゃあ、そっちは頼む。
こっちはこっちで、頑張って愛依を連れ帰ってくる。」

優太
「ああ、もう一度ここに連れて帰ってきてくれるか?」


「あんまり気乗りしないけど・・・
上手くいけば愛依との交際を承諾してもらえると思えば・・・!」

優太
「いや、無い無い。それは無い。。」







第七話「取り戻した絆。。」






マイ
「それで・・・私に何が聞きたいんですか?」

優太
「いや、何って言われても・・・
オレはただ、マイさんが愛依のことをどう思ってるのか・・・
それだけが気がかりなんです。」

マイ
「それはつまり・・・私があの子を恨んでるんじゃないか。
それが聞きたいってことですか?」

優太
「えっと・・・嫌な言い方ですけどそうなります。
さっき聞いた限りだと、マイさんは愛依のこと・・・本当に心配していたってことは伝わってきました!
でも、本当の所はどうなんですか!?
自分の母親を殺されて、恨みを抱かない人間なんて居ないと思いますし・・・」

マイ
「ユウタさん・・・あなたの推測は一部間違っています。」

優太
「え?」

マイ
「ウイがお母さんを殺した訳じゃ・・・ないんですよ。」

優太
「えぇ?
そ、それはどういう・・・じゃあ、誰が・・・」

マイ
「お母さんを殺したのは・・・私なんです。」









すっかり日も落ちて太陽が海岸線に沈んでいく。
それを一人灯台の下から眺めながら愛依はとてつもない罪悪感に浸っていた。
いくら何でもアレは言いすぎだ。
自分の過去を知られ、少し気が立っていたのもある。
それにずっと忘れようと思っていた記憶が鮮明に蘇ってくる度に、自分の中にある傷が痛むのだ。
みんなと出会ってからは痛む事の無かったこの傷も、この町に来ておねえちゃんに会ってからずっと痛みっぱなしだ・・・
もう、このまま消えてしまいたい。
そう思えるくらいに愛依の心は痛んでしまっていた。


『愛依!!!』


声が聞こえた。
聞き慣れた声だ。
その声を聞くとホッとする。
自分が一人じゃないと思える。
そう、この声は・・・


愛依
「カナ、ちゃん・・・」


「こんな所に居たのか、愛依・・・探したよ。」



奏は全身汗だくだ。
必死に探し回ってくれたんだろう。
昼間に動き回るのが極端に嫌いなはずなのに・・・
それもこれも自分のためなんだと思うと凄く胸の奥が熱くなる。


愛依
「ありがと、カナちゃん・・・そんな汗だくになるまで探してくれて。」


「当然!私達、友達じゃないか・・・」



そう言って微笑んでくれる。
その笑顔を見ているだけでつかえが取れる気がする。
愛依はポケットからハンカチを取り出すとそれを奏に手渡す。


愛依
「それで汗拭いて。
おにいちゃんみたく氷は出せないけど・・・」


全然良いよ!!
むしろ氷なんかより、この愛依の香りが・・・ブフゥーーーーーーーーーーーーー!!



突如奏が鼻血を噴出す。
まあ、これも大体日常茶飯事なので愛依は取り乱すことなく今度はティッシュを取り出す。
それを適当な大きさに千切って丸めると、奏の鼻に押し込む。



「ありがと、愛依。
いやーーー、興奮するとつい出ちゃって大変だよねーーー。。」

愛依
「うーーーん、普通興奮したくらいじゃあ鼻血って噴出さないと思うんだけどねーーー。
だからそんな同意求められても困るんだけどね・・・」


「なにっ!?愛依は興奮しても鼻血でないの!??
ちゃんと人類なの!??」

愛依
「そこで驚かれると反応に困るんだけど・・・」



このやり取りもいつもどうりだ。
奏と愛依の会話はまるで嚙み合ってないことの方が大半だ。
だけれど二人の仲は良好だった。
それもそのはずだ。
愛依は奏が好きで、奏は愛依が好きなのだ。
それだけ分かっていれば会話などに意味なんてほとんど無い。
二人は心で繋がっている。
まさに心友という奴なのだ。


愛依
「そういえば・・・おにいちゃんは?
もしかして、怒って帰っちゃった・・・?」


「ユータはユータで違うことしてる。
とりあえず怒ってはいないよ。
て言うか、怒ってたら私が殴っておくから心配いらない!!」

愛依
「あはは・・・それは色んな意味で頼もしいけど・・・
そこまではしてくれなくて良いよ。」


「そっかーーー。
やっぱり暴力はダメだよなーー。」

愛依
「そうそう。暴力は・・・」



そこで愛依の口が閉じてしまう。
同時に少しうつむいて暗い顔になってしまう。
愛依の脳裏に蘇るのは、母親に手を上げた事だった。
あの時の記憶は曖昧ながらも残っている。
と言うか、瑠依自身が心に直接見せ付けるように刷り込んできたのだ。
お陰で母親が目の前で苦しみ、悶える姿が脳裏に刻まれることになった。
アレも、暴力だった。
自分が、弱い立場の母親に力を振るったのだ・・・
暴力以外の何物でもない。
愛依は表には出さないまでも、気持ちが不安定になる。
こうなるともう自分でも自分のマイナス思考を止める事ができなくなる。
スグに気分が悪くなり、頭の中を負の感情が、思考が駆け巡る。
ついに体勢すら保てないほどの眩暈に襲われる。
愛依はその場に倒れこむ。
奏は驚きつつも愛依を起こすために身をかがめる。



「だ、大丈夫か愛依・・・」

愛依
「う、うん・・・大丈夫・・・
少し、眩暈がしただけ、だから・・・」


「・・・・・あのさ、愛依・・・」

愛依
「なに?カナちゃん・・・」


「コレから、もう一度マイお姉様に会いに行かないか?」

愛依
「な、何で?」


「何でって・・・愛依はこのままでいいの?
折角また会えたんだ、ちゃんと話し合って・・・」

愛依
止めてよ!!!!!



思い切り奏を突き飛ばす。
奏も驚いていた。
愛依に突き飛ばされた事よりも、愛依に拒絶された事に対して・・・



「う、愛依・・・」

愛依
「何でカナちゃんまでそんなこと言うの!??
話したって無駄なんだよ!!
私は、私は・・・!あの人達に売られたんだ!!
最初から要らない子だったんだから!!!


そんな事無い!!!

愛依
そんなことあるよ!!
あの夜、お母さんに裏切られてから・・・私はずっと考えてた!!
・・・結局家族は、血で繋がってるんだって・・・!!
血が繋がってない私は、家族じゃなかったんだよ!!!


「愛依・・・!
でも、そうじゃないってもう分かってるだろ!!?」

愛依
「分かろうとしたよ!!
おにいちゃんはこんな私を本当の妹みたく接してくれる・・・
そうやってこの一年過ごしたら、思いの他居心地が良くて・・・
家族って、こういう物なんだって思うようにもなってた。」


「だったら・・・!」

愛依
「でも、それとこれとは話が違うんだよ!!
おねえちゃんはきっと私を赦してなんてくれない!!
実の母親を殺されて、正気でいられる方がおかしいもん!!!」


「それじゃあ何で町で会った時にあんな風に声をかけてくれたんだ!!」

愛依
「それは・・・」


愛依のことが本当に心配だったからだよ!!!

愛依
・・・!!


あの人は絶対に愛依を恨んでなんていない!!
むしろ、遠ざけてるのは愛依の方だ!!

愛依
「ち、ちが・・・!」


「違わない!!
そうやって何かと理由をつけて遠ざけてるじゃないか!!
何でそんなことするんだ!
本当の家族だろ!!?

愛依
「だって、だって・・・!!」


「愛依、今からそのモヤモヤ晴らしに行こう。
そこで本当の気持ちをマイお姉様から聞こう!!」

愛依
「それでも・・・やっぱり会えないよ。」


「どうして?」

愛依
「怖い、から・・・本当の気持ちを知るのが怖いから!!
本当に拒絶されたらって考えたら・・・私、私もう立ち直れないよ・・・!」


「そうなっても、私達が居る。」

愛依
「あ・・・」


「私は愛依の味方だから・・・、絶対拒絶なんてしない。
だって、それが友達で・・・家族って奴だと思うから。」



そうやって笑いかけてくれた奏を、もう直視できなかった。
視界が潤んで何も見えなくなったからだ。
そんな愛依に奏はゆっくり近づくと、その小さく縮こまった体を優しく抱き寄せた。
ゆっくりと優しく背中をポンポンと叩きながら、奏は愛依をあやし続けた。
その小さな体の震えが止まるまで。








優太
「マイさんが、お母さんを殺したって・・・?」

マイ
「あの日・・・私は既にウイと家宝を売ってお金を作ると言う事を、お母さんから聞いていたんです。」

優太
「えっ?」









『お母さん、何を言ってるの?』
『あんまり何度も言わせないのよ・・・マイ。
あの子と家宝のロザリオを売ってお金を貰うのよ。』

『そう言う事じゃないよ・・・!
な、何で・・・何でウイを・・・!?』

『そんなの・・・あの子は私の子供じゃないからに決まってるじゃない。』
『で、でも・・・!』
『いつまでもダダをこねるんじゃない!!
全部あなたの為なのよ!!
そう、あなたの為なの!!!



もう何を言っても無駄だと思った。
お母さんはここの所凄く疲れていて、毎日辛そうにしていた。
何が原因なのかは何となく気がついていた。
最近食卓に並ぶのはパン一枚とおかずが一品あるかないか・・・
多分、お金の貯蓄が無くなってきているのだろう。
戦争があってどこも貧困に苛まれている。
それはココも例外ではないのだろう。
元々お母さんは心の病気を弔っており、あまり打たれ強い方ではなかった。
私はお母さんの目を盗んで一度その場を離れた。
そして、ウイの部屋へ向かった。




そこには苦しそうなウイがベットに横になっていた。


『どうしたの?大丈夫?』
『う、うん・・・平気・・・。
ちょっと眩暈がしただけなの。』



本当はこのまま逃がしてあげたかった。
人をお金でやり取りすると言う事は・・・
ウイが辿るのは奴隷としての人生だろう。
そんなことはさせたくなかった。
私達は確かに血の繋がりは無い。
でも、ウイのことは本当の妹だと思ってた。


『え、本当に大丈夫?
もうすぐお夕飯だけど・・・食べられそう?』

『き、今日は要らない・・・このまま寝るよ。』
『そう・・・。ねぇ、ウイ・・・』
『なに?おねえちゃん・・・』
『・・・・・ごめん、何でもないわ。』



でも・・・言えなかった。
こんな辛そうなウイにそんなことを言ったら本当に壊れてしまうんじゃないかと思えたから・・・
だから、この時・・・何も言えなかった。
ただ、ただ・・・声にならない声で「ごめんね。」としか、言えなかった・・・






それが後悔の始まりだった。
何故か夕飯の席にお父さんの姿はなかった。
聞いたが少し出かけているらしい。
そんな時だった。
家の戸を叩く音が聞こえたと思ったら、お母さんは不気味な微笑みと共にスグに立ち上がり、対応に出た。
そして誰かが家に入ってきたのだろう。
その人物と共に二階へ上がっていく。
そして・・・


『ぎゃああああああああああああああ!!!!???』


そんな悲痛な叫び声が聞こえた。
私はスグに向かおうと思ったが、何故か足がすくんで動く事ができなかった。
その後スグに誰かが慌てながら階段を下りて来るのが分かった。
そのスグ後だったと思う、一度だけ凄まじい雷のような音が聞こえた。
そして・・・また一人誰かが下りて来る。
私は意を決して階段の方に向かった。
そこに居たのは、ウイだった。
とても冷たい瞳をしていた。
両の目の色が異なっていたから良く覚えている。
その瞳に見つめられ、また私は何もできなくなる。
ウイはそんな私から視線を外すと家から出て行った。




ウイが去り、少し経つと体も動くようになった。
私は恐る恐る二階へと足を運んだ。
そこに居たのは、全身に酷い火傷をおったお母さんの姿だった。
一体何があったのか・・・


『お母さん!!お母さん!!』
『!!?』



お母さんは目を見開くと私を突き飛ばした。
私は尻餅をつき、鈍い痛みを感じながらもお母さんに視線を向けた。


『どうして?』
『え?』
『どうして誰も分かってくれないの!!?』



お母さんは私の首を掴むと力の限り締め付けてくる。
あまりにも突然の事態に私は何が何だか分からなくなっていた。
息ができない。
苦しい、苦しい、苦しい!


『あの人も、ウイも・・・マイ、あなたも!!!
何で私の言う事を聞いてくれないのよ!!
私が、私がこんなに愛しているのに!!!!!!



何を言っているんだろう・・・
何で愛してるのに首を絞めるの?
何で、何で、何で・・・殺そうとするの!!?


『お、母さ・・・ん!』
黙れ!!
お前のためにやったのに・・・!!
何で何で何で何で!!!!!!!!!!



もう何も言っても無駄な気がした。
と言うより、お母さんはどうかしてしまったのかもしれない・・・


『あの人もそうだった・・・!!
もうコレしか道が無いって言うのに・・・最後の最後まで私に反対して・・・!!
お前も、お前もそうなんだろ!!私を否定するんだろ!!

『――――――――――がっ・・・!!』
『そうだ、お前も・・・お父さんと同じ所に連れて行ってあげる・・・!
そうしたら、寂しくなんてないでしょ!!
あなた!!!



朦朧とする意識の中、廊下の奥で何かが光った。
それは、お父さんが何時も身に付けていたロザリオの輝きだった。
そして・・・そこには血まみれになっているお父さんの姿があった。


『お・・・父、さん・・・!?』
殺してやったのよ!!
私の言う事を聞かない奴なんてみんな殺してやる!!
もう、私はこんな生活ウンザリなのよ!!!!



今ようやく分かった・・・
お母さんは疲れてしまったんだ、心も体も・・・
ウイのことが引き金になってその全てが爆発してしまったんだ。
こんなの残酷すぎる・・・
こんな結末・・・悲しすぎる。
全てを諦め、両手を床に力なく落としたとき・・・
指の先に何かが当たる。
ソレを一瞬見やる、そして・・・


ドスっ!


気付いたとき、私は近場に落ちていたナイフをお母さんの胸に突き立てていた。
お母さんは一瞬ビクッと体を震わせたかと思うと、スグに私の首から手を解いた。
そして、


『何で、どうしてなのマイ・・・
お母さん、マイのために・・・』



言い終わる前にお母さんは倒れた。
そして、それっきり何も言わなくなった。
私はただ、ただ・・・呆然とその場で呆けることしかできなかった。








優太
「・・・・・・」

マイ
「その後・・・私は家に火をつけました。
町ではちょっとした事件になりましたけど。
私はそれから、ずっとここでウイの帰りを待っていたんです。
あの子が最後に帰ってくるのはきっとここだと信じていましたから・・・」

優太
「その・・・オレにそんな事話してよかったんですか?」

マイ
「別に構いませんよ。
私の罪は一生消える事はありません・・・
生きるために、私が生きたいと言う思いが私に母を殺させました。
その罪を、私は一生背負って生きていくつもりです。」

優太
「いや・・・オレみたいな部外者にそんな話するのはどうかと言う話で・・・」

マイ
「あら、部外者なんて・・・
ユウタさんはウイのお兄さんなのですよね?」

優太
「え、えっと・・・い、一応オレはそう思ってます・・・。」

マイ
「あの子もそう思ってますよ。
あの子の顔を見れば分かります。
あなたのことを心から尊敬している顔をしていました。
ユウタさん、ウイのことを今日まで守ってくれてありがとうございます。
姉として・・・お礼をさせてください。」

優太
「いや、お礼なんて・・・。
お礼はオレじゃなくて、唯・・・愛依の今の姉に言ってやってください。」

マイ
「ユイ、さん?」

優太
「オレの所に来る前に愛依を引き取ってくれた人達の娘さんなんです。
あの家の両親はかなりフリーダムで、基本的に家に居る日の方が少くてですね・・・
寂しくないようにって、唯がオレの家に愛依を連れてきたのが始まりだったんです。」

マイ
「そうだったんですか・・・それは今度ご挨拶に出向かないと・・・」

優太
「マイさんって思ったより明るい人ですね・・・
あんな過去があるから実はかなり暗い人なのかと・・・」

マイ
「失ったものばかり数えても何も変わりません。
必要なのは、後悔して嘆く事ではなく・・・それを胸に刻んで生きる事です。」

優太
「そうですね。
そうこう言ってるうちに、奏が連れてきてくれたみたいです。」

マイ
「え?」



ガチャ。。


扉が開く音がする。
奏に連れられるようにしてそこから愛依が入ってくる。
愛依はマイと視線を合わせないようにしながら、


愛依
「あ、あの・・・おねえちゃん。」

マイ
「ウイ・・・やっと、やっと・・・
おねえちゃんって呼んでくれたわね。」

愛依
「え?」

マイ
「ずっと、ずっと・・・あなたにそうやって呼んで欲しかった・・・
ウイ!!!



マイは愛依に駆け寄りその体を抱きしめた。
愛依は久しい姉の香りに包まれながらその心の傷が癒えていくのを感じた。
そう、愛依はただ・・・


愛依
「ごめん、なさい・・・おねえちゃん!
心配かけて、ごめんなさい!!」

マイ
「いいの、もう・・・いいのよ!!
私は、元気なあなたの姿を見れただけで・・・もう、何もいらないの。」

愛依
「おねえちゃん・・・おねえちゃん!!
うわぁぁぁあああああああああああああ!!!!!

マイ
「ウイ、ウイ・・・!!



そんな二人を置いて、優太と奏は外に出た。
完全に自分達はアウェーだと感じたのもあるが・・・


優太
「奏・・・感じてるんだろ?」


「うん・・・近いな。」

優太
「この殺気・・・どこかで・・・」



そう、何故かこの教会に向かって何かが迫ってきていた。
それを感じた二人は部屋を後にしたのだ。
姉妹二人の再会と和解の時間を守るために。


優太
「とりあえずお帰り願おうぜ・・・
今はココ、貸切りだしよ。」


「当たり前だろ・・・誰にも邪魔させないよ。
あの二人の時間を・・・!」








第八話「月下の吸血鬼。。」






月が綺麗な夜だった。
しかも何故かその月は赤く輝きを放っている。
まるで不吉の前兆のように・・・
その月明かりの下、カシムは呟く。


カシム
「こんなに月も紅いなら・・・楽しい夜になりそうだな。」

ドレイク
「そんなこと言ってると叩かれますよ。」

カシム
「はぁ?誰に・・・」

ドレイク
「そうですね・・・
管理人の嫁でもありますし、二度と出番がもらえないかも知れません。」

カシム
嘘ぉ!!?
ちょっと台詞パロったくらいでその扱い!!?
オレこれでも自分キーパーソンキャラだと思ってるんですけど!!!」

ドレイク
「まぁ、冗談はさておき・・・
おやぁ?見知った顔が居ますね。」



二人は丘を登りきった辺りで正面に建つ教会の入り口を見る。
そこには二人の男女が立っていた。
片方は腰に日本刀を差しており、ドレイクに気付くと一瞬だけ顔を歪めた。
もう片方もカシムを見ると同時に信じられないようなものを見る目で見つめてくる。


優太
「お前・・・ドレイク!!」

ドレイク
「久しぶりですね、ユウタ。
今日はメダは一緒ではないのですか?」

優太
「アイツなら今は海辺の別荘に居る。
お前と会わせる訳には行かないけどな・・・」

ドレイク
「ふむ、それは残念だ。」


「おま・・・!!カシムか?」

カシム
「あぁ?お前・・・まさかカナデか?」


「生きてたのか・・・良かった。
みんな、みんなは無事なのか?」

カシム
「・・・・・アイツらなら死んだぞ。
みんな、戦争で殺された・・・」


「やっぱり、か・・・
アレ以来、誰とも連絡が取れないからおかしいとは思ってたけど・・・」

カシム
「そんなことはいい。
お前、何で人間と一緒に居るんだ?


「え・・・。」

カシム
「その隣の奴、ソイツ人間だろ?
何で殺さねぇんだ・・・同胞の仇だろ!!!


「こ、コイツは・・・人間だけど・・・!
少なくとも悪い人間じゃないんだよ!!!」

カシム
「なにを温いこと言ってんだ!!!
人間なんてみんな同じだろうが!!!」


違う!!
人間にだって、良い奴は一杯居るんだ!!
話を聞いてよカシム!!!」

カシム
うるせぇ!!!
一族の面汚しが・・・!
お前が殺らねぇなら、オレが殺してやるよ!!!!!」



カシムがその場から消える。
優太は一瞬でそれが『速鳥』だと気付く。
そして反射的に日本刀に手をかけるが、


カシム
「遅ぇよ!!」



一瞬早くカシムが踏み込んできていた。
その速さは尋常ではない。
優太はありったけの『魔力』を体に纏わせ、『鋼猿』を発動させる。
が・・・


ガキン!!!


二人の間に奏が割り込んでくる。
その体に黒いマントを纏い、瞳の色が紅く煌いている。
奏が迷うことなく初っ端から本気モードで当たらなければならない相手・・・
それだけでカシムの実力が窺い知れた。



「止めろカシム!!
ユータは確かにムカつく奴だけど・・・!
だからって殺していいことにはならないよ!!」

カシム
「テメェ・・・一体この六年でどんだけ人間に毒されたんだ・・・!」


「毒されてなんて無い!!」

カシム
「毒されてるだろ!!
一族みんなの仇なんだぞ人間は!!!!!」


「だけど、だけど・・・!!
ユータ達は違う!!!



バキン!!!


奏がカシムを押し返す。
カシムは体勢を整えるとその両手に握りこんだナイフに『魔氣』を込める。


カシム
紅乱舞刀(こうらんぶとう)』――――ッ!!
コレが最後の忠告だ、カナデ!ソイツを殺せ!!!


嫌だ!!
だけど、お前とも戦いたくない!
カシム!武器を下ろしてくれ!!」

カシム
「もう、無駄みたいだな・・・カナデ!!!


止めろ!!カシムーーーーーーーー!!



二人の刃が激突する。
しかし優太もそちらばかり気にしている暇はなくなっていた。


ドレイク
「余ったもの同士、少しばかり遊びましょうか・・・。
命がけですがね。」

優太
「できれば遠慮したいけど・・・しょうがねぇな。
付き合ってやるよ!!」









メダ
「ん?」

ネロ
「どしたのメダ・・・」

メダ
「あ、いや・・・ちょっと気配を感じて・・・」

ネロ
「気配?」

メダ
「アイツと同じ・・・ドレイクと同じ殺気を感じた。」

ネロ
「え?」

メダ
「気のせいかもしれない・・・でも、やっぱり気になる!!
ネロはココに居てくれ!!
優太達を探しに行くついでに見てくる!!」

ネロ
「え、でもそれなら私も・・・!!」

メダ
「ダメだ!!
ネロを危険に巻き込みたくは無い・・・
それに、気のせいで連れまわすのは気が引けるからな。」

ネロ
「メダ・・・分かった。
じゃあ私の代わりにアルヴィスさんを連れて行くのが条件ね。。」

アルヴィス
「呼ばれて飛び出てアーーールヴィーーース!!!

メダ
ぎゃーーーーーーーーーーーーーーー!!!
何か唐突に出てきたーーーーーー!!!

アルヴィス
「さて、では行くとするかの。」

メダ
「えぇ!?同伴確定ですか!!」

アルヴィス
「うむ、どうやら本当にでドレイクが居るようじゃからな。
て言うか優太の奴が普通に戦っとる。
アイツ一人ではまず勝ち目など無い!
少なくとも今の実力ではまだ・・・!!」

メダ
「な、なるほど!!
オレとアルヴィスさんも加われば勝てるってことですね!!」

アルヴィス
「いや、ワシは途中までついてく感覚で同伴するから戦力的な期待はする無い。」

メダ
同伴する意味がわかんねぇぇえぇえええ!!!!









愛依
「それでね、おにいちゃんが・・・」

マイ
「そう、本当に良い人なのね。」

愛依
「うん、そうなんだ!
ってアレ・・・おにいちゃん?カナちゃん?」



愛依は周囲を見回す。
マイとの話に夢中になりすぎるあまり二人のことをスッカリ忘れてしまっていた。
もしかしたら気を利かせて席を外してくれたのかもしれない。


愛依
「あ、気付いたらもうこんなに暗くなってる・・・」

マイ
「そうね。
もう帰ったほうがいいんじゃないの?
皆さん、ウイの帰りを待っているんじゃないかしら・・・」

愛依
「うん、じゃあ今日はもう帰るね。
また明日も来ていいかな、おねえちゃん。」

マイ
「ええ、良いわよ。」

愛依
「ありがとう!絶対くるからね!!」



そう言うと愛依は部屋を後にした。
そして教会から出るため、その扉を開けた。








ガチャ。


その先では、何故か優太と奏が戦っている姿があった。
しかも二人ともかなり押されているように見えた。
奏が吹き飛ばされる。
そして受身もままならず地面を転がる。


愛依
カナちゃん!!!


――――――ッ!!?
愛依、来ちゃダメだ!!!」

カシム
「ん?また人間か・・・
しかし、若い女じゃないか・・・美味そうだ!!」



カシムは愛依目掛け駆ける。
それに気付いた奏は立ち上がると間に立ちはだかる。


カシム
「また人間を庇うのか!!カナデ!!!」


「愛依には、指一本触れさせない!!!
いくらお前でも、愛依にだけは手出しはさせない!!
――――――『紅乱舞刀(こうらんぶとう)』ッ!!

カシム
「そこまでソイツが大事か!!カナデーーーーーーーーー!!


具現神器(モード)』・天罰与えし神罰宝剣(ダーインスレイブ)』!!!

カシム
具現神器(モード)』・禁じられし災厄の魔剣(レーヴァテイン)』!!!



二人の『魔氣』が激突する。
しかしその力は同種の物のはずなのにまるで威力が違う。
奏の『天罰与えし神罰宝剣』はカシムの『禁じられし災厄の魔剣』に押し込まれていく。


カシム
無駄無駄無駄無駄ぁああ!!!
お前がオレに勝てた試しがあったか!!?
お前、『真祖』のくせにその力を持て余してるからなぁぁあああ!!!」


「ぐっ!!くそ・・・!!」



『禁じられし災厄の魔剣』が『天罰与えし神罰宝剣』を弾き飛ばす。
ナイフごと弾かれ、奏は完全に無防備となる。
そこへカシムは何の躊躇も無く『禁じられし災厄の魔剣』を振り下ろした。


ズシャッ!!!!!!


紅い軌跡を残しながら『禁じられし災厄の魔剣』が振りぬかれる。
その軌跡を追うように、奏の胸から左足に至るまでの対角線上に赤い線が走ったと思うと、そこから大量の鮮血が噴出す。
奏は力無く自分で作った血だまりに倒れこんだ。


優太
奏ーーーーーーーーーーーー!!!!!!



優太はドレイクのことなど無視して奏に駆け寄る。
愛依も咄嗟に走りよる。
抱き起こすと奏の傷はかなり深いことが見て取れる。
見ていて痛々しくなるほどに傷痕から血が溢れ出してくる。


優太
奏!奏!!

愛依
「カナちゃん!!しっかりして!!
お願い!!目を開けて!!!

カシム
「おいおい、何をよそ見してるんだよ?
まだ終わってね・・・」



ゾクン!!!


カシムの背筋が一瞬凍る。
全身に鳥肌が立つのが分かった。
目の前の人間から凄まじい怒りの波動を感じる。


カシム
「お前・・・良い波動が出るじゃねぇか・・・」

優太
「お前・・・
お前ぇぇええええええええええ!!!



優太は一瞬で全身に『魔氣』を纏わせる。
そしてカシムに突っ込んだ。
その一撃を軽々とカシムは止め、優太と至近距離で睨み合う。
双方、瞳の色が紅く輝いている。


優太
「許さねぇ・・・許さねぇぞ!カシムーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!

カシム
「はっ!!良い怒りの波動だ!!
おもしれぇ!!オレが相手してやる!!!」

ドレイク
「おやおや、それは困りますね・・・
彼には私の相手もしてもらいたいのですがね・・・」



背後から一撃。
わずかな殺気すら感じない。
しかし優太はその一撃を振り返り様に刀を振りぬく事で防ぐ。
それと同時に正面のカシムを遠く弾き飛ばす。


カシム
「おいおい、勘弁しろよドレイク・・・
二対一は流石に卑怯だろ。」

ドレイク
「なに、問題ないでしょう・・・
数分くらいは楽しめますよ。」

カシム
「はっ!!そうかい、譲る気無しか・・・
じゃあワリィけど死んどけよ!!人間!!!



二人が同時に突っ込んでくる。
優太は悪魔でカシムを睨みつける。
そして刀を構えるとカシムに向かって突っ込む。
背後のドレイクは完全に無視していた。


ドレイク
「無視ですか・・・つれないですね。
ですが、ガラ空きですよ!!その背中!!!



ドレイクの方がカシムよりも早く優太に仕掛けた。
その鉤爪が背中に触れるか否かの刹那・・・!


ガキン!!!


間に誰かが入り込み、その一撃を止める。
そして優太はカシムと再度激突する。
ドレイクは自分の一撃を止めた相手を見やる。
そこに居たのは、


ドレイク
「君か・・・ただの散歩のつもりが・・・
随分と楽しい夜になりそうですよ。」

メダ
「それは同感だな・・・
こんなに早く再会できるとは思ってなかったぜ、ドレイク!!

ドレイク
「ふふふ・・・一人ですか?
途中まで二人で来てましたね?
強い気配でしたから楽しみにしていたのに、残念だ。」

メダ
「オレじゃあ不服か・・・?」

ドレイク
「いえ、最高です。
早く殺しあいましょう・・・そして、私を楽しませてください!!

メダ
「お前と遊んでやる気はサラサラねぇ・・・
だけど、お前を倒したい一心でオレは鍛えてきたんだ!!!
今からそれがどれくらいのものか、測らせてもらうぜ!!」









第九話「血と命と。。」






優太
うおぉぉおおおおおおお!!!!!

カシム
「良いなぁお前・・・良い怒りの波動だ!!
人間のクセして『氣力』を使いこなすとはやるじゃねぇか!!!」

優太
黙れクソ野郎!!
テメェ、よくも奏に大怪我負わせてくれたな!!
テメェはオレがぶっ飛ばす!

カシム
「へぇ・・・カナデのことが心配か?
アイツが何だか知ってるくせに?」

優太
「ああ!?何言ってやがる!!!」

カシム
「アイツは『吸血鬼』だ・・・不死身なんだよ。
アレくらいじゃあ死にゃあしねぇよ。
だがまあ・・・『禁じられし災厄の魔剣』をまともに喰らわせたからな・・・
再生するには相当なエネルギーを使うはずだ。」

優太
「なに?」

カシム
「アイツ、最後に吸血したのは何時だ?」

優太
「んなの知るかよ!!
アイツはオレ達と一緒に暮らすようになってからは、そういうことはしなくなったんだ!!
トマト食ってれば大丈夫とか言ってな!!」

カシム
「何だ・・・それだと本当に死んじまうかもしれねぇな。」

優太
「なん、だと?」

カシム
「『吸血鬼』に取って血は何にも変え難い物だ・・・
それをしばらく摂取してないとなると、体を再生するためのエネルギーが不足してる事になる。
つまり・・・」

優太
「つまり?」

カシム
「再生させるのに必要なエネルギーが無い、そうなりゃあ傷は治らないから死ぬしかないわな。」

優太
「奏が・・・死ぬ?」

カシム
「ああ・・・まあ、残念ではあるが・・・」

優太
「お前がやったくせに・・・よくそんな事が言えるな!!」

カシム
「悪いのはアイツだ・・・
人間と友好的にしてるだけに飽き足らず、人間を守ろうとしやがった・・・
あんな奴じゃなかった、アイツはもっと剥き出しの刃物みてぇな奴だったんだよ・・・」

優太
「・・・」

カシム
「それを、お前らがあんな腑抜けに変えたんだろ!?
アイツが死ぬのは根本的にはお前らのせいだろうが!!!」

優太
「奏の昔のことなんか知らない・・・
だけど、今のアイツのことは知ってる。
アイツは、アイツは・・・常に悪態をつくような奴だし、素直にありがとうとか言えない意地っ張りな所もあるけど!
それでもアイツは大切な友達のために戦える奴なんだ!!
そんな奏に手を上げたお前を、オレは絶対に許さねぇ!!!



優太は強く一歩を踏み込む。
一瞬でカシムとの間合いを詰めると、その手に握った日本刀をカシムへ振るう。


ガキン!!!


その一撃をカシムは左手に持ったナイフで受ける。
ナイフと言っても奏のような細身の物ではなく、刀身は通常のナイフのソレと同じ長さだが、縦に大きな形状をしている。
その刀身を紅いオーラが覆う。


カシム
「今のアイツに興味なんて無いね。
元から人間に味方する奴は、オレの敵なんだからよ!!!



力強く押し返される。
優太は後方に飛び退くとその刀身に赤いオーラを纏わせる。
しかしその時、違和感を覚える。
その刀身に纏わせたはずの『魔氣』の色に黒い色がチラついたのだ。
注意深く見てみると所々から黒いオーラが漏れ出している。


優太
「これは・・・あの時と同じ色?
でも、黒と赤が半々くらいで混ざり合っていやがる・・・
どういうことなんだ?」

カシム
「ボーッとしてんじゃねぇぜ!!!」



視線を正面に戻す。
カシムは既に目の前まで迫ってきていた。
優太はカシムの一撃を日本刀で受ける。
上段からの振り下ろしの二連撃。
右手、左手の順で振り、カシムはそのまま回転を殺すことなく空中を前転する。
回転と体重を加えたナイフが振り下ろされる。
紅い斬撃の軌跡が激しく優太の日本刀を叩く。


ピキッ!!


どこかで聞いた事のあるような不穏な音が聞こえた。
それとほぼ同時に優太は自身の武器に視線を走らせていた。
案の定、刀身にヒビが走っている。
そのことに瞬時に感づいたカシムは着地と同時に右手を突き出し、日本刀の中心を突く。
その鋭い突きが刀身にぶつかると同時に、


バキィィイイイン!!!!!


優太の日本刀が中心から二つに砕ける。
優太は一瞬この事実に驚きを隠せなかった。
いくら急ごしらえで調達した武器だとしても、『魔氣』同士を数回ぶつけ合っただけで砕けるのは流石にオカシイ。
相手の『魔氣』が自分の『魔氣』よりも強力だったとでも言うのだろうか。


カシム
「はっ!波動の強さだけは認めるがな・・・お前の『魔氣』はまだまだだな!
全然なってねぇんだよ、そんなんじゃあどれだけ良い武器を持った所でオレに勝ち目はねぇよ!!」

優太
「ぐっ!!」

カシム
「さて・・・この後はどうしてくれるんだ?
その半分に折れた中途半端な武器で戦うのか?
それとも諦めてオレに殺されて血を啜られるか・・・選ばせてやるよ!!」

優太
「んなの決まってんだろ・・・誰がテメェに黙って殺されるか!!」

カシム
「即決か・・・まあいい。
じゃあ、死ねよ。」



カシムの左手が音も無く振り下ろされる。
ずっとカシムを注視していたが、挙動を見切ることは出来なかった。
優太はほぼ脊髄反射で左に身をかわす、がそれを読んでいたかのように右手を横に薙ぎ払ってくる。
それを半分に折れた日本刀で辛うじて防ぐものの、刀身がさらに砕け、その衝撃で優太は吹き飛ばされる。
空中で体勢を整えようとした時、カシムは左手のナイフをこちらに放る。
その柄尻には奏の物と同じ鎖が付けられていた。
鎖は『魔力』を込められる事で本来の長さよりも長く長く伸び、空中で身動きの取れない優太の腹部に無慈悲に突き刺さる。


ドフッ!!


刃物が肉に突きたてられる音が響くと、鎖の伸長が止まる。
カシムは鎖を握り締めると、


カシム
ウシャアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!



力の限り引くと、背負い投げの要領で優太を地面に叩きつける。
受身もままならず地面に叩きつけられる。
地面への激突は『魔氣』を全身に纏う事でダメージを軽減できた、が・・・
腹部に喰い込んでいたナイフが腹を切り開く。
『魔氣』の膜を易々と切り裂き、その下の肌を傷つけた。
そこから血が溢れ出すと同時、優太の全身に尋常ならざる激痛が駆け巡る。


優太
あっ・・・!!
ぐあああああああああああああ!!??

カシム
「痛むか?人間は脆いな・・・
こんな傷でも致命傷になるんだろ?
ククク・・・さぁて、どうやって料理するか。」



腹部から激しい激痛が全身を駆け巡った。
普段からこの手の傷は慣れっこだから耐えられると思ったが、大間違いだった。
大した傷でもないはずなのに、信じられない痛みが優太の思考をぐらつかせる。
痛む腹部に手を回し、優太はその手に『魔力』を集める。
そして、


ボジュウウウウウウウウウウ!!!


カシム
!!?

優太
「ぐっ!!!?」



傷口を氷で覆い、止血をする。
しかしこれは想像以上に腹部が冷える。
あまり長い間このままだと腹痛を起こしそうだ。
そして優太は足元に落ちていたある物に視線が向く、カシムはそれに気付いてはいないようだ。
優太は足でそれの鎖部分を蹴り上げる。
すると繋がりあった二つの物体が宙に浮く。
そう、それは奏の使っていたナイフだ。
優太は片方のナイフを掴むと、もう片方をカシムへ投げつける。
カシムはナイフを弾き飛ばす。
その間に優太はカシムとの間合いを再度開ける。


カシム
「中々にキレるな・・・咄嗟に氷で止血か。
あまりにもアブノーマルすぎて一瞬判断が遅れたぜ。」

優太
「あっそう。
だったらその時に決めちまえば良かったかな・・・」

カシム
「ははは、無理無理。
言ったろう・・・お前じゃあオレには勝てねぇ。」

優太
「(くそ・・・確かにそれもそうだ。
アイツの『魔氣』はオレの『魔氣』を容易く斬り裂いてくる。
そんな相手に使い慣れてねぇこんな武器でどうしろってんだ・・・!)」

カシム
「考えたって無駄だと思うぜ・・・そろそろテメェの人生に幕を下ろしてやるよ。」



カシムはゆっくりとこちらに歩み寄ってくる。
優太は必死に考える。
しかしそんなことをした所で何か良い案が浮かぶ訳も無かった。
助けを呼ぼうにも、メダはドレイクを相手にするので手一杯、愛依は奏の止血を必死に行なっている。
この状況でどうにかする方法は・・・ない、のかもしれないと思ってその時、


ビュン!!!


視界の端から何かが飛んでくるのが見える。
優太はその方向に視線だけ向けると飛んできた物を見て驚愕する。
それをしっかと掴む。
それは紛れも無く日本刀。
白い、いや銀色に輝く鞘に白い持ち手、これは・・・


『優太!!使え!!!』


優太はその日本刀を鞘から引き抜くと、『魔氣』を纏わせカシムに突っ込む。
カシムも今まさに突っ込んで来る所だったのか一歩踏み込んだ瞬間に二人は急接近する。
優太は力の限りその手に握り締めた刀を横一閃に薙ぎ払う。
すると赤黒いオーラが斬撃の軌道を追うように薙がれ、正面方向へ巨大な斬撃の衝撃波を飛ばす。
カシムもこれには驚き、しゃがむことでこの一撃をやり過ごす。
そして後方に飛び退きながら舌打ちを一つ打ち、忌々しげに優太を睨みつける。


カシム
「テメェ・・・何だよその強力な『魔氣』・・・さっきまでは手でも抜いてたのか!?」

優太
「は?何言ってんだよ、さっきと同じだぞ・・・」

カシム
「嘘抜かせ!!
さっきまでと出力がダンチじゃねぇか!!
普通の斬撃で衝撃波が発生するかよ!!」

アルヴィス
「どうやら、間に合ったようじゃのう。」

優太
「クソジジイ・・・
やっぱりこれ『白龍』か・・・
どうりで見たことあると思ったぜ。」

アルヴィス
「優太、お前にはまだ教えてなかったのう。
お前の力は、抑制具無しで使う事はできんのじゃ。」

優太
「あぁ!?何だそれ、初耳だぞ!!」

アルヴィス
「今までは『竜牙』がその抑制具の代わりを務めていたのじゃ。
しかし、それが無くなった事によりお前は力を100%発揮できない状態だったのじゃ。」

カシム
「何だ・・・『魔氣』が弱っちいと思ったらそう言う訳かよ。」

優太
「どう言う訳だ?」

アルヴィス
「つまり抑制具無しで力を使っても、お前はその力をコントロールできんから力が安定しないという事じゃ。」

優太
「何でソレを早く言わねぇんだよ!!
危うく開きにされる所だったんだぞ!!」

アルヴィス
「まさかこんなことになるとも思うまい。
まあしかし、今ならワシの『白龍』が抑制具になってくれる。
今から思い切り反撃すればよかろうて。」

優太
「ま、そうなんだけどな・・・
ジジイ!一応借りとくぜ!!」

アルヴィス
「ああ、思い切りやれ。」

優太
「言われなくても!!!」



優太は全身から赤黒いオーラを放出する。
そのオーラは大気を伝わり、波動となって周囲に響き渡る。
優太の瞳の色が赤く煌く、そして腹部を塞いでいた氷が砕ける。
腹部に開いていた筈の傷が塞がり、健康な肌が露出する。


アルヴィス
「お前の腹チラとかマジ萎えるんじゃが・・・」

優太
「っせぇ!!!そんなのオレが一番思ってるわ!!」

カシム
「こんな時にふざけるなんざぁ、余裕だなぁ!!!」



カシムのナイフが飛んでくる。
優太はそちらを振り返ることなくその一撃を弾く。
そして、


優太
「不意打ちを卑怯だとか言う気もねぇが・・・正々堂々とやれねぇのかよ。」

カシム
「そうか、なら・・・正々堂々行ってやるよ!!!」



カシムが踏み込んでくる。
優太は『白龍』を正面に構えると、


優太
「スゥーー・・・ハァーー。」

カシム
「呼吸なんざ整えてどうした!??波紋でも使うつもりかぁ!!」



優太はカシム目掛け『白龍』を振るう。
しかし二人の距離はまだ開いている。
この土壇場で優太がタイミングを間違ったのかと思えるようなミスショットだ。


カシム
「空間を斬ったってどうにもならねぇだろうが阿呆が!!
死にやがれ!!!」

アルヴィス
「いや・・・アレは・・・」

カシム
「・・・!?」



カシムは急な吸引感に戸惑う。
何故か優太の前の空間に引き寄せられるように体が吸い込まれていく。
自分の意思とは無関係に体が引き寄せられ、カシムはバランスを失い、攻撃などできる状態ではない。
見る見るうちに優太との距離は縮まっていく。
優太は『白龍』を構えなおす。
その刀身を赤黒い『魔氣』のオーラが覆い尽くす。


優太
裂空(れっくう)――――――ッ!!!



カシムの体が眼前に迫る。
渾身の力を込め、優太はその刃をカシムの体に叩きつける。


優太
――――――次元斬刃(じげんざんば)』!!!!!!!



斬撃の軌跡が空間ごとカシムの『魔氣』を切り裂く。
カシムの胸から左足にかけて斬撃が決まる。
そこから血が噴出す。
しかし、手応えを感じなかった。


優太
――――――ッ!!
浅かったか・・・!」

カシム
ガフッ!!



カシムは血を大量に吐き出しながら地面に片足をつく。
その場に大きな血だまりができるのにそんなに時間はかからなかった。
そんな状況に関わらず、カシムの表情はいたって冷静だった。


カシム
「かっ!人間、やるじゃねぇか・・・
このオレにここまでの傷を負わせるなんてよぉ・・・」

優太
「随分と余裕そうだな・・・」

カシム
「そりゃあそうだろ・・・
オレも『吸血鬼』だからな、これくらいじゃあ絶対死なねぇ・・・死ねねぇんだ!



カシムは高く跳躍すると、月を背にすると突如としてその姿を消す。
しかし、その場にエコーがかかったようなカシムの声だけが残った。


『お前のことは覚えといてやるぜ、ユウタとか言ったな・・・
次に会った時はオレがこの手で確実に殺してやる。』



優太
「偉く小物臭のする発言残して言ったな・・・」

アルヴィス
「む・・・。向こうも終わりそうじゃのう。」





メダ
「はぁはぁ・・・!!」

ドレイク
「んーー?カシム、帰ってしまったんですか・・・」

メダ
「よそ見してんな!!!」



直線的な攻撃だった。
ドレイクは一歩だけ身を引くことでこの一撃をひらりと避けてみせる。


メダ
「くそ!ちょこまかと動き回りやがって・・・!!」

ドレイク
「確かに良い感じに成長しているようだ、メダ・カーチス。
だが、まだ私とタイマンでやれるほどではないな。」

メダ
「ぐっ!!」

ドレイク
「そんな焦らずともこのスピードで成長すれば、そう遠くないうちに私と戦う資格を得られるよ。」

メダ
「ふざけるな!!
テメェの訳の分からない分析何ざ信用できるか!!」

ドレイク
「信じる信じないは君の自由だ。
あえて言うなら、君はもう少しテンポ良く動くことを心がけるべきだね。」

メダ
「黙れ!!
今ここで、決着をつけてやる!!
『ギガ――――――!!

ドレイク
「だから、遅い。」

メダ
「!!?」



一瞬で間合いが詰まり、ドレイクの鉤爪がメダを切り裂く。
しかし、その一撃に殺意は無く悪魔で力の差を見せ付けるようにドレイクは力加減をしている。
傷は浅く、かすり傷のような物だ。
しかしその余裕が逆にメダをイラつかせていたのも確かだ。


メダ
「ふざけんな!!本気でやれ!!!!」

ドレイク
「無茶言わないでください・・・
私が一番嫌いな事、分かりますか?」

メダ
「知るか!!」

ドレイク
「何の抵抗も出来ない相手を殺す事ですよ。
これ以上につまらないことは無いですからね・・・
今の貴方では私の本気にコンマ一秒耐えられるかどうかですよ。」

メダ
!!?

ドレイク
「今日の所は相方も帰ってしまいましたし、黙って引き下がる事にします。
次に会う時までには、もう少し強くなった状態の貴方と戦える事を楽しみにしていますよ。」



そう言うとドレイクは空間に溶けるようにして姿を消した。
メダは拳を振り上げると、地面に向かって振り下ろした。


メダ
クソ!クソ!!クソ!!!



何度も、何度も拳を打ち付ける。
何も出来なかった自分への戒めなのか、メダは拳の皮が破け血が出始めてもそれを止めようとはしなかった。




アルヴィス
「メダのことはワシに任せておけ。
お前は、向こうを頼む。」

優太
「あ、ああ・・・下手なこと言ってさらに傷つけるなよ。」

アルヴィス
「それは大丈夫じゃろう。
ワシも昔、ああいう時があった・・・じゃからかける言葉はわかっとるよ。」



そう言うとアルヴィスはゆっくりとメダに歩み寄っていく。
そしてメダの拳を止めるとそのまま諭すように話始めた。
優太はそれを尻目に愛依と奏の元へ足早に駆けつける。


優太
「愛依、奏は?」

愛依
「血は止まったみたいだけど・・・傷が酷くて・・・
いつもなら少しづつでも傷が治るんだけど、今日は全然治らなくて・・・!
どうしようおにいちゃん!!」



『「吸血鬼」に取って血は何にも変え難い物だ・・・
それをしばらく摂取してないとなると、体を再生するためのエネルギーが不足してる事になる。』



優太
「まさか・・・本当に・・・」

愛依
「え、何か知ってるの!?おにいちゃん!」

優太
「カシムって奴が言ってた・・・
吸血行為をしてない奏には体を再生するためのエネルギーが無いって・・・」

愛依
「そ、そんな!!
じゃあ、どうすればいいの!?」

優太
「蓮ならどうにかできるんだろうけど・・・
別荘まで奏を背負って全力疾走しても時間がかかりすぎる。
『次元力』もさっき使っちまって飛べるだけの分は残ってない・・・」

愛依
「そんな、じゃあ・・・カナちゃんは!??」

優太
「・・・・・。」



『「吸血鬼」に取って血は何にも変え難い物だ・・・』


優太
「まだ・・・方法は、ある。」

愛依
「え?」

優太
「奏に血を飲ませれば良い。
奏の血液型は?」

愛依
「えっと・・・確かBだったかな。」

優太
「B・・・オレと同じだ。
オレの血を少し飲ませれば、奏の再生能力が戻って何とかなるかもしれない。」

愛依
「で、でもおにいちゃんさっきの戦いで凄い量の血を失ってたよね?
そんな状態でカナちゃんに血を分けて大丈夫なの?」

優太
「オレの事は問題無い。
それより、愛依目を瞑ってろ。
ちょっとショッキングだぞ。」

愛依
「え・・・」



優太は奏のナイフを自分の腕にあてがう。
そして、


シュパッ!!


何の迷いも無くその腕を少しばかり斬る。
するとそこから栓を抜いたように赤い血が流れ出てくる。
優太は朦朧とする視界を何とかごまかしながら奏の口元に腕を近づける。


愛依
「うっ!」

優太
「奏・・・口、開けろ。
少しでいいから飲んでくれ・・・」


「うっ・・・、あっ・・・」



奏は黙って口を開く、そしてそこへ優太は自身の血を滴らせる。
奏の口の中へ数滴落とした時、奏の体に変化が現れ始める。
少しづつだが、腹部に出来た大きな傷が塞がり始めた。
優太はそのまましばらくの間、奏に血を飲ませ続ける。
奏の表情が少しづつ安らいでいくのが分かった。


愛依
「カナちゃん・・・良かった。
おにいちゃん、もう大丈夫だよ!!」

優太
「あ、ああ・・・そう、だな・・・」

愛依
「おにいちゃん?」

優太
「わ、悪い・・・愛依、ちょっとオレ・・・休むわ・・・後のこと、よろし・・・」



そう言うと優太はその場に倒れる。
良く見るとその顔からは血の気が引いてしまっているのか蒼白だ。


愛依
「おにいちゃん、大丈夫!!?
おにいちゃん!!!!!

アルヴィス
「ああ、大丈夫じゃ。
コレは多分、血が足りないだけじゃろう。」

愛依
「血が!?やっぱりおにいちゃん、相当無茶して・・・!」

アルヴィス
「これくらいならスグには死なん。
じゃが、早急に処置はした方が良いのう・・・急いで帰るとしよう。
メダ、優太を運んでくれるか?」

メダ
「はい・・・」

愛依
「おにいちゃん・・・」







最終話「友情と絆の傷痕(あかし)。。」







「ん・・・あれ?」



意識が少しづつ鮮明になっていく。
今の今まで自分は何をしていたのか・・・
そう、カシムと久しぶりに会って・・・結局話しもできなくて、最終的に愛依を・・・



「愛依・・・愛依!??



奏は咄嗟に身を起こす。
しかし、



「ぐっ!!痛っ――――――!!



腹部からの激痛に再び体がベットに吸い寄せられていく。
痛んだ場所を手でなぞる。
そこには今だ大きな切り傷が残っていた。
再生は続いているものの、その治りはあまり良くは無い。



「そういえば『禁じられし災厄の魔剣』で斬られたんだった・・・
アレで斬られると治りが遅くなるんだよな・・・くっそ・・・」



奏は思い出す。
自分はカシムから愛依を守るために戦う事を選んだ。
でも、カシムの攻撃を捌ききれなかった。
力は互角のはず、むしろ奏の方が種としては上位の位置付けだ・・・
負けたのは・・・



「気持ちの、問題なのかな・・・」



考えた所で分かるはずもなかった・・・
それより今は、



「えっと・・・携帯、携帯・・・」



枕元を手探りで探してみるもソレらしいものは無い。
奏は夜目を利かせ、枕元を再度見直してみる。
すると調度上の棚に置いてあるのを見つけた。
早速奏は携帯を開き、愛依の携帯に電話をかける。
すると、


♪~~~~


すぐ近くで聞き慣れた着メロが響いた。
奏は音のする方、つまり自分の隣のベットに目を向ける。
そこにはスヤスヤと眠る愛依の姿があった。



「あれ・・・なんで?」

瑠依
「知りたい?」


うぉわ!!?

瑠依
「そんなびっくりするなよーーー。
私だよ~~。」


「え、その喋り方・・・その眼、瑠依?」

瑠依
「そそっ。愛依は疲れて寝ちゃってるからね・・・
代わりに私が話してしんぜよう。」


「お前と話す事ねぇからいいわ。」

瑠依
「ちょっと待てよユー・・・
ちょっとくらい聞いてください!!ホントマジで!!」


「何だよ・・・私疲れてるんだから後にしてくれよ・・・」

瑠依
「愛依、奏が心配だからって部屋を移ってきたんだよ。」


「え・・・」

瑠依
「ずっとうなされてる奏を看病するって聞かなくて・・・」


「そ、そうだったのか・・・」

瑠依
「友達想いの良い子でよかったねーーー。。」


「うるせぇ黙れ・・・て言うか、カシムは?」

瑠依
「ユウにいが追い払ったよ。」


「そっか・・・」

瑠依
「ついでに奏が生きてるのも、ユウにいのお陰なんだよ。」


「は?何故に??」

瑠依
「血が足りなくなってた奏に、ユウにいが血を飲ませてくれたんだよ。」


べっ!!?
アイツの血を!?
私が!???

瑠依
「結構美味しそうに飲んでたよね。」


覚えてねぇよ!!
つーか意識なんて無かったし・・・!
あの野郎、恩着せがましいことしやがって・・・!」

瑠依
「ユウにいさ、奏がやられた時に凄い怒ってさ・・・
何か普段とのギャップが凄かったなーーー。」


「この前の時もそうだったな・・・
アイツ、たまに尋常じゃないキレ方する時とかあるもんな。」

瑠依
「それがでしょ?」


「いや、それは・・・無いだろ。」

瑠依
「いや、満更・・・あーーー何でもいいか。
騒いでたら愛依起きそうだし・・・気付かれる前に私は退散するよ。」


「え、愛依起きるの?
もしかしてこの流れはハグとかしてもらえる感じじゃない?」

瑠依
「いや、知らないけど・・・
とりあえず、代わるから・・・あとよろしくね。」



そう言うと瑠依(愛依)は静かに瞳を閉じるとベットに横になる。
そして少しの間を挟み、


愛依
「ん・・・」


「愛依・・・?」

愛依
「え・・・カナ、ちゃん?」


「良かった、愛依・・・無事で。」

愛依
「カナちゃん!!
良かった・・・気がついたんだね。
お腹、どう?」


「まだしばらく塞がらないかも・・・」

愛依
「もう、あんまり心配かけないでよ・・・。」


「ははっ、ごめんごめん。
普段ならスグに治るんだけどさ・・・如何せん血が・・・」

愛依
「血・・・飲みたいの?」


「え、ああ・・・今度どっかで買ってくるよ。
飲めれば別に何の血でもいいし・・・
トマトと一緒に食べればどんなに不味くても耐えられるし。」

愛依
「もし良かったらだけど・・・私の、飲む?」


「え・・・マジで!??」

愛依
「うん。
前に約束したし・・・それでカナちゃんが治るなら、いくらでも・・・」


「あ・・・でも、やっぱりいいよ・・・」

愛依
「え、どうして?」


「いや・・・だって傷痕しばらく残るし・・・」

愛依
「そんなの気にしないよ。」


「か、噛むと犬歯が刺さって痛いし・・・」

愛依
「カナちゃんの怪我の痛みからしたら軽いものだよ!!」


「そ、それに・・・」

愛依
「それに?」


「きゅ、吸血行為っていうのは・・・
『吸血鬼』にとって永遠を誓いあったりする証でもあるから・・・
そんな、軽々しくはしない方がいいって言うか・・・」

愛依
「そうなんだ。
じゃあ、私大丈夫だよ!」


「え、何で・・・!?」

愛依
「私とカナちゃん友達だもん。」


「・・・・・・・」

愛依
「カナちゃんが言ってくれたんだよ?
私達は友達だって・・・友達のためなら、私なんだってできるよ。」


「愛依・・・
(ヤベェ・・・凄く、押し倒したいです。
今すぐ押し倒してペロペロしたい!!
いや、待て!待つんだ奏!!
そんなことしたら確実に愛依に嫌われる!!
いや、でも・・・それでも・・・!!)
うがーーーーーーーーーーーーーー!!!

愛依
「え!?カナちゃんどうしたの!!」


「う、愛依!!!

愛依
「は、はい!?


「じゃ、じゃあ・・・少しだけ、貰おうかな・・・(理性爆発寸前)

愛依
「うん!」



愛依はベットから下りると、奏のベット傍へよる。
すると奏はそっとベットカバーの端をあげる。
愛依はそれが入ってきて良いと受け取ったのか、おずおずと奏のベットに潜り込んで来る。


愛依
「あ、カナちゃんのベットあったかい。」


「暑くないかな・・・」

愛依
「クーラー効いてるから調度良いくらいだよ。」


「そ、そっか・・・じゃあ、愛依・・・」

愛依
「うん。」



奏はそっと愛依の首筋に顔を埋める。
すると奏の鼻腔を愛依の甘い匂いが包みこむ。
もう色々限界で、奏の理性はいつ吹き飛んでもおかしくなかった。
と言うか愛依が無防備すぎである。
いくら同姓だからといってもこの状況では奏も興奮を隠せない。
そして奏は堪えられない衝動を解き放つように、優しくその首筋を舌で舐める。


愛依
ひゃっ・・・!
か、カナちゃん、くすぐったい!」


「い、いや・・・こういうのはムードが大事かと思って・・・」



適当に誤魔化しながら愛依に抱きつく。
愛依は優しくその体を抱きしめてくれた。
何だか、その瞬間・・・
奏はいかがわしい気持ち云々抜きにして、愛依を愛しく思えた。
自分の中で愛依が膨らんでいくのが分かる。



「愛依・・・」

愛依
「なに?」


「今度は、ちゃんと守るから・・・」

愛依
「うん。」


「愛依の傍でずっと・・・愛依を守るよ。
だから、これはその誓いの証だから・・・」



奏は頭の中に浮かぶ全ての邪念を振り切り、愛依の首筋へ自分の犬歯を突き立てた。
優しく、優しく・・・
できるだけ痛くしないように、奏は愛依の血を少しづつ飲む。









優太
「はぁーーーー、流石に死ぬと思ったね!実際!!」

メダ
「嘘付け・・・夕飯食べた途端にピンピンになってるじゃねぇか・・・」


「急に血を流しすぎたんですよ・・・
病み上がりなのに無理するから。」

優太
「いや面目ない。」

由紀
「でも大事無くて良かったよ。
て言うか優太が大げさすぎるんだよ・・・
血が足りないくらいでぶっ倒れるから。」

優太
「お前な・・・実際かなりキツかったんだぞこっちは・・・。
滅茶苦茶ふらつくし、気分は悪くなるし・・・」

メダ
「基本的な鍛え方が足りないんだよ。」

アルヴィス
「そじゃな・・・やっぱり明日からの修行項目に基礎体力作りを加えるかーーー。」

優太
「ちょ!!クソジジイテメェ何を勝手に!??」

アルヴィス
「全快の状態ではなかったとはいえ、ちょいと油断のしすぎじゃ・・・
それでは三日後の大会で生き残れんぞ。」

優太
「は?大会??」

アルヴィス
「あ・・・いや、今のは冗談じゃよ?」

優太
「あぁ?ホントかおい。
まさかとは思うが・・・
実は闘技大会的な物がここら辺で開催されて、それにオレがエントリーさせられてて参加せざるを得ない状況が出来上がってるとかそういうのじゃないよな?」

アルヴィス
「そ、そんなできすぎた話があるわけ無いじゃろ・・・考えすぎじゃて。」

鳳仙
おおっ!!?
な、なんだってーーーーーーーーーー!!!

優太
「鳳仙、どうした。」

鳳仙
「何か三日後に、ココら辺で大きな闘技大会が催されるんだってさ!!
新聞の折り込みチラシにその通知が入っててさ!!
しかもまだ参加者募集中だって!!」

優太
「へぇーーー・・・これはどういうことだ?
クソジジイ・・・って居ねぇし!!!

メダ
「アルヴィスさんなら鳳仙が叫んだ瞬間に出て行ったぞ。
かなり速攻で・・・」

優太
「あ、あの野郎・・・まさかとは思ったが今回の休暇、このためにオレを連れてきやがったな・・・!!
しかもこの流れ、マジでエントリーさせられてるんじゃ・・・」

鳳仙
「え!?ダンナ出るの!!?
じゃあオレも出る!!
楽しみだなーーーー!!!」

優太
「何だこの状況・・・マジでそんな展開なの?
三日後オレは闘技大会に出場するの?」

メダ
「オレに聞かれたって知るか。」









カリスト
「で・・・結局手ぶらで帰ってきたんですか?」

ドレイク
「ええまあ。
個人的には満足できたので・・・」

カリスト
「そりゃあ貴方はお気に入りの子と死合えてさぞかし充足しているでしょう・・・
ですが私には何の実りもありませんよ。」

カシム
「まあ元々オレ達に頼んだお前も悪いんだよ・・・」

カリスト
「そうですね。
今度からはもう少し考えて物を頼むようにしますよ。」

??
「はっはーーーーーーーーーーー!!
どうした博士!!
湿気た顔しちゃってよおおお!!」

カシム
「あん?」

ドレイク
「ん、どちら様で?」

??
「んーーーー、初めましてだったかな!?
鉤爪!吸血鬼!!」

カリスト
「紹介しましょう・・・。
彼は『魔神力』実験の成功者・・・ミラ・バルカン君ですよ。」

ミラ
「ミラだーーーー!よろしく頼むぜ!!
鉤爪、吸血鬼!!」

ドレイク
「何故かもの凄くどこかで聞いたことのあるような名前ですね・・・」

カシム
「奇遇だな、オレもだ・・・」

カリスト
「ミラとはギリシャ語で運命、そして有名な恒星の名前でもありますね。
何だか語呂がいいので選んだんですがね最終的に。」

ミラ
「オレは気に入っているぜぇぇええええええええええ!!
この名前をよぉおおおお!!!」

ドレイク
「何だか一気に五月蠅い集まりになりましたね。」

カシム
「ああ・・・何だか一気に悪役サイドとしてのランクが下がった印象だよ。」

ミラ
「おいおい、あんまり舐めるんじゃあねぇ・・・
腕っ節には自信があるぜ、なんなら試しに戦るか?」

ドレイク
「興味深いお誘いですが今日はもう満足しているので結構です。」

ミラ
「おいおい、ビビったのか鉤爪!??」

ドレイク
「どうぞお好きに解釈ください。
私は今、機嫌が良い・・・今の発言は大目に見てあげますよ。」

カシム
「オレも今日はパス。
思ったよりもあの人間につけられた傷の治りが悪い。
ちょっと今日は適当な奴の血でも吸って休むわ・・・」

ミラ
「何だよつまらねぇな・・・」

カリスト
「命拾いをしましたね。」

ミラ
「あぁ?」

カリスト
「私の計算では、二人のどちらと戦っても今の貴方ではまず勝ち目などありませんでした。」

ミラ
「数字の上での理屈に興味はねぇな・・・」

カリスト
「冷静な分析と言って欲しいな・・・。
ミラ、君にはもう少しだけ調整に付き合ってもらうよ。」

ミラ
「その調整ってのはいつ終わるんだ・・・」

カリスト
「もう二、三日の辛抱と言った所だろう。」

ミラ
「なるほどぉぉ、ならアレには出場できそうだな。」

カリスト
「あれ?」

ミラ
「ああ、今度大きな闘技大会があるらしくてよ・・・」

カリスト
「まさかとは思いますが・・・もうエントリーを?」

ミラ
「ああ、済ませたぜ。」

カリスト
「全く・・・君の存在はトップシークレットものなんだよ?
あまり軽はずみな行動は避けてもらいたいね・・・」

ミラ
「いいじゃあねぇか・・・オレの最終調整には持って来いだと思うんだよなぁ。」

カリスト
「ま、別にいいでしょう。
しかし能力の使用を一部制限してはもらいますよ。」

ミラ
「かまわねぇさ・・・オレは暴れたいだけだからなぁぁ!!」

カリスト
「全く・・・血の気が多くて困るな君は・・・」

ミラ
「褒め言葉と受け取っとくぜ!!
楽しみだぜ、闘技大会がよぉぉおおおお!!!」









暗い空間だ。
明るい場所から遠く離れた、まさに心の片隅にその場所はあった。
そして、そこに今踏み入る少女の姿がある。
砂原愛依。
この心の持ち主だ。
愛依は暗く闇に満ちた空間全域に届くように、そこに住んでいるはずのもう一人の少女の名を叫んだ。


愛依
瑠依!!
瑠依ーーーーー!!!



その声に誘われ、暗がりから一つの人影がゆらりとこちらに歩いてくる。
その人影に向かって愛依はもう一度呼びかける。


愛依
「直接会うのは、久しぶりだね。
瑠依・・・もう一人の私。」
瑠依
「こんな所までどうしたの?
ていうか、愛依は私のこと嫌いなんじゃなかったっけ?
話したくも無いって、遠ざけられていたような気がしたけど・・・」

愛依
「うん。そうだった・・・
でも、色々分かったから・・・
ちゃんと向き合わないとって思ったの。」
瑠依
「ふーーん・・・まあ、いいや。
で、何を言いに来たの?」

愛依
「私、ずっと貴女が怖かった・・・
簡単に人に手を上げて、簡単に人を殺そうとする貴女が怖かった。
そんなことを考えられる、実行しようとする私じゃない私が居るのが・・・とても怖かったの。」
瑠依
「合ってるけどね・・・私は人が死のうと気にしたりしないしね。」

愛依
「嘘。」
瑠依
「え?」

愛依
「だって・・・お母さんを殺さなかったでしょ?」
瑠依
「ああ・・・アレはまだ愛依の体を上手く操れなかったから・・・」

愛依
「私を、守るためにやってくれてたんだよね。」
瑠依
「・・・・・」

愛依
「お姉ちゃんと仲直りして・・・全部聞いたの。
でもね、それを引き起こしたのは全部私・・・
そう思うと・・・お姉ちゃんも私も同罪なんだなって思えた。」
瑠依
「それは違うよ!悪いのは愛依でもマイねーでもない!!
この世界が・・・この世界の仕組みが悪い。
それに、私があの時・・・もっと早く愛依を逃がせていれば・・・」

愛依
「やっぱり、貴女は私を心配してくれてるんだね・・・
お姉ちゃんと同じように。」
瑠依
「当たり前じゃないか!!
愛依は私で、私は愛依なんだ!!
二人で一人なんだ!!
守りたいって思うのは当たり前だよ!!」

愛依
「優しいんだね・・・良かった。
これで、やっと・・・一緒に居られるね。
瑠依・・・」
瑠依
「愛依・・・うん。」

愛依
「今まで本当にごめんなさい・・・追いやるように貴女をこんな所に遠ざけて・・・」
瑠依
「別に良いんだ。
遠ざけるだけで・・・愛依は私の存在を否定しようとはしなかった・・・
そのお陰で、今こうして仲直りできたしね。」

愛依
「瑠依・・・これからは、自由に私の体を使ってくれて良いからね。」
瑠依
「え、いいの?
それならヒョイヒョイ代わっちゃうよ?」

愛依
「別に大丈夫だよ。
どうせ感覚は共有だから変なことしようとしても筒抜けだからね。。」
瑠依
「うっ!それもそうだった・・・」



『・・・い!愛・・・!!』


瑠依
「この声、奏だ・・・
呼んでるみたいだよ?」

愛依
「うん、じゃあもういくね。
また今日からよろしくね。瑠依!」
瑠依
「うん、あらためてよろしく・・・愛依!」









愛依
「ん・・・」


「愛依、おはよう。」

愛依
「カナちゃん・・・おはよう。
早起きだね・・・」


「何言ってるんだ? もう昼過ぎだぞ?」

愛依
「え?そうなんだ・・・」


「私はいつものことだけど、愛依がこんなに寝てるなんて珍しいな。」

愛依
「うーーーん、何でだろう。」



愛依はそう言いながら後ろ髪をすくように左手で首筋を撫でた。
そして、そこにある小さな穴に指が触れる。
そう言えば昨夜、奏に血を分けるために吸血をさせたことを思い出す。



「あ、もしかして・・・アレの所為、かな?
一応加減して軽く飲んだだけなんだけど。」

愛依
「ううん、これの所為じゃないよ。
昨日は一日色々あったから・・・それで疲れちゃっただけだと思うの。
それに・・・」



愛依は微笑みながら、愛おしそうにその吸血痕を撫でる。


愛依
「この痕が、私とカナちゃんの繋がりなんだなって思うと・・・
ちょっと嬉しいなって。」


「愛依・・・
(あーーもう、イチイチ可愛いなーー愛依わ。。
とりあえず今夜もこの流れで添い寝してもらお~~う。)」

愛依
「とりあえず起きようか。
お腹空いちゃった。カナちゃんも何か食べるでしょ?」


「うん!」

愛依
「何が良いかな~~。」


トマト!!

愛依
「夏だもんね~~旬だよね。
じゃあ、冷やし中華でも作ろうか。」


「トマトは大盛りでね!!」

愛依
「分かってる。
じゃあ、トマトを切るのはカナちゃんに任せるね。」


「任せとけ!!」



私は確かに色々な物を失った。
だけど、失っても取り戻せる物だってあることを知った。
それに、今は大切な友達が一緒に隣を歩いてくれる。
死んだ方が良かった、そう思ったりもしたけど・・・
今は、みんなと一緒に居ることが楽しい。
だから、私はまだこの先も笑顔で生きいく。
みんなと、カナちゃんと・・・そして、瑠依と一緒に・・・
私は、生きていく。






「愛依篇」 完。。








あとがき。。






と言う訳で今回も~過去物語~「愛依篇」のまとめをお送りしました!!
今回、公開が遅くなったのはリアルにやってる暇が無かったのと、「アナザーエピローグ」どうしようかと考えていたことからです。
正直に言いますと・・・愛依優太イチャついてる所とか想像できねぇよ!!って感じなので・・・
この二人は正直、恋人って言うより本当に兄と妹(多分な妄想入り)くらいの関係で良いと思ってます。
むしろ最終話で書いたみたいに、奏との絡みの方がしっくりきます!!
×愛依・・・これは勝つる!!
とか一人妄想に励んでましたスイマセン・・・
ホントだったら、理性吹っ飛んだ奏が愛依に色々やっちゃう流れとかを書いてから泣く泣くデリートしたのは良い思い出ですね。。
とりあえず「愛依篇」のテーマは「友情」でした。
基本的には愛依にスポットを当てて、愛依の過去とか瑠依のこととかを書いていければいいか程度に考えてました。
なので前の「蓮篇」から見るとエラク地味に映ってしまうんじゃないかと思いましたが・・・正にそのとうりでしたスミマセン。
ちょっと前のエピソード盛り上げすぎました。
あと、次回の「鳳仙篇」や次々回の「奏篇」へと繋げるための地味なフラグ立て程度のエピソードという位置づけ・・・
何か、これだけ書くともの凄く不憫に見えて仕方ない・・・
「アナザーエピローグ」を書くよりも、本当は入れたかったけど時間も無くて入れられなかったシーンを最終話ラストに挿入しました
瑠依との和解シーン、そして擬似朝チュンシーンです。
二人とも、割とスンナリ分かり合っちゃってます。。
説得力とか云々無視して、言いたいことだけ言い合った結果、スンナリ行くとこんな感じだよってことで書いてましたが・・・
もう少し紆余曲折させても良かったなーーとは思う。
でも、オレはこれくらい分かりやすい方(適当なくらい)が良いと思ったので、あえて深くは掘り下げずにサッと書きました。
今までの流れを汲むことも考え、愛依がこれからも頑張って生きていくよ的な流れの地の文風台詞にして〆させて頂きました。
次回は「鳳仙篇」と言う事で、基本的にバトル一色で進めています。
これはこれである意味実験みたいなもので・・・
とりあえず今後も細々と読んでいただける程度に頑張って書いていきます。。
では、また次回「鳳仙篇」の総集篇で会いましょう!!ノシシ


ページ数 179(余白上下左右25、文字数×行数42×34、用紙横、縦書き)
文字カウント 67642
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[ 1991/04/04 00:00 ] 小説(完全版) | TB(0) | CM(0)

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