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~過去物語~「蓮篇」

~過去物語~「蓮篇」




第1話「期末テスト。。」





季節がそれなりに流れ、夏の日差しが照りつける七月の上旬。
数日前にワープロの検定(授業で取らされた)が終わったと思った矢先、恒例の期末テストの時期がやってきた。
ご多忙に漏れず(漏れる訳も無く)優太達の学校も期末テスト習慣に入ろうとしていた。
そんな期末テストを明日に控える日の放課後、優太は図書室でボーーッとカウンターに座りながら誰も来ることの無い正面の扉を見続けていた。
別に今日は当番でも何でもないのだが・・・
隣に座る一人の少女に引っ張られてきたことがそもそもの始まりで。
優太の隣にはフレームレスの眼鏡をかけ(伊達。)、絵にでも描いた様な文学少女がそこに居る。
少女の体格は優太の肩より少し低いくらい。
優太の身長が175cm前後なので身長的には大体平均的ではないのだろうか。
腰よりやや上くらいまである髪を、今は二つに分けて肩から胸の方に向けて垂らしている。
まあ、読んでる本がライトノベルじゃなかったらもっと知的に見えただろうに・・・
優太はそんな少女の挙動を眺めていると、少女の方がそれに気付いたのか問いかけてくる。



「どうかしましたか?」

優太
「え、いやーーー。
蓮、眼鏡変えたんだなーーって。」


「ああ・・・ちょっと前に落として割ってしまって・・・。
本を読む時以外掛けないので、あまりお金かけたくなかったんですけど・・・
ちょっと新調してみました。」

優太
「ふーーーん。
まあ、似合ってるとは思うけど・・・何でわざわざ伊達眼鏡を?」


「いえ、その方がキャラが立つかと思い急遽そんな設定を作りました。」

優太
「え!?そうだったの!!?」


「冗談ですよ。」

優太
「何だよ・・・蓮の冗談は冗談に聞こえないことの方が多いぜ・・・」


「それに・・・優太さんもかけてらっしゃるので・・・」

優太
「は?」


「い、いえ・・・優太さんの眼鏡は度が入ってるんですよね?
どれくらいなんですか?」

優太
「ああ・・・どれくらいだったかな。
でもコレ別に必要無いんだよな。
検査に引っかかって、調べたら若干悪いみたいでさ・・・
かけた方が良いよってなったからかけてるだけだし・・・」


「そうなんですか。そういえば運動する時とかは外しますもんね。」

優太
「無くても十分見えるからな。
少し遠くがぼやける程度だから問題無いんだよ・・・
それにオレ眼鏡属性無いしな。」


「え!!?
そ、そうなんですか!!??」

優太
「え・・・何でそんな驚くの?」


「え・・・えっと、優太さんは眼鏡かけてる女性とかは好みでは無い、と?」

優太
「そんなことも無いけど特別好きって訳でも無いかなーーーー。」


「そ、そうですか・・・」



そう言うと蓮は傍から見ても分かるくらい落ち込んでいるようだ。
優太自身は「何を落ち込んでいるんだろう?」と言った感じで蓮を見ている。
この人、本当に鈍感である。
とりあえず励ますとかした方がいいのかと思ったのか優太は口を開くと、


優太
「あ、でも蓮の眼鏡姿は別かな。
様になってて自然な感じがするぜ?」


「あ・・・そ、そうですか?
そ、それなら・・・新しくして良かったです。」

優太
「うん、凄く似合ってるぞ本当に。」


「そ、そんなに褒めても何も出ませんよ。」



蓮はそのまま本に目線を慌てて戻してしまう。
何だか頬が赤くなってる気がするんだけど気のせいだろうか。
基本的に生徒の図書室利用率はかなり低い。
まず本を読もうって輩がほぼ存在しないのだこの学校は。
なので基本的にいつでも閑散としてるのがお決まりだ。
それでも当番の日はここにしばらく居残っていないとならない。
別にサボってしまってもいいのだが・・・
毎度の如く蓮に引っ張られてきてしまうのでサボれたためしはない。
そう言えば蓮と初めて会ったのもこの委員会の集まりの時だっけ・・・
あれから一年以上経つのかーーーと適当に考えながら、手持無沙汰になっている今の状況はかなり無駄だなと言う結論に至る。
明日に期末テストを控えてるこの状況で図書室を利用する奴はもうほぼ零と言っていい。
さらに今日は司書の先生もテストの前会議的な物に出席すると言うことで居ないため仕事ももらえて無い。
それ以前に今日はまるで当番と言う訳でも無いのだ。
前述したとうり蓮に一方的に連れて来られている。
ぶっちゃけ今日は家に早く帰って勉強と言う名の一夜漬け(暗記)をする予定だったのだが・・・
完全に予定が狂ってしまった。
まあ、暗記ならどこでも出来るから問題無いか・・・
優太は椅子の下に置いておいた鞄から明日の教科のノートを出す。
明日は確か、現国と生物だけだったはず。
基本的にノートを取る授業なら授業中にテストに出す所を明言する科目の方が多い。
少なくともこの学校はそうだ。
現国は出たとこ勝負の節が強いが、生物に関しては丸暗記で通用する。
授業中にまとめた重要そうな部分だけ覚えておけばどんなに少なくても五割は取れる。
優太はノートを適当にペラペラめくりながら重要そうなマークをしてある部分を頭の中で復唱する。



「そういえば明日は定期試験でしたか・・・」



と、今更の発言を蓮が口にする。
まあ蓮は真面目そうに見えて本を読むこと以外、いや興味の無いことには一切記憶力が働かない人なのだ。
それでも定期テストでの成績はいつも半分より上だったりするが・・・
優太はノートから目を離さずに蓮に答える。


優太
「ああ、そうだよ。
ちなみに明日は現国と生物。」


「現国は問題ありませんが・・・生物が自信ありませんね。」

優太
「蓮、毎回現国だけは100点だもんな。」


「いえ、一つの科目だけ出来ても意味がありません。
その点、優太さんは凄いです。
ちゃんと全ての教科で平均80点以上を毎回取っていますから。」

優太
「オレのはただの丸暗記であって勉強じゃない。
それに、テストの点がよければいいトコに就職できたり、進学できる訳じゃない。」


「そうはいいますが・・・優太さんは十分に凄いですよ。
丸暗記でもちゃんと点を取れるならそれは自分自身の力じゃないですか。」

優太
「そうかーーー?
オレはそうは思わないけどな・・・」


「少なくとも、私はそう思います。
優太さんは凄い人です。」

優太
「何だよイキナリ・・・褒めたって何もでないぞ?」


「そうですね。
それじゃあ、そんな凄い優太さんにお願いがあるのですが・・・」

優太
「何だよ?」


「今日、帰ったら一緒に勉強しませんか?」

優太
「基本暗記中心になって良ければ・・・」


「構わないです。暗記、得意ですから。。」

優太
「じゃあ、夕飯食ったらオレの・・・あ、蓮の部屋に行こうか?」


「・・・・・・そんなに私の部屋に入りたいんですか?
整理整頓は行き届いているので下着がそこら辺に落ちてたりはしませんよ?」

優太
「すいません、蓮の中でオレって一体どういう認識なんでしょうか?」


「その話は置いといて・・・」

優太
「(置いとかれた・・・。)」


「普通に優太さんの部屋で良いんじゃないですか?」

優太
「ま、それが無難か・・・」


「部屋に連れ込めればこっちのもんだぜグヘヘ。。
ってことですか・・・?」

優太
「だからオレの事なんだと思ってるんだよ・・・」



その後、数十分後に司書の先生が帰ってきた。
明日はテストなのであまり遅くまで残らずにちゃんと帰って勉強をするようにと言われて半強制的に図書室から放り出された。
とりあえずそんな訳で蓮を最寄りの駅まで二人乗り(危ないので良い子は真似しないでね!!)で運んでから優太は帰路についた。








帰ってみるとちゃっかりオレと蓮以外のみんなが帰ってきていた。
その後、三十分もしない内に蓮も帰ってきたので手早く夕飯を食べることにした。
夕飯の席でも明日のテストがどうのこうのだのの話で持ちきりだった。
そして夕飯を食べてからスグに鳳仙が風呂に入り、優太と蓮は風呂の順番を待ちつつ勉強することにした。
基本的に風呂の順番は厳密には決まっておらず、最後が優太と言うのだけが決まっている。
全員で話し合った結果最初に入るか最後に入るかだったら最後に入らせた方が色々訳分からなくなってるので問題無いだろうと言うことだった。
優太自身、みんなが何を気にしているのか分からないので適当に合わせようと言う方向でガチしている。
そんな訳でただいま絶賛蓮と部屋で二人きりな訳ですが・・・



「まず最初に言っておきますが・・・
夜の特別講習とかそういうのには発展しませんから期待しても無駄ですよ?」

優太
「あの、一ミリたりともそんなこと思ってないんだけど・・・」


「まあ、冗談は置いておいて・・・どこが出そうなんですか?」

優太
「そうだな・・・とりあえず・・・」



優太は授業中に印を付けておいた部分をその時先生がついでに話していた小話もとい解説の様な物を織り交ぜて再度自分なりにまとめて解説する。
蓮はその聞いたことを手元のノートに書き写しながら適度に相槌を打ちつつサラサラと筆を走らせる。
そんなことを三十分も続けていると・・・


コンコン。。


突如背後のドアからノックの音が響く。
優太は説明を止めてドアの方向に振り返りつつ問う。


優太
「誰だ?」



『オレだよ、ダンナ。入ってもいい?』


優太
「鳳仙か・・・別に開いてるから好きに入って来いよ。」



ガララ。


鳳仙
「あれ、蓮?
どしたの・・・って勉強に決まってるか。」

優太
「ああ、二人でちょっと軽く確認程度に・・・あ、もしかして風呂もうオレの番?」


「私がまだ入ってないんですけど・・・」

優太
「なんなら一緒に入るか?」


「・・・・・・・・・・それ、本気で言ってるんだとしたら人格疑いますよ・・・」

優太
「すいませんほんの出来心です。
別にやましい気持ちがあって言ったんじゃないんです信じてくださいマジで!!!」


「まあ、そんなことは置いておいて・・・」

優太
「(本日二度目だな、置いとかれたの・・・)」


「鳳仙さん、何か用があるんじゃないんですか?」

鳳仙
「ああ、うん。
ちょっと・・・明日のテスト勉強を一緒にしたいなーー、と・・・」

優太
「ああ・・・まあ、お前ただでさえギリギリだもんな・・・別にいいぜ。
赤点取られて泣きつかれるのも嫌だし。」

鳳仙
「ありがとーーーダンナーーー!!!」


「そういうことなら私、お風呂に入ってきますね。
二人でその間やっておいてください。」

鳳仙
「うん。」

優太
「よし、とりあえずまずはどっちからやる?」

鳳仙
「ダンナはどっちをやってるの?」

優太
「オレは生物。丸暗記きくから。」

鳳仙
「じゃあ、オレもそれを先にやろうかな!」

優太
「よし、なら最初からやるか・・・まず・・・」







愛依
「うーーーん、この数式はどうやって解くんだっけ?」


「とりあえず分からない所は自分の名前を書いておけば・・・」

愛依
「いや、それ何の解決にもなってないから。」


「じゃあ好きな人の名前書くとか!?
私、断然愛依の名前書くから!!」

愛依
「カナちゃん・・・
さっきから全然進んでないけど、大丈夫?
現実逃避してる場合じゃないと思うよ?」


「うーーーん、予想以上に休んだのが不味かったかなーーー。。」

愛依
「アレだけ休んで出席たりてるって逆に凄いね・・・
まあ、逆を言うとテストで変な点取ったら即落とされるってことだと思うんだけど・・・」


「そうなのかーーー。」

愛依
「そうだと思うけどなーー。
とりあえず私が分かる所は教えるから一緒に頑張ろう、カナちゃん。」


「うん。。」

愛依
「でも私も詰まっちゃったな・・・
おにいちゃんなら分かるかなーーー。」


「アイツに教わるなら素直に赤点取って自主退学してやる!!」

愛依
「そこまでのことかな!!?
あ、でも私が教えるよりおにいちゃんに教わる方が早いと思うよ?」


「え!?マジで言ってるの、愛依・・・」

愛依
「だっておにいちゃん何だかんだ言って教えるの上手だよ?
私もこの前授業中に分からない部分があって・・・
それを聞いて分かりやすく教え直してくれてね・・・。」


「ふーーーん。
人は見かけによるんだなーーー・・・。」

愛依
「カナちゃんそれ褒め言葉だよ?」


「マジか。噛んじったか・・・」

愛依
「じゃあ、早速おにいちゃんにレクチャー頼みに行こうか。
私も聞きたい所あるし・・・」


「えーー・・・本当に行くの?
私が教えるんじゃだめなのか?」

愛依
「え、えっと・・・
私が分からない所はカナちゃんも分からないと思うな~~?」


「あ、それもそうだったな!
愛依は頭が良いな~~。。」

愛依
「う、う~~~ん・・・そ、そうなのかな?」









コンコン。。


優太
「今度は誰だ?」



『私~~。。』


優太
「由紀か・・・」



ガララ。


由紀
「優太~~、勉強教えて・・・」

優太
「オイなんだよお前もピンチなの?
一応クラス委員何だから自力で頑張るとかないの?」

由紀
「うぅ~~、私がそんな頭良くないって知ってるでしょーー!」

優太
「はて、そうだったか・・・?」

由紀
「何でもいいから教えてよ~~。」

優太
「そうだな・・・鳳仙と一緒に教え込むことにしよう・・・
鳳仙、由紀と一緒にもう一周行くぞ!!準備はいいか!!」

鳳仙
「ばっちこーーーい!!」

由紀
「え、なに?何がどうなってんの??」



コンコン。。


『ユウちゃーーん勉強教えてーーー!!』


優太
「よっしゃーーー!!
もう何でもかかってこいやーーー!!!」



ガララ。



「ユウちゃん妙にテンション高いね・・・
って、由紀ちゃんに鳳ちゃん?」

優太
「よし、じゃあ唯も混ぜて三人一緒にイクぜぇぇぇええええ!!」


「はえ!!?何が何なのかな!!」

由紀
「私もよく分かんないんだけど・・・」

鳳仙
「じ、実はオレとダンナだけで生物要点まとめマラソンをやってるんだ!」

由紀
「ま、マラソン??」

優太
「用はオレが重要そうな部分を説明していくからそれを復唱しつつ丸暗記すればいいんだよ!!
メモするとなおいい!!」


「それを・・・何回くらいやったの~?」

優太
「すでにコレで通算三十三回目かな。」

由紀
「多すぎだよ!!
どんだけ物覚え悪いんだよ鳳仙!!」

鳳仙
「オレの物覚えの悪さはのび太もビックリのレベルだぜ!!?」

優太
「自慢することじゃねぇっつーーの!!
オラァ!!三十三周目イックぜぇぇぇえええええええええええ!!!」



コンコン。。


優太
「おっしゃあああああああああああ!!
もう誰だろうがバッチ来いよぉおおおおおおおおおお!!!」



『え!!?何でおにいちゃんそんなにテンション高いのかな!!?』
『ハイパーモード状態だからじゃないのーー?』



ガララ。


優太
「愛依に奏・・・
うーーん、流石に二人の面倒までは見れんな・・・」

愛依
「あ、じゃあ・・・おねえちゃん達の勉強の後で良いよ。
それまでここでカナちゃんと勉強して待ってるから。」

優太
「おう、じゃあなるべく早く終わらせるわ・・・
よっし!じゃあ気を取り直して・・・三十三しゅ・・・!!」



コンコン。。ガララ。


千草
「おーーい、ユウくーーん一緒にげ~むしようぜーーー?」

優太由紀鳳仙
「「「お前は空気読めよ!!!!!」」」










「ふぅ・・・いい湯でした~~。
さて、気を取り直して勉強を・・・」



ガララ。


優太
「よ、よっしゃあぁ~~・・・
ひゃ、ひゃくにじゅういっしゅうめーーー・・・い、いくぞ~~~・・・・」

鳳仙
「ば、ばっち・・・こいやぁぁあああああ・・・・・」

由紀
「ま、まだ覚えられないの・・・?逆に大丈夫か鳳仙・・・」


「由紀ちゃん、この漢字はこうだっけ?」

由紀
「いや、そこは『鬱憤』が正しい。」


「これ・・・高校二年生で習う漢字だっけ?」

千草
「おかしいな~~・・・
このステージのボスの弱点氷じゃないのかよーーー。
ここまで残機メッチャ減らしてまで突き進んで来たのに・・・リセットすっか。」

愛依
「カナちゃん、何でX=TOMATOになるの?」


「私が好きだから!!」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一人で勉強した方が能率上がりそうですね・・・。」









第2話「夏休み。。」






そんなこんなで期末テストの日程は瞬く間に過ぎ去っていった。
結局勉強は毎日のように鳳仙を中心に教え込んだ。
が、それでも鳳仙の結果は赤点スレスレだったらしい。
まあ、赤点じゃなくてよかったと思う。
優太は何だかんだで鳳仙に付き合う過程で何度も頭に同じようなことを叩き込んだためテストもほぼ完璧にこなし、クラス一番だったようだ。
普段から一番の成績だったりするのだが今回は群を抜いて優秀な成果を出せたらしい。
他の面々も良し悪しはある物の赤点で追試を受ける者は居ないようだった。
テストの返却が終わってしまえばもうあとは夏休みまでの時間を消化する日々が続く。
間に球技大会だったり、大掃除とかあったり・・・
そんな日々も過ぎ去り、終業式も終えついに明日から夏休みと言う日の夜。
優太は何故か食卓に座って居た。
夕飯は随分と前に済ませてある。
ついでに風呂も入った。
あとは寝るだけだなーーと思った所、急遽収集がかかったのだ。


優太
「で、何の話があるって?千草・・・」

千草
「明日から、サマーバケーションな訳じゃん?」

優太
「いや、イチイチ英語で言わなくてもいいよウザったい。」

千草
「何だよちょっと前回までの流れを汲んでやったんだよ!!」

優太
「なら、いいだろう。」

千草
「まあそれはそれとして・・・明日から夏休みな訳じゃん。
各々予定があると思うんだけど・・・
明日から私、『魔法界』行くんだけどみんなはどう?」

由紀
「あ、そういえばテストがあったから二週間近く行ってないよね・・・。
綾香、寂しがってるんだろうなーーー。
私は暇だから行こうかな。」


「特に予定も無いですし、私もご一緒します。」


「はいはーーい!私も行くよーー!」

鳳仙
「しばらく部活の練習も無いし、とりあえず暇な限りは行こうかな。」

愛依
「・・・・・」


「愛依?行かないのか?」

愛依
「え・・・!?い、行くよ?どうして?」


「ん、いや・・・何でも無いよ。」

優太
「何だみんな行くのか・・・
オレもメダの様子とか、綾香のことが気になるし・・・
よっしゃ久しぶりに行ってくるか!」



そんなこんなで夏休みの最初のイベントはみんなで『魔法界』に行くことに決まった。
優太は寝坊しないように早めに床についた。
疲れていたのだろうか、スンナリと眠りの世界に落ちる。
何かもの凄く奇抜で凄まじい夢を見た・・・気がする。








「『暁館』の庭に飛べばいいですよね?」



蓮は毎度恒例の確認を取る。
『魔法界』へ行く手段は正規の方法では二つ存在する。
ある場所から出る定期便に乗ること、又は『ゲートキーパー』と呼ばれる機器を使うこと。
定期便の方は日に二度、朝と夕方に来る。
が、コレはお金もそこそこかかる上に本数が少ないために満員電車の様な状態に常になるらしく、ウチのみんな乗ろうとはしない。
もう一つの『ゲートキーパー』は、かなり厳しい審査を通った上流階級の物が持つことを許される時空跳躍装置の様な物らしい。
審査を通ってもこの機器を手に入れるには莫大なお金がかかるらしく、普通の一般人が持てるはずの無い者である。
蓮自身も管理局に知り合いがいて、その人から貰ったと言っているが・・・
そんな簡単に手に入る物なのだろうか・・・
と最初の頃は思っていたが俄然便利なのであまりツッコまないことにした。
基本誰も気にしてないし。
全員がうなずくと蓮は手馴れた動作で操作する。
視界が一気に歪む、そして次の瞬間・・・家の庭の景色から一転、目の前には年代物の洋館が現れる。
いや、この場合優太達が現れたことになるのか・・・


由紀
「さーーて、久しぶりに来たことだし・・・
エリスの手伝いでもしようかなっと。」

千草
「よっしゃあ!!久しぶりの稼ぎ時到来!!
秋には大量に欲しいげ~むだったりが発売しまくるからここで稼がない手は無いぜ!!
鳳仙早速本部に殴り込みだ!!」

鳳仙
「あ、うん!ダンナも行く?」

優太
「あーーー・・・オレはいいわ。
綾香の様子見たいし・・・」

千草
「ロリータコンプレックスキターーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

優太
「脳天かち割るぞテメェ・・・」

千草
「アハハーーーーーー!!冗談冗談!!
んじゃあ私等は出かけてくっから後はよろしくね!!
夕飯までには帰るからーーーー!!!」



そう言うと鳳仙の手をワシッと掴むともの凄い速度で・・・いや、アレ『速鳥』か・・・何時の間に覚えたんだろう。
とりあえず鳳仙を引きずりながらも二人は本部に向かって走って(引きずられて)行った。



「うぅーーーー・・・暑い、眠い、暑い・・・
何もしたくない・・・」

愛依
「か、カナちゃん大丈夫?
暑いって二回言ってるよ??」


「愛依がニャンニャンしてくれたら治る( ・`ー・´) +キリッ

愛依
「そんな決め顔でふざけないでよ!!
とりあえず部屋に入ろうか・・・」


「うん。。」


「あ、じゃあ私も~~。」


「優太さん。」

優太
「ん、何だ?」


「後で少し出かけようと思うのですが・・・
付き合っていただけませんか?」

優太
「んーーー、まあいいけど・・・
綾香も一緒になるかもだけどいいか?」


「かまいませんよ?
むしろ綾香ちゃんに王都を案内するのも悪くないですから。」

優太
「そっか。
じゃあ行く時間になったらオレの部屋に来てくれよ。
多分綾香と一緒に遊んでると思うから。」


「はい、それでは後程。」









綾香
「パパ!!」

優太
「綾香。元気そうだな・・・。」

綾香
「うん、あやか元気だよ!!
それよりもパパ久しぶりだね~~!
今まで何してたの~~~?」

優太
「んーーーー、ちょっとテストがあってな・・・
それの勉強しなくちゃならなくてしばらく来れなかったんだ。
寂しくなかったか?」

綾香
「うん、だいじょうぶ!!
えりすも一緒だったし、学校の友達も一杯できたから!」

優太
「そっかそっか。それは良かったな。」

綾香
「テストと言えば私この前のテストねぇ、クラスで一番だったんだよ!」

優太
「なに、それは凄いな!
各言うパパもクラスで一番だったぞ?」

綾香
「そうなの!?ワーーーイパパと一緒だーー!」



以前、蓮が診た感じだとアヤカは記憶喪失と言う奴らしい。
頭を強く打ったのが原因だと思われるが・・・本当の原因は何なのか分からない。
もしかしたら本当は精神的に不安定で、あの事件をキッカケに心が壊れてしまい、その副次的な結果として記憶が消えたのかもしれない。
何はともあれアヤカは名前・・・と言ってもアヤカと言う部分以外は忘れてしまっているらしい。
何故か知らないが優太のことを実の父親だと勘違いしている。
これも記憶が曖昧になってしまっているからだと思われるが・・・
こんな小さな少女に本当のことを教えるのも酷だと感じ、優太達は普通に接することを選んだ。
その結果がこの状況だ。
優太は実の父親のフリをすることになったわけだ。
親になったんだからとアヤカと言う名前を漢字に直し、自分の名字をあてがい「福島綾香」と言う名前を与えた。
アヤカ自身もとても気に入っている様でスグに漢字も書けるようになった。


綾香
「今回はいつまでいるの~?」

優太
「別に決めてないな・・・
夏休みだし、ずっと居るのも悪くないかもな。」

綾香
「ホント!!?ずっと一緒にいてくれるの?」

優太
「ずっと付きっ切りって訳にはいかないかもだけど・・・
できる限りは一緒に遊んだり、出かけたりしような。」

綾香
「うん!楽しみだな~~。。
パパと遊んだり、お出かけしたりするの。」



こうやっていると本当に娘ができたみたいだった。
と、高校生が抱くべきでも無い感情を抱き始めているこの主人公さまはふとノックの音に気付く。
綾香はトテトテと扉に寄って行くと扉を開けて


綾香
「今はあやかとパパはお取込み中です!!」



とか扉の向こうに向かって言い放った。
これはこれで何か微笑ましいんだが、ちょっと向こうの人に失礼な気がしたので優太は適当にフォローをいれる。


優太
「ん、誰だ?
あ・・・蓮、か?」


「あ、はい。
あの、お邪魔でしたでしょうか?」

優太
「いや、別に大丈夫だ。
それより、出かけるんだろ?」


「は、はい。」

綾香
「パパ、出かけちゃうの?」

優太
「ああ。綾香も行くだろ?」

綾香
「いいの!?」


「もちろんですよ綾香ちゃん。」

綾香
「えっと、どこ行くの?
ねぇねぇレンねーどこ行くのーーー?」


「そうですね・・・調度お昼になりそうですし・・・。
お外でまずランチにしませんか?」









そんなこんなで蓮と綾香と優太の三人は北街の方まで来ていた。
周りにはかなり高級そうな建物が建っている。
さらに極めつけに周囲を歩く人達の服装の煌びやかさと言ったら・・・
完全に場違いな気がした。
優太は周囲から受ける視線にどうも気圧され気味だった。
それもその筈、ここ北街は貴族や位の高い官僚たちの住む区画。
つまりはお偉いさんが住んでる場所だ。
そんな所を歩いている自分は完全にみすぼらしい奴としか思われていないんだろうなーーとか思っていると



「着きました。ココです。」



そう言って蓮が立つその店の看板を見る。
「メルクドティードゥ」・・・
かなり流暢な英語で書いてあるその看板を見て最初に思った事は


優太
「メッチャ高そうなんですが・・・」


「あ、それなら大丈夫ですよ。
付いて来てください。」



そう言うと蓮は扉を開けて店内へ入っていく。
優太と綾香もそれに倣うようにして店内へ。
店内はもう想像の域を超えるような世界だった。
何だろう、とりあえず普通のレストランにシャンデリアとか、こんな高級そうなお皿とかランプとか壺とかそう言う類の物は置いてない。
まるで見る眼のない筈の優太でも分かるくらいここに置いてある物はどれも高級感溢れていた。
そんな輝きをしているのだ。
蓮はウェイター?のような人と話しているようだ。
妙に親しそうだ。
こんな店に来慣れていると言うだけで驚きなのに、もしかしなくても常連さんなのか。
蓮は話し終えるとこちらに歩いてくる。



「話しは通しました。
奥の特等席を取りましたから行きましょう。」

優太
「と、特等席・・・?」


「はい。」

綾香
「二人とも早く行こうよーー!」

優太
「ちょ、ちょっと待て綾香!!
お前一人で行って何かに手とか引っ掛けられても敵わねぇ!!
そこで待て!!」



ハラハラしながらも三人は奥の一際豪奢な部屋に通される。
もうここまで来ると完全に自分場違いだわーーーと肌で感じた。
椅子に座って綾香を適当にあやしつつ蓮に話しかける。


優太
「こ、こんな高そうな店のしかもこんな豪奢な一室に顔パスって・・・
蓮一体お前何なんだよ・・・」


「ちょっとここの責任者の方とお知り合いで。。」

優太
「またソレ!!?
流石に今回のはそういうので軽く流せそうに無いんだけど!!」

支配人
「本日もご利用ありがとうございます。
しかし、起こしになるのならそう事前に連絡を頂けていれば・・・
キチンとした持て成しをご用意しましたのに・・・」


「いえ、ちょっと気まぐれで来ようと思っただけですから・・・
それよりこちらもイキナリこの部屋に通してもらってすみません。」

支配人
「いえいえ!!そんなこと全く問題無いです!
それよりも本日は・・・」



その後二人はメニューについて話し合っているようだ。
ぶっちゃけアレ本当に人の話す内容なのだろうか・・・
正直優太自身は何を言っているのか全く理解できなかった。


支配人
「分かりました。
ではそのように用意させます。」


「はい、重ね重ねわがままを言って申し訳ありません。」

支配人
「お気になさらず、それではごゆっくりどうぞ。」


「適当に注文してしまいましたが、よろしかったですか?
何なら好きな物を頼みなおすこともできますが・・・」

優太
「い、いや・・・
オレにさっきみたいな会話できる気がしないから・・・」

綾香
「あ、あやかもチンプンカンプンだよ~~・・・」


「ふふっ、そこまで難しい話はしてないんですけどね。
ここの料理はとても美味しいので是非優太さんと一緒に・・・あ、いえ誰かと一緒に食べに来たかったんです!」

優太
「そ、そうか・・・
しかし、この空気で料理が喉を通るだろうか・・・」


「大丈夫ですよ。
一口食べれば止まらなくなりますよきっと。」

優太
「そ、そうか・・・じゃあ楽しみだな。」



少し気も紛れてはきたがそれでもこの空気はちょっと耐えがたい物があった。
あまりこういう場所が自分に合わないだけかもしれない。
その後ものの数分で料理が運び込まれてくる。
こうして三人のかなり高級なランチが始まった。








第3話「ゼダ・バイパー。。」






千草
「あ、鳴っち。
この依頼とこの依頼終わったよ。。」


「早いですね!!
あ、本当に取ってきたんですか『紫陽花の葉』と『ラムネの瓶』。」

鳳仙
「ってコレどういう依頼だよ!!」

千草
「鳳仙そのツッコミ今更ーーー。」

鳳仙
「何なのコレ、何を狙ってるの!?
あざとすぎやしなイカ!!?」


「???何がですか、私には分からないです・・・」

千草
「私も全然分かんないなーーー。。」

鳳仙
「嘘コケテメェ!!
探してる時超ノリノリで『礼弥ちゃんと信長様出てこないかなーー!!?』とか叫んでたじゃねぇかよ!!」

千草
「私は確かに礼弥ちゃんは好きだけどさ、戦コレだったら断然卜伝ちゃん一筋だから!!」

鳳仙
「知るかよ!!
て言うかこの作品の年代設定一応2010年ってことになってんだからそこら辺考慮して!!」

千草
「今更そんな昔のネタ思い出せるかよ!!!」

鳳仙
「書いてる人の時間軸的には昔だけどオレ達の中では今だから!!NOW的な感じだから!!!」


「あ、あの・・・お二方盛り上がってる所申し訳ありませんが・・・
報酬の方は口座に振り込む形でよろしいですか?」

千草
「あ、うんそれでいいよ!
んじゃあ昼飯食ってもう一仕事と行こうか!鳳仙!」

鳳仙
「そうだな、確かに腹は減った。」

千草
「んーーー・・・?
て言うかよく見ると結構人の数少なくねぇ?」


「あ、今どこの戦団も国外に遠征しているんです。」

鳳仙
「へぇーー、なんでまた?」


「詳しくは知りませんが、山一つ向こうの『ヴォヤージ帝国』の方で大規模な事件があったとかで・・・
その派遣と言うか助っ人感覚で呼ばれていった感じですね。」

千草
「そうなんだーーー。」


「なので今この『レーヴェン王国』本部に残ってる戦団は数が少ないんです。
メダさんの『天統べる煌星』と首領の『海風の憑代』、優太さん達の『暁の地平線』くらいですか残ってるのは・・・。
祭りも近いと言うのにこの人手不足は深刻なんですよ。」

鳳仙
「祭り?」


「はい!三日後に迫っているんですよ。
王都名物『盛夏祭』の日が!」









美味かったことは美味かった。
だが、終始緊張しっぱなしだったからか
もう一度気持ちを落ち着けて行きたいものだ。
三人は店を出てからは適当に道なりに中心街の方へ向けて歩を進めていた。



優太
「で、この後はどうする?」


「適当にそこら辺を歩きつつ帰りますか?」

綾香
「お散歩?」


「そうですね、そんな感じです。」

綾香
「じゃあ、向こう行こう!!」



綾香が指差しているのは中心街の商店街の方向だ。
蓮は構わないと言った感じで綾香の手を引いて歩いていく。
優太もそれに付いて行く。
そして二人の会話を聞きながらある方向に目が向いた。
それは北街と東街の境にある一つの事務所。
『天統べる煌星事務所』。
優太はそこを見つめ、一呼吸置いてから


優太
「悪い蓮、綾香頼んでいいか?」


「構いませんけど、どうかしましたか?」

優太
「いや、ちょっと様子を見ていきたい奴が居て・・・」


「ああ・・・はい。
それなら大丈夫ですよ。
綾香ちゃんの面倒はしばらく見ておきますから優太さんは早く行ってあげてください。」

優太
「悪いな。」



優太は事務所に向かっていく。
数か月前から変わり映えのしないその扉に手をかけ、開け放つと


ドガッ!!!


何かが勢いよく優太に向かって飛んできた。
完全に油断していたのでどてっぱらに食い込んだ。
しばらくの悶絶の末その飛んできたものを確認する。
それは、


優太
「メダ!!?」

メダ
「・・・・・・ん、ああ・・・優太か・・・」



メダは完全に生気が抜けた瞳で優太を一瞬だけ見るとスグに目を逸らした。
そしてそのまま壁に背を預けると天を仰ぎ見る。


メダ
「何か用か?
だったら、ネロに言ってくれ・・・
戦団の業務はアイツに任せてるから・・・」

優太
「は?お前、なに言ってるんだ?」

メダ
「何って・・・?」

優太
「お前、団長だろ・・・
何でそのお前が何もしてないでネロに全部任せてるんだよ?」

??
「そんなのコイツが何の役にも立たないゴミクズ野郎だからだよ。」



声のする方に目を向けると一人の男が立っていた。
歳は同じくらいに見えなくもないが、実際は2、3年上くらいだろうか。
だらしなく着崩したスーツが特徴的だった。
その男は重ねるようにメダに浴びせかける。


??
「しっかりしろよ団長。
そんなんじゃあ居る意味無いぜ?」

メダ
「そうだな・・・。
その通りだと思うぜ、ゼダ。」

ゼダ
「何なら今からでも遅くねぇ・・・
オレに団長の座を譲れよ・・・
元からオレの席な訳だしよ!」

メダ
「それは・・・できない。」

ゼダ
「かーーー!何だよテメェ、何の役にも立たないくせに団長って肩書きには執着すんのかよ!
情けねぇ・・・情けなさすぎるぜ!」

メダ
「なんとでも言えよ・・・」

ゼダ
「何度でも言うぜ、クズや・・・」



ゴッ!!!


突如ゼダの左頬に拳がめり込む。
しかも軽く『唸犬』付き。


ゼダ
「もっ!!?」

優太
「あ・・・」

ゼダ
「んだテメェ・・・イキナリ何しやがる!!!」

優太
「いや、ちょっと自然と体が動いちゃったっていうか・・・」

ゼダ
「無茶苦茶イテェじゃねぇかよ!!
顎の骨折れてたらどうすんだ・・・あぁ!!?」

優太
「こんな不意打ちで顎砕かれる奴が団長じゃもっとダメじゃないか?」

ゼダ
「ぐ・・・!!」

ネロ
「ちょっと!!
事務所の前でなにやってんの!!」

優太
「ネロ・・・。」

ネロ
「優太君?」

ゼダ
「ネロ、君からも言ってやりなよ・・・。」

ネロ
「え、何をかしら?」

ゼダ
「そこのポンコツに・・・」

ネロ
「ポンコツ?誰のこと言ってるの?」

ゼダ
「だからそこの役立たずの団長様にだよ・・・」

ネロ
「ゼダさん・・・
メダは役立たずでもポンコツでも無いわよ?
今はちょっと自信を無くしちゃってるだけなんだから・・・」

ゼダ
「そんなやる気も生気も何もかも失っちまった奴に団長が務まるのか?
コイツはスコールさんを殺した張本人何だぜ?」

メダ
「!!?」

ネロ
「違う!!!メダは何も悪くない!!
何も知らないくせに適当言わないでよ!!!」

ゼダ
「適当なもんか・・・
スコールさんはこの役立たずを庇って死んだんだ。
そろそろ気遣いとか止めとけよネロ・・・。」

ネロ
「いいかげんにしてよ・・・」

ゼダ
「なあ、こんな奴のこと忘れてオレと一緒にならないか?
オレはネロのこと気に入ってるんだぜ?」

ネロ
「もういい・・・貴方と話してもしょうがないもの。
メダ、行こう?
あ、優太君寄ってくでしょ?」

優太
「ん、ああ。」

ネロ
「良かった。じゃあ入って。」



バタン。。


ゼダ
「・・・・・クソっ!!」



ゼダは近場にあったくず入れを蹴り飛ばす。
くず入れは宙を舞い、中身を散乱させながら露地の奥へと転がっていく。


ゼダ
「あんな腑抜けのどこが良いって言うんだよ・・・
どいつもこいつもアイツを過大評価しすぎなんだよ・・・
昔は期待されてたみたいだが、今は完全に腑抜けの腰抜けじゃねぇか・・・」



路地の奥に歩きながらゼダはつぶやく。
そのまま奥へ奥へ進みながら


ゼダ
「でもまあ・・・あと二日の辛抱か。
アレが上手くいけばネロ共々、『天統べる煌星』はオレの物になるんだ・・・」



不敵な笑みを浮かべながらゼダは路地の方へ向く、するとその先に黒いマントを羽織った人物が立っていた。
黒マントは手招きをするようにゼダを路地奥へ誘う。


ゼダ
「何だよ、噂をすればなんとやらってか・・・」



ゼダは黒マントの居る路地の奥へ進む。
それと同時に黒マントも奥へ消えていく。


ゼダ
「さぁて、作戦会議の始まりだな。」









ネロ
「ごめんね、見苦しい所見せて・・・」

優太
「いや・・・別に。さっきのは?」

ネロ
「ゼダ・ヴァイパー。
メダと同じ副団長だったんだけど、今回の件でメダが団長になったでしょ?
それが気に入らないみたいでアレ以来何時もこうなのよ。」

優太
「メダ、まだ・・・その・・・」

ネロ
「うん。お父さんを失ったのが相当堪えているみたいなの・・・
でも、アレは仕方なかったんだよ・・・メダの所為なんかじゃないよ。」

優太
「そう言えばあの時あったこと、オレ詳しく聞いてなかったな・・・
辛いかもしれないけど話してくれないか?」

ネロ
「うん、大丈夫だよ。
優太はメダの数少ない友達だもん。
知ってて欲しい・・・あの時、」











スコール
「何事だ!!?」

アルヴィス
「誰かが壁を貫いて侵入したみたいじゃな!!
テッカを連れて外に行ったようじゃが・・・」

????
「これは、どういうことですかな?」

スコール
「すまない、予想外の事態が起きた!
今は兎に角原因の究明を・・・」

????
「そうですか、予想外の事態・・・
それは本当ですかな?」

スコール
「なに?」

????
「我々をハメたのではないかと言っているのだが・・・?」

アルヴィス
「待たれい。
その発想はもっともじゃがのぅ・・・
この件に関して我々は無関係じゃ。」

????
「信じられませんなぁ・・・
と言うか、もう何でもよいのですがね。」

スコール
「・・・・・」

????
「さ、て・・・テッカも居なくなってしまったことですし、私は私の仕事をさせてもらいますかね。」



仮面の男は右の手を後ろに回したかと思うと、次の瞬間にはその手に刃渡り10cmはある鋭利な鉤爪を装着していた。
そして目にも止まらぬ速度でスコールの目の前まで踏み込む。


????
「私の本当の仕事はこの場に居る全ての要人の殺害。
ま、仕事と言っても依頼主は私自身ですがね。。」



ガッ!!!!


右手を下から振り上げるようにしてスコールを斬り裂く。
スコールは咄嗟に腕付近に『鋼猿』をかけることでこの一撃を防ぐ。
仮面の男の攻撃はとてつもなく重く、鋭い。
スコール自身、今の一撃を『鋼猿』程度で防げたことに幸運を感じるほどだ。
鉤爪が当たった場所がジンジンと痛む。
『鋼猿』越しにこれほどのダメージを通すのはそこまで簡単なことでは無い。
『唸犬』をかけた一撃でも普通の使い手ならここまでのダメージを通せない。


スコール
「コイツは・・・『氣力』・・・。」

????
「流石にご存知ですか?」

スコール
「そりゃあ、この世界で生きてれば万と会う力だぜ。
ま、オレは使えないけどよ。」

????
「ふむ・・・ではあまり面白くもならなそうですね・・・」

スコール
「それは、これを見てから言うんだな!!!」



スコールが仕掛ける。
『速鳥』で踏み込み、仮面の男の腹部に拳を見舞う。


ボゴゥ!!!!!


衝撃が背中を突き抜ける。
が、その体にダメージが通った形跡は無い。


????
「無駄ですよ?『氣力』による防御を崩せるのは『氣力』による一撃だけです。『氣力』を使えない貴方では私にダメージを与えることは・・・」

スコール
「それは、どうかな?」



スコールの腕を中心に青いエネルギーが渦を巻く。
それはまるで生きているかのように蠢き、スコールの右腕を覆う。


スコール
『螺旋砕波』(スパイラル・ドライバー)ーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!



ボギュギュギュギュ!!!!!!!!!!!!!!!!


右腕を中心に螺旋状の波動が正面に駆け巡る。
その波動は仮面の男の腹部を貫き、背中から抜け、そのまま男を吹き飛ばす。


ドゴーーーーーーーーーーーン!!!!!!


壁まで吹き飛び、激突するとその波動は止まる。
スコールの正面方向には巨大なドリルか何かで抉ったような跡が残る。
そしてその跡の先に仮面の男が倒れていた。


スコール
「『氣力』を突破できるのが『氣力』だけなんてのは慢心以外の何物でもないぜ・・・
オレの『螺旋力』を舐めるなよ。
コイツは、全てを貫く力だ!」

アルヴィス
「おい、カッコよく決めてるとこ悪いんじゃが・・・
何を勝手に戦闘始めとるんじゃ、これじゃあ後で色々面倒になるじゃろうが・・・」

スコール
「ああ?そうは言うが、どうせオレがやらなくてもアルが殺ってたろ?」

アルヴィス
「ま、それはそうじゃがな。
売られた喧嘩は極力買うのが心情じゃからな!!」

スコール
「完全に思考がチンピラレベルだよこの爺様・・・」

????
「『螺旋力』・・・そうですか、まだその使い手が残っていたんですね・・・嬉しいです!!!」

スコール
「ああ?お前無理に動かねぇ方が良いぞ?
普通なら中身全部消し飛んでて死んでるとこだぜ?」

????
「なぁに、問題無いですよ・・・もう、治りましたから。」



そう言って仮面の男は立ち上がる。
その腹部に開けた筈の風穴が完全に塞がっている。
スコールは目を疑う。
流石にこれはおかしすぎる。


スコール
「何かの能力か何かか?」

????
「さあ、それはお答えしかねますが・・・
いいでしょう、折角面白くなってきた所だ・・・
私の全てを曝け出して貴方を殺すことにしましょう。」



メキョ。


一瞬だった。
仮面の男が一瞬でスコールに近付き、頭を正確に蹴り抜いた。
スコールはそのまま地面に叩きつけられる。
頭部と地面に叩きつけられた部位が激痛を訴える。
しかし痛みを感じるよりも早く、男の鉤爪がスコールの腹部を抉る。


ブシャッ!!!


鮮血が飛び散り、二本の切り傷が下腹部から胸の辺りまで走る。
『鋼猿』をかけた筈なのに、いとも容易くその壁を斬り裂いてきた。


スコール
がああああああああああああああああああ!!!!!!

アルヴィス
「スコール!!!」



アルヴィスは腰にさげた『白龍』に手を伸ばす。
そして抜こうとする刹那、


スコール
手を出すな!!!!!!

アルヴィス
「!!?」

スコール
「アル・・・コイツには手を出すな・・・オレが、相手する。」

アルヴィス
「しかし・・・!」

スコール
「この先、オレがどうなっても・・・絶対に手をださないでくれ。
頼むよ・・・」

????
「どうしました?
この程度なんですか、ツマラナイ・・・
貴方の師匠は、もっと喰らいついてきましたよ?
ボロボロになりながらも、必死にね。」

スコール
「!!!」



スコールの体からさっきよりも激しく『螺旋力』が迸る。
その力はドリルとなって仮面の男に飛ぶ。
ドリルが男の仮面を吹き飛ばす。
仮面の下から出てきた顔に、スコールは核心を得る。


スコール
「その鉤爪、その風貌、その能力、そして・・・その顔、やっぱりお前か・・・ドレイク!!!!!!

ドレイク
「やっと気づきましたか?
だいぶ遅かったですね、仮面越しでもこの殺気を感じればすぐ気付くと思っていたんですがね・・・」

スコール
「薄々感づいてはいたさ・・・
だが、核心は無かった。
間違ってちゃあ申し訳ないからな・・・殺してからじゃあ。」

ドレイク
「言いますね・・・地面とにらめっこしている方が・・・」

スコール
「なぁに・・・ちょっと一人寝がさみしくて床と合体してただけだよ・・・
こっからが本番だ!!!」

ドレイク
「床オナは最終的に子作りの時に大変になりますよ?」

スコール
「もう娘と息子が一人づついるからこれ以上要らねぇよ・・・
おら、さっさとこいよ!!
オレが全部貫いてやる!!!」

ドレイク
「いいでしょう。
貫かれる前に、貴方の全てを斬り裂いてあげましょう。」






第4話「弟子と意思。。」






メダ
「いつつ・・・
って優太の奴はどうした?」

ネロ
「何かさっきの二人を追っかけて下に行ったみたい・・・」

メダ
「はぁ!!?ここ何階だと思ってんだよ・・・
無茶苦茶な奴だぜ。」

ネロ
「優太君も思う所があったんだと思うよ。」

メダ
「仕事ほっぽり出してまでやることか・・・?」

ネロ
「それよりさっきから部屋の中からもの凄い音が聞こえてくるんだけど・・・
何か不味いことになってるんじゃ・・・」

メダ
「そうだな、じゃあ確認しに行くか。
ネロ、動けるか?」

ネロ
「うん、だいじょ・・・痛っ!」

メダ
「大丈夫か!?」



メダはスグにネロの傍に寄るとそう問いかける。
ネロは右足を手で押さえている。
痛めたのだろうか、ネロ自身苦悶の表情を浮かべている。


メダ
「痛むのか・・・?」

ネロ
「う、うん・・・ちょっと捻ったみたい。
私のことは気にしなくていいからメダは中を・・・」

メダ
「・・・・・。」



メダはネロの横に身を下ろすと慣れた手つきでネロを抱え上げる。
膝の裏に右手を通し、左手で背中を抑えるようにする・・・いわゆる横抱き、またの名をお姫様抱っこと言う奴だ。
ネロは急にやられた物だから完全にテンパる。
メダはいつもどうりを装っているが内心ちょっと動悸が激しくなっていた。
そのまま近くのベンチ(元々このフロアは待合室の役目もあるので備え付けの椅子がそこら辺にある)にネロを下ろすと右足に手を添え、


メダ
「脱がすぞ?」

ネロ
「え・・・?あ、うん。」



靴を脱がし、紺色のハイソックスをゆっくり脱がす。
するとその下から透き通るように白い足が露わになる。
足首の部分が赤く腫れているのがよく分かった。
メダはポケットから白い長方形の薄い物体を取り出す。
その片側の薄いフィルムを剥がし、患部に貼りつける。


ネロ
「冷たっ!!」

メダ
「ん、そうか?」

ネロ
「この湿布本当に効くのーー?
メダが携行してるようなの、もう期限切れてそうだけど・・・」

メダ
「失礼な・・・今朝卸したばっかの奴だよ。
ほら、じっとしてろよ包帯が巻けない・・・あと、」

ネロ
「あと?」

メダ
「あ、あんまり脚をバタつかせるな・・・見える。」

ネロ
「・・・・・・・・、!!!?
メダの変態!!」

メダ
「いや、不可抗力だろ!!」

ネロ
「だからってスカートの中覗くってどういう神経してるんだよーー!」

メダ
「いや、まだ見てないし!!」

ネロ
「まだ?」

メダ
「これ以降も見る予定何て無ぇよ!!」



メダは改めて下を向くと、ネロの足に包帯をクルクルと巻いていく。
そんなメダを上から見下ろしつつネロはぼやく。


ネロ
「私だってもう子供じゃないんだから・・・
これくらい一人だってできるんだけどなーー。」

メダ
「そんなの当たり前だろ。」

ネロ
「だったら何でわざわざメダがやってるの?」

メダ
「ほっとけないだろ。普通。」

ネロ
「・・・・・・メダって普段はそっけないけど、こういう時は優しいよね。」

メダ
「オレは何時だって優しいつもりだがな。」

ネロ
「そう思ってる時点でもう色々ダメダメだよね。」

メダ
「ウッセェ・・・ほら、終わったぞ。」

ネロ
「ん、ありがと。」

メダ
「立てるか?」

ネロ
「よっ・・・うん。大丈夫っぽい。」

メダ
「よし、じゃあ行くか。
団長達が心配だし。」

ネロ
「メダの中の優先順位は私の方が上なんだ・・・」

メダ
「はぁ?」

ネロ
「いや、私のこと先に心配してくれたから・・・そうなのかな~って。」

メダ
「そりゃあそうだ。
ネロはオレの・・・パートナーだしな。」

ネロ
「パートナー・・・ねぇ。」

メダ
「え、何か問題あったか?」

ネロ
「私達、もう結構付き合い長いよねーーー。」

メダ
「そうだな。」

ネロ
「昔は私のことお嫁さんにしてくれるって言ってくれてたんだけどなーーー。
あの頃のメダはどこに行ったのかなーーー・・・(遠い目)」

メダ
「何年前の話してるんだ・・・
ほら、そんなことより早く行くぞ。」

ネロ
「・・・・・・鈍感。」









ドレイク
「ほほぅ、少しばかり動きが良くなりましたね。」

スコール
「そうかぁ?
お前が遅くなっただけじゃないのかよ!!」



ドブッ!!


スコールの拳がドレイクの脇を撃つ。
そのまま拳を捻り込み、深々とめり込ませるとその拳から衝撃が駆け巡る。


ボギュン!!!


その衝撃が撃ちこんだ所と対角線上の方向へ抜ける。
ドレイクの口から大量の血が吐き出される。
ドレイクはそのまま態勢を崩した。
スコールは左足を一歩踏み込み、右拳に『螺旋力』を収束させる。
するとそこに一本の煤けたドリルが姿を現す。


スコール
『ギガ――――――――――――――――――――!!



ドリルが回転を始める。
その回転は周囲の大気すら螺旋切りながら激しく回り続ける。


スコール
ドリル―――――――――ブレイクーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!



ドリルの先がドレイクの腹部に触れる。
そのまま肉を引き裂き、内臓を掻き分け、その肉体そのものを突き抜け、その背中からおびただしい量の鮮血を迸らせる。
即死。
普通ならそうなる筈の一撃。
の筈だ。


ドレイク
「こんな物ですか?」

スコール
「・・・・・!!?」



スコールはドリルを引き抜くと距離を空け、


ドレイク
「まあまあそうお急ぎにならず、ゆっくりしていってください。」



ドレイクの鉤爪がドリルを握って離さない。
もの凄い力で掴んでいるのか全く動かない。
ドリルを回して弾こうと思うもドリルが微動だにしない。
一体どんな強さで握り込んでいるのか。


ドレイク
「残念です。
十二年もあったのにこの程度なんですか・・・すっかり、興醒めですよ。」

スコール
「ぐっ!!」

ドレイク
「まあ、元々あの時点で貴方にそこまでの資質を見ていた訳でもありません。
私をあそこまで苦戦させてくれた男の弟子と言うから期待していたんですよ?
それが、このざまとは・・・」

スコール
「な、なんだと!?」

ドレイク
「もういいです。
時間の無駄でした・・・死んでいいですよ?」



一瞬。
ほんの一瞬のことだった。
目の前から忽然と消えたドレイクの気配を背後に感じた一瞬、


ブシャッ!!!!!


右半身から大量の鮮血が噴き出す。
何時の間に斬られていたのか、それすら気付かなかった。
切り傷はかなり深い。
右手の感覚が完全に飛んでいる。
よく見て見ると体と腕が薄皮一枚でギリギリ繋がっている状態だった。
これじゃあ感覚も何も無いに決まっている。


ドレイク
「おや、急所を外してしまいまいましたか・・・?
それでは、これで・・・」

??
「団長!!!」



そんな声と同時にドレイクに向かってくる人影が一人。
影はドレイクに向かって拳を振るう。
その一撃はヒラリと躱される。
その人物はスコールの前に立つと振り返らずに告げる。


メダ
「団長!無事ですか!!?」

スコール
「これが無事に見えるか?
眼科行って来いバカ野郎・・・」

メダ
「す、すいません!!」

スコール
「お、オレの事なんて良い・・・
メダ、逃げろ・・・お前じゃそいつには・・・!」

メダ
「嫌です!!」

スコール
「バカ野郎!!!死にてぇのか!!?」

メダ
「ここで団長を守れないなら死んだ方がマシです!!」



脳裏に響いたその言葉がスコールの記憶を蘇らせる。
あの日、あの時・・・スコール自身が言った言葉。


ドレイク
「誰ですか?キミは・・・」

メダ
「オレはメダ!メダ・カーチス!!
団長の弟子だ!!文句あんのかこの野郎!!!」

ドレイク
「・・・・・昔にも同じようなやり取りをしましたね。
ふふっ・・・それじゃあ、こうしたら『同じこと』になるんですか?
ねぇ?スコール・・・」

スコール
「!!!?
ドレイク!止めろ!!!!!」

ドレイク
「止めてみればいい。
できるなら・・・」



メダには何が何だか分からなかった。
だが、ドレイクの右手が動く。
それだけは分かった。
分かった所まではいい。
その一撃の軌道が全く見えない。
見えないのでは回避のしようも無い。
その一瞬の迷いがこの状況でどういう意味を持つのか知りながらメダは動くことすらできない。


ズバッ!!!!!!


肉を引き裂く音が部屋中に響く。
メダは自分の頬に飛んできた血を手で拭う。
そして、目の前で起こったことに今更思考が追いついた。
メダの目の前に、スコールが立っている。
ドレイクの一撃を一身に受け、その体からは大量の血が流れ落ちていく。


スコール
「ガハッ!!!」

メダ
「団長!!」

ドレイク
「やはり同じですね。
師弟共々、考えることまで同じとは・・・
この子にそこまでの価値があるんですか?」

スコール
「へっ・・・たりめぇだ・・・
コイツは、オレの自慢の・・・弟子で、息子だぜ・・・」

メダ
「だ、団長!!
な、なんで・・・!!?」

スコール
「弟子を守るのが師匠の役目だろう・・・
ま、これ自体師匠の受け売りだけどな。」



スコールは力無くその場に倒れ込む。
今でも血が体中から溢れ出してくる。
さっきの一瞬でどれだけの攻撃を受けたと言うのか・・・
そして次の瞬間、


ボゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!


下から何かが突き抜けてくる。
調度、ドレイクとメダの間に風穴を開けその何かは上昇を続け天井すらぶち破りさらに天へ昇って行く。
地面に入った亀裂がスコールの下まで伸び、その床が崩れ落ちる。
メダはスコールを抱え、階下に落ちていく。
それを追うようにしてドレイクも階下へ降りる。
そこにはさっきとは比べ物にならないほどの殺意と闘気を纏ったメダの姿がある。


ドレイク
「キミは私を楽しませてくれるのかな?」

メダ
「楽しむ・・・?」

ドレイク
「私はギリギリの殺し合いがしたいんだよ・・・
今まで生きてきてそれが叶ったのも片手で数えるほどだ。十二年前の時とか・・・」

メダ
「!!!!
やっぱり、お前が・・・あの時の!!」

ドレイク
「だとしたら、どうするんだい?」

メダ
「決まってるだろ・・・!
お前は・・・お前だけは!!!」









ネロ
「その後は、優太君も知ってるよね・・・。」

優太
「・・・聞いてて思ったんだけど、何でクソジジイは手をださなかったんだよ。」

ネロ
「・・・・・お父さんに止められたから、だって言ってた。」

優太
「それで、納得したのか?」

ネロ
「納得なんてできないよ・・・
でも、お父さんはきっと自分の手で倒したかったんだよアイツを・・・
だからそれをアルヴィスさんは聞き入れて・・・」

優太
「それでスコールさんを見殺しにしたのか!!?
ふざけんなよ!!!!!」



プルルルル。。


そんな時だった。
部屋の電話が鳴る。
ネロはその電話を取る。
つとめていつもどうりに。
その姿が妙に痛々しくて、優太は目を逸らした。


ネロ
「あ、アルヴィスさん・・・。
はい、はい・・・」

優太
「ジジイ!!?」



優太は椅子から勢いよく立ち上がり、ネロの手から受話器を無理やり奪う。
ネロはかなり驚く。
普段の優太からは感じたことの無いような怒気を感じ取ったからだ。


優太
「クソジジイか・・・?」


『優太?
ほほう、久しぶりじゃのう。』


優太
「おい、今ドコにいる・・・?」


『なんじゃ、藪から棒に・・・』

優太
「話がある。
時間なんてとらせねぇからオレと会え。」


『・・・・・・なるほど。
ま、いいじゃろう・・・本部に来い。
調度ワシも話があったんじゃ。』


優太
「首洗って待ってろよ・・・」


『安心せい。毎日洗っとる。』


ガチャン!


ネロ
「・・・・・あ、電話・・・」

優太
「え、あ!!!
すまん・・・つい流れで・・・」

ネロ
「もう・・・しょうがないな・・・
アルヴィスさんに会いに行くんでしょ?
だったらついでに聞いてきて。」

優太
「分かった。その、ごめんな。
怪我しなかったか?
ちょっと無理矢理取りすぎた・・・」

ネロ
「大丈夫。
別に何ともなってないよ。」

優太
「そっか・・・良かった。
じゃあ、また後で来るよ・・・。」

ネロ
「うん、またあとで・・・」



そう言い残すと優太は事務所を後にする。
向かう先は東街。
ギルド本部、アルヴィスの元だ。









「遅いですね・・・優太さん。」

綾香
「あ、レンねー!
この本レンねーが欲しがってるやつじゃない?」


「あ、そのとうりです。
綾香ちゃん、ありがとう。」

綾香
「他にはどんなのが欲しいの?
あやかが探したげる!!」


「そうですね~~・・・それじゃあ、」





店の外、路地の陰から店の中を覗く人影が二つ。
両方とも何故かそれなりに立派な鎧を身に纏っている。
その二人は店の中に居る一人の少女と幼い少女の二人組を見ながら、


??A
「あの人か?」
??B
「た、確かに似ていらっしゃる・・・
とりあえず団長に連絡するか?」
??A
「そうだな。判断は上に任せよう。」
??B
「しかし何でまたこんな所に・・・?」
??A
「知らん。
だが、もし本人ならご同行願わなければならないだろうな。」



二人組の片方が通信機の様な物で連絡を取り始める。
もう一人は店の中を注視し続ける。
その男の目線の先には蓮の姿があった。








第5話「修行、開始。。」






優太は東街のギルド本部前まで来ていた。
何か大事なことを忘れている様な気がしたがそんなことはどうでもいいと切り捨てた。
一歩を踏み出し、スイングドアーに手をかけ中に入る。
いつもよりも本部は閑散としており、スグに目的の人物を見つけた。
と言うか入ってすぐ真正面に立っていた。
あまりにもいつもどうりのその姿に優太の中で何かが切れる。
優太は感情に任せ、さらに踏み込む。
一瞬でアルヴィスとの距離を詰め、その鳩尾に今持てる最高の一発を撃ちこんだ。


ボグゥッ!!!!!!!!


かなりの手応えを右手に感じながらもアルヴィスは全く微動だにしていない。
その表情はいつも以上に涼しげだ。
そのまま、怒りのままに優太は語気を強めて言い放つ。


優太
「何でテメェはスコールさんを見殺しにするようなことしたんだ!!!」

アルヴィス
「やはり聞いたのか、あの日の事を・・・。」

優太
「ああ・・・ネロにサラッとだけどな。」

アルヴィス
「あの場はああするしかなかった。
少なくともワシは奴の意志を尊重したまでじゃ。」

優太
「だからって・・・
目の前で殺されるのを黙って見てたって言うのかよ!!!」

アルヴィス
「そうなっても手を出すなと事前に言われておってな・・・。」

優太
「ふざけんな!!!
アンタ強いんだろ!!?何で助けなかったんだよ!!!
いま、メダがどうなってっか知ってんのか!??
スコールさんを失って失意のどん底だ!!」

アルヴィス
「知っとるよ。」

優太
「じゃあ・・・!!」

アルヴィス
ワシとて、辛い!

優太
「!!?」

アルヴィス
「戦友を失い、悲しまない人間がどこにおる・・・。
ワシとて辛い。
じゃが・・・スコールは絶対に手をださないでくれと言った。
戦友との約束は、何よりも厳守すべき物なんじゃ・・・!」

優太
「・・・・・約束・・・」

アルヴィス
「言いたいことはそれだけか?
なら、ワシの話を聞け。」

優太
「何だよ・・・」

アルヴィス
「お前は弱い。」

優太
「ああっ!!?」

アルヴィス
「お前も分かったじゃろう。
ドレイクと戦って自分の弱さ、世界の広さを。」

優太
「それは・・・」

アルヴィス
「じゃが・・・内に秘めた素質だけはワシと同じ物を感じておる。
訓練しだいでお前はかなり伸びる。」

優太
「何が言いたいんだよ・・・」

アルヴィス
「優太、お前ワシの弟子になる気はないか?」

優太
「断る。」

アルヴィス
「言うと思っとった。
ならこうしよう、数日ワシと稽古をしてみんか?」

優太
「断る。」

アルヴィス
「強くなりたくはないのか?」

優太
「なりたいことはなりたいがクソジジイに教わるのは嫌だ。」

アルヴィス
「なるほどのぅ・・・。
ま、そこは我慢しろい。」

優太
「い~~~~~~~や~~~~~~~~だ!!!!!」

アルヴィス
「我儘な奴じゃのう。
じゃあ、こうしようかの。
鳴、この依頼書を『暁の地平線』に出すぞい。」


「え?あ、はい・・・って、コレ・・・!!」

優太
「ん?な、何だよ・・・鳴、どうかしたのか?」


「『暁の地平線』団長は速やかに『ギルド』最高責任者であるアルヴィス・S・フォークハートの元で修業を開始せよ。」

優太
「え、断る。」


「無理ですよ・・・アルヴィス様直々の勅命状での依頼です。
断ることはできません。途中で投げ出すことも許されません。
それに、この依頼を請けなければ『暁の地平線』は今後一切他の依頼を請けられなくなります。

優太
えぇえええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!??????

アルヴィス
「ちなみに一切と言うのは本当に全く請け負うことができなくなると言うことじゃ。
今請けてる依頼も全部破棄され、名前のみ『ギルド』に残ることになる。
さて、どうする?」

優太
「て、テメェ・・・!!!
卑怯だぞ!!選択の余地が無いじゃねぇか!!!!!!」

アルヴィス
「だってこうでもせんとお前さんワシとの修行を受けてはくれんじゃろう?」

優太
「どんだけ修行したいんだよ!!!
他の奴とやればいいだろ!!」

アルヴィス
「だから言っとろう・・・
お前さんの中に、ワシと同じ力の片鱗を見たと・・・
その力は制御方法を誤ると国一つ滅ぼしかねないほどの力じゃ・・・。
その制御法を教えるだけじゃ、すぐ終わる。」

優太
「そ、そんな力がオレの中に・・・?
え、オレ主人公みたいじゃね?」

アルヴィス
「お前さん主人公じゃなかったのか?」

優太
「と、兎に角・・・本当にすぐ終わるんだろうな?」

アルヴィス
「まあ・・・早ければ明日中には・・・」

優太
「ぐっ!!だったらとっとと始めるぞクソジジイ!!」

アルヴィス
「こっちにも準備と言う物がある。
あとで連絡をする、そしたら来い。」

優太
「完全に主導権そっち持ちかよ・・・。
まあいいや・・・。
あ、そうだ。ネロに一体何を電話で言おうとしてたんだ?
聞いて来いって言われてたんだ。」

アルヴィス
「ああ、アレは『盛夏祭』の警備についての話をな。
別に取り急ぎどうと言う話でも無い。
今から再度連絡をする。」

優太
「そうか・・・んじゃあオレは・・・」



♪~~~


突如ポケットから電子音が鳴る。
メールの着信を知らせる音だった。
ポケットから携帯を取り出し、確認する。
蓮からだった。
突如、自分がそう言えば蓮と綾香の三人で出かけていたことを思い出す。
ノリとか勢いに任せてこんな所まで来た結果、蓮と綾香を忘れてしまっていた。
メールの本文には


「まだ、メダさん達の所ですか?
綾香ちゃんが寂しがってますので、できればそろそろ戻って来て頂けると幸いです。
その・・・私もちょっと心細いです。
今は中央広場の噴水近くで休憩しているのでできれば早めの合流をお願いします。」



と、書いてある。
優太は時計を確認する。
あれからもう一時間以上も蓮に綾香を任せたままになっている。
優太は脇目も振らず本部を後にした。
中央広場の噴水ならここからスグだ。
駆け足で中央広場に向けて走る。
するとスグに噴水が目に入る。
その近くに、蓮と綾香が居た。
鎧の男達に囲まれるような状態で・・・
その一人が蓮の手を掴み、蓮はそれに抵抗している。
数か月前のテッカの人攫い事件のことが脳裏に蘇る。
気付いた時には地面を思いきり蹴り、100m近くの距離を一瞬で駆け抜けていた。
自分でも『速鳥』をここまで使いこなせるようになっていたのかと驚き半分、蓮と男の間に踏み込んだ優太はその男の手を跳ね除ける。



「優太さん・・・!」

綾香
「パパーーー!!」

???
「・・・・・・何だ、キサマ・・・。」

優太
「それはこっちの台詞だ・・・
誰だテメェ、ウチの蓮に何してやがる・・・
返答次第じゃ二度と見れねぇ顔にしてやってもいいんだぞ?」

???
「ふん・・・ガラの悪い男だ。
こんな男は放って置いてそろそろ戻りましょう。
レオナ様。」

優太
「あぁ!?
誰だよそれ、人違いじゃねぇのか・・・
コイツは、れ・・・」


「いえ、それは・・・私のことです。」

優太
「え?」


「教えてませんでしたか?
私の本当の名前、レオナ・R・エルメス
実は、この国の第一王女です。」

優太
「・・・・・・・・・・またまたぁ~~そんな冗談を。。
ラノベの読みすぎだぞ蓮・・・現実世界に帰って来ーーい。」

???
「キサマ!!さっきからレオナ様に何て馴れ馴れしい口の聞き方を!!
この場でその舌、斬り落としてやろうか!!?」


「シオン!!
貴方こそ私の友人に対して無礼ですよ!!
剣を納めなさい!」

シオン
「も、申し訳ありません!!」

優太
「え・・・何この空気、マジなの?」


「マジですが、何か?」

優太
「蓮のお姫様になりたい願望ではなく?」


「そんなのありませんよ・・・元からそういう境遇ですし。」

優太
「ラノベの読みすぎで現実と空想の区別がつかなくなったとかじゃなくて?」


「そんな優太さんじゃないんですから・・・」

優太
「ちょっと蓮さんそれどういう意味!!?
オレちゃんと現実と空想の区別くらいつくよ!!?
ちょっと心外なんですけど!!」

シオン
「レオナ様・・・お話の途中申し訳ありません。
そろそろ一緒に王城へ来てはくださいませんか?」


「何度も言いますが、今は帰る気はありません。」

シオン
「ですが・・・『盛夏祭』の準備を指揮する者が必要なのです!!
今一度王のために・・・」


「ごめんなさいシオン・・・今はこれ以上何も言わないでください・・・」

シオン
「・・・・・分かりました。
今日の所はコレで失礼します。
もし気が変わられたら、王城の方にお越しください。
我々、『騎士団』一同は貴女さまを何時でもお待ちしております。」


「・・・・・。」



それだけ言うと、シオンと呼ばれた男は同じく鎧を着た数十人を連れ、城の方へと行進していく。
その背中を、優太も蓮も静かに見送った。









「さきほどはお見苦しい所をお見せしました。」

優太
「いや、別に気にしてないけど・・・
それよりさっきの連中は?
『騎士団』とか言ってたけど・・・」


「『騎士団』と言っても色々ありますが・・・
あのシオンがまとめている人達は基本的には王室直属隊と言って・・・
私とお父様を守ると言うとてつもなく重要な役目を持っているエリートさん達ですよ。」

綾香
「あ、それ最近習ったよ~~。」

優太
「『盛夏祭』って言うのは?」


「この国では年に二回、大きなお祭りが催されるんです。
夏に行われる『盛夏祭』、冬に行われる『聖夜祭』。
『盛夏祭』の方は今年分の豊作を祈る祭りで、大陸各地から大勢の人達が訪れるとても盛大な物なんですよ。」

優太
「ふーーーん。
それの仕切り役を蓮にやらせたいって話だったのか?」


「そうみたいですね・・・
まあ、もともと私は父ともアレ以来会っていませんし・・・。
こんな私が政を執り行うなんて、おこがましいことです。」

優太
「アレ以来?」


「いえ、こちらの話です。」

優太
「でもどうせ蓮がやらなくても他に誰かが居ると思うがな。」


「そうですね・・・でも・・・」

優太
「?」


「私も・・・『盛夏祭』を盛大に執り行いたいと言う気持ちはあるんですよ。
でも、今更父と会って上手くできるのかと思うと・・・」

優太
「何だ・・・別に嫌って訳じゃないのか。
だったら今からでも遅くないから行ってきたらどうだ?」


「!?
優太さん、何を言ってるんですか!」

優太
「いや・・・やっぱり何するにしてもさ・・・
蓮がやりたいことするのが良いと思うんだよな。
それに、親父さんと仲直りしないまま居るってのも結構辛い物があると思うぜ。」


「・・・。」

優太
「やるかやらないかは別にしてさ、ちょっと行ってきてみたらどうだ?
もし、何かあっても・・・オレが助けに行ってやるからさ。」


「はい。それは、別に何も心配してません。
分かりました。
少し行ってきますね・・・」

優太
「それがいいよ。
素直に生きた方が、何かと得な物だぜ。」


「はい!
それでは、いってきます。
優太さん、綾香ちゃん。」

優太
「おぅ!帰りが遅くなるようならちゃんと連絡しろよーー。」


「分かってまーーす。」

綾香
「レンねーどこ行くの?」

優太
「んーー?ちょっと、仕事しに。」



プルルルル。。


優太
「誰だ・・・、ん~~?登録外・・・もしもし。」


『おっ!ワシワシ!』

優太
「ワシワシさんなんて知り合い居ないでーーす。」



ブツッ!!


綾香
「だれから~~?」

優太
「ワシワシ詐欺さんから。」

綾香
「ああっ!今はやってるはんざいだね!!
あやか知ってるよ!」

優太
「そうか、綾香は騙されちゃダメだぞーー?」

綾香
「うん!と言うかそれ以前に・・・
電話はほとんどえりすが出ちゃうから、あやかが取ることないんだけどねーー。」



プルルルル。。


優太
「もしもし。」


『アルヴィスじゃが・・・』

優太
「そんな人知りません。」



ブツッ!!・・・・・プルルルル。。


優太
「ひつけぇんだよ!!
話したくないってことくらい察しろよ!!
てか何でオレのケータイ番号知ってんだよ!!?」


『どんだけワシのこと嫌いなんじゃお前さん!!
まあよい・・・そろそろ準備が整った。
東門の先の湖で待っとるからスグに来い。』


優太
「湖?ああ、アレか・・・
分かったよ、その内行く。
てかだから何でオレのケー番を知ってるのかと・・・」


『今すぐ来い。』

優太
「おい、だから何で・・・」



ブツッ!!


優太
「野郎・・・シカト決め込みやがった・・・
マジでどっから割れたんだ・・・
やっぱ鳴辺りかな~~~、番号交換したし・・・」

綾香
「パパ、お仕事?」

優太
「ん?いや、仕事ではないけど・・・
ちょっと出かけなくちゃならんみたいだ。
綾香、悪いけどまた後で遊ぼうな。」

綾香
「うん・・・。いつ帰ってくる?」

優太
「夜までには必ず帰るよ。
送ってくから、お家で待っててくれるか?」

綾香
「うん・・・、分かった。パパ、気を付けてね。」









その後、綾香を暁館に送り届け、スグに湖に向かう。
東門を出て少し街道を行くと、右手側に大きな湖がある。
「ディープレイク」と言う名が示すとうり何か深い湖らしい。
どれくらいかは正確には知らないのだが、兎に角深いらしい。
その湖のほとりにアルヴィスは立っていた。
一日に何度も見たくない顔を今日はもう何度見たことか・・・
優太はもう色々テンションが下がりまくりの弱弱しい言の葉を紡ぐ。


優太
「で・・・具体的に何を始めるんだ?」

アルヴィス
「優太、お前にはまず『氣力』を操れるようになってもらう。」

優太
「『氣力』?ああ、何かそんなのもあったなーー。
でもアレって簡単に使えるようにはならないって聞いたぞ?」

アルヴィス
「いや、大丈夫じゃ。
お前さんは既に一回ほど使って戦っておるじゃろう。
その感覚を思い出せばよい。」

優太
「いや・・・全く覚えてねぇんだけど。」

アルヴィス
「それも問題無い。
今から手本を見せる、それを真似するだけで使えるようになるじゃろう。」

優太
「そんな簡単にいくか~?」

アルヴィス
「大丈夫じゃ、お主は完全な氣力型。
ものの数時間でマスターできる。と思う。。

優太
「おい、最後にボソッとなんつった・・・?
まぁいいや、やるならとことんやるまでだからな!!」






第6話「アラドとゼオラ。。」






王都上空。
大体高さにして地上から五千メートルと言った所だろうか。
そこに金属のボードに乗った一人の青年がいた。
その背中にはハルバートを背負っている。
ボードはサーフィン用のボードを金属製にした感じとでも言うのだろうか。
後部部分には三つのブースターが付いている。
が、今は底に取り付けられている浮力を生む機構のみが働いている為か、ブースター自体は完全に停止している。
そのボードから王都を見下ろすようにしながらその青年は耳に掛けているハンズフリーのマイクへ向けて語りかけている。


アラド
「ゼオラ、目標の位置は?」


『大体その真下よ。
さっきから動き無し。』


アラド
「そっか。て言うかさ・・・
やれどもやれども仕事が片付かないな・・・。」


『まあほとんどの人達が出張しちゃってるしね。』

アラド
「はぁ・・・『盛夏祭』前だってのに何でこんなに人手不足なのかねぇ・・・」


『仕方ないでしょ。
同盟組んでる国で内乱が起こってるんじゃあ無視決め込む訳にもいかないじゃない?』


アラド
「だったら『騎士団』が出ればいいと思うんだよね・・・
何で今回に限って『ギルド』から9割も戦力を出したんだろう・・・
何か裏でもあるんじゃないか?」


『そんなの知らないわよ・・・。
アラド、今は目の前の仕事に・・・』


アラド
「どうした?
今更下着をつけてないことに気付いたのか?」


『とりあえず後で脳天陥没させるとして・・・相手が動いたわ。
どうやら取り引きを終えたっぽい。』


アラド
「何か持ってるのか?」


『うん。何か大きなカバンを持って出てきた。
如何にも怪しいわ・・・これは黒っぽいわね。』


アラド
「じゃあ、確保か?」


『ん・・・?あ!!』

アラド
「どうした!!?」


『魔導車に乗り込んだ!
尾行してたのがバレてた!?
いや、もともとそう言う段取りだったのかも・・・!!』


アラド
「魔導車って、普通の奴か?」


『うーーーん。多分・・・
とりあえずアラドがやってるみたいなカスタムはされてないかも。』


アラド
「じゃあ、問題ねぇな・・・」



フッと線が切れたようにアラドとボードが垂直に地面の方を向く。
そのまま重力に引かれるようにして真っ逆さまに落下を始める。


アラド
「そこらのノーカス魔導車がオレの『ビルドイーゲル』の前を走れると思うなよ・・・」



後部の左右に付けられたブースターが火を噴く。
落下の速度が増し、一呼吸もしない内に西街の一角に降り立つ。
地面スレスレまで一気に落下し、激突寸前でボードの後部に体重をかけつつ底部前面に取り付けられているバーニアを使い、ボードを後ろに傾けて地面と水平にする。
バーニアで姿勢制御を行いつつもブースターからは未だ火が噴きだしている。
そしてそのまま正面に向かって一気に駆け抜ける。


『あんたまた無茶して!!!』

アラド
「え!!?何だって!?
ぶっちゃけもの凄い勢いで風切ってるから全く聞こえねぇわ!!」


『あんた相手の場所分かってんの!??』

アラド
「分かってるよ!!あの目の前にある・・・
なっ!?アレってビルガー社の最新型じゃねぇか!!!」


『そんなの知らないわよ!!
てか普通に聞こえてるんじゃないのよ!!』


アラド
「なぁゼオラ!アイツらって捕まえる訳だろ?
そしたらつまり、あの車両は持ち主が居なくなる・・・
貰っても良いってことか!!?」


『なわけないでしょ!!!
普通に親族とか辺りに返却されるに決まってるでしょうが!!!』


アラド
「何だ・・・一気にやる気失せたわーーー・・・」


『バカなこと言ってないでとっとと止めてきなさい・・・
さもないと脳天陥没を二連発に増やす・・・』


アラド
「謹んでやらせていただきます。」


『よろしい。
てかやっぱり聞こえてるんじゃないの・・・』



アラドはそのままの速度で魔導車に横付ける。
そのドアに向かって右手でノックする。
すると中の中年の男は豆鉄砲を喰らったような顔をする。
それもそうだろう。
結構良い感じの速度で走ってる筈の車の横に生身の人間が平然とついて来ているのだから。
自然とアクセルを踏み込まれる。
爆音を鳴らしつつ、道行く人そっちのけで道を疾走していく。


アラド
「す、スゲェ・・・
流石はビルガー社の最新型・・・ノーカスであそこまでの速度が出るのか!!
ほ、欲しい・・・!」


『アンタこの前まで「外界」のホンダ社製のV何たらってバイクが欲しいって言って無かった?』

アラド
「ゼオラは何も分かってねぇなぁ・・・
男ってのは自然と速さに惹かれちまうもんなんだよ・・・。」


『ごめん。一生分かんない。』

アラド
「だろうな。
ま、いいや・・・『イーゲル』から逃げられる訳無いし・・・
久方ぶりに行ってみるか・・・フィジカル・フル・バーストを!!」


『無駄にポイント99%消費して負けちゃえばいいわ・・・』

アラド
「ちょっとした冗談じゃなイカ・・・
あんな奴に『イーゲル』の超音速を見せてやる必要は無いだろ・・・
亜音速で十分だな。」


『亜音速だろうが、超音速だろうが何でもいいからとっとと捕まえてきてよ。
犠牲者が出る前に・・・』


アラド
「了解。んじゃあいっちょ行ってくる!
行くぜ『イーゲル』!!!」


ボウッ!!!


後部のブースターからさらに激しい音と共に火が噴出する。
瞬く間に魔導車に追いつくとそのボディに右手をかける。


アラド
「上手くいくとオレの物になるかもしれない奴だ・・・
丁重に扱うわないと。」

おっさん
「て、テメェ!!は、離れやがれ!!!」

アラド
「それじゃあ車停めてくれよ。
そしたら離してやらんでも無いぞ。」

おっさん
「断る!!

アラド
「何でだよ・・・何かやましいことでもあるのか?」

おっさん
「ぐっ!もういい!
離れないなら・・・こうするだけだ!!!」



すると魔導車を左に思いきり寄せ始める。
左側には壁がある訳で・・・
このまま寄せられると壁に擦りつけられて洒落にならない惨事になる。


アラド
「おいおい!!何してんだよ!
元戻せテメェ!!」

おっさん
「へっ・・・エアボード何て乗ってる自分を呪え!!
ソイツは確かに速い。
だが、搭乗者の防衛面は最低クラスだ!!!
とっとと離した方が身のためだと思うぜ!!」

アラド
「・・・・・このままだと不味いな。
壁に擦りつけられたら・・・擦り傷が車についちまう!!!」

おっさん
「え?」

アラド
「よし。じゃあ手っ取り早くタイヤパンクさせるか。
擦り傷直すより、タイヤ交換の方が楽だしな。」

おっさん
「え?え?」



アラドは背中に背負っているハルバートを手に取る。
先端には鋭い槍が付いており、その下には三日月状の斧とその反対側には鋭い凹凸が幾重にも並ぶ鉤爪が付いている。
棒は金属製なのか太陽光を反射してキラリと光っている。
長さにして約2m弱。
そのハルバートを振りかぶると魔導車のタイヤ目掛けて振り抜く。


ズバッ!!!!!


真ん中から二つにバッサリと切断される左側前後輪タイヤ。
支えを失いそのまま車体が左に傾く。
アラドはすぐさま減速し隙間から抜け出すと、魔導車の後ろに位置取る。
そしてブースターを噴かせ加速する。
ハルバートを再度振り上げ、もう一度今度は右側の前後輪タイヤを斬り抜ける。


ズバン!!!!!


完全に支えを失った車体が地面に叩きつけられる。
そのまま慣性の法則に乗っ取り、車体は滑り続ける。
斬り抜けたアラドはある程度の距離を空けてから振り向く。
路面を滑り続ける車に向けてアラドは片手を上げる。
調度、滑るスピードが落ちてきた所だったのかアラドの手に触れた魔導車はその動きを止めた。


アラド
「とりあえず・・・車内を見せてもらってもいいかな?」

おっさん
「・・・・・・・はい。」





ゼオラ
「また随分とザックリやったわね・・・。」

アラド
「いや、傷付けるよりは修理費が安く済むかと思ったんだよ。
でも、結局の所はタイヤ総替えじゃあ高くつくことを今更気付いたんだ・・・
どうしようゼオラ。」

ゼオラ
「知らないわよ。
て言うかそもそもコレあんたのじゃないからね。」

アラド
「あっ!それもそうか!!
ついつい手に入る算段で計算しちゃったよ!!
じゃあ別に気にしなくても大丈夫か!」

ゼオラ
「ま、何でもいいけどねーーー。
それより、やっぱり黒だったわ。」

アラド
「下着の色が?」



ゴスッ!!!!


アラド
「ヘモグロ!!!」

ゼオラ
「公衆の面前でそういうこと平然と言わないように・・・」

アラド
「わ、悪かったとは思うけど・・・
有無を言わさずに殴るのはどうかと思う・・・」

ゼオラ
「何を勘違いしてるのか知らないけど今のはさっきの分よ?
こっからが今の分・・・」

アラド
「わ、悪かったよマジで!!!ちょっとした冗談だろ!?
これくらいサラッと流してくれって!!」

ゼオラ
「本当に調子いいんだから・・・
そうやってバカなことばっかり言ってるから未だにに彼女の一人もできないのよ・・・」

アラド
「えっ!!?やっぱりそうかな!!
ゼオラもそう思う!!?」

ゼオラ
「いや、て言うか120%そうに決まってるでしょ。」

アラド
「20%も振り切るほどこれは不味いのか!!
くっそぅ!!ちょっとエロい方が良いって昔、友達のゴンザレス君が教えてくれたんだけど・・・
アレは嘘だったのか!!」

ゼオラ
「いや、そもそもゴンザレス君って誰よ・・・
そんな奴全く記憶にないんですけど。」

アラド
「そりゃあそうだろ・・・
ゴンザレス君は、オレの心の住人だからな・・・(遠い目)」

ゼオラ
「さて、バカは置いといて帰りますかね・・・」

アラド
「ちょ!!待てよゼオラ!
せめて魔導車のエンジンをバラすまで待ってくれ!!!
あんなスピードが出るくらいだ・・・きっとエンジンにその秘密が集約されてるに違いない!!」

ゼオラ
「どんだけ欲しいのよ!!
だからお前のじゃないって言ってんでしょうが!!!
黙って本部に報告に帰るわよ!!!」

アラド
「うぃーーーーーー。」









基本的に依頼を達成したら本部に直接報告するか、報告書による報告を持って依頼は達成され報酬が払われる。
アラドとゼオラは報告書での報告ではなく、直接本部に赴き報告をしていた。
こっちの方が報酬が払われるのが早い。
報告書による報告はまず報告書にまとめなければならない要件が多く、誰でも書ける訳でも無い。
なのでそれぞれの『戦団』には個別にその報告書を書く専門の人員が設けられている。
どうしても本部に行くほどの時間が取れないくらい忙しい、ランクの高い『戦団』でも無い限りは基本的に直接報告するのが当たり前である。
アラドは自分達を担当している窓口のメリッサに今回の依頼達成の報告をしていた。


メリッサ
「はい、ご苦労様。これが報酬ね。」

アラド
「え、現金で?
何時もみたく直接入れてくれるもんだと思ってたのに・・・」

メリッサ
「アルヴィスさんからの差し入れだって。
今はただでさえ大変なのに人手不足でしょ?
だから一人分の仕事量が増えちゃってるから、ちょっとしたボーナスだって。」

アラド
「なんだ、そういうことか。
でもだったら尚のこと直接入れて欲しかったな。」

メリッサ
「いいじゃないの。
それでちょっと遅めのランチにしたら?
ゼオラも喜ぶと思うよ。」

アラド
「は?ゼオラが何で・・・
ってそうか、アイツも腹減ってるって話か!
オレも腹減ってるし、確かに調度良いな!
メリッサ、サンキュー!」

メリッサ
「礼ならアルヴィスさんに言ってあげなよ。
じゃ、また頼むよ。」

アラド
「おぅ、またなーー!」

メリッサ
「(アイツも相当な鈍感野郎だね・・・ゼオラ、苦労してるなぁーーー・・・。)」





ゼオラ
「ん、おかえり。
って、なによその袋。」

アラド
「何かアルヴィスさんがボーナスって言ってくれてるらしいぜ?
これで飯食いに行こう、ゼオラ。」

ゼオラ
「え、アラドと一緒に?」

アラド
「ん、嫌か?なんならいつもみたく別々でも一向に構わないけど・・・」

ゼオラ
「い、嫌なんて言ってないでしょうが!!
い、行くわよ!折角だから・・・」

アラド
「そっか、じゃあなに食べる?」

ゼオラ
「あ、歩きながら決める・・・。」

アラド
「そうだな、それがいいな。
じゃあ南街に行ってみっか。」

ゼオラ
「う、うん。」









南街には宿場が多くあり、それと同時に多くのカフェやレストランなどの飲食店も多く立ち並んでいる。
飲食店の種類は豊富で、和、洋、中など外界の物まで多く取り入れられている他、『魔法界』中の様々な料理が並んでいる。
アラドとゼオラは適当に選んだ洋風の店でメニューとにらめっこしている状態だ。


アラド
「とりあえずこのシェフの気紛れコースDって奴にするか。」

ゼオラ
「Dって・・・四種類もあるんだ・・・」

アラド
「何かZまであった。」

ゼオラ
「どんだけレパートリーあんのよ!!」

アラド
「じゃあ、ゼオラはZでいいな。」

ゼオラ
「何でよ?」

アラド
「ゼオラだけに。」

ゼオラ
「だったらアラドこそAにしなさいよ・・・」

アラド
「いや、今はDって気分なんだ!!」

ゼオラ
「だったら私だって今はHって気分よ。」

アラド
「お前実は結構溜まってるんだな・・・」

ゼオラ
「何がよ!!別に他意なんて無いわよ!!
さっさと注文しなさいよ!!!」

木村
「失礼。ご注文はお決まりですかな?」

アラド
「あ、はい。
このシェフの気紛れコースのDとHで。」

木村
「Dはステーキになりますが、焼き加減はどうされますか?」

ゼオラ
「焼かなくて良いです。生でお願いします。」

アラド
「食えるか!!
すいません、ミディアムレアでお願いします。」

木村
「かしこまりました。
Hの方はデザートが付きますが、ヨーグルトとアイスどちらがよろしいでしょうか?」

アラド
「何か両方所望みたいなんで両方持ってきてやってください。」

ゼオラ
「いるかそんなに!!
すいません、アイスでお願いします・・・」

木村
「かしこまりました。」



そういうとその東洋風の男は奥に消えていった。
アラドは適当に頬杖をつくとゼオラの方を見ながらぼやく。


アラド
「別に我慢しなくていいんだぜ?」

ゼオラ
「アラドこそ生が食べたかったんじゃないの?」

アラド
「お前のデザート両方は可能だけど、肉の生食いは無理だろ!!
最近ではレバ刺しが規制されてるくらいなんだぞ!!」

ゼオラ
「え、それって随分と未来の話じゃない?」

アラド
「そうだっけ?
いや、でも肉を生で食ったら確実に腹壊すだろうが・・・」

ゼオラ
「アンタの鋼鉄の胃袋ならあるいわ・・・」

アラド
「無い無いそれは無い。。」

木村
「お客様、本日の日替わりサービスをお持ちしました。」

アラド
「サービス?」

木村
「はい、本日はカップルの方限定でドリンクのサービスをさせていただいております。」



そう言って出されたのは一つの大きなグラスだった。
中には碧く透き通ったキレイな液体が入っている。
氷の上に軽く乗せられた赤いサクランボが良いアクセントになっている。
しかしこのグラス、問題が一つあり・・・
何故かストローが二つ入っている。
東洋人の男はニッコリ笑顔で「どうぞごゆっくり。」とまた奥に消えていった。
アラドは苦笑いを浮かべながらグラスをゼオラの方へ寄せて


アラド
「ははは、か、勘違いされてるみたいだな・・・
オレは別にいいからゼオラが飲めよ。」

ゼオラ
「え・・・うん。
それはいいけど・・・せっかくだし、一緒に・・・」

アラド
「え?なに?マジで聞こえなかった悪い。」

ゼオラ
「な、何でも無いわよ!!!」



ゼオラはグラスを手に取るともの凄い勢いで中身を飲んでいく。
半分も飲んだところで今度はアラドの方へグラスを寄せた。


ゼオラ
「は、半分やるわよ・・・
料理食べる前に水っ腹になっても困るしね。」

アラド
「ん、そうか?
実はちょっとどんな味か気にはなってたんだよね。
サンキュー貰うわ。」

ゼオラ
「う、うん。」

アラド
「おっ!何だこの爽やかなのど越し!!
ほんのりした甘味が絶妙かも知れない!!!」

ゼオラ
「そ、そうね。
美味しいとは思うわ。」



ピリリリリリリ。。


ゼオラ
「ん、誰かしら・・・」

アラド
「ネロとかじゃね?」

ゼオラ
「あ、ホントだ。よく分かったわね。」

アラド
「オレの美女センサーが反応した。。」

ゼオラ
「またアホ言ってるよこのアホ。
はい、もしもし?」


『あ、ゼオラ?いま大丈夫かしら?』

ゼオラ
「ええ、別に問題無いけど・・・どうかしたの?」


『実はまた新しい仕事が入ってきたの。
私とメダだけだとちょっと大変だから手を貸してくれない?』


ゼオラ
「あーーー・・・
ちょっと今スグは・・・お昼食べてる所で・・・」


『あ、そうなの?
じゃあ、場所だけ教えておくから後からでも来てくれると助かるな。
アラドも一緒?』


ゼオラ
「うん居るよ?バカみたいにドリンク飲んでる。」


『そ、じゃあ邪魔して悪かったわね。ごゆっくり~~。。』

ゼオラ
「別に大したことじゃないでしょ・・・じゃ、できるだけ早く行くわ。」


『うん、お願いね~~。あとアラドとお幸せに・・・』

ゼオラ
「もう、だからそう言うのじゃないんだってば!!!」

アラド
「ネロ、何だって?
オレがイケメンすぎて生きるのが辛いって言ってた?」

ゼオラ
「アンタがイケメンだとするとこの世全ての男がイケメンってことになるわね。」

アラド
「オレどんだけ顔面偏差値低い扱い!!?」

ゼオラ
「それはさておき、ちょっとゆっくり昼食って訳にはいかなくなったわよ。」

アラド
「何だ、もう次の仕事か?
仕事熱心だなネロも・・・」

ゼオラ
「いいでしょ別に。
色々メダにやらせて自信を取り戻させたいんだよきっと。」

アラド
「そうだな。
折角団長になったのにメダの奴ふさぎ込んだままだもんな。
ま、あんなことがあったんじゃあしょうがないとは思うけど・・・。」

ゼオラ
「そうね。
でもいつまでもあのままじゃあ・・・」

アラド
「大丈夫だよ。
アイツはそんな弱い奴じゃないさ・・・
アイツが自分を取り戻すまで、オレ達がアイツを支えてやればいいんだ。」

木村
「お待たせしましたお客様、前菜になります。」

アラド
「よっし、ササッと食べてサクッと次の仕事といくかゼオラ!」

ゼオラ
「ええ!のぞむところよ!!」







第7話「和解と暗躍。。」






優太
「づ、ヅカレた・・・・・・・。」

由紀
「優太、大丈夫?ご飯食べれる?」

優太
「た、たりめぇだぜバカ野郎・・・
コレが食わずにいられるか・・・」

千草
「全くユウ君は・・・
自家発電もほどほどにしないとテクノブレイク起こして死んじゃうよ?」

優太
「お前の脳内誤変換機能は今日も良好だな・・・
て言うかテクノブレイクって言うのは造語であって・・・
実際はそんな医学用語も、言葉も存在しないって知ってたか・・・?」

由紀
「そんなどうでもいい会話のキャッチボールできるんだから実際は大丈夫なんだよね?
なんなら食べさせてあげようか?」

優太
「大丈夫だよ・・・
ちょっとばっかりほっといてくれれば勝手に回復すっから・・・
ん、回復と言えば・・・蓮は?」

エリス
「さきほど連絡がありまして、今夜はお帰りにならないそうです。」

優太
「ああ、なるほど理解した。」

エリス
「それと・・・明日、優太様に城へ来て欲しいと伝えるよう頼まれたのですが・・・」

優太
「城?ん、分かった。」

鳳仙
「え、城?
城って王城のことだよね・・・何でそんな所に?」

優太
「そうだな・・・順序良く話すと・・・」



優太は掻い摘んで昼間の出来事を皆に話す。
みんな思い思いのリアクションを取ってはいるものの、あまり驚いてはいないようだ。
それもそのはずだ。
普段から同い年とは思えないような雰囲気が漂っていた時も多々あったし。
そうじゃなくても『ゲートキーパー』だったり、本の購入資金のこともある。
今更考えてもそういう方面の生まれでも無い限り持ち合わせ無い物を所持していたのだ。
つまりは、そういうことなんだと全員薄々感付いていたのだろう。



「へぇ~~蓮ちゃんってやっぱり良い所の生まれだったんだね~~。」

愛依
「でも言われてみると振る舞い方とかそれとなく気品があったよね。」


「トマトウメェ!!!」

鳳仙
「元からどことなく浮世離れした感性の持ち主だった気がする。
オレ達と違って常識人だったからあんまり目立って無かっただけかも。」

千草
「うん、鳳仙みたいなのが近くにいるとみんな普通に見えちゃうよね。。」

鳳仙
「それどういう意味だよテメェ・・・ケンカ売ってんのか?」

千草
「まっさか~~。褒めてるんだよ。」

鳳仙
「そ、そっか・・・褒めてたのか。てへへ。。」

優太
「(アホだ・・・誤魔化されてることに気付いていない・・・)」

綾香
「ねぇねぇ、レンねー帰って来ないの?パパぁ~~・・・」

優太
「んー?大丈夫だよ。
きっと全部終わったら帰ってくるさ。」

綾香
「そっか、じゃあ安心だね!
それよりパパ食べないの~?
えりすの料理すっごく美味しいよ?」

優太
「ああ、食べるよ。少し疲れも取れてきたし・・・」



そう言って優太は箸を手に取る。
並べられている料理はほぼ洋食なのに箸を使うのはおかしい気がしたが、これが普通なので特にコレと言って考えることも無く味噌汁(これだけ由紀が作った)をすする。
体の内側から全身を満たしてくれる感覚がする。
一口飲んだだけで疲れなどほとんど吹っ飛んでしまった。
流石は由紀の味噌汁だ。
優太は対面に座る由紀に向き直ると素直な感想がこぼれる。


優太
「由紀の味噌汁飲んだら元気出てきたみたいだ。
スゴイ美味しいよ。」

由紀
「そう?いつもの味噌汁だよ~?」

優太
「うん、それでも・・・
疲れた体を、芯から満たしてくれたよ。」

由紀
「きょ、今日は妙に褒めるね・・・
でも、嬉しいよ。ありがとう。」

エリス
「あ、あのぅ・・・
私の料理はお口に合いませんでしたでしょうか・・・優太様・・・」

優太
「べっ!!?いや、そんなことはないよ!!
ちょっと味噌汁の感想を前面に出し過ぎたな!!
エリスの料理もすっごく美味しいよ!!
どこへ嫁にだしても恥ずかしくないくらい!!」

エリス
「そ、そうですか?
で、でもエリスをお嫁に貰ってくれるような人は早々居ないですよ。」

優太
「そうかーー?
エリスのこと気に入らない男の方が早々居ないと思うけどな。」

エリス
「わ、私は・・・優太様に気に入られているだけで、じゅ、十分ですから・・・」

千草
「フラグが立ちましたーーーー。。」


「トマトウメェ!!!」

由紀
「はっ・・・優太さんは誰にでもお優しいことで~~~。」

優太
「何かただちょっと褒めただけで酷い言われようだ・・・」










「で、これで資料は全部ですか?
カスム大臣。」

カスム
「はい。
それで準備に必要な資材資料は全てです。」


「随分と無駄が多いですね・・・
特にこのプランターの数は必要以上に多く感じますが・・・。」

カスム
「まあ、王都中を彩るためにはその量が必要なのです。
なにとぞ聞き入れてもらえませぬか?」


「そうですね・・・
花は確かにあるにこしたことはありませんね。
ですが数は見直すように。それと・・・」

???
「姫様、お食事の用意ができましたがどうされますか?」


「ここで食べます。
適当に運んでおいて、ジゼ。」

ジゼル
「はい。かしこまりました。」

カスム
「お父上とはお会いにならないのですか?
随分と心配していたのは誰でも無いお父上なのですよ?」


「そうですね、それは分かってますが私も忙しいので・・・」

????
「そう言うと思っとったよ。」


「!!?
お、お父様?い、何時の間に?」

カスム
「レーヴェ様!何をしておられるのですか!!?
まだ仕事の方が山と残っていましたでしょう!?」

レーヴェ
「そんな物徹夜でもすれば終わる。
だが、レオナとの時間はどうも今の内しかなさそうだったのでな。
ジゼル、私の分も持ってきてくれるか?」

ジゼル
「そう言うと思っておりましたので既に準備は済ませてあります。」

レーヴェ
「おお、流石はレオナの専属メイドなだけはあるな。
ちゃんと気遣いが行き届いておる。」





レーヴェ
「レオナ、どうやら『外界』の方に逃げ延びていたようだな。
随分探したのに見つからないからオカシイとは思っていたが・・・」


「ジゼ・・・これは一体どういうことなのかしら?」

ジゼル
「いえ、この方が姫様も色々と成長できると思いまして。」


「誰もそんなこと頼んでないんだけど・・・」

レーヴェ
「外での暮らしはどうだ?
何か不自由はしていないのか?」


「別に今の所問題は無いです。
元から貯めていたお金もまだ結構残ってますし・・・それに、」

ジゼル
「今はある殿方の家に厄介になっておりますので基本的に何の心配もありませんね。
貞操関連以外。」


「ジゼ・・・どこでそんなこと調べたのかしら?」

ジゼル
「え、本当にそんなマンガみたいな状況に?
ジゼは悲しいです姫様・・・」


「主人に鎌かけるメイドに対して悲しいですよ私は・・・」

レーヴェ
「男の家に厄介になってるのか?
それはそれで父親として色々言いたいこともあるが・・・
私には、そんな資格もないのかもしれないな・・・」


「お父様・・・あの、私は・・・」

レーヴェ
「いや、何も言わなくていい。
あの時はすまなかった。
お前の気持ちなど何一つ考えていなかった・・・
小さかったお前からすれば・・・身を切られる思いだったろう。」


「お父様・・・折角なのでハッキリ言っておきます。」

レーヴェ
「なんだ?」


「あの時の私は、確かにお父様の言いつけに反発していました。
ですが、今となってはあの時のお父様に選択の余地など無かった・・・
そう思います。」

レーヴェ
「そうだな。
私にはこの国の民を守る義務があった。
だが、それと娘を天秤にかけるなど・・・
本来なら考えるまでも無かったはずなのだ・・・」


「いえ、そうではありませんよ・・・
お父様は、正しいことをしたんです。」

レーヴェ
「レオナ?」


「今の私は、あの時の私とは違います。
お父様の苦渋の決断に対して・・・
私の方こそ娘として答えてあげられなくて申し訳ございませんでした。」

レーヴェ
「何を言う!!
あの時に私は全てを捨てようとした・・・
あの時、あの男が居なければ・・・
お前が城を逃げ出してくれなければ・・・
取り返しのつかないことをしてしまう所だった・・・!
謝るのなら・・・私の方だ。」


「お互い・・・随分と遠回りしてしまいましたね。」

レーヴェ
「レオナ・・・私を赦してくれるのか?」


「赦すも何も・・・
私は、素直に生きた方が良いと言われたからココでこうして本音を言ったまでですよ。
お父様。」

レーヴェ
「ふっ・・・何時の間にやら随分と大人になったのだな・・・」


「それはそうですよ。
私、これでも今年17になるんですよ?」

レーヴェ
「そうか。
17か・・・もう、自由に生きても良い歳だな・・・」


「お父様?」

レーヴェ
「『盛夏祭』、盛大に執り行ってくれるか?
お前に全て一任する。」


「よ、よろしいんですか?
私、今の今まで家出してたようなものなのですよ・・・?」

レーヴェ
「なーーに、そんなの誰も気にしわせんよ。
誰も彼も、レオナの帰りを待っていたのだからな。」


「・・・はい、分かりました!
お父様の名を汚さぬよう、精一杯やらせていただきます!」

レーヴェ
「うむ、頼んだぞ。
レオナ!」


「はい!」









ゼダ
「たく・・・何でいきなりこんな夜更けに呼び出されなくちゃならないんだよ。」

???
「仕方あるまい。
少しばかり予定が狂ってな・・・
それについての検討を早々に済ませようと思ったまでよ。」

ゼダ
「確かアレを必要数用意できないって話だったか?
そんなことなら大丈夫だろ・・・
オレが足りない分を適当に発注してやるさ。」

???
「それもあるのだが・・・
もう一つ気がかりがあってな。」

ゼダ
「あ?何だよ・・・」

???
「予定どうりなら三日後の明朝には決行な訳だが・・・
『ギルド』の方にはまだ不安要素が残りそうだと思ってな。」

ゼダ
「あぁーーー・・・問題ねぇと思うぜ?
ウチの団長様は使い物にならねぇし、当日までにウチの団員のほとんども国外だ。」

???
「私が言っているのはお前の所の話では無い・・・
まだアルヴィスは王都に居るのだろう?」

ゼダ
「あんな萎れた爺さんに何ができるって言うんだよ。
計画どうりに運べば、誰が相手でも問題にならねぇだろうよ。」

???
「アルヴィスも不安の一つじゃが・・・
もうひとつ気がかりなのはあの新参者達の事よ。」

ゼダ
「新参・・・
あぁ、あの『暁の地平線』って奴らの事か?」

???
「聞いた話では随分とデカい山の処理をしてきたと聞く。
中でもリーダー格の優太と言ったか?
あのテッカやドレイク相手に随分善戦したらしい。
それにテッカに攫われた人々を影ながら解放したのも実は彼らだったとか・・・」

ゼダ
「どうせ噂だろ・・・
もしそれが本当なら『ギルド』内では既にもてはやされてる筈だ。
そう言う話しは全く聞かねぇし・・・ステマだろ。」

???
「まあ、心配するにこしたことは無いと言う話だ。
当日、早々に取り押さえておけ。」

ゼダ
「悪いがオレは身内をどうにかするのに手こずりそうだからそっちでどうにかしてくれよ。」

???
「こちらもそこまで余裕はないが・・・
ま、いいだろう。噂が噂で済むのならどうせ大した奴らでもあるまい。」

ゼダ
「そうそう。
所詮は新参者だ・・・どうにでもなるって。」

???
「では予定どうりに頼むぞ。」

ゼダ
「ああ、任せろよ。
オレ達でこの国を・・・いや、世界を震撼させてやろうぜ!!!







第8話「蓮からの依頼。。」






優太
「・・・・・・・・・でっけぇ。」



蓮に呼ばれた優太は早朝から北街の真ん中にある王城の前まで来ていた。
高さにして600m近くははありそうな巨大な建造物が目の前に鎮座している。
門構えからして流石は王城と思えるような豪奢な、そして荘厳な作りだ。
城全体を覆い尽くすほどの魔法障壁が見える者全てを圧倒しており、とても簡単には攻め込めなさそうだと感じた。
そんなことを思いながら優太は門の前まで進む。
門の左右には兵士が立っており、さっきから注視され続けている。
そりゃあ城の前に日本刀腰にさげた男が居たら誰でも怪しむだろう。
優太はなるべく平常を保ちつつ兵士に話しかける。


優太
「えっと・・・蓮・・・
あ、いや姫様に呼ばれて来たんだけど・・・」

騎士A
「姫様に・・・?
おい、何か聞いているか?」
騎士B
「あ、そういえば『ギルド』の要人が一人来ると言われている。
確か東洋人で冴え無さそうな顔をしているからすぐ分かると・・・」
騎士A
「なるほど、確かに冴えない顔だな。
間違いなさそうだ・・・、通っていいぞ。」

優太
「はぁ・・・まあどうも。」



冴えないって・・・ちょっと内心傷つきつつ門を潜る。
その先には想像も及ばないようなまさにお城空間が広がっている。
よくドラクエで城には疑似的に入ったりはしているが、まさか本物の城に入れる日が来るとは思わなかった。


優太
「(あ、そう言えば蓮がどこに居るのか分からないや・・・どうしよう。)」

???
「失礼。
優太様でいらっしゃいますか?」



声のした方を向くと、一人の中年の男が立っている。
着ている物から想像するにかなり高貴な人そうなのだけは分かった。
優太は少し警戒しながら答える。


優太
「えっと・・・そうだけど、あなたは・・・?」

???
「私は大臣を任されております、カスムと申します。
姫様から優太様の案内を申し付かっております。
どうぞ私の後に付いて来てください。」

優太
「あ、そうだったんですか。
それじゃあ案内お願いします。」

カスム
「しかし、姫様が直接お呼びするくらいなのでどのような方かと思えば・・・
意外と普通そうな感じですね。」

優太
「まあ基本は普通の男子高校生何で。」

カスム
「姫様は外ではどうなされてらっしゃるんですか?」

優太
「そうですねーー・・・
強いて言うなら本読んでるか、お菓子作ってますよ。」

カスム
「そうですか。変わらないのですね。」



そんな具合に蓮についてや優太自身のことを話している内にカスムは一つの部屋の前で止まる。
そして扉に向き直ると2、3ノックをする。


『どちら様ですか?』


カスム
「カスムです。
姫様、優太様をお連れしました。」



『ご苦労様でした。
下がっていいですよ。』



カスム
「では、失礼します。
優太様、どうぞ。」



そう言って左手で入室を促してくる。
優太は扉の前に立つとノブに右手をかけ、扉を開けた。








ネロ
「ゼオラ!こっちにも同じの持ってきて!
アラドは吊るすヒモの代えになる物を至急持ってきて!!」

ゼオラ
「ちょっと待って!
どのプランターだっけ?」

ネロ
「緑色の奴!」

アラド
「ネロ!とりあえず針金ならあったんだけどコレで大丈夫かな!?」

ネロ
「多分!あ、メダ!!
そこのパンジー取ってくれる?」

メダ
「・・・・・」

ネロ
「メダ!!」

メダ
「!?
ん・・・ああ、えっと・・・」

ネロ
「パンジー、取ってくれる?」

メダ
「悪い、ボーッとして・・・これでいいのか?」

ネロ
「うん、ありがと。
メダは植え終わったプランターに水上げてくれる?」

メダ
「ああ・・・。」



メダはよろよろと力無く水道の前まで行くと蛇口を捻る。
ホースの先から日差しで温められたお湯が噴き出す。
しばらく出し続け、水に変わってからメダは丁寧に並べられたプランターに水を撒く。
手は引っ切り無しに動いているが、メダの視線は終始定まっていない。


ネロ
「・・・・・。」

ゼダ
「ネロ、あんなの気にしてないで早く作らないと。」

ネロ
「・・・・・そうね。」

アラド
「しっかし何でイキナリこんな量の花を定植しないとならないんだよ・・・
これなら普通に仕事してる方が楽でいいぜ・・・」

ゼオラ
「アラド、口動かしてないで手を動かしなさいよ・・・
コレ、明日までに完成させて町中に並べなくちゃならないんだから。」

アラド
「ま、運んで並べるよりはここで植える方が・・・
どっちもどっちか・・・」

鳳仙
「おーーい!助っ人に来たよ!」

ネロ
「あ、鳳仙さん。一人?」

鳳仙
「ああ、ちょっとダンナは他に用事があって・・・
千草は隣町に用事があるって行っちゃったから。」

ネロ
「そう。それじゃあ早速で悪いんだけど・・・
アラドと一緒にこの印の場所にプランターを設置して欲しいのだけど。」

アラド
「え!?何でオレも!!?」

ネロ
「だって車じゃないとこの量は運べないでしょ?」

アラド
「あ、それもそうか。
でもこの量を二人ってキツくないか?
それにオレが抜けたら植える人の人数も・・・」

鳳仙
「あ、そういうことなら誰か追加で助っ人呼ぼうか?
こういうの手慣れてる奴らだからきっと役に立つと思うんだ。」

ネロ
「え、でも悪いんじゃあ・・・」

鳳仙
「家で暇そうにしてたから調度良いと思うよ。
あとで電話しておくよ。」

ネロ
「そう、悪いわね。」

ゼオラ
「助っ人が来るなら私もアラドに付いて行ってもいい?」

ネロ
「え?まあ、別にいいけど・・・
はっは~~~ん。なるほどね・・・。」

ゼオラ
「ちょ、べ、別に他意なんて無いんだからね!」

ネロ
「分かってる分かってる。
いいわよ、こっちは私とメダ・・・あとゼダさんと助っ人でどうにでもなるわ。」

ゼオラ
「うん、ありがとう。」

アラド
「よし、そう言うことなら車回すから早速積み込んで運びに行こうぜ!」

鳳仙
「おぅ!力仕事なら任せとけって感じだぜ!!」









アルヴィス
「お久しぶりです。我が王・・・。
アルヴィス・S・フォークハート、王の命により参上仕りました。」

レーヴェ
「そうかしこまるでない。
アルヴィス、久しぶりだな。」

アルヴィス
「はい、王にあらせましてもご健勝の様でなによりでございます。」

レーヴェ
「まあ、今日はそのような世間話をするために呼んだのではない。
アルヴィス、『盛夏祭』の警備の件じゃが・・・」

アルヴィス
「そのことですが・・・
最近になって大きな事件が各地で発生し、『ギルド』所属の者達が国外へ散り散りに飛ばされています。」

レーヴェ
「やはりか。」

アルヴィス
「と、言いますと?」

レーヴェ
「『騎士団』の方も何故か国外とまではいかないが・・・
国境付近まで遠征したりする部隊が多い、こんな時期に妙だとは思わぬか?」

アルヴィス
「それは私も薄々感付いてはいました。
誰かが裏で何かよからぬことを画策している可能性も否定できません。」

レーヴェ
「まあ、『騎士団』に関してはそこまで致命的なほど出兵している訳でも無い。
警備の面では問題無いと思える。」

アルヴィス
「コチラはお恥ずかしながら完全に頭数を欠いております・・・
ですが、このアルヴィスが居る限り王都を脅かす脅威は払って見せますぞ!」

レーヴェ
「まあ脅威と言えるほどの物が起こるとも限らん。
警戒するにこしたことも無いが・・・それよりアルヴィスよ。」

アルヴィス
「なんでございましょう?」

レーヴェ
「ちと、ある男について2、3聞きたいことがあるのじゃが・・・」









扉の先は応接室のような部屋になっていた。
目の前には机を挟み込むように配置された二つのソファー。
そのさらに奥に結構立派な机に腰かけて書類の様な物とにらめっこしている蓮が居た。
優太は扉を閉めてから蓮に向き直る。
すると蓮の方から声をかけてきた。



「すみません。
わざわざお越し頂いてしまって・・・」

優太
「いや、別に構わないよ。
どうせ今日もジジイに呼ばれるまで暇だったしさ。」


「とりあえず適当に腰をかけてください。
ジゼ、お茶をお出しして。」

ジゼル
「優太様は何がよろしいでしょうか?」

優太
「あ、紅茶以外なら何でもいいです。」

ジゼル
「それは残念です。
いまこの部屋には紅茶以外取り置きがありません・・・
それ以外となると給仕室まで取りに行かなければなりません・・・」

優太
「え、えっと・・・」

ジゼル
「まあお客様がど・う・し・て・もと言うなら仕方がありませんね。
取りに行ってまいりますか・・・はぁ。」

優太
「すいません・・・紅茶でいいです・・・」


「ジゼ・・・私の友人に向かって失礼じゃないですか?」

ジゼル
「これは失礼しました姫様。
ちょっとした冗談と言う奴ですよ。
それではスグにお持ちしますのでしばしのお待ちを。」


「全く・・・すいませんでした。
私のお付の者がとんだ粗相を・・・」

優太
「い、いや・・・別に気にして無ぇよ。
それより、話って言うのは・・・」

ジゼル
「お待たせしました。
とりあえずコーヒーになります。」

優太
「早くね!!?
給仕室実は隣の部屋だったりするんですか!!?」


「いえ、一つ下の階ですが。」

優太
「スーパーメイドだ!!」

ジゼル
「あまり褒めないでください。
妊娠してしまいます。」

優太
「何だろう、こんなやり取りをどっかで見たことがあるぞ?」


「そんなどこぞのパロネタは置いといて・・・呼んだのは他でもありません。
『暁の地平線』に依頼をしたかったんです。」

優太
「依頼?」


「そうです。
二日後にある『盛夏祭』の警備を依頼したいんです。」

優太
「警備・・・あぁ、そういえば当日はメダ達もやるって言ってたな・・・」


「どうやら『騎士団』の方も人手不足の様でどうしても補充が必要なんです。
そこで優太さん達ならやってくれるのではないかと思って・・・」

優太
「それなら全然問題無いよ。
他でも無い蓮の頼みだもんな。」


「ですが、警備をするとなると『盛夏祭』自体に参加することはできないと思います。
それが唯一気がかりで・・・その、もう一度よく考えてください。
ホントによろしいんですか?」

優太
「大丈夫だろ。
全員で交代交代でやってさ、その合間に少しだけでも堪能すれば・・・
それに・・・成功させたいんだろ?『盛夏祭』。」


「はい!」

優太
「じゃあ決まりだ!
『暁の地平線』はその警備の依頼、引き受けるぜ!」


「・・・ありがとうございます!
優太さん・・・あ、それと報酬の件ですけど・・・」

優太
「報酬は、蓮の作るケーキでいいや。
何か久しぶりに食いたいし。」


「え・・・そ、それは構わないですけど・・・いいんですか?」

優太
「て言うかそもそも蓮だってウチの一員じゃねぇか。
仲間から報酬なんていらね。
でもそれじゃあ嫌なんだろうと思ったからケーキで手打ち。どうだ?」


「優太さんはいいかもしれませんが、皆さんが・・・」

優太
「大丈夫大丈夫。
アイツらだって蓮から直接的にお金とかもらっても嬉しくないって。
だから、終わったらみんなで打ち上げだ!
その時にケーキ作ってくれればいいよ。」


「そうですか・・・分かりました。
その時は腕によりをかけてとっておきの奴を作りますね。」

優太
「ああ、期待してる。」



プルルル。。


突如部屋の中に電子音が鳴り響く、スグに優太は自分の携帯の着信音だと気付く。
携帯を取り出すとどうやらアルヴィスからのようだ。
優太は渋々と出ると・・・



『今日は仕上げじゃ、湖に今から集合じゃ。』


優太
「んーー・・・分かった。」



『それではの。』


ブツッ!


優太
「悪いけどオレちょっくら行ってくるわ。
依頼の件だけど、鳴に送っておいてくれ。」


「はい、優太さんもお気をつけて。」

優太
「ああ、蓮もあんまり根詰めるなよ!」



優太は部屋を後にするとスグに城を出ると中心街を抜け、東街へ。
そして東門を出て湖のほとりを目指して走る。
その先に、一つの影が見える。


優太
「ジジイ!!」

アルヴィス
「ん、何じゃ思ったより早かったのぅ。
段落を開けずに来るとは・・・」

優太
「え、段落が何だって?」

アルヴィス
「いや、コッチの話じゃが・・・
そんなに早く解放されたいのか?」

優太
「ああ、ササッと終わらせて一秒でも早く準備を手伝いたいからな!!」

アルヴィス
「なるほど・・・あい分かった。
なら、手っ取り早く終わらせるとしよう。
最後・・・と言っても二日目じゃが、最後の仕上げじゃ・・・」

優太
「おっしゃあ!!どんと来いやーーーーーーーーーーー!!!」








第9話「伝わる気持ち。。」






優太
「づ、づかれた・・・」

由紀
「またぁー?本当に大丈夫なの、優太?」

優太
「あ、ああ・・・どうにか修行の方は無事に終わった・・・
明日からはオレもみんなの手伝いができるぜ・・・」

由紀
「いや、そうじゃなくて・・・本当に体の方大丈夫?」

優太
「ちょっと疲れただけだって・・・
何時もなら蓮がちょっちょっと癒してくれるんだが・・・
無い物強請りも良くないぜ。」

由紀
「今日も帰って来ないのかーーー。
このまま、帰って来なかったりしてね。」

優太
「それは・・・無いとも言えないけど、大丈夫じゃないかな・・・」

由紀
「そうだといいね。と言うか千草は?」

鳳仙
「オレは知らないよ?
隣町に行ったきり帰って来ないなそういえば・・・」

優太
「え、それマジか?」


「エリちゃん、チーちゃんずっと帰ってきてないの?」

エリス
「ええ、お昼も帰って来ませんでした・・・
どうしたのでしょうか、心配ですね。」



ギギィ・・・


ふと食堂の扉が開く。
その場に居た全員がそちらを振り向いた。
そこには、疲れきった顔をした千草が立っていた。


千草
「う、うぃーーす・・・疲れたーーー・・・」

優太
「随分と遅かったな千草・・・」

千草
「何か門の所の検閲が急に厳しくなっちゃってさ・・・
通してもらうのに時間食っちゃったよ。」

優太
「え?オレが帰ってきた時は普通だったぞ?」

千草
「あ、ユウ君はソレ付けてるからだよ。」



そう言うと千草は優太の胸を指差す。
そこには金属製のバッチが付けられている。
戦団の団長が付ける印の様な物だ。


千草
「ようは身分証明みたいなの?が必要なんだって・・・
今朝までそんなの無かったから焦っちゃったよ。」

鳳仙
「結局どうやって通ってきたんだよ・・・」

千草
「東門だったからね。
鳴っちに電話して来てもらって、直接身分証明してもらった。。」

由紀
「でも何で今更検閲強化?」

千草
「なーーんか今年の『盛夏祭』は開催二日前くらいから王国外の人達の入国を制限するんだって・・・」


「えーーー?
それじゃあ当日になるまでココに住んでる人以外入れないってこと?」

千草
「らしいよ。何でかは知らないけど・・・
もう随分と前からそうするって決まってたらしくて当日になるまでは隣の街とか村で宿泊するって人が多かったよ?
工房街の方もそんなだった。」

由紀
「確かに入国制限前から王国入りして宿泊するより、祭り少し前に隣街とかに宿泊した方が金銭面的に安上がりよね。」

優太
「ま、何にせよ入ってこれない人の期待に応えるためにも準備は怠るなって話だな。」










「ふぅ・・・」

ジゼル
「お疲れ様です、レオナ様。
紅茶でよろしかったでしょうか?」


「ありがとう、ジゼ。頂くわ。」



そう言ってジゼルからカップを受け取ると、蓮はまずカップから上がる香りを嗅いでから口を付ける。
ラベンダーの香りが気分を落ち着かせてくれた。
蓮はゆっくりカップから口を離すと



「ラベンダーとは気が利いてるわね・・・
でも私、まだ寝るつもりは無いのだけど?」

ジゼル
「いえ、昨夜も随分と遅くまでお仕事をなされていらしたではないですか・・・。
当日までお体に何かあってはいけません。
どうかご自愛ください。」


「これくらい大丈夫ですけどね・・・。
ま、ジゼがそこまで言うなら少し仮眠でも・・・」

ジゼル
「ダメです。
今夜は寝るまで離れませんよ。」


「ある意味身の危険を感じるんですけど気のせいかしら・・・」

ジゼル
「いえ、このジゼル・・・レオナ様に幼少期から仕えさせていただいておりますが・・・
そのような下衆な考えは持ち合わせておりません!!」


「そう?なら聞くけど・・・
私の部屋のドレスがほぼ全部露出度の高い際どい物にすり替わってたんだけど・・・
アレはどういうこと?」

ジゼル
「おかしいですね・・・
私はそんなことはした覚えがありませんが。」


「ジゼじゃないの?」

ジゼル
「まあレオナ様にはああいう体のラインがハッキリ出るようなのが似合うとは思いますがね。」


「いや、確実に貴女でしょ・・・貴女がやったんでしょ?
人のドレスを勝手に新調するの止めてよね!!」

ジゼル
「いやいや・・・レオナ様は小さい時にココをお出になられたものですから・・・
帰ってきた時に昔のサイズではぱっつんぱっつんになってしまうと思い・・・」


「自白したわね・・・」

ジゼル
「すいません私がやりました。
レオナ様のドレス姿想像してハァハァしてましたすいません。」


「そんな淡々と言われても反応に困るでしょ!!
まあいいわ・・・疲れたから寝るわ。」

ジゼル
「お休みなさいませ、レオナ様。」


「何だか体よく誘導された気もする・・・」

ジゼル
「気のせいですよ。」









かなり開けた場所だった。
中心には円柱状の穴が開いており、その下にはカプセル型の機材が所狭しと並べられている。
その円形の淵に取り付けられた手すりに一人の男が寄りかかっている。
それに相対するようにもう一人男が立っている。
この空間そのものが暗いため、顔はよく見えないが服装は豪奢な方だ。
その人物の手には赤い宝石を数個埋め込んだリング状の腕輪が握られている。
豪奢な服を着た男は眼鏡をかけた男に向かい問いかける。


???
「カリスト博士・・・
これが例のコントロール装置ですか?」

カリスト
「ええ。まあ、まだ未完成品ですがね。
あまり無理な使い方は控えてくださいよ?
ま、無理をしないようにデータは取ってもらいたい物ですがね。」

???
「これで私も神と同列ということですな・・・」

????
「神?そんなものこの世には存在しませんよ・・・」



暗がりからもう一人細身の男が顔を出した。
その男は右手に鉤爪をはめ、左手で腹部を抱えている。
豪奢な服を着た男はその柔和そうな顔つきをした男に向けて


???
「ドレイク・・・もう怪我はいいのか?」

ドレイク
「いえ、未だに再生が追いつきません。
あの子達の一撃は本当に素晴らしかった・・・
穴は瞬時に塞がりましたが、中身が所々グチャグチャになってしまって・・・
これを治すのは骨が折れます。
もう何ヵ月点滴生活か・・・」

???
「ふん、役に立たない奴よ・・・
お前が居れば今回の計画にこの試作品を投与する必要も無かったものを・・・」

ドレイク
「ははは、これは失礼・・・
若い可能性には敏感に反応してしまうもので・・・。」

???
「ふん、まあよい・・・明後日を楽しみにしておくといい。
世界の理に風穴を空けるような衝撃のショーをお見せしよう。」



そう言うと豪奢な服を着た男は一人、通路の闇の中へ消えていく。
その姿、気配が完全に消えてからドレイクはカリストに向けて質問を投げかける。


ドレイク
「あんな小さな腕輪で本当に操れるものなんですか?」

カリスト
「さぁ・・・それを実験してもらうんですよ。
これからね・・・」

ドレイク
「酷い人だな・・・カリスト君。」

カリスト
「何事も実験あるのみですよ・・・
それでどれだけの犠牲者が出るかなんて私の関与することじゃないでしょ?」

ドレイク
「それはそうですね。
私もイチイチ殺した人の顔なんて一部を除いて覚えちゃあいませんからね。」

カリスト
「そうそう、私達のようなアウトローはそれで十分です。
ここらかじっくり見物しようじゃありませんか・・・笑劇のショーと言う奴を・・・
ねぇ・・・テッカ?」



そう言ったカリストは円柱状の穴の底に目を向ける。
その先のカプセルの一つに、テッカの姿がある。
体中に大量のコードを取り付けられ、意識など完全に飛んでいるのだろう、瞳が白目を向いている。


ドレイク
「彼はこのあとどうなるのですか?」

カリスト
「そうですね、試してみたい機材が多くてどうしようか迷いますが・・・。
ふふふ、まだ実験で殺してしまうには惜しいですからね彼。
とりあえず軽い調整を施して今までどうり人を集めてもらいましょうかね。」

ドレイク
「そうですか・・・ま、好きにしてください。
私は自室で休みます。」

カリスト
「ドレイクさんも肉体改造に興味があるならいつでも言ってくださいよ?
大歓迎ですので。。」

ドレイク
「遠慮しておきます。
私はこの体で十分満足しているのでね・・・。」









メダ
「・・・・・・・・・」

ネロ
「どうしたの?
星なんて眺めて・・・」

メダ
「・・・・・・ああ、ちょっと。」

ネロ
「メダ、夕飯どうする?
何ならどこか食べに行く?
別に私が作っても良いけど・・・」

メダ
「・・・・・どっちでもいいよ。」

ネロ
「ふぅ・・・メダ、あのね・・・」

メダ
「ネロ・・・
無理にオレに構わなくても良いんだぜ・・・?」

ネロ
「え?」

メダ
「オレなんかに構ってないで、ゼダ辺りと・・・」



バシン!!!


気付いた時にはメダは右の頬に強烈な平手打ちを喰らっていた。
とてつもなく痛い。
メダはぶたれた部分を抑えながらネロに向き直る。
その顔は、とても悲しそうで・・・瞳には涙をためている。
今にも泣き出してしまいそうな、そんな顔だった。


ネロ
「どうしてそういうこと言うのよ!!
私は、私は・・・」

メダ
「・・・・・ごめん。」

ネロ
「私は、メダが良いの・・・
メダじゃなきゃ嫌なの・・・!」

メダ
「でも、オレは・・・スコールさんを・・・」

ネロ
「お父さん何て関係無いよ!!!」



次の瞬間、ネロがメダに抱きついてくる。
頭が鳩尾に若干めり込んだが気にしている場合でも無さそうだ・・・
ネロはすすり泣きながら、一言一言を噛み締めるように言い放つ。


ネロ
「私だってお父さんが居なくなって・・・そりゃあ悲しいよ!辛いよ!!寂しいよ!!!
でも、でも・・・それ以上に私は、メダが心配なんだよ・・・」

メダ
「ネ、ロ?」

ネロ
「ねぇ、もうお父さんのことで悩むの止めよ・・・
そんなのメダらしくないよ・・・!!
いつもの、いつものメダに戻ってよ!!」

メダ
「・・・・・・ごめん。」

ネロ
「謝るくらいなら抱きしめるとかできないのかよーーー・・・」

メダ
「ん・・・。」



メダはそっとネロの背中に手を回すと自分の方に抱き寄せる。
ほんのりとネロの香りが鼻孔をくすぐった。
なんだかこれだけで気持ちが楽になっていく感じがする。


ネロ
「メダがお父さんのことで責任感じる必要無いんだよ・・・
もう十分だよ、お父さんだってこんなの望んでないよ・・・」

メダ
「スコールさん、が?」

ネロ
「そうだよ・・・もしお父さんが生きてたら・・・
『おいメダ・・・お前いつまでしょげ込んでんだ!男だったら、こけてもこけても前に進むことだけ考えてりゃあ良いんだよ!!』
って言うと思うの。」

メダ
「ぶっ・・・!
おまっ・・・それ、スコールさんの真似か?」

ネロ
「な、何よ!わ、笑うこと無いでしょ!!
そんなに似てなかったかな・・・」

メダ
「いや、似すぎててビックリした。」

ネロ
「はぁ!!?それどういう意味!!?
私がお父さん似の親父だって言いたげだなぁこの口は!!!」

メダ
「いやいや・・・そこまで言ってないし・・・。」

ネロ
「もう・・・メダのバカ!
・・・でも、ちょっとは元気出た?」

メダ
「ああ・・・ま、ちょっとは・・・。」

ネロ
「ちょっとって何だよちょっとって・・・
もっとパーーッとだしちゃいなよ、ユー!」

メダ
「そんな急に無茶言うなよ・・・
ネロの元気分けてもらえれば別かもな・・・」

ネロ
「私の?」

メダ
「有り余ってそうだし。」

ネロ
「・・・・・・・分けて、あげようか?」

メダ
「え、どうやって?てか、冗談で言ったんだけど・・・」

ネロ
「えと・・・こ、こうやって?」



そう言うとネロは目を瞑る。
そして心なしか顔を近づけてきてるような・・・


メダ
「え・・・ネ、ネロ!?」

ネロ
「・・・・・メダ。」

メダ
「え・・・あーーー・・・うっ・・・」



メダはネロの唇に吸いよせられるように、瞳を閉じると徐々に距離を縮めていく。
そして、それが触れるか、触れないかの刹那


ガチャ!!!


扉が開け放たれる。
そこから飛び出してきたのは・・・


アラド
「おーーーい!メダ、ネロ!!
今から夕飯食いに行くんだけ・・・ど・・・」



アラドの言葉はドンドン尻つぼみに小さくなっていく。
それもその筈。
アラドの目の前には窓辺で抱き合うようにして居る二人の姿があるのだから。
それに二人して妙に近いし、入る時に何かチューしそうな感じだったような・・・


アラド
「え・・・えっと・・・その、アレだよ・・・ゴホン。。
ごゆっくりぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!
ついでに爆発しろバカ野郎!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



と、すぐさま階下に向けて走り去って行った。






その頃、階下ではゼオラ一人待たされていた。
ついさっきアラドがメダとネロを誘いに行ったが・・・
内心、行くなら二人きりで・・・何て思ってしまう自分も居て何か色々複雑な気分になってしまっていた。
そんな時、上の方からドタドタともの凄い音を立てながら誰かが下りてくる。


ゼオラ
「ん?」

アラド
うわぁぁぁあああああああああああああああああああん!!

ゼオラ
「ちょ、ど、どうしたのよアラド・・・」

アラド
「う、裏切られた・・・
メダの野郎、傷心気味のフリして結局そう言うのが目的だったんだあの野郎!!!
ちっくしょおおおおおおおおおおおおおおお!!
羨ましいぃぃいいいいいいいいい!!!!!!

ゼオラ
「はぁ?な、何が何だってのよ・・・」

アラド
「やっぱオレにはゼオラしかいねぇよ!!」

ゼオラ
はぁ!!?
そ、それ・・・え、な、何を急に変なこと言いだしてんのよ!!!」

アラド
「そのままの意味に決まってるだろ!!
ゼオラはオレの傍に居てくれよな!!(理解者的な意味で)」

ゼオラ
「え・・・そ、そんなこと急に言われても・・・
こ、こういうのは順序っていう物があって・・・」

アラド
「そんなのどうでもいい!!!
オレはゼオラとじゃなきゃダメな気がするんだ!!!(理解者的な意味で)」

ゼオラ
「ばっ!!わ、分かったわよ!!
分かったからそんな決め顔で近付くな!!
し、心臓に悪いから・・・」

アラド
「そっか、それは悪かった・・・。
じゃあ、二人で飯でも行くか。」

ゼオラ
「う、うん。」



何か決定的にかみ合って無いような気がする。
ちょっとそう思わなくも無いゼオラだったが、アラドといれるならいいかとも思った。







メダ
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ネロ
「ま、まぁまぁ・・・
つ、次は鍵かけてからすればいいんじゃないかな?」

メダ
「そう言う問題じゃないだろ!!!
復活して早々どんなイベントだコレ!!
イキナリ仲間との間にヤヴァそうな亀裂生じちゃった気がするんですけど!!!」

ネロ
「だってそれはメダがもったいぶってゆったりしようとするからじゃーーん。」

メダ
「そ、そんなつもり無いわ!!!」

ネロ
「ところで・・・二人とも行っちゃったみたいだけど・・・」

メダ
「そうだな・・・」

ネロ
「続きは?」

メダ
「はい?」

ネロ
「さっきは邪魔が入っちゃったけど・・・
今度は大丈夫だよ?鍵もかけたし!!!」

メダ
「いや、だからそう言う問題じゃあ・・・」

ネロ
「じゃあ、チューしてくれるまでご飯作りません。」

メダ
「じゃあ自分で作るわ・・・。」

ネロ
「ちょっと待ったーーーーーーーー!!
実は今日の冷蔵庫の中には私しか作れないものしか入っていないのだーーーー!!
まいったかーーー!!」

メダ
「じゃあちょっとインスタントラーメン買ってくるわ。」

ネロ
「そ、そんな偏った食生活はダメです!!!」

メダ
「じゃあどうしろ言うんじゃ!!」

ネロ
「だ・か・ら、私とチューして愛妻料理を作らせればいいんだよ~~~。。」

メダ
「お前急にどうしたんだよ・・・昨日までとキャラ違くね?」

ネロ
「メダが悪いんだよ・・・
今まで散々私からの好意をスルーした挙句、ようやく上手くいくかと思ったらあのバカの乱入で怖気づくし・・・」

メダ
「お前アラドに謝れ・・・」

ネロ
「責任取れ!!私の十二年越しの純情!!!」

メダ
「・・・・・・真面目に話していいか?」

ネロ
「うん!!
愛の告白なら365日24時間ウェルカムだよ!!!」

メダ
「いや、そういうのじゃないけど・・・まあいいか。
その・・・お前の気持ちは嬉しいし、オレもお前のこと好きだけど・・・
今はそういうことする時じゃない気がするんだよ。」

ネロ
「さっきは流れに任せてしようとしたくせに・・・」

メダ
「さっきのはノーカンで!!
魔が差したの!!
時には欲望に負ける時もあるの!!」

ネロ
「ふーーん、まあいいけど・・・じゃあどうしたらしてくれるの?」

メダ
「いや・・・具体的にどうこうとかそう言うの無いけど・・・
とりあえず、この『盛夏祭』が無事終わったら・・・オレの中で一つ区切りがつくと思う。
その時なら、その・・・」

ネロ
「そう・・・分かった。
じゃあ、終わったら・・・今までメダの代わりに頑張った分、ソレで清算ね。。」

メダ
「ああ、じゃ、そういうことにしといてやるよ。」

ネロ
「今日はとりあえず愛の告白で許してあげるね。。」

メダ
「は?」

ネロ
「ほらほら、思いの丈を吐いて言っちゃいなよ、ユー。」

メダ
「今日のお前、かなりキャラがぶれてるぞ大丈夫か?」

ネロ
「そうやって逸らさないでハッキリと言っちゃいなよ、ユー。」

メダ
「・・・好きだぜ?」

ネロ
「疑問形で言うなよ!!!
ハッキリしろよユーーー!!!」

メダ
「・・・・・はぁ、全く・・・
何時まで経ってもお前はしょうがない奴だな・・・ネロ。」

ネロ
「ん?」

メダ
「好きだよ、ネロ・・・。
オレも、お前じゃなきゃ・・・ダメみたいだ。」

ネロ
「うん!私も・・・
メダが大好きだよ!!!」



そう言うとネロはメダに飛びついてくる。
その勢いでメダは後ろに倒れ込んでしまう。
後頭部とかかなり強く打ちつけたが、何か痛みとかあんまり感じなかった・・・
どうやらかなり興奮状態にあるからか、痛みを感じなくなってしまっているようだ。
ネロは今もメダにのしかかるようにして抱きついてきている。
ネロの柔らかい感触と、柔らかい匂いに包まれながら、メダは久しく見ていなかったネロの笑顔を忘れないように脳裏に刻みつけるのだった。








第10話「またまた修行。。」






優太
「よっしゃあ!!
仕事だーーーーー!!
自由だーーーーーーーーーー!!!」

鳳仙
「ダンナ嬉しそうだね。」

優太
「そりゃあそうだろ!!
今日からあのクソジジイの顔を見なくて済むと思うとこう・・・!
胸の奥から爽やかな南国の風が吹き込んでくる感じだぜ!!!」

千草
「で、今日はどんな分担で仕事すんの?」

鳳仙
「えっと・・・今日は運ぶのが主になりそうだからみんなで力仕事って感じ。」

優太
「もう何でもいいや・・・
で、何処に何を運ぶんだ?」

鳳仙
「とりあえず『天統べる煌星』の事務所に行こうよ。
話はそこでしよう。」








メダ
「って訳で、分担は以上だ。
何か質問あるか?」

優太
「はい!」

メダ
「何だ優太・・・」

優太
「いつの間に立ち直ったんですか!!」

アラド
「聞いてやるなよ優太・・・
男には言いたくないことの一つや二つあるもんさ・・・」

優太
「え、アラド何か知ってるのか?」

アラド
「いや何・・・
アイツ、いつのまにか遠くまで行っちまってさ・・・」

メダ
「だからアレは違うって言ってんだろ・・・アラド。」

アラド
「何が違うんだよこの野郎!!
オレ達が心配してたのにお前はお前でネロとよろしくしやがって!!!」

ネロ
「嫌だな~~アラド、私達まだコレと言って何もないよ~~。」

アラド
「うっそお!!あの状況で何も無かっただって・・・・!!!
このヘタレ!!何してるんだよ!
千載一遇のチャンスだったろうに・・・」

メダ
「何が千載一遇だ!!
コレからいくらだってチャンスあるわボケェ!!!」

アラド
「え、マジかよ・・・羨ましすぎる!!!
あーーーーーーーーー!!オレも甘えさせてくれるような彼女が欲しいよ!!!」

優太
「大体状況は理解したぜ・・・
つまり、メダがヘタレのバカ野郎ってことだな!!!」

メダ
「誰がヘタレだと・・・?
お前こそいつまでもふわふわしてないで誰か一人選んだらどうなんだ・・・」

優太
「は?選ぶってなにを・・・」

メダ
「お前だって十分ヘタレじゃねぇか・・・」

優太
「あぁ?何だとこの凹み団長・・・」

メダ
「何だ、つっかかる事しか知らねぇのかヘボ団長・・・」

優太
「・・・・・・そういえば、決着は付けてなかったな。」

メダ
「・・・・・・決着?
そんなの必要無いだろ・・・オレの勝ちってことで。」

優太
「やってみねぇと分かんねぇぞ・・・
オレ、クソジジイと地獄のような(クソジジイと居ること事態が)修行を経てそれなりに強くなったんだぜ・・・?」

メダ
「そうかそれは良かったな・・・
だが、それがどうした?」

優太
「もしかしたらお前より強くなってるかもだぜ?」

メダ
「なら、ここで白黒はっきりさせたって良いんだぞ?」

優太
「へぇーー・・・いいのか?
こんな衆人環視の中で負けたら色んな意味で今度こそ立ち直れなくなるんじゃないか?」

メダ
「安心しろよ・・・
オレがお前に負けるなんてありえないから・・・」

優太
「・・・・・・」

メダ
「・・・・・・」

優太メダ
「「上等だ!!!
かかってこいやあああああああああああああああ!!!!!!!」」



優太は腰の『竜牙』に手をかけ、メダも拳を構えると臨戦態勢を取る。
次の瞬間、二人の姿が消える。
そしてそこかしこから刃物と拳がぶつかってるとは思えないような不可解な音が飛び交う。
その音は四方八方ありとあらゆる場所から聞こえてくるが、その音は自然と遠退いて行きその内聞こえなくなる。


鳳仙
「とりあえずメダの奴持ち直したんだ・・・良かったね。」

ネロ
「うん、コレでウチも仕事が捗るよ。」

ゼオラ
「てか二人して行っちゃったわよどうすんの?」

ネロ
「久しぶりに体を動かすには調度良いんじゃないかしら。
ほっときましょ。。」

ゼオラ
「ネロってさ・・・たまにもの凄く放任する時あるよね。」

ネロ
「そんなことないわよ?
メダのこと凄く心配だなーーー(棒読み)」

千草
「そうなるとここに居る人だけでこの量のプランター設置すんの?
死ぬんじゃね?」

由紀
「ま、まあ・・・適度に頑張ろうよ。」

アラド
「だな。とりあえず車に載るだけ載せて手当たり次第に運ぼうぜ。
終わらないと徹夜とかする羽目になりそうだし・・・」

ネロ
「そうね、テキパキやっちゃいましょう。
その内優太君もメダも帰ってくると思うしね。」

由紀
「ん?」



由紀はふとプランターの山に目を向ける。
プランターに微かだが何かを感じる。
由紀はそっとプランターに触れる。


由紀
「(これ・・・)」



それは微量な魔力だった。
プランター事態に魔力が込められているのは珍しい。
何に使うつもりなのか・・・
由紀はそっとプランターから手を離す。


由紀
「(こんな甘い術式組んで・・・こうしておけば・・・)」

鳳仙
「由紀?何してんの・・・早く運んじゃおうぜ?」

由紀
「うん。分かってるよ・・・よいしょっと!」



由紀は手に込めた魔力を払うようにして手を振ってからプランターに手をかける。
それを力強く持ち上げ車まで運ぶ。
今日は随分とハードな一日になりそうな予感がした。








アルヴィス
「それでシオン、警備の方は・・・」

シオン
「はい、『騎士団』の方は問題無く配置を割り振っております。
『ギルド』の方は・・・」

アルヴィス
「まあ、人数は10程度しか確保できなかったんじゃが・・・
問題は無かろう。」

シオン
「10人前後・・・ですか?
『ギルド』は相当大きな勢力のはずでは?
そんな人数しか確保できないとは・・・」

アルヴィス
「何故かは知らんがここ数日の緊急依頼の件数が多くてのう・・・
ほとんどの人員を持ってかれてしまったよ・・・。」

シオン
「・・・・・何か嫌な予感がしますね。」

アルヴィス
「そうじゃのう。
じゃが、何はともあれなってしまった物は仕方がない。
それに、持っていかれたと言ってもまだ『ギルド』には・・・」



ドゴン!!!


そんな話をしている二人の傍に何かがもの凄い勢いで落下してきた。
落下してきた場所に居たのは人だった。
手には日本刀を持ち、体中に『鋼猿』を纏い完全に臨戦状態だと見て分かる。
その空気を察してかシオンは腰の剣に手をかけるが


アルヴィス
「まあ、待てシオン。
アイツはワシの知り合いじゃ・・・」

シオン
「!?」

アルヴィス
「ん、もう一人来たようじゃのう。」



アルヴィスの言葉を合図にしたかのように上からもう一つの影が降り立ってくる。
その影は日本刀を持った少年の前に降り立つと左手を少年に向ける。
その手には『唸犬』が込められており、その上にはよく分からない力を纏わせている。
心なしかその力は回転しているようにも見える。


アルヴィス
「おお、調度良いところに来たのう。」

シオン
「あ、アルヴィス様!この者達は・・・
む、日本刀を持っているアイツ・・・確かレオナ様と一緒に居た・・・」

アルヴィス
「優太と顔見知りじゃったか・・・話が早い。
もう一人の方はメダ、明日警備を任せる『天統べる煌星』と『暁の地平線』の団長達じゃ。」

シオン
「団長!!?あんな若いのにですか・・・!?」

アルヴィス
「実力はワシが保証する。
それと何を勘違いしとるか知らんが・・・
『騎士団』と違って団長の座に就くのはそこまで難しいことでは無いぞ『ギルド』では。」

シオン
「し、しかし・・・こんな奴らに警備が本当に務まるんですか?」

アルヴィス
「ならちぃと見ておけ、二人の実力をな。」



シオンはアルヴィスに言われるがままに二人の方へ視線を向ける。
二人からは変な緊張も何も無く、まるで稽古をするかのような軽い感じの雰囲気を漂わせている。


優太
「へっ・・・何だよ、引き籠ってたわりにやるじゃねぇか・・・」

メダ
「塞ぎ込んでいたとはいえ、研鑚は積んでいたさ・・・これくらいは当然だ。
それより、修行の成果って言うのは見せてくれないのかよ。」

優太
「ちょっと気分屋な力でね・・・
そんな簡単には出してやれないんだよ・・・」

メダ
「出し惜しみか?
だったら、もう終わっちまうぞ!!」



メダは左の拳を優太に向けて振る。
しかしフェイント無しの正直な一撃のため軌道は読みやすい。
優太は体を左に捻り、転がるようにしてその一撃を避わす。


ボギャア!!!


拳がぶつかった地面を抉る。
当たっていたら『鋼猿』越しでも体を抉られていたかもしれない。


優太
「その力・・・結構使えるようになったんだな。」

メダ
「我流だがな・・・
できれば、師匠に教わりたかった・・・」

優太
「おいおい、また塞ぎ込むんじゃねぇぞ!!!」



今度は優太が仕掛ける。
『速鳥』でメダの正面に踏み込む。
そのまま加速の勢いに乗せ、『竜牙』を正面に向かって突き出す。
が、その一撃は空を切る。
正面にメダの姿は既に無い。


メダ
「はっ、誰がまた塞ぎ込むって!!」



声は背後から聞こえる。
どうやら読まれていたらしい。
瞬時に『速鳥』で背後に回ったのだろう。
『速鳥』は短い距離を細かく移動することで細かい動きもすることが出来る。
しかしそれには刹那の間に何度も正確に魔力を練り込む必要があり、そう簡単にできるものでは無い。
むしろコレができるようになって初めて『速鳥』を使いこなせるようになったと言える。
メダの気配と攻撃の意志を感じるも優太は既に攻撃を出した後だ、体が伸びきっている状態のため回避できるか怪しい。
それすら見越しているのかメダは思い切りよく右の拳を握り込み、そこへ回転する力と『唸犬』を纏わせる。
そしてその拳を優太の背中へ打ち込む。


ボギュン!!!


拳が優太の背中を容赦なく抉る音がする。
メダは咄嗟にしまったと思う。
まさか本当に入ってしまうとは・・・しかしその内心の動揺が一瞬の隙を生む。
次の瞬間、正面に立って居た筈の優太が空中に霧散した。
重ねるように驚きを隠せないメダは正面方向に集中してしまう。
確かに今の今までここに・・・
ハッとした時、メダは背後に優太の気配を感じ取る。


優太
「何だ!?
オレの残像でも見えてたかい!!」



優太の『竜牙』には『唸犬』が纏わされている。
喰らったら最後、『鋼猿』越しでも関係無く斬り裂いてきそうだ。
メダはほぼ脊髄反射で体を回転させる。


メダ
「甘い!!」



メダは左足を軸に回転し、右足で優太に蹴りを放つ。
反射による瞬間的な反応だったため、何も込められなかったがノーガードの脇腹にその蹴りは突き刺さる。


ゴッ!!!


優太
「グッ!!!」



そのまま優太は吹き飛ばされ、地面を転がる。


ドッ!!ズシャーーーーーーーーーーーー!!!


二、三転がった辺りでその場に踏み止まる。
見たところダメージはほぼ無さそうだ。
優太自身も全身に『鋼猿』を纏っている。
ダメージを通したいならコレを超える力で打ちこむ必要がある。
さっきの蹴りは突発的だったため何もかかってなかったのが幸いした。
吹き飛ばされただけでダメージは無い。


メダ
「分け身って奴か?
随分と高度な技が使えるようになったもんだ・・・。」

優太
「ああ、ぶっつけ本番にしてはよくできてたろ?」

メダ
「ああ、あまりのアホ面に騙されかけたぜ。」

優太
「そりゃあどうも・・・
さ、て・・・体も温まった所でそろそろいくぜ!!
コレがオレの修行の成果だ!!!イ・・・!!」

アルヴィス
「そこまでじゃ!!!!!」

優太
「え・・・?」

メダ
「あ、アルヴィスさん・・・いつからそこに?」

アルヴィス
「最初から居たわい。
優太、その技は無闇に使うなと教えなかったか?」

優太
「ぐっ・・・!
ちょ、ちょっとだけ・・・一瞬纏ってそれで切るつもりだったんだって!」

アルヴィス
「使おうとしたことに変わりはないのう・・・。」

優太
「うぐっ・・・!」

アルヴィス
「メダ、お前も使いこなせもしない力を中途半端に使う物では無い・・・
優太だったから避けてくれたが、普通なら風穴が開いておったぞ?」

メダ
「い、いえ・・・!自分も当たりそうになったら止めようと・・・
す、寸止めの要領で・・・!」

アルヴィス
「ワシにはうっかり当ててしまった様に見えたがのう・・・。」

メダ
「うっ・・・・!」

アルヴィス
「二人ともまだまだ青い!!!
修行の一環と言ってももう少し加減を覚えることじゃ!!
お前たちのもっとる力は相手の命を容易に奪うことが出来るもの・・・
重々その重みを理解せんか馬鹿者!!!

優太メダ
「「す、すみませんでした・・・Orz」」

シオン
「・・・・・・凄いんだか凄くないんだか今一だ・・・」

アルヴィス
「ま、根は子供じゃが実力や志は一人前よ!
どうじゃ、これで文句はあるまい。」

シオン
「そうですね、実力だけなら・・・認めなくも無いです。」

アルヴィス
「そうかそうか。それなら明日は頼むとしようかの。
ほれ、二人とも地面に頭擦り付けてないで行くぞい。」

優太
「は?どこへ・・・」

アルヴィス
「折角じゃから少しばかり稽古をつけてやる。
異論は認めん、来い。。」

優太
「えええええええええええええええええええ!!!!!!!!??
やっと解放されたと思ったのに!!!」

メダ
「あ、アルヴィスさんに稽古を付けてもらえるなんて光栄です!!!
よ、よろしくお願いします!!!」

アルヴィス
「ほれ見ろ優太、これが正しい反応じゃ。」

優太
「知るかそんなこと!!
あーーもう!!やるなら早くやって終わりにするぞ!!
オレは仕事を手伝わなくちゃならないんだからな!!!」

アルヴィス
「これも大事な仕事の一つよ・・・観念しろい。」

優太
「うぐぐぐ・・・お、横暴だこんなの・・・」







第11話「動き出す歯車。。」






優太メダ
「「づ、づかれた・・・・・」」

由紀
「今日はメダとセットなんだね・・・。
あーーー、でも今日は冗談じゃなく私も疲れちゃったな・・・」

優太
「わ、悪い・・・何だかんだでクソジジイに拘束されて、手伝えなかった・・・
ホント悪い、みんな・・・」

鳳仙
「良いよ良いよ!ダンナは他にやらなきゃならないことがあったんでしょ?
だったら気にする必要なんて無いよ!」

千草
「骨は折れたけど、どうにか終わったし・・・
結果的には良かったんじゃないかな。」

優太
「そっか・・・よかった。」

メダ
「さ、て・・・オレも何か流れで付いて来てしまったが・・・
そろそろお暇させてもらう。」

優太
「え、何だよツレねぇな・・・
今からネロとアラドにゼオラが来て、メダ復活記念と前夜祭をやるんだぜ?
もう少し居ろよ。」

メダ
「はぁ?そんなの必要無いわ!
オレは帰る・・・」

優太
「だから・・・ネロとかネロとかネロとかも来るって言ってんだろ?
帰ったって一人だぜ?観念して参加しろよ主賓。」

メダ
「何でネロを三回も言う必要があった・・・?」

優太
「いや、そこが一番重要かと思って・・・」

メダ
「・・・・・・分かった。
そこまで言うなら、参加してやらんでも無い。」

優太
「よっしゃあ!!一名様入りましたーーーーー!!!
スグにネロ達に電話だーーーーーーー!!!」

メダ
「はぁああああああああああ?
既に呼んであるんじゃないのかよ!!?」

優太
「ゴメン嘘。。」

メダ
「謀ったなテメェ!!!」

優太
「お前の生まれの不幸を呪うんだな・・・。」

メダ
「はぁ?何言ってんだよ意味分からねぇ・・・」

優太
「お前・・・ガンダム分かんねぇのかよ!!!」

メダ
「がん・・・何だって?」

優太
「コイツは一から調整しないとダメだな・・・千草!!!
TVと○S3を用意するんだ!!!
今からガンダム劇場版三部作の上映会もついでにやるぞ!!!」

千草
「えーーー・・・メンドイ。」

優太
「あ、そういえば新作のエロげ~を予約したの忘れてた・・・
千草もやりたがってた奴なんだけど・・・残念だなーーー。」

千草
「TVとP○3だっけ?そんなのすぐさま用意するさ!!しますとも!!!
だからそのエロげ~貸してください!!!」

優太
「ちゃんと用意できたらな・・・」

千草
「まっかせろよ!!そんなの夕飯前だぜ!!!」



と、言いつつ千草は食堂からもの凄い勢いで飛び出して行った。
そのすぐ後にエリスが少し困惑した表情で入ってきた。
エリスは優太の元に小走りで近寄ると


エリス
「千草様、どうかなされたのですか?
何だかもの凄い形相で二階に上がって行かれましたけど・・・」

優太
「いや、別に何でも無いよ。
それより夕飯はお客が来るから少し豪勢なの頼む。」

エリス
「お客様がいらっしゃるんですか!?
それは大変ですね!!
腕によりをかけて作らせていただきます!!」

由紀
「あ、それなら私も手伝うよ。」

愛依
「私も何かできることがあるなら・・・」

エリス
「由紀様、愛依様ありがとうございます。
それでは少しばかりお手伝いお願いしますね。」

由紀愛依
「「はーーい。。」」


「なぁなぁ、ユータ。」

優太
「何だ?」


「見るならガンダムじゃなくて、ナデシコの劇場版が良い・・・」

優太
「いや、それも確かに名作だけどさ・・・
アレはアニメ版見てない人にはハードル高すぎるから・・・」


「む、そう言えばそれもそうか・・・
うーーーん、でも見たかったなーーーナデシコ。」

優太
「また今度な。」

千草
「おっしゃあ!!!持ってきたぜ!!!
コードはどこに繋ぐんだ!!」


「こっちにあるよ~~。
あ、それだったらスピーカー大きいのがいるよね?
私7.1chの大きいヤツ奴持ってるから持ってくるよ~~。」

鳳仙
「それ一人で運ぶの大変だろ・・・オレも手伝うよ。」


「ありがとう鳳ちゃん。。」

メダ
「・・・・・何て言うか、お前の所は仲良いな。」

優太
「別にこんなの普通だよ。
オレ達、『家族』だからさ。」

メダ
「『家族』、か・・・。」

優太
「羨ましいか?」

メダ
「いや・・・。
でも、こういうのも悪くないのかもな。」

綾香
「パパーー?」

優太
「ん?何だーー綾香。」

綾香
「パパの隣で見ても良い?」

優太
「ああ、いいよ。」

綾香
「わーーい!ありがとう、パパ!」

メダ
「パパ・・・ねぇ。」

優太
「一応言っておくけどオレが呼ばせてるんじゃないからな!
綾香が勝手にそう呼んでるだけで・・・」

メダ
「パパか・・・そういうのも良いかもな。」

優太
「???」









時計の針が十一時を指している。
蓮は書類の束を整えると、それを左の山に重ねて大きく息を吐く。
そして背もたれに思いきり体重を乗せながら



「ふぅ・・・どうにか終わりましたか・・・。」

ジゼル
「お疲れ様でした。
レオナ様・・・今夜は私と一緒にお風呂に入りましょうか!!」


「数年会わない内に随分と愉快な趣味に目覚めたんですね・・・
断固拒否します。」

ジゼル
「そうですか・・・
お風呂で隅々までピカピカに洗ってあげる計画は失敗ですか・・・
なら、添い寝をするまでです!!!」


「鬱陶しいからさっさと部屋に帰って寝なさい変態メイド・・・」

ジゼル
「あぁ・・・
レオナ様にそんな適当にあしらわれると何か違う趣味にも目覚めそうなんですけど・・・」


「ダメだコイツ・・・
本当に早く何とかしないと・・・」

ジゼル
「と言う冗談はさておき・・・今夜はゆっくりとお休みください。
明日も早いですからね。」


「ええ、分かってるわありがとう。」

ジゼル
「それでは、私はこれにて失礼します。」


「今日もありがとう。
明日もよろしくね、ジゼ。お休みなさい。」

ジゼル
「はい、お休みなさいませ。レオナ様。」



そう言うとジゼルは部屋から出て行く。
それを見送ってから蓮も机の上を片付けてから部屋を後にした。
部屋を出た蓮は自室に向かうために、一つ上の階へ歩を進める。
階段を上り、目の前にある渡り廊下を奥へしばらく進むと王族が住む区画がある。
その入り口付近の見張りをしている兵に一礼する。
向こうも蓮に気付くと深々と一礼する。
基本的に王城には所々に兵が配置されているため、一つ一つの持ち場に居る人数は少ない。
ましてや城内に入れるのは門の通行を許可された者のみなため、通常城内には侵入者が入ることは皆無である。
城には強力な魔術結界が張られており、外から転移術式での侵入を防ぐ役割と城を守る役割がある。
まずやましい気持ちを持った者はこの結界を越えることはできない。
そのため結界に引っかかるような輩は門で兵士に取り押さえられる。
少なくともそこを越えられてもここまで来るまでにどれだけの兵を相手にしなければならないのか・・・現実的な話では無い。
そのため、建国以来不埒な輩の侵入を一度も許したことなど無いのだ。
王族のエリアとあれば尚の事だ。
ここはもっとも強力な結界に守られており、王族以外は寄せ付けないのだ。
入れるのは王族に直接許可された者のみ。
そんな訳で、兵士の人数は少なくともいいのだ。
しかし蓮はふと不思議に思う。
さっき会釈した兵士の鎧、知っている物と少しばかり違う気がした。
まあ、最近変わったのかもしれない。
随分長い間城を空けていたのだ・・・鎧のデザインも変わるのだろう。
そんなことを考えながら奥に進んでいく。
そして自室に入ると蓮は適当に身支度を始める。
とりあえずお風呂に入ってから寝ようと思ったからだ。
そのまま部屋に備え付きのお風呂場に入る。
備え付きの割に脱衣所からして随分と広々としている。
ジゼルに事前に頼んでおいたのでお風呂の用意はされているはずだ。
蓮はササッと服を脱いで丁寧に畳むとそれを籠にいれる。
そしてタオルを片手に戸を開けると・・・


ジゼル
「あ、レオナ様!遅かったですね!!!」



とりあえず何も言わずに手近にあった風呂桶をぶん投げておいた。
ジゼルは油断していたのか顔面に風呂桶を喰らい、そのまま伸びてしまう。
蓮は適当にソレを外に放り投げると中から鍵をかけてゆっくりとシャワーで体を洗い始めた。






ジゼル
「うぅーーー・・・ひ、酷いですレオナ様・・・
痛かったじゃないですか。」


「あんな所で全裸待機されてたら誰でもああすると思いますけどね・・・」

ジゼル
「そんなことないですよ!!
私だったら・・・間違いなくレオナ様に飛びつきます!!」


「飛びつくな!!
と言うか口動かすんじゃなくて手を動かしなさい!!!」



何だかんだでその後何もしないと言う条件付きでジゼルもお風呂に入り、今は蓮の髪を乾かしている最中だ。
蓮の髪は腰くらいまであるので洗うのも、乾かすのも一苦労だ。
内心ではジゼルにやってもらえるのは楽でいいとは思っている。


ジゼル
「しかしレオナ様も随分と成長なされて・・・
ジゼは興奮のあまり既にびしょ濡れです色々。」


「次に何かしたら確実に追い出しますよ・・・
てか何で居るんですか・・・?」

ジゼル
「いえ、真面目な話・・・王に頼まれまして。」


「お父様に?」

ジゼル
「ええ、レオナを頼むと(婚約者的な意味で)・・・!
私、コレから一生をかけてレオナ様を色んな意味でサポートしていきますね!!!
とりあえず手始めに性欲の処理を・・・」


「そんなの溜まってませんよ!!
いいかげんにしないとホントに追い出しますよ!??
てか、確実にお父様の言葉を誤解してますよね!!」

ジゼル
「そんな冗談はさておき・・・レオナ様、何か気付きませんか?」


「何がですか?」

ジゼル
「いえ、レオナ様のバストが・・・ってすいません冗談なんです反省してますホントにホントです!
だからその手にも持った鈍器(六法全書)を置いてください!!!」


「で、何か変わったことでもあったんですか?」

ジゼル
「いえ、ちょっとばかり気になったと言う話ですが・・・
兵士の鎧が少し変わってたのはお気づきですか?」


「ああ・・・確かに昔と比べて少しデザインが変わってましたね・・・。
それが何か?」

ジゼル
「いえ・・・あんな鎧を着てる部隊に心当たりが無いんです。」


「どういうこと?」

ジゼル
「あの兵士・・・もしかすると・・・」



トントン


その時、ふと扉が叩かれる。
すぐにジゼルが立ち上がり扉の方に向かう。


ジゼル
「こんな時間にどちら様ですか?」



『カスムです・・・
姫様に早急にお伝えしたいことが・・・』



ジゼル
「大臣でしたか・・・少々お待ちください。」


「誰でしたか?」

ジゼル
「カスム大臣のようです。
なにやら早急に何かを伝えたいとか・・・」


「こんな格好で会うのもなんですね・・・
とりあえずジゼ、代わりに聞いてくれる?」



蓮は今、水色のネグリジェ姿だ。
寝間着の一種なのだから別に問題はないとは言え、流石にこんな格好で会うのは少々憚れると言う物だ。


ジゼル
「はい、分かりました・・・。
すみません大臣、姫様はもうお休みになられます。
代わりに私が言伝を申し付かります。」



『直接話したいのだが・・・』


ジゼル
「何度も言わせないでください大臣・・・
姫様はお休みになられる所です・・・」



『仕方ない・・・それでは伝えてくれるか?』


ジゼル
「はい。それではどうぞ。」



『もう、この国はお終いだよ。』


ジゼル
「は?」



ドギャアアアアアアアアアア!!!!!


扉を突き破り、入ってきたのはさっき見たデザインの違う鎧を纏った兵士たちだった。
ジゼルは殺気を瞬時に感じ、扉から飛び退いていたので被害の方は無い。
粉砕された扉の向こうに立っていたのは何時もとは違う雰囲気を漂わせる大臣と兵士たち数人だ。
ジゼルは胸元から銃を取り出すとそれを兵士の一人に向ける。
そしてその銃爪を引く。


ガオン!!


そんな発砲音と同時に兵士の鎧を弾丸が貫く。
兵士の一人は地面に倒れ込み、激痛に呻いている。
それを合図に残りの二人が踏み込んでくる。
ジゼルは拳銃を左手に握り直すと空いた右手でさっきの兵士が落としたハルバートを手に取る。
左右から同時に踏み込んでくる二人の兵士。
ジゼルはその二人の攻撃を前に踏み込むことで避わす。
そしてそのまま体を回転させつつハルバートを横に振るう。
左側に居た兵士にハルバートが喰い込み、もう片方の兵士を巻き込み吹き飛ばす。


カスム
「ほぅ・・・」


「ジゼ!!大丈夫!?」

ジゼル
「これくらいは何てこともございませんよ、レオナ様・・・
それよりどういうつもりですか大臣。」

カスム
「なに・・・見てのとうり、クーデターと言う奴だが?」

ジゼル
「本気ですか?
だったら黙って見過ごせませんね・・・」

カスム
「ふん、たかがメイド一人に何ができるんだ?」

ジゼル
「今のご覧になってませんでしたか?
私、これでもレオナ様直属のメイドですからね・・・
護身術の一つくらいは嗜み程度に心得がありますよ?」


「(いや、今のはそんなのじゃあ説明できないような動きでしたよジゼ・・・)」

カスム
「まあ、いい。
ならば、これでも抵抗する気がおきるかね?」



カスムはポケットから液晶付きの再生機器を取り出す。
そこに何故か見知った顔が縛りつけにされている。
その喉元には見間違いでなければ剣を付きつけられている。


ジゼル
「なっ!」

カスム
「これが誰だか言うまでもないだろう・・・」

ジゼル
「大臣!!
貴方は本気でこの国を・・・!!?」

カスム
「だから最初から言っているだろう?
武器を捨てろ・・・さもないとスグにこの王の首が胴体から離れることになるぞ?」


「え?」

カスム
「見てのとうりです姫様・・・
お父上は今私達が丁重に預からせて頂いております・・・
つきましては姫様には、私と一緒に来て頂きたきたい。」


「・・・・・私に何をさせようと言うのですか・・・?」

カスム
「世界の修正・・・とでも言いますか。
兎に角、今の貴女に選択権など存在しません・・・
さぁ、一緒に来て頂きますよ。
レオナ姫。」


「・・・・・・」







第12話「『神獣』。。」






エリス
「ふぅ・・・これで片付け終わりましたね・・・。」



時計の針は既に日付をまたいでいる。
ネロやアラド、ゼオラを呼んでの前夜祭はかなり盛り上がり終わりが見えないくらいの状況だったが・・・
流石にみんな三日間の準備疲れが出たのか十一時くらいには線が切れたように雑魚寝状態になった。
エリスは一人みなに毛布をかけ、今の今まで片づけをしていた所だった。
それも一段落した。


エリス
「あ・・・皆さんが起きられたらお風呂に入りたがるかもしれませんね・・・。
湯を張っておかないと。」



エリスは食堂を出て、大浴場まで足を運ぶ。
昼間の内に掃除は済ませてあるので湯を張り込めばスグに入れる状態だ。
エリスは脱衣所の壁に付けられているパネルを操作する。
すると中からお湯が勢いよく出る音がする。
戸を開けて一応確認するが、ちゃんとお湯は出ているようだ。


エリス
「これでよしっと。
さて・・・私もシャワーを浴びて少し仮眠を・・・」



ピンポーン。。


ふとそんな電子音が響く。
深く考えるまでもなく呼び鈴の音だ。
夜も深まり、静まり返った洋館には妙にその音が響いた。


エリス
「こんな時間に誰でしょう・・・。」



エリスは多少疑問に感じつつも入り口に向かう。
入り口の調度左奥に浴場があるのでスグに辿りつく。
そしてエリスは扉を少し開けて


エリス
「どちらさまですか?」



開けた先に居たのは兵士だった。
暗くてよく見えないが三人くらいだ。
訝しがるエリスを尻目に兵士の一人が口を開く。


兵士A
「夜分遅くに失礼・・・
ここが『暁館』で間違いないかな?」

エリス
「はい、そうですが・・・こんな夜遅くに何の用ですか?
もう皆さんお休みなので明日にしてもらえると幸いなのですが・・・」

兵士A
「いえ、お時間は取らせません・・・
貴女に人質になってもらうだけなので。」

エリス
「え?」



次の瞬間兵士の手がエリスの手を掴む。
そのまま強引に引き寄せられると、口を押さえつけられる。
抵抗するも相手は意にも介さない。


兵士A
「別に危害を加えようと言う訳ではないんですよ・・・
少々黙ってて頂ければ何もしませんよ・・・。」

エリス
「むーー!!むーーー!!!」

兵士A
「だから抵抗しないでくださいと言っているでしょう?
うっかり何をするか分かりませんよ・・・ふふふ。」

エリス
「むーーーーーーーー!!!」

兵士A
「随分と強情なお嬢さんだな・・・まあいい。
コイツを人質に中の連中を拘束するぞ・・・全員オレにつづ・・・」



その言葉が二の句を告ぐことは無かった。
兵士の顔面に拳がめり込んだからだ。
兵士はそのまま弾き飛ばされ、門前に尻もちをつく。
エリスはその拍子に拘束を解かれ、何が起こったのか分からずあたふたしている。


優太
「こんな時間に誰かと思ったら・・・誰コイツら・・・?」

エリス
「優太様!!」

優太
「トイレに起きて呼び鈴に気付いて来てみればこれだよ・・・
どゆこと?」

エリス
「いえ、私にもさっぱりで・・・!」

兵士A
「き、キサマ・・・!ユウタだな!!
ソイツがリーダーだ!!取り押さえろ!!
相手は丸腰だ!何もできっこない!!今がチャンスだ!!!」



それを合図にしてか残りの二人が踏み込んでくる。
左右から挟み込もうと二手に分かれ、優太に向かってくるが・・・


優太
「寝起きで思考が追いつかねぇんだけど・・・
とりあえず、お前らは敵ってことでいいんだな?」



兵士二人が優太に飛びかかる。
優太は適当に首を左右に動かす。
そして


優太
「たった雑魚三人で、よくオレの前に立つ気になったな・・・
それだけは褒めてやるよ!!!」



全身から凄まじい量の闘気を発する。
それだけで兵士は三人とも動きが止まる。
いや、動けなくなったと言うのが正しいかもしれない。
兵士たちは言葉にできないような「威圧」を受け、戦意を完全に削ぎ落とされる。


兵士A
「な、え・・・お、おま・・・な、何を・・・!!」

優太
「蛇に睨まれた蛙ってとこだぜお前ら・・・
今は蛇じゃなくて龍、蛙じゃなくて人間だけどな。
今のオレはちょっとばかり虫の居所がいいから一回だけチャンスをやろう。」

兵士A
「ちゃ、チャンス?」

優太
「エリスに手を出したのは見逃してやるから・・・とっとと失せろ・・・。
それでもかかって来るってんなら、次は命の保証はできねぇぞ。」



重ねるように闘気を出し続ける優太。
その瞳に睨まれた兵士の一人は今まで感じたことの無い恐怖を感じる。
体の震えが一瞬だけ解ける。
それを合図に三人は一目散にその場を走り去っていく。


優太
「たく・・・何だってんだあいつら。
エリス、大丈夫か?」

エリス
「あ・・・ハイ。
私は特になんとも・・・」

優太
「そっか・・・ん?」



急に風の流れが変わる。
それは少しづつ大きな物に変わりながら王都中を吹き抜ける。
ふと、魔力の流れを感じる。
しかも王都中からだ。
それが少しづつこっちに向かってくる。
優太は身構えるも、何も現れない。
魔力の流れはすぐさま屋敷の前を抜けて違う方向に向かっていく。


優太
「な、何だ?誰も居ないのに・・・
魔力だけが独り歩きしてる?」

エリス
「!!
優太様!あのプランター・・・淡く光ってませんか?」

優太
「え?」



エリスが指差したのは小さなプランターだ。
確かこれは仕事で設置した物の筈だ。
優太はプランターにゆっくりと近づく。
そしてプランターを確認してみると、さっき感じた魔力をこのプランターから感じた。
しかも左右に等間隔に設置されたプランターからも同種の魔力を感じ取る。
これはまるで


優太
「プランター同士が魔力のラインで繋がってる?」

エリス
「え、どういうことですか?」

優太
「分からん・・・
でも、よく見るとプランター同士に魔力の線が走っているように見えないか?」

エリス
「私、そう言うのには疎いのですが・・・
た、確かにそう見えなくも無いですね。」

優太
「何かが、起ころうとしてるのかもしれないな・・・」



優太はその魔力の元を辿るように視線を向ける。
その先には、王城がそびえ立っている。
そしてその頂上付近に強大な魔力の渦を感じ取る。
確実に何かが起ころうとしている。
優太は肌でそれを感じるのだった。








カスム
「いささか予定より早いな・・・」


「?」

ジゼル
「大臣、私緊縛されるなら姫様にされたいのでこの紐解いて姫様に縛り直させてください。」

カスム
「お前が変態だと言うのは十分に分かった。
とりあえずもう少し緊張感を持て。」


「屋上まで連れて来て何をするつもりですか・・・。
それに、お父様はどこに・・・?」

カスム
「あの役立たずの王ならそこにおられますよ?」



カスムは顎で軽く示す。
そちらに向くとそこには確かに国王が縛り付けられている。
その喉元には剣を突きつけられており、下手なことをすれば即殺すと言われているようだ。
蓮はスグにカスムへ向き直る。



「私がどうなろうと構いません・・・
貴方のして欲しいことにも黙って従います。
ですから、お父様とジゼには手をださないで!」

ジゼル
「ひ、姫様!!そんな奴にそんなことを言ってはいけません!!!
相手はアレでも男です!!きっと○○されて、○○漬けにされた挙句に、○○○とかされて・・・!!!
個人的には超興奮しますけどやっぱりファンの人達に大打撃なのでそういうのはお止め下さい!!!」


「ちょっとジゼ黙っててくれる?
せっかくのシリアル台無しだから・・・」

ジゼル
「心得ました。
ですが、姫様・・・シリアルではなく、シリアスですよ。」


「失礼噛みました。」

カスム
「全く・・・緊張感の無いお方たちだ。
自分たちが置かれた状況がお分りにならないか?」


「いえ、そんなこともないですよ?
ちょっとばかりこういうことには慣れているだけです。」

カスム
「ふっ、まあいいでしょう。
姫様、こちらへお越しください。」



そう言うとカスムは手招きをして蓮を誘う。
蓮は黙ってカスムの元へ歩を進める。
その先には小さな魔法陣が書かれていた。
六芒星の周りには何やらびっしりと術式が書きこまれている。
蓮は一瞬だけ魔法陣を見回す。
すると



「召喚術式ですか・・・。」

ジゼル
「しょ、娼館・・・術式・・・!」


「だから黙ってなさいこのお馬鹿・・・。
娼館じゃなくて召喚!!」

ジゼル
「流石姫様!!聞いただけで漢字間違いに気づくなんて!!
ジゼは感動のあまり涙が止まりません!!」


「はいはい・・・で、大臣これで何しようと言うんですか?」

カスム
「とりあえずあの変態メイドに猿轡付けて良いですかな・・・?」


「あ、お願いします。
流石に五月蠅いんで・・・」

ジゼル
「姫様!
猿轡じゃ物足りないんでボールギャグとかだとなおいいでーーす!!!」


「だそうなんでできれば用意してあげてください。」

カスム
「ある意味息ピッタリですな・・・」





そんな感じでジゼルには本人の希望どうりボールギャグを付けてあげた。
本人が蓮に付けて欲しいとか駄々をこねるため、蓮はとりあえずしこたま叩いてからもの凄く強引に取り付けた。
ジゼルの顔は終始嬉しそうだった・・・



「失礼、時間を取らせました・・・。」

カスム
「いえ・・・て言うか逆に彼女大丈夫ですか?
随分とびったんびったんやってましたが・・・」


「何の問題も無いです・・・
知り合いにも似たようなの居ますけどああいうことされると逆に元気になるんですよ・・・。
いわゆるご褒美って奴らしいですから・・・。」

カスム
「(この人、実は普通にドSだよ!!
普段ひた隠しにしてる分解放すると凄いな!!
何か嫌な物見ちゃったなーーー!!!)」


「で・・・ここからは茶々無しのシリアスでいけますよ?
これで何をするんですか?」

カスム
「え・・・あ、ああ・・・。
これで召喚をするんですよ。」


「娼婦をですか?」

カスム
「姫様!!いい加減空気読んでください!!!
読者も真面目にやりたいんだかふざけたいんだかの境目分かんなくなっちゃってますから!!!」


「失礼、ちょっと魔が差しまして・・・
ちょっとジゼを叩いてたら胸の奥から色々湧き上がる物がありまして・・・
この気持ちはなんなんでしょうか?」

カスム
「いや、そんな目覚めちゃいました発言良いんで!!
そろそろ真面目に話させてくださいお願いします!!!」


「そこまで言うならしょうがないですね・・・
手短にお願いしますね。」

カスム
「はい!!ありがとうございます!!!・・・って違ぇよ!!
何でこっちが低姿勢でいかなきゃならんのだ!!!
逆だろ普通に考えて!!!」


「今更気付いたんですか・・・?
意外と抜けてますね大臣・・・。」

レーヴェ
「(緊張感無いなーーーこの空間・・・。)」

カスム
「ゴホン・・・。
この術式で私は神に連なる者を召喚するのですよ。」


「神に連なる者?」

カスム
「俗に言う、神獣と言う奴ですかな。」


「正気ですか?
召喚術式を発動させるのにどれだけ魔力を使うか知っているんですか?
召喚する者の格が大きければ大きいだけ使う魔力は多くなります。
神獣クラスともなれば貴方一人の魔力でどうにかなるものでは無いですよ!」

カスム
「そんなのは承知の上です・・・。
ですが、アレを見ても同じことが言えますかな?」


「?」



カスムは身を引くと、奥に行くよう促してくる。
蓮は恐る恐る前へ進む。
屋上の縁まで来た所で信じられない光景が飛び込んでくる。
王都中が光り輝いている。
正確には光の線が繋がり、一つの大きな物を描いていると言うべきか。
それは大きな大きな魔法陣。
さっきのと同じ術式を書き込まれた大きな魔法陣が城下に広がっている。



「こ、これは・・・!」

カスム
「私が三日かけて準備させた物ですよ。
魔法陣の効果で地脈から魔力を吸い上げこの城に集まるようになっています。
これで魔力の方は大体心配なくなる訳です。」


「いえ、これでも足りないでしょうね・・・」

カスム
「ふっ・・・鋭いですね。
確かにこれでは理論上まだ足りない。
ですから貴女が居るのではないですか・・・姫。」


「なんですって?」

カスム
「貴女の身の内に秘められた王家の魔力、『聖霊力』・・・。
それは無限に連なる力の一つでしたね。」


「・・・・・」

カスム
「その力は他者の傷を癒すことに特化された魔力。
それに、自身の魔力回復のスピードが常人の倍あると聞き及びましたが・・・。
流石は『無限力』の一つ。
これで魔力の心配は無くなる訳だ。」


「しかし・・・!まだ問題は残っています!!!
通常、召喚された者を操るにはそれ相応の力が必要の筈!!
貴方にそこまでの力がある訳が・・・!」

カスム
「それはもっともです。
しかし・・・それを可能にしてしまう道具があるとしたら?」


「何をバカな・・・!
そんな都合のいい道具があるわけ・・・」

カスム
「あるんですよコレが・・・。
我々の技術担当が作り出した神獣すら手懐ける道具・・・!」



カスムは右の袖を捲り、その下に付けられた腕輪を見せつける。
所々に赤い宝石が埋め込まれた見た目は普通の腕輪だが、それからは今までに感じたことも無いような嫌な魔力を感じる。
まるで人工的に作られた、自然の力とは相反する力のような・・・
妙にザラついた、気持ちの悪い魔力だ。



「ほ、本気ですか?
そ、そんな腕輪一つで・・・」

カスム
「それを今から試すんですがね・・・。
ささ、姫様・・・もう時間もありません・・・始めましょうか。」



カスムの腕輪が禍々しい波動を大気に振りまく。
それを合図にカスムの足元の魔法陣が赤く、朱く、紅く煌めく。
蓮の足元にも何時の間にか何かの魔法陣が浮かび上がる。
次の瞬間、全身から力が抜ける。
そのまま地面に倒れ込む。
それでも全身の虚脱感が抜けない。
魔法陣から体内の魔力を持っていかれている。
蓮は即座に気付くも体の自由がまるで利かない。
終わることの無い吸引が続く。



「あ・・・ああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!

カスム
「スゴイ・・・スゴイスゴイスゴイスゴイスゴイスゴイスゴイぞ!!!!!
何と言う魔力だ!!!これが『無限力』・・・『聖霊力』の力か!!!
吸っても吸ってもドンドン湧いてくる・・・!!
これなら、本当に呼び出せる!!」


「ぐっ・・・うっ・・・!!!ああああああああああああああああ・・・・・・・・っ!!

カスム
「さあ、来い!!!神獣、ヴァルヴェルド!!!!!



魔力が一点に集まる。
その力は天を裂くようにジグザグの亀裂を走らせる。
天が砕け、砕けた空の先には異界への扉が開いている。
その中からけたたましい叫び声が木霊する。


グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!


そして、そこから現れたのは・・・








優太
「何だ、コレ・・・空が・・・裂けた?」

メダ
「おい!!何の騒ぎだコレ!!!」

鳳仙
「って何だコレ!!!
空がメチャクチャ真っ赤だ!!!」

由紀
「この魔力、尋常じゃないよ・・・」

ネロ
「ねえ・・・アレ、なに?」



指の先をみな目で追う。
その先には、亀裂の中心から紅い体表に身を包んだ巨大な何かの腕とも脚とも解せない物が見える。
次々とその全貌が明らかになる。
長い長い強靭そうな尻尾。
鋭い爪がついた手足。
身長の何倍あるか分からない巨大な翼。
そして、頭には巨大な一本の角。
まるでトカゲを大きくしたようなその風貌・・・
あれはまさしく、


優太
「ドラ、ゴン?」



いま、王都上空に真紅の巨龍が姿を現す。
それは、紛れも無く戦いの幕明けとなることをその場の全員が理解した。








第13話「『魔氣』。。」






優太
「で・・・冷静に状況を判断するに・・・
アレはドラゴンで・・・オレ達はどうしたらいいと思う?」

メダ
「普通に考えるならあんなの相手になんてできないぞ・・・
アレがドラゴンだって言うならつまり・・・『神獣』って奴だしな。」

ネロ
「そうね・・・
私も図鑑でしか見たこと無かったから・・・本当にアレが伝説の龍種だとすると・・・
もう、王都は終わりよね。」

由紀
「そ、そんなにヤヴァイ奴なの!?」

アラド
「ヤヴァイなんてもんじゃない・・・
普通『神獣』と渡り合える奴なんてこの世に存在しない・・・
『ギルド』最強のアルヴィスさんですら撃退するのがやっとの超ヤヴァイ相手だ。」

鳳仙
「それより、流石に静かすぎない?
あんな奴が居るって言うのにほとんどパニックになってないよ?」


「それだけど、さっき少し見て回ったんだが・・・
どこの家の奴もグッスリ眠りこけてる。
多分だけど、あのプランターから発せられてる魔術の所為だと思う。」

ゼオラ
「確かにあのプランター・・・線で繋がってる辺り何かを描いているんでしょうね。
それが大きな魔術を発現させて王都中に作用されてるって言うのが今の状況?」

千草
「そうなると・・・どうするのが正しいのかな?」

メダ
「住民がいつ、どんなタイミングで目を覚ますのか分からん。
オレ達が目覚めたように、何かをキッカケに起きたら流石にパニックは必至だ・・・
それを考えると退路を確保しておきたいな。」

優太
「単純に四方の門を開けとこうって話か?」


「見回った時ついでに見てきたけど・・・
何だか街中見慣れない兵士だらけだった。
門もアイツらが固めてる可能性が高い。」

愛依
「カナちゃん何時の間にそんなことして来てたの?」


「夜は眠れないからちょっと散歩してたんだよ。
そしたらこんなことになってて・・・」


「兵士って・・・さっきユウちゃんが追い返したって言う?」


「多分その可能性が高いと思いますよ?」

ネロ
「何だか随分と用意周到ね・・・
やっぱり計画的な犯行かな・・・。」

メダ
「プランターの件もある。
アレは誰から頼まれたんだ?」

ネロ
「確か・・・元締めはカスム大臣って人だったような・・・
仕事を持ってきたのはゼダさんだったけど。」

メダ
「・・・・・・・そういえばアイツ、今朝から見てないな。
どうしてるんだ?」

アラド
「知らね。
元々アイツ気に入らねぇ奴だったし・・・」

ゼオラ
「昔から嫌な奴だったけど、最近になってその性格に磨きがかかったからね・・・
流石に私も耐えられなかったわ。」

メダ
「ま、今はそのことは置いておこう・・・。
問題はこれからどうするか、だ。」

優太
「どうするもなにも・・・やることは大体決まってると思うぜ?」

メダ
「どうするんだよ?」

優太
「あの龍をブッ飛ばせば・・・」

メダ
「人の話聞いてなかったのか?
アルヴィスさんでも苦戦するような相手に、お前一人で挑んで勝てる訳無いだろ。」

優太
「じゃあ、最終的にブッ飛ばすことにして・・・
まずは民間人の退路確保からしとくか・・・。」

ネロ
「今の所起きる気配は無いみたいだけど・・・
退路は重要ね、できるだけ早く確保しておくにこしたことは無いと思う。」

由紀
「それじゃあ、東西南北四つの門を兵士から奪い取ればいいってこと?」

鳳仙
「そうなると・・・人数を四分割するべきかな・・・。」

優太
「いや、六分割だ。」

千草
「残り二つは?」

優太
「王城に行く連中と、時計塔に向かう連中。」

メダ
「王城は何となく分かるが・・・時計塔は?」

優太
「確かあそこ、放送を王都中に送れるように改装したんだよな?」

メダ
「ああ、お前が思い切りよく下から上までぶち抜いた上に内部を破壊しまくったからな。」

優太
「お前だって一部壊しただろうが!!!
責任転嫁すんな!!!」

メダ
「八割方お前の所為なんだから良いだろ別に。
で、何で時計塔を押さえるんだ?」

優太
「いや、もしもの時のフォロー用・・・。」

メダ
「?」

優太
「兎に角、今自分達にできることをやろうぜ!
オレは王城に行く。
蓮も心配だし・・・」

メダ
「北門を落とすついでにオレも途中まで行ってやる。」

ネロ
「じゃあ私も北門行くね。」

由紀
「じゃあ私もき・・・」

優太
「お前は唯と一緒に時計塔。
ちょっとばかりオレに考えがある。」

由紀
「考え?」

鳳仙
「じゃあオレはその護衛がてら東門に行こうかな。」

千草
「じゃあ西門担当ーーー!」


「時計塔で何すればいいのーー?」

優太
「あとで説明するよ。」

愛依
「えっと・・・私は・・・」


「私と一緒にここで待機してよう。
いいだろ?ユータ。」

優太
「ああ。暁館を守る奴が居ないとなって思ってたところだ。
エリスと綾香を頼むぜ。」


「できるだけ・・・頑張ってやるよ。」

アラド
「消去法的に南門って所か。」

ゼオラ
「じゃあ私も南門で。」

メダ
「流石に、細分化しすぎじゃないか?
東と西一人づつになるぞ?」

鳳仙
「なめんなよ!
私は一人でも全然大丈夫だぜ!!」

千草
「どうせ大した相手じゃないと思うしね。
何でもいいから門を開放できればいいんでしょ?
楽勝楽勝。。」

メダ
「そんな上手くいくもんなのか・・・?
まあいい・・・それより、流石に『魔力』は大丈夫なのか?」

優太
「それなら心配するな!!
鳳仙と千草が無駄に依頼をやったお礼にちょくちょく貰ってくる薬を飲めばバッチリスッキリだよ!!!
ついでに何本か持ってく?」

メダ
「何だこのげ~むみたいな展開・・・本当にこれで大丈夫なのか?」

優太
「それよりさーーー。
流石にシャワーくらい浴びたくねぇ?」

メダ
「アホか・・・そんな暇無いわ!!!」

優太
「え?女性陣みんなして大浴場もう行っちゃったぜ?」

メダ
「いつの間に!!?
て言うか緊張感無いなオイ!!!」

優太
「それは向こうも同じだから問題無ぇよ。。」

メダ
「何の話だ・・・」










「あ・・・ううっ・・・」



眼の焦点が定まらない。
ボヤけて何も見えない。
体中が痺れて立ち上がることも出来ず、蓮はかなりの時間そこに突っ伏していた。


カスム
「ふひ・・・ふひひひひひひひひひひひひ!!!
スバラシイ!!!
ほ、本当に召喚が成功した!!
あとは・・・あとはコイツを操れれば・・・」

レーヴェ
「カスム・・・」

カスム
「おや、ようやく喋る気になったんですか王。」

レーヴェ
「お前ほどの者が、まさかこんなことを企んでいたとはな・・・」

カスム
「ま、こんなことをさせたのは貴方の所為でもあるんですよ?」

レーヴェ
「なんじゃと?」

カスム
「この国が置かれている状況を貴方は理解しているはずです。
それを知りながら貴方は未だに何かをするでも無くのうのうと王座に君臨している・・・。」

レーヴェ
「なるほど・・・そう言う話か・・・
しかしなカスム、力だけで何もかも変えられはしないぞ・・・
力で従わせられたとしても、それは上辺だけだ。
心から人を従わせるのは不可能だ!」

カスム
「そうですね。
そのとうりですよ・・・ですから、邪魔な物を全て滅ぼしてしまえばいいんですよ。」

レーヴェ
「・・・・・!!!
よせ!お前のしようとしていることは間違っている!!!」

カスム
「それを貴方に言われる筋合いはない・・・
忠義の士を失くした貴方にはもう、何かを守る力など存在しない。」

レーヴェ
「!!!」

カスム
「彼が居たから以前の戦争はどうにか危機を免れました・・・
ですがそれはただ少しの時間を稼いだだけなんですよ。
ほっといてもこの国は数年のうちに隣国に食われますよ?」

レーヴェ
「それをどうにかするために私は日々隣国との話し合いを進めている。」

カスム
「それが甘いと言うのだ!!!
そうやって話せば分かり合えるなどとまだお思いか!!!
アイツらに見せつけなければならないのだ・・・我等にも確かな力があると・・・!
侵略するのが容易では無いと思わせなければ・・・!
この国に明日は来ないのです!!!」

レーヴェ
「もう、何を言っても無駄なのか・・・カスム。」

カスム
「ええ・・・私はこの力でこの大陸を併合して見せます・・・
誰も成し得なかった、天下布武と言う奴をやってやるんですよ!!!」


「天下布武・・・?
意味分かって言ってるんですか?」

カスム
「おや、もう回復なされたのか・・・流石に早いですね。
通常の人間なら千回ほど死ねるような魔力を奪ったはずですが・・・。」


「生憎、最近使って無かったので溜まってましたからね・・・
それと、千回死ねると言うより・・・単純に人間千人分の魔力を一瞬で奪ったと言えば済むと思いますがね・・・」

カスム
「随分と噛みつきますな・・・」


「数分、数時間後かも知れませんが・・・貴方は後悔することになります。絶対に・・・
今の内に還した方が身の為ですよあの龍。」

カスム
「ふふっ・・・彼が来てくれるから、ですかな?
それは残念ながら叶わない願いですよ・・・。」


「へぇ・・・どうしてですか?」

カスム
「どうもなにも・・・彼らなら今頃私の精鋭に取り押さえられていますよ。
噂では相当の手練れだと聞きましたが・・・所詮は噂。
どうせ皮を剥けばただのガキの集まりです。」


「それはどうでしょう・・・。」

カスム
「何?」


「あまり優太さんを過小評価しない方がいいですよ?
あの人、本当に無駄に凄いですから・・・何時だって私達の想像を軽く超えてきます。
それに、私と約束してくれました・・・」

カスム
「約束?」


「『盛夏祭』が終わったら・・・、私のケーキをみんなで食べて・・・打ち上げしようって。
きっと来ます。
優太さんは、優太さんは・・・絶対に、ココへ私を迎えに来てくれます!!!」

カスム
「だから、それこそ無理な話で・・・」

兵士A
「カスム様!!!」

カスム
「何だ?」

兵士A
「な、何かがこちらに急速接近してきます!!!」

カスム
「はぁ?何を言っている?」

兵士A
「東街から!誰かが飛んできます!!!」

カスム
「東街?まさか・・・!!!」



カスムは縁まで寄ると東の方角を見やる。
その方向から確かに人らしき何かがこっちに向かって飛んでくる。
その背に生えてるのは一体なんなのか。
まるで背中から何かが噴き出すようにして生えている。
見る見るうちにその影はこちらに近付いてくる。


カスム
「ま、まさか・・・ほ、本当に!!?」


「やっぱり・・・優太さん!」

カスム
「ええい!!こうなれば・・・ヴァルヴェルドよ!!
あの羽虫を吹き飛ばせ!!!」



腕輪が光ると同時に龍の体が優太の方向を向く。
それに気付いた優太はとりあえず腰から『竜牙』を抜く。
龍は無遠慮にその手を振りかぶると優太目掛けて振り下ろす。
その巨大さと言ったら・・・人が蟻を潰すようなものなのだろうか・・・
しかし優太は恐怖など感じていない。
その手を空中で受け止める。


ドギャッ!!!!!!!!!!!!!!


想像以上の負荷が全身にかかる。
空中なので踏ん張りは背中の噴出翼のみが頼りだ。
が、生身でこれをそう何秒も持ちこたえるのは無理がある。


優太
「ギギギギギ・・・・・・!!
こ、こりゃあ・・・ホントにスゲェパワーだ・・・!!
とりあえず、相手にとって不足は無さそうだな!!トカゲ野郎!!!」



優太の全身を魔力と氣力が覆う。
二つの力を全身に纏わせ、それを混ぜ合わせるようにして一つのエネルギーに変換する。
それは少しづつ渦巻くようにして全身を包んでいく。


優太
「見せてやるぜ・・・オレの新しい力、修行の成果って奴を!!
魔氣(イクシード)』!!!!!!!!!!!!!



ボアアアアアアアアアアア!!!!!!!!


全身を赤いオーラが覆う。
それは凄まじい波動を大気中に伝播させる。
屋上に立っていた数人の兵士がそれに当てられ、腰を抜かす。
立っていられない。
それだけ強大なプレッシャーを優太から感じた。


優太
「くらええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!」



優太は力の限り『竜牙』を切り上げる。
するとどうだ、龍の巨大な手を軽々と跳ね除けたのだ。
龍は驚きもせずスグに次の一撃を放つ。
左手による攻撃だ。


優太
「流石にコレくらいじゃあ何とも思わねぇか。
ま、いいけどさ・・・オレの目的はそんなのじゃないし・・・
多少の時間稼ぎだ!!!少し付き合いやがれトカゲ野郎!!!」



優太は空を駆け、龍に飛びかかる。
明らかに無謀とも思える一戦が幕を開けた。







東街から北街へ繋がる路地を走りながら、メダとネロは王城上空で繰り広げられる優太と龍の戦いに一瞬目を奪われる。
最初、優太が一人で龍の足止めをすると言った時は無謀だと思えたが、今となっては意外と大丈夫じゃないのかと思えてきていた。


メダ
「スゲェな・・・本当にドラゴンの一撃を弾きやがった・・・」

ネロ
「『魔氣』って言ったっけ?スゴイ力だね・・・
でも、あまり長い時間連続で使ってられないって言ってたよね?」

メダ
「ああ・・・五分とか言ってたか。
半分の二分三十秒でケリをつける!北門まで急ぐぜネロ!!!」

ネロ
「うん!」



二人は視線を北に向け直す。
そして並んで走り出した。
自分たちの役目、北門制圧を成し遂げるために。








鳳仙
「うわぁ・・・思ったより敵さん多いなーーー。」


「だ、大丈夫そう?鳳ちゃん・・・。」

由紀
「な、何なら軽く支援くらいならできると思うけど・・・」

鳳仙
「いや・・・一人で大丈夫だ。
ダンナの作戦を成功させるにはここをオレ一人で引きつけなくちゃ意味が無い。
オレが一人で突っ込むから、その隙に時計塔の方角に二人で走って!!!」


「そういえば・・・時計塔の方にも誰か居たらどうするの?」

鳳仙
「あ・・・。それは考えてなかったかも・・・」

由紀
「それは仕方ないから二人で何とかするわよ、唯!」


「あう~~~・・・
そ、そういうことには自信無いけど・・・できるだけ頑張るよ。」

鳳仙
「よし、それじゃあ・・・行くぜ!!!」



鳳仙は勢いよく建物の陰から走り出す。
近くにいた兵士も、門前を固めていた兵士も、全ての兵士の視線が鳳仙一人に集まる。


鳳仙
「おらおらぁ!!!そこ退け!!」

兵士A
「な、何だコイツ!!グエッ!!」



兵士の一人を殴り飛ばし、さらに進みながら唖然としている数人を拳打で沈めながら前へ前へ進む。
敵性ありと見なしたのか、ようやく臨戦態勢を取る兵士達。
鳳仙はチラリと背後を一瞬見やる。
二人はどうやら既に行ったようだ。
この場の人間は誰一人それに気付いていない。
鳳仙は口元を緩める。
自分のやるべきことの一つを完遂した。
それを確認し、鳳仙は左右の拳を握り込む。
その両拳を炎が包み込んだ。


鳳仙
「『暁の地平線』、特攻隊長(自称)!!暁鳳仙、いっくぜぇえええええええええええええええ!!!!!」









第14話「重なる死。。」






西門付近。
そこはつまり住宅街の端。
民間人が多い区画だけあり、兵士の数はそこまで多くない。
あまり兵士がゾロゾロ歩いていても怪しまれるからだろう。
今となってはあまり関係ないが・・・
千草はある住宅の煙突の影に身を隠しながら下の状況を逐一確認していた。


千草
「(とりあえず見える範囲だけでも五、六人って所か。
アレくらいならまとめて倒せそうだな。)」



千草の居る場所からは大体下の状況が九割方把握できる。
そういう風に位置どったからと言うのもあるが。
じっくりと敵の巡回ルートを確認する。
それと大体どこら辺まで見えてるのかも客観的にだが観察しておく。
大体のあたりをつけ、千草は弓を手に取る。


千草
「(とりあえず私の見えない位置にどれくらい居るか見て見るか。)」



千草は矢を弦にかけ、引き絞る。
そして、自分の見えている範囲と見えない範囲が合わさる位置に最も近い兵士に向かい弓を放つ。


ビュッ!!


その矢は生きているかのように標的に向かって飛んでいく。
勿論、コッチの場所が分からないように最終的に相当不規則な動きをかけて命中するように風を操りながら矢を見守る。


ガッ!!


兵士A
「うっ!!!」



兵士の腕に千草の矢が命中する。
殺傷目的で使った訳では無く、先端に睡眠を誘発させる毒を塗ってある。
気分は完全にスネークだった。


兵士B
「おい、どうした!!」



案の定、千草の見えていなかった位置から見知らぬ兵士が来る。
兵士は眠りこけている兵士の頬を叩いたりしているが、一向に目覚めない。


千草
「(そりゃあそうだ。
少なくとも丸一日くらいは何されても起きないよ・・・強力な奴だからさ。)」



千草は再度弓を引き絞り、駆け付けた兵士目掛けて今度は真っ直ぐ射る。


ドッ!!


兵士B
「うっ!!」



その兵士もその場に倒れ込み、静かな寝息を立て始めた。
その後には誰も来たりはしなかった。


千草
「(これで全員かな?
だとしたら、あの門前の奴ら眠らせれば終わりか・・・
思ったより楽だったなーーー。)」



千草は適当に四本まとめて矢を弦にかける。
そして


千草
『開眼』!!!



千草の瞳が見開かれ、瞳の色が緑に煌めく。
その瞳で一人一人に狙いを定める。
そして矢を一斉に射る。


ボッ!!!


最初こそ無軌道だった四つの矢だったが、次第に目標に向かい真っ直ぐ飛んでいく。
そして時間差を空けて・・・


ドッ!ドッ!!ドッ!!!ドッ!!!!


兵士×4
「「「「うっ!!!」」」」



矢が腕や足、背中、尻の穴に突き刺さり兵士達は倒れ込む。
千草はそれを確認すると、ホッと一息つく。


千草
「これでおkかな?
ふぅーーーー・・・西門は民間人が多い住宅街近くだから結構重要な場所だったんだよねーー。
こんな疲れる所選ぶんじゃなかったなーーー。」



『おい!!これは一体どういうことだ!!』


千草
「え?」



『て、敵襲ーーーー!!警戒態勢に入る!!!』


千草
「えぇーーーー?なにアレ援軍的な?
今更追加配備されたのかな・・・
えと・・・つまりーーーー・・・アレ全員相手にしろと?」



見える範囲だけでも二、三十人近くは居そうだ。
幸いまだ見つかってはいないようだが、矢の痕跡から推理されて敵は見晴らしの良さげな所から狙っていると言うのがバレるのも時間の問題か・・・。
千草は一瞬だけ逡巡する。
そしてあっさりと答えに辿りつく。


千草
「コレは無理げ~だな!!
一時、戦略的撤退!!!」



千草は一目散に中心街へ向けて移動を開始した。
何かあった時には中心街で落ち合う予定だったのだ。
屋根を飛び歩きながら、千草は切に願う。
誰か余裕のある人が中心街で待っててくれることを・・・
または誰か早い所終わらせて帰ってきてくれることを。
が、中心街に向かう傍ら階下に見慣れた鎧を着た部隊が目に入る。


千草
「あり?確かアレって・・・。」









アラド
「とりあえず南門近くまで辿り着いた訳だが・・・」

ゼオラ
「やっぱり門前は結構な人数が集まってるわね。
今までどうりのごり押しは通じないかもよ?」

アラド
「ごり押ししてたのはお前だろ・・・
機関銃ばら撒いてただけじゃねぇか!!
音で気付かれたらどうすんだよ!!!」

ゼオラ
「大丈夫よ!消音魔術は得意だから!!」

アラド
「最初の方は使うの忘れてどんどこ気付かれまくってた奴がよく言う・・・」

ゼオラ
「ま、そういう時もあるわよ。
取りこぼしはアラドが片付けてくれるし、弱点を補い合うのもパートナーよね!!」

アラド
「こんな時だけパートナー面されるのもアレなんですが・・・。」



アラドは軽くツッコミつつ、状況を把握する。
敵の数もさることながら、布陣も完璧の一言だ。
きちんと統制されたその布陣には一部の隙も見当たらない。
アラドもこれはどう攻めるか考えあぐねいている。
すると


キュラキュラキュラ。


何だかキャタピラのような音が耳に響いてくる。
一瞬何かと思ったが、それが左側の大きな門の中から聞こえてくることに気付く。
そういえば、あそこって・・・


兵士A
「ん、この音はなんだ?」
兵士B
「何かあの大きな宿の中から聞こえるぜ?」
兵士C
「ちょっと見て来るわ。」



兵士の一人がその門の中へ入ろうとする。
その時、


ドボン!!!!!


激しい炸裂音と共に、門が吹き飛ばされる。
近くに居た兵士を何人も巻き込み、爆風が駆け抜けた。


アラド
「あそこって・・・確か、『華々の冠』の宿だったよな?」

ゼオラ
「た、確か・・・え?じゃあこの音って・・・」



その炸裂音の後に出てきたのは戦車だった。
何て物騒な物が飛び出してくるんだ。とか色々思うが・・・
それよりも驚きなのは、その砲台の上から一人の女性が姿を現す。
着物を着たもの凄く目つきの鋭い女性だ。
端的に言えば美人なんだろうけど、あの目力の所為で色々台無しである。
その女性はさらに畳み掛けるように怒号を発した。


女将
「よくもウチの門を壊してくれたね!!!
弁償は、高くつくよ!!!!」

兵士D
「えぇえええええええええええええ!!!!!?
それはそっちが悪いんじゃ・・・」

女将
「問答無用!!
すみれ、焼夷榴弾撃ち方用意!!!」


『撃ち方用意!!』

女将
「撃ち方、始め!!!」


『撃ち方始め!』


ドゴン!!!!


砲身から放たれた弾が兵士達の真ん中に突き刺さる。
その衝撃と同時に破片が飛び火し、兵士達を焼く。


兵士E
「う、うわぁああああああああああああ!!!」
兵士F
「ば、バカ野郎!!!
焼夷榴弾は対空目的で使うもんであって、こんな至近距離から撃っても意味な・・・!!」
兵士G
「意味あるよコレ!!何かバカみたいに威力高ぇ!!
ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

女将
「安心しな・・・死なない程度に火力は調整してあるよ。」

兵士×3
「「「嘘だろ!!?爆風だけで軽く死ねるわ!!!!」」」

女将
「お、まだ平気そうだね・・・
かすみ、今度は徹甲榴弾でもぶち込んでやんな。」

全兵士
「「「「「「「「「「すんませんでした!!!オレ達の負けで良いんでコレ以上は勘弁してください!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」



何か物の見事に負けを認めてきた。
アラドとゼオラは唖然としつつも、とんだ伏兵にある意味感謝せざるを得なかった。








メダ
「うらぁぁああ!!!」



メダの拳が兵士の一人を吹き飛ばす。
次々と湧いて出てくる兵士を一人で相手するのも中々に骨だ。


メダ
「メンドクセェな!一気に蹴散らす!
ネロ、バスターツールだ!!!」

ネロ
「バスターね。ハイ。」



ネロは黒い徹甲のようなキーホルダーをメダに投げる。
メダの元に辿りつく頃にはキーホルダーのサイズは元の大きさに戻る。
その徹甲を両手にはめると、メダは両手を組む。
そしてそのままエネルギーを集中させる。
するとピンク色をした球状のような物体が目の前に姿を現す。


メダ
「喰らえ!!『バスタ―――――――――――!!!



メダの両手がその球を包み込むようにして握り込む。
そしてそれを腰の後ろに回す。
まるで何かの波を出す時のようなポーズだ。


メダ
ビーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーム』!!!!!!!!!!!!



ボッ!!!


力の限り正面に両手を開放するように向ける。
すると球状の物体からビームが飛び出す。
まさにビーム。
兵士達を薙ぎ払いながらビームは突き進む。
そして最後の一人を吹き飛ばして霧散した。


メダ
「ふぅ・・・何だか色々ギリギリな技が炸裂しちまったぜ。」

ネロ
「あ、大丈夫。
今に始まったことじゃないから。」

メダ
「とりあえずこれで全員片付いたか?」

ネロ
「うん、多分ね。」

??
「おうおう・・・
なんだ、こんな所に居たのかよ・・・ゴミクズ野郎。」

メダ
「!?」

ネロ
「ゼダさん!」

ゼダ
「やあ、ネロ・・・まだそんな奴と一緒に居たのか。
いい加減目を覚ませよ。」

ネロ
「お言葉だけど・・・メダはちゃんと立ち直ったわ!!
もう、貴方に何か言われる筋合いないんだから!!」

ゼダ
「ふん・・・どうだか、おい団長殺し。」

ネロ
「貴方・・・!いい加減に・・・」

メダ
「いい、黙ってろネロ。」

ネロ
「でも!!!」

メダ
「いいから・・・黙っててくれ。」

ネロ
「・・・・・・・・うん。」

メダ
「オレは何と言われようとかまわない。
少なくともゼダ、お前の言ってることは大体正しい。
団長を殺したのもオレだ・・・ゴミクズ野郎だの、役立たずだの・・・
その罵詈雑言、全て受け止めてやる。」

ゼダ
「はっ!!開き直ったか・・・清々しいねぇ偽善者・・・。
そうやって開き直った所で、お前の罪は消えねぇんだよ!!!」

メダ
「罪も罰も・・・オレは甘んじて受け入れる。
オレは全て背負って生きていくって決めたんだ。」

ゼダ
「おめでたいヤツだよ・・・
だったら責任を取るのが筋ってもんじゃないか?」

メダ
「責任?」

ゼダ
「そうだよ・・・団長の座を降りて、ネロをオレに渡せ。
そうするのが、お前ができる責任の取り方って奴だろ?」

メダ
「それはできない相談だな。」

ゼダ
「なにぃ!!?」

メダ
「この団長と言う場所は、オレがスコールさんから受け継いだ物だ。
易々と誰かに譲るつもりは無い。
それに・・・ネロはオレの大事なパートナーで、大切な人だ!
お前みたいな奴に渡せるかよ!!!!!」

ネロ
「メダ・・・。」

ゼダ
「くくく・・・ひゃはははははははは!!!!
やっと本音が出たな!!やっぱお前最低だよ!!
結局は大事な物を奪われたくないだけじゃねぇか!!!」

メダ
「それの何が悪い・・・。お前こそ、今日は朝から何してた。
団長の座が欲しいなら、せめて真面目に仕事しやがれ・・・」

ゼダ
「仕事?してたよ?ちゃんと、な。
今・・・それの仕上げをする所だ。」



クイ。


ゼダの右手が軽く動く。
メダはスグに正面のゼダへ注意を向ける。
しかしゼダ自身、何かをしてくる気配は無い。
その時だった、背後から急に何かの気配を感じる。
さっきまで何も感じなかったはずなのに・・・メダは咄嗟に振り向こうとするが間に合わない。


ネロ
「メダ!!!!」



次の瞬間、自分の体が跳ね飛ばされているのに気付いた。
そして・・・


ズバッ!!!!


目の前に広がっている現実は、非情にもメダへ畳み掛けてくる。
そこには、兵士に斬り裂かれ、鮮血を辺りに飛び散らせているネロの姿があった。


メダ
「ネローーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

ゼダ
「何だ・・・つまらねぇ・・・メダを殺すつもりがネロを斬っちまったか。
ま、これはこれで面白いか。
どうせ手に入らないならいっその事、オレの手で殺しておくのが筋なのかもな。
ひゃはははははははははははは!!!!!!!!!!!!!!!!!!



ネロは力無く地面に倒れ込む。
体からはおびただしい量の血が溢れ出てきている。
メダはすぐにネロを抱き起し、呼びかける。
だが何一つ反応が無い。
どんどん顔から血の気が引いていくのが見ても分かる。
体温も急激に下がり始めている。
早くなにかしないと、手遅れに・・・


メダ
「ネロ・・・ネロ・・・!!ネロ!!!!!!

ゼダ
「さて・・・お前はもう袋の鼠だ。
覚悟しろよ・・・役立たずの団長さまよぉ!!!」








第15話「獅子の目覚め。」







「あれ、思ったより人は居ないみたいだね。」

由紀
「本当だ、ラッキー。
とりあえず今の内に入ろうか。」



二人は一応物陰から物陰へ少しづつ安全を確認しながら時計塔の前まで辿り着く。
扉の前まで辿り着いた辺りで二人は、驚愕の事実に直面した。



「あ、鍵かかってる。」

由紀
「そりゃそうだ!!!公共施設だもんね!!
解放されてる訳無いよね!!!」


「ど、どうしよう・・・折角ここまできたのに。」

由紀
「こうなりゃあ・・・魔術で壊すか・・・。」


「だ、ダメだよ!!
そんなことしたら由紀ちゃんが今まで溜めてた分の力が霧散しちゃうんでしょ?
それじゃあ入れても意味無いよ。」

由紀
「でも唯は『外界』生活長いから魔術使えないんだよね?
じゃあどうするの?
このまま黙ってても何も事態は好転しないよ?」


「うーーーーん・・・
じゃあ、ぴ、ピッキングするとか?」

由紀
「誰が?」


「私やってみるよ!!!」

由紀
「できるの?」


「大丈夫!!
ピッキングを練習してる過程で何度も鍵を壊してるから!!
今回もきっと上手く壊せるよ!!!」

由紀
「結局壊すのかよ!!!
まあ、いいや・・・とりあえずやってみ。」


「うん!とりあえずヘアピンヘアピンっと・・・。」



唯はしゃがみ込むとせっせと鍵穴にヘアピンを差し込みカチャカチャやっている。
由紀は周辺を警戒しながら唯の動向を見守る。
それを茂みから見ている影に、二人はまだ気付いてはいなかった。









『月闇十字』!!!」

兵士A
「うわ!!!!」



何故かアレから立て続けに何度も暁館に兵士がやってくる。
流石に予想していたのより遥かに数が多い。
奏は正面から向かって来た相手を一蹴する。
そして周囲に展開する兵士達を一瞥すると右手に持っていたナイフを正面に投げる。
それにつられる様に左手に持ったナイフの柄尻に繋がっている鎖が伸びていく。
ナイフが飛んで行った方向に居た兵士の一人はそのナイフを避けると、奏に向かい一斉に飛びかかってきた。
奏は口元をほころばせると、自身の体を激しく回転させる。
すると鎖で繋がれたナイフがそれに続くようにして周囲の兵士を一斉に斬り裂き、吹き飛ばす。



「ひつこいんだよ!!!この野郎!!」

兵士B
「うわぁ!!!」



奏はナイフで器用に多数を相手にしている。
基本的に相手との位置を逐一気にしながら、できるだけ敵同士が固まるようにして動きそこを一気に叩くようにして最低限の動きで敵と相対していた。
が・・・流石にこれだけ数が多いと一人で戦うにも限界がある。



「(しょうがない・・・疲れるから使いたくないけど、愛依を守るためだ・・・使うか。)」



奏の体から淀んだ黒い瘴気のような物が噴出される。
それは渦巻くようにして奏の全身を覆う。
それが晴れた時、奏の見た目が変化していた。
眼の色は紅く煌めき、裾がボロボロになった黒いマントを羽織り、背中には蝙蝠の羽を思わせるような不気味な羽が生え、極めつけに鋭い犬歯を見せつけるようにしている。
その姿は、伝説に登場する『吸血鬼』を思わせるのに十分だった。


兵士C
「あ、アレ・・・『吸血鬼』じゃないか!??」
兵士D
「馬鹿な!
『吸血鬼』は前の大戦時に滅ぼされたと聞くぞ!!」
兵士E
「だ、だが・・・あの風貌はまるで・・・!!!」


「おい、人間ども・・・悪い事は言わないからとっとと帰って寝ろ。
向かってくるって言うんなら・・・お前ら一人残らず、私の眷属になってもらうことになるけど・・・
それでもいいのか?」



兵士はスグに顔が青ざめる。
一目散に逃げ出し、館の前から姿は無くなる。
ふぅ・・・。そう一息つくと奏は翼と眼の色だけは元に戻し、館の入り口へ座り込む。



「やっぱこの姿疲れるな・・・特に羽がダメだコレ。
マジ窮屈・・・
しまってる方が幾分楽だわーーー。」

愛依
「カナちゃん?」



後ろの扉が開き、愛依が姿を覗かせる。
奏はその顔を見るや、少し笑みを浮かべて



「どうにか追っ払ったよ。
もう大丈夫だと思うよ愛依。」

愛依
「うん、ごめんね。
私、何の役にも立てなくて・・・」


「適材適所って言葉があるじゃん。
私には私にできることが、愛依には愛依にできることがあるってことだよ。」

愛依
「そうかな・・・そうだといいな。
あ、カナちゃん喉渇いてない?」


「あーーー、そういえば少し・・・。」

愛依
「そう言うと思って・・・ハイ、トマト。」


「わぁ!!ありがとう!愛依!!
・・・やっぱ人間の血より、トマトの方が数十倍美味いよねーーー。」

愛依
「の、飲んだこと無いから分かんないいや・・・ごめんね。」


「ま、それでもたまに飲まないと枯れちゃうから困ったもんなんだよねーーー。」

愛依
「え?そうなの?」


「やっぱ少しは飲んでおかないと体が持たないみたいなんだよね。
今は別に平気だけど・・・数か月に一回は飲まなくちゃならないし・・・」

愛依
「そ、その時は・・・私のを飲めばいいよ。」


「え?」

愛依
「そのたんびに人を襲ったりするのもメンドウでしょ?
私ので良ければ、飲んでくれていいから・・・」


「(別に人間の血なんて、闇商人辺りから安く買えるから人を襲ったりする必要も無いんだけど・・・
ま、愛依の血が飲めるならそれはそれで興奮するからいいか!!)
うん!その時はぜひお願いするよ!!!」

愛依
「す、スゴイ満面の笑みだね・・・
な、何か逆に恐いよカナちゃん・・・。」









千草
「アレって・・・『騎士団』じゃん。」



千草は歩みを止め、目下の『騎士団』に視線を向ける。
どうやら正規の『騎士団』のようだ。
何を考えてここに来たのか不明だが、多分考えていることは一緒だろう。
これは逆にチャンスかもしれない。
千草はそのまま『騎士団』の動向を追いながら西街までの道を戻る。


シオン
「いいか、城へ行く前にまず民間人の安全を優先しなければいかない!!
これは王や姫の意志でもある!!
民間人の多い、西門を開放することが当面の目標だ!!心してかかれ!!!」

騎士
「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」」」」」」」」」」



シオンの号令と共に騎士全員の士気が上がる。
『騎士団』は西門を目指し、行進を続ける。


兵士A
「兵士長!『騎士団』です!!!
『騎士団』が目の前まで迫ってきています!!!」
兵士長
「なんだと!?奴らは城の奪還を優先する物だとばっかり思っていたが・・・
ええい!!こうなれば徹底抗戦だ!!!
どっちが真の騎士か知らしめてやるのだ!!!」



『騎士団』の進軍に対し、兵士団も交戦態勢を整える。
このまま行けば物の数分で交戦状態に陥るだろう。


千草
「おおぅ・・・何かこれは良い感じの雰囲気になってきましたな~~。
乱戦は私の得意分野だよ・・・」



千草は背中に背負っていた弓を再度手に取る。
そして


千草
『開眼』!!」



もう一度『魔眼』を開眼する。
その瞳は目下、『騎士団』と『兵士団』との一戦に向けられる。
矢を弦にかけ、引き絞り、狙いを定める。


千草
「さぁて・・・『暁の地平線』、遊撃隊隊長(自称)!風鈴千草、目標を狙い撃つぜ!!!」









鳳仙
「はぁはぁ・・・」

兵士A
「ふん・・・どうした、最初の威勢はどこへいったんだぁ?ああん??」

鳳仙
「へっ・・・ちょっとばかり息継ぎしてるだけだよ!!!」



流石に数が多すぎる。
敵は有限の筈だが、一対多数がここまで辛いなんて思わなかった。
さっきから倒しても倒しても、倒した端から誰かが治癒をしているのか全く数が減らない。
正直に言うと既に体力は限界に近い・・・
最初こそあまり感じなかったが、戦っても戦っても終わりが見えないことほど心身に負担がかかることは無い。
魔力の方も、もう残り少ない。
このままでは確実にジリ貧だ。


兵士B
「へへっ!!どうした!?足元が御留守だぜ!!!」



ガッ!!


相手の足かけにモロがかりしてしまう。
鳳仙はその場に倒れ込む。
それを見逃さず、相手は畳み掛けるように足蹴にしてくる。
数人に囲まれ、四方八方から思いきり蹴られる。
冗談じゃなく、凄く痛い。
障壁もまともに展開できないくらい、体が疲弊していることに今更気付いた。
元から真面な障壁を張れるほど防御の学は持ち合わせていないのも問題なのだが・・・
ふと、何時の間にか攻撃が止んでいることに気が付く。
兵士の一人がこっちを見ながらほくそ笑んでいる。


兵士A
「おい、コイツ女だぜ・・・。」
兵士B
「え、あ・・・本当だ。
さっきまでこんな胸無かったのに・・・」
兵士C
「そういえば、胸囲を隠すサラシが昔売ってたな・・・
さっきのでそれが切れたのか。」
兵士A
「よく見ると相当な大きさじゃねぇか・・・
ふひひ、オレ好みだぜ・・・」
兵士B
「えぇーー・・・オレはパスだわ。
やっぱり、おっぱいは貧乳に限るぜ!!!」
兵士C
「いや、中くらいやや上くらいの方が良いと思います!!」



目の前でバカみたいなことを話し始めている。
鳳仙は自分の胸元に目を向ける。
戦う上でコレは邪魔以外の何でも無いので普段から特性のサラシを撒いて隠しているのだが・・・
どうやらさっきので本当に切れたらしい。
情けないな・・・
こんなとき、自分が女じゃなければ・・・
男だったら、もっと食い下がれたのかな・・・
そんな気持ちが胸の中でグルグルと回っていた。
そんな時、突然胸倉を掴まれる。
無理矢理立たされたと言うのに気付くのに数秒かかった。
これは相当疲れがきている。


兵士A
「へへっ・・・こりゃあいいや。
ちょっと傷ついちまったが・・・みんなで今夜は一発どうだ?」
鳳仙
「!!!?」

兵士B
「いや、だからオレ貧乳派で・・・」
兵士A
「いやいや・・・一回試してみろって。
このサイズだとかなりの物だぜぇ?きっとクセになるからよ。
腐っても女だ・・・快楽漬けにしちまえばどうせ自分からケツ振るだろうし・・・」




何か、今まで感じたことの無いような感覚が胸の奥から駆けあがってくる。
この気持ちはなんなんだろう・・・
自分でもよく分からない。
でも・・・


鳳仙
ふっざけんなーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!



右の拳が強く握り込まれ、目の前の男を突き飛ばす。
男は吹き飛ぶと、門の扉に激突し、そのまま突き抜けて街道を転がっていった。
今の今までまるで力が出なかったはずなのに・・・
胸の奥から溢れ出す、この想いが鳳仙の体を突き動かした。
その想いは、何故か体の外にまで具現する。
体中を朱色のオーラが覆う。
まるで生きているのかのように蠢いている。
が、何故かそのオーラからはどことなく自然な物とは違う、人工的な、ザラついた感じがした。


鳳仙
「私は確かに女だけどなぁーーー・・・
テメェらに襲われて、何も言わなくなるほど・・・!!
弱くわ無ぇよ!!!



全身からさらにオーラが迸る。
兵士達はその力の前に立ち竦む。
まるで、巨大な獣に睨まれているような・・・そんな威圧感を感じる。


鳳仙
「それと・・・オレの体はダンナの物だ!!!
お前らにやる物何て、何一つ無ぇんだよ!!!!!!!!!!!!!」



鳳仙は力の限り突っ込む。
眼前の兵士達はあまりの威圧感の前に尻尾を巻いて逃げだす。
が、鳳仙は決してその追従を止めることは無かった。
最後の最後まで、兵士全てを打ち沈めにかかる。
その姿はまるで、狩りをする獰猛な百獣の王・・・獅子の如き荒々しさだった。








優太
「ぜぇぜぇ・・・」



グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!


優太
「ま、マジで強いな・・・
『魔氣』使っててやっとまともにやりあえるって所か・・・。」



最初の激突からまだ三分くらいしか経ってはいない。
最初こそ勢いで押していた物の、一撃一撃をぶつけ合ううちに体力を予想以上に消費させられていた。
相手の一撃はアルヴィスの一撃を軽く凌駕している。
修行で多少打たれ強くなっていると言っても限度がある。
ましてやコントロールの難しい『魔氣』を持続的に使い続けている所為かさらに消耗が激しく感じる。


優太
「(不味いな・・・もう何分くらい経った・・・?
正直これ以上は防いでられないぞ・・・。
由紀はまだ着いてないのか?)」



優太はチラリと時計塔の屋上テラスに視線を向ける。
そこに由紀の姿は無い。
手筈どうりいっていれば既に時計塔には入っているはずだが・・・


グオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!


龍の雄叫びが轟く。
その次の瞬間、また鉤爪による攻撃を仕掛けてくる。
どういう訳か攻撃は両手による攻撃か、尻尾を振っての攻撃しかしてこない。
見た目からしてブレスとか吐きそうなものだが・・・そういった物は一切使ってこない。
しかし、この状況でブレスみたいな広範囲に被害が出るような物使われないだけマシだとは思う。
優太は目の前に迫る鉤爪に視線を向けると、右手の『竜牙』に『魔氣』を纏わせる。


優太
「何にしても・・・オレがここで時間稼ぎをしてないと話しが前に進まねぇ・・・!
もう少しだけ、踏ん張ってみようじゃねぇの!!!
超銀河龍皇(ちょうぎんがブラスト)―――――――――――!!!



『竜牙』に纏わされた『魔氣』の色が黒く淀む。
優太は柄に両手をかけ、鉤爪に向けて振り抜く。


優太
冥皇斬鋼剣(めいおうざんこうけん)!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



切っ先が鱗の一枚を吹き飛ばす、それは連鎖的に周りの鱗を吹き飛ばし、下の肌を斬り裂きながら龍の腕を半分ほど斬り進む。
龍の腕を斬り開いたことで周辺に赤い雨が降り注ぐ。
龍は雄叫びを上げると優太に向かい左の腕を振り下ろしてくる。
その一撃に同じくカウンターを決めようとした時・・・


メギッ!!


背後から強烈な打撃を受ける。
『魔氣』の防御能力をもってしても全くその衝撃を吸収しきれず優太は態勢を崩す。
視界の端に移ったのは上下に斬れている右腕だった。
気の所為でなければ根元から少しづつ切断面が張り付き、再生され始めている。
優太は心底溜息を吐く。
無理げ~をプレイさせられている気分だった。
そんな優太に龍の左腕が容赦無く振り下ろされる。


ズガッ!!!!!!!!


その一撃を『竜牙』で受け止める。
が、その瞬間に線が切れた。
フッと全身から力が抜けたのだ。
それが『魔氣』の使用限界が訪れたことを優太は感覚で理解する。
背中の推進力を生み出していた翼も同時に消失したことで左腕の一撃を踏ん張ることが出来ない。
文字通り優太は吹き飛ばされる。
その先には北門が見えた。
そして飛ばされている最中に優太は素直に思う。
この勢いだとどこにぶつかっても死ぬな、と・・・







第16話「ぶつかる意思と意志。。」






メダ
「・・・・・・・・・・・・・・・・」

ゼダ
「さて・・・それじゃあ早速始めようか・・・
団長交代のセレモニーを!!!!!」



ゼダの両手が機械的に動く。
すると周囲に倒れていた既に気絶しているはずの兵士が一斉に立ち上がる。
しかし、その兵士達に意識は無い。
どことなく力無く全身をうなだらせている。


ゼダ
「お前はもう知ってるだろうから隠す必要も無いよな・・・オレの戦い方。
『愚者の協奏曲』(フール・コンチェルト)!」



ゼダは左手の薬指を微かに動かす。
するとメダの右側面に立っていた兵士の一部が一斉にメダへ襲い掛かる。
メダは『速鳥』を使い、一気にその場を離れることで包囲網から脱する。
そしてネロを近くのベンチに横たえさせるとゼダと兵士達に向き直る。


メダ
「確か・・・糸を使って周りの物を操る技だったな。」

ゼダ
「ああ、そうさ・・・こうやって気を失っている奴らは操るのが簡単で良いぜ。
お前が良い具合に気絶させてくれたお陰だな!
ありがとよ役立たず。」

メダ
「ふっ・・・」



メダは鼻で笑うと酷く蔑むような目でゼダを見つめる。
そして普段からは想像もできないような侮蔑のこもった声色で突きつけるように言い放つ。


メダ
「ちゃっちぃ技だな・・・」

ゼダ
「なにぃ!??」

メダ
「自分の拳で戦えもしねぇ・・・それのどこが団長の器だ?
笑わせんなよ・・・ゼダ。」

ゼダ
「テメェ・・・調子に乗ってんじゃねぇぞ!!」



ゼダは右手の人差し指と中指をメダに向ける。
すると一斉に兵士達全員がメダに向かい突進してくる。
手に持った剣を正面に突きつけながら真っ直ぐ真っ直ぐメダに向かってくる。
しかしメダはその場を動こうとはしなかった。
ただ兵士達を見つめながら剣の切っ先が触れる瞬間、


メダ
『衝牙塵』(インパクト・カノン)・・・」



メダの全身からエネルギーが噴き出す。
先端の尖った鋭い三角柱状の針が無数に全方位に撒き散らされる。
その一本一本が兵士達の全身を貫き、吹き飛ばすと同時に細い魔力の糸を引き千切る。
兵士達は再度地面に倒れ、動かなくなる。


ゼダ
「・・・・・!!?」

メダ
「どうしたんだよ・・・こんなもんなのかよ。」

ゼダ
「(ば、バカな!!お、オレの魔糸を・・・!
強度だけならダイヤ並みに強靭なオレの魔糸を、ごく普通に引き千切った!?
う、嘘だろ・・・!)」

メダ
「来ないなら、コッチから行くぞ・・・」

ゼダ
「く、来るな!!!!!!!!」



ゼダは再度魔力を両手の指先に集めるとメダに向けて魔糸を飛ばす。
そしてメダの全身を瞬時に絡め取り、その動きを封じる。
幾重にも絡められた魔糸に『鋼猿』を練り込むことで強度を最大限に強化する。
事実上、この状態の魔糸を切るには相当の力が必要になるだろう。


ゼダ
「ど、どうだ!!
この状態の魔糸はどんな物も跳ね除ける強靭さを持つぜ!!
ダイヤすら砕く圧迫の力でくたばれ!!!」

メダ
「ダイヤ、ねぇ・・・」



メダは全身にさっきよりも多くの『螺旋力』を溜め込む。
それはあまりにも一瞬の事で、ゼダが認知した時には既に手遅れだった。


メダ
『絶刃衝牙塵』(ハイ・インパクト・カノン)!!!!!!!!!!」



全身からさっきよりも巨大な三角柱状の針が放出され、魔糸を軽々と吹き飛ばす。
ゼダの全身から完全に血の気が引いていく。


メダ
「ダイヤくらいならオレも貫けるぜ・・・
勿体無いから止めろってネロに昔怒られたっけな・・・」

ゼダ
「あ・・・あ・・・!!」

メダ
「どうした?もしかしてコレで終わりってことないんだろ?
なぁ・・・ゼダ!!!」



メダの姿が視界から消える。
その姿が瞬時に目と鼻の先に現れると同時に顔面に拳がめり込んでいた。
鼻っ面を思いきり殴り抜かれ、鼻の骨が砕け、前歯がへし折れた。
そのまま地面に沈む直前に胸倉を掴まれる。
そして再度眼前にその汚い面を引き寄せる。


メダ
「言いたいことがあるなら聞いても良いぜ・・・。」

ゼダ
「し、死にたくない・・・わ、悪かった!!
このとうりだ!!!ゆ、許して・・・!」

メダ
「・・・・・聞くだけ無駄だったか。」

ゼダ
「や、止めてくれ!!!
お、オレは大臣の奴に唆されただけなんだよ!!
わ、悪いのはアイツなんだ!!!お、オレは悪くねぇ!!
なぁ、頼むよ!!もう勘弁してくれ!!!」

メダ
「この事件を起こしたのがお前じゃなかったとしても・・・
ネロに手を出したのはお前だってことに変わりはねぇんだよ・・・」

ゼダ
「あ・・・!
い、いや・・・!でも・・・!!」

メダ
「殺したりはしねぇ・・・
だが、生きてることを後悔するくらいメチャクチャにはしてやるがな・・・」

ゼダ
「い、嫌だーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!お、オレは・・・」



ゴガッ!!メキョ!ボキャ!グチュッ!!!ゴキン!!!ベキン!!!ブチッ!!


そんな人間を解体するかのような音と、悲痛な男の叫びが周囲に木霊し続ける。
その叫びは数分にわたり響き続け、パタリと二つの音は止んだ。






優太
「あーーーーー・・・流石に今回はマジで死ぬかなーーー。」



ただいま優太は絶賛北門に向けて吹き飛び中である。
龍からの追撃は無い。
どうやら城に近付く奴に反応するみたいだ。
優太は軽く全身の状態を把握する。
見た所目立った外傷は無い。
『魔氣』の効果が切れたのが攻撃を受けた後だったから助かった。
一瞬でも早く解けていたらば、全身の骨が粉々になった挙句に、ただの肉塊に変わっていただろう。


優太
「ま、このまま何事も無く落ちたらそれこそ肉塊確定な訳だが・・・」



優太が飛べていたのは『氣力』による翼を展開していたからであって、『魔氣』が切れると同時に『氣力』が使えなくなったため、今はもう落下を止める術が無い。
この状態になると、少し休まないとしばらく『氣力』は使えない。
元々『魔氣』は、形だけ使えるようになっただけでまだ研鑚が必要な技だ。
優太自身が使用できる限界時間はわずか五分間。
持続させられる限界時間とも言うが、これ以上の時間は纏わせていられない。
時間がくれば自然と霧散し、効力を失う。
優太自身の『氣力』総量は少なくはないので少し休めばまた使えるようにはなる。
だが、今日は肉体的な疲労が半端ではないくらい蓄積している。
その所為か、さっきも本来の力の半分も出せなかった。
『魔氣』とは『魔力』と『氣力』を混ぜ合わせ、肉体に纏わせることで発動する肉体強化系最強の秘術で、習得には普通数年単位の修業期間がいるらしい。
アルヴィスに乗せられるままに修行を行った結果、どうにか使用できるようにはなったものの・・・
まだ不安定な力だ。
原理的には内側を『魔力』、外側を『氣力』で固めることにより攻撃力と防御力を同時に超強化する技で、簡単に言えば上級肉体強化術の三つを同時掛けした状態で戦えるような物らしい。
しかし反動も凄まじく、今のように限界時間一杯まで使ってしまうとしばらく『氣力』の使用が出来なくなるのが辛い所ではある。
この限界時間を一分伸ばすのに三ヵ月はかかるとかなんとか・・・
兎に角スンゴイ技であると言うことである。


優太
「やっぱジジイの言うとうり、もう少し真面目にやっとけばよかったのか・・・。
まあ、今更後悔しても遅いか。」



と、思っていると急に速度が緩むのを感じる。
そろそろどうにかして着地の方法を考えないとならない。
優太は思考を巡らせ、一つの答えに辿りついた。
それはとてもシンプル且つ誰でも思いつきそうな答えだった。


優太
「あ、『魔力』は使えるんだから『鋼猿』かければ別に痛いで済むわ。」



優太はすぐさま全身に『鋼猿』を纏う。
アルヴィスとの修行で幾度となく使う機会があったためか既にに完璧に習得してしまっていた。
それにアルヴィスのアドバイスにより、ほぼ全ての肉体強化術の強化もしたので普通の使い手以上は強化系魔術には精通しているつもりだ。
どうやらそっち方面の才能があるらしい・・・


優太
「よっし、とりあえず・・・
着地してから少し休憩、後に再挑戦を・・・!!」



ゴンッ!!!


と、突如後頭部にもの凄い衝撃が走る。
スグに何かにぶつかったことを理解する。
それにぶつかったことで勢いはほぼ止まったが・・・
後頭部にはまだ強化が追いついていなかったのでかなりの激痛がジワジワと優太の後頭部を襲った。






メダ
「っっっっっっっっっってぇえええええええええええええええ!!!!

優太
「ぐ、おおぉおおお・・・!!??



突如、何かが飛んできたと思うとそれがまんま自分の顔にぶつかってきた。
よく見るとそれは優太だった。
メダは痛みに耐えながらとりあえずこれだけは言った。


メダ
「てっめぇふざけんな!!!
一瞬でも反応が遅れたらこっちの顔が潰れてたぞ!!」

優太
「それはこっちの台詞だバカ野郎!!
気付いたなら受け止めるとかそういうファインプレーできないのかよ!!」

メダ
「誰が好き好んで男をキャッチしたいんだよ!!」

優太
「何だとこのムッツリ野郎!!」

メダ
「あぁ!!?
・・・・・って、そうじゃない!!」

優太
「え?」

メダ
「優太、お前何か薬持ってないか?
暁館出る時に何個か持ってたろ?」

優太
「あ、ああ。
とりあえず何個かはあるけど・・・。」



優太はポケットから色とりどりの液体が入った数種類の瓶を取り出す。
それを確認したメダは適当に何本か取り、近くのベンチに走って行く。
そこに居たのは・・・


優太
「ネロ・・・!ど、どうかしたのか!?」

メダ
「守れなかった・・・」

優太
「は?」

メダ
「どうしよう・・・もう、こんなの嫌なのに・・・
また、また守れなかった・・・!」

優太
「・・・・・」



優太は辺りを見回す。
そこには打ちのめされた兵士達と、何か部分的にグチャグチャになっている人間の形をしていたと思われる赤い物体が無造作に転がっているだけだった。
メダに視線を戻す。
メダは薬をネロの口にあてがい、どうにか数摘飲ませている。
ネロの状態は素人目にはよく分からないが、深刻に不味そうに見えた。


優太
「何があったんだよ・・・」

メダ
「アイツの・・・ゼダの初撃にオレが気付けなくて、ネロがオレを庇って・・・」

優太
「で・・・そのゼダって奴は?」

メダ
「・・・そこの赤いのがそうだ・・・」

優太
「死んでるんじゃないかアレ・・・。」

メダ
「死んで無ぇよ・・・
必要以上に血が噴き出すように、狙って部分的に抉ってやっただけだ・・・
とりあえず、息はしてるだろ?」

優太
「分かんねぇけど・・・。」

メダ
「そんな奴はもうどうでもいいんだ・・・!
ネロが、ネロが・・・!
血はどうにか止まったんだけど、傷が深すぎる・・・!
このままだと・・・またあの時見たいに・・・!!」

優太
「あの時みたいに・・・塞ぎ込むのかよ。」

メダ
「なに?」

優太
「勝手に絶望して、勝手に諦めて・・・そして勝手に塞ぎ込むんだろ?」

メダ
「!!」



ゴバキッ!!!


瞬時に目の前にメダが踏み込み、優太の右頬に拳をみまう。
あまりにもキレの良い一撃を受け、優太は吹き飛ぶ。


メダ
「お前に・・・お前に何が分かるって言うんだよ!!!
大切な人をまた守れないかもしれないんだぞ!!!
そんな時に、そんな時に・・・!」

優太
「だから・・・勝手に諦めてんなよ。」

メダ
「なんだと?」

優太
「お前は失うことが怖いんだろ?
だからそうやって必要以上に不安になってる・・・
オレに本当のこと言われて、それを誤魔化したくてお前は拳を振ったにすぎねぇ。」

メダ
「そんなこと・・・ねぇ!!!」

優太
「だったら何でお前はこんな所でウジウジしてんだよ!!!」

メダ
「!!?」

優太
「黙っててどうにかなるのか!!?
ここでネロを見守ってればネロが助かるってのかよ!!
そんな奇跡みたいなことが万に一つでも起こるって、本当に思ってんじゃねぇだろうな!!!?」

メダ
「黙れ・・・」

優太
「黙らねぇ・・・お前は意気地無しだ。
本当にネロを助けたいなら・・・他にやることがあるはずだ・・・!」

メダ
「黙れ・・・!」

優太
「お前はただ・・・そうやって悲劇のヒーロー気取って、自分がこれ以上傷つきたくないだけだろ!!!」

メダ
「黙れ!!!!!!!!!!!!!!!」



メダが再度踏み込んでくる。
振りかぶった左の拳を優太は避わすことをせず、正面から受ける。


バギッ!!


『唸犬』はかけていない、それを瞬時に見極め、優太も『鋼猿』をかけずにその一撃を喰らう。
その一撃はさっきの物より数段威力が増しており、普通ならまた吹き飛ぶところだった。
しかし優太はメダの胸倉を掴むことでどうにか踏ん張る。
そしてメダをそのまま自分の方へ引き寄せる。


ゴズッ!!!


額と額が勢いよくぶつかり合う。
その衝撃を受けながらもメダは優太を正面から睨みながら怒気のこもった言葉を投げつける。


メダ
「じゃあ・・・じゃあ、どうすればいいんだよ!!
オレは、オレは・・・!」

優太
「お前はどうしたいんだよ・・・」

メダ
ネロを助けてぇに決まってるだろ!!!

優太
「だったら黙って待ってたって事態は好転しねぇだろ!!!
そんなのお前が一番分かってる筈だろ・・・!」

メダ
「分かってる・・・分かってる!
けど、けど・・・!体が、動いてくれないんだよ・・・!」

優太
「・・・。」

メダ
「お前の言うとうりだ・・・オレは今、とてつもなく不安なんだよ・・・
ネロまでオレを置いてどこかいっちまうんじゃないかって・・・
そんなことばっかりが頭の中でグルグル回って・・・何も考えられなくて・・・」

優太
「だったら・・・オレを頼れよ。」

メダ
「は?」

優太
「オレじゃなくても良い・・・他にいくらだって居るじゃねぇか。
困った時に力になってくれるような奴らが・・・。」

メダ
「あ・・・」

優太
「一人でどうにもならなくたってな・・・
二人、三人・・・他に誰かが居れば居ただけ、どうにかできるかもしれねぇだろ。」

メダ
「・・・。」

優太
「本当にどうしようもねぇなら、何で頼らねぇんだよ!!
水くせぇ事言うなよ!仲間だろ!!!!!

メダ
「な、かま・・・」

優太
「とりあえず・・・ネロを暁館まで連れてけ。
そこ行けばもう少しまともな医療器具がある。それと・・・」

メダ
「それと?」

優太
「スグに、医者顔負けの治癒術師を連れてってやる・・・!
メダ、オレを信じろ!
絶対ネロは助ける!スコールさんは救えなかったけど・・・今度は絶対に、救うぞ!!」

メダ
「優太・・・」

優太
「じゃ、もうひとっ走り行ってくる・・・。」

メダ
「だ、大丈夫なのか?」

優太
「バカ野郎・・・オレを誰だと思ってやがる!



優太の全身から『龍皇氣』が噴き出す。
その赤いオーラが『魔力』と混ざり合い、体中を覆い尽くす。
背中から黒い噴出翼を出し、優太は飛び立つ。
もの凄い速度で、王城に向かい真っ直ぐ、真っ直ぐ飛んでいく。


メダ
「・・・・・・オレを、信じろ・・・か。」



メダはネロを抱えると、スグにその場を駆けだす。
暁館を目指して、ただひたすらに駆けだした。


メダ
「信じてやるよ。優太、だから・・・
絶対帰って来いよ。」



そう言ったメダの顔から、不安の色は消え去っていた。
メダはただ戦友の飛び去った方向を真っ直ぐ見つめる。
そして、戦友の帰りを信じ、自分は暁館に向け全速力で走るのだった。









「開いたよ!!!」

由紀
「え、ホントに?喜ばしいことだけど・・・
逆に色々不味い気がするんだけど・・・」

?????
「ま、確かに褒められた事では無いのぅ。」



由紀達はその声のする方に向き直る。
そこには屈強な体つきをした一人の老人が立っていた。
鎧の上からでも分かるほど筋骨隆々とした体は正直あまり好きになれそうにない。
その男は小脇に一人づつ兵士姿の男達を抱えている。
傍目から見ても凄く怪しそうに見える。



「あれ・・・確かこの人って・・・」

由紀
「え?あ・・・確か、アルヴィスさん、でしたっけ?」

アルヴィス
「覚えてもらえて光栄じゃのう。」


「あの、その兵士さんは?」

アルヴィス
「お前さん達をこっそり付け狙っていた連中じゃよ?
ワシが通りかからなかったら危うい所だったと思うぞ?」

由紀
「嘘・・・全然気づかなかった。」

アルヴィス
「ま、コイツらは気配を消すことに長けているみたいじゃからな。
ワシからすればまだ消し方が甘いがの。」


「と、とりあえず助かったってことかな?」

由紀
「そうみたい。
とりあえずありがとうございます。」

アルヴィス
「これくらいは何ともないから別に構わんが・・・
こんな夜に女子二人で何をしておる?
しかも時計塔に不法侵入しようとするのにも何か関係があるのかの?」


「時計塔の屋上テラスに行って、ユウちゃんにアレを届けるのが役目だもんね・・・!
由紀ちゃん。。」

由紀
「ちょ、一応それ秘密なんだからあんまり他人に言っちゃダメよ唯!」


「あ、それもそうか!ゴメン・・・由紀ちゃん。」

由紀
「うーーーん。
まあアルヴィスさんは敵じゃないと思うし、大丈夫だとは思うけど・・・」

アルヴィス
「優太の奴がどうしたと言うんじゃ・・・?
そういえばさっき北門の方に飛んでいったが・・・」

由紀
「えっ!!?」


「ユウちゃん負けちゃったの!!?」

アルヴィス
「いや・・・『魔氣』の使用限界時間を超えて押し負けただけじゃ。
そろそろアイツの事じゃから再チャージが終わって飛び込むと思うぞい。」

由紀
「そ、それじゃあ尚の事急がないと!!
唯、急ぐわよ!」


「うん!!私は放送管理室に行くね!」

アルヴィス
「なんじゃ?何か考えがあるのか・・・
どれ、ワシも手伝おう。」

由紀
「それじゃあ、唯の方をお願いします!
この娘、機械弱いんで!」


「だ、大丈夫だよ~~!
由紀ちゃんこそ危ないかもしれないよ?」

由紀
「大丈夫よ・・・優太はもっと危ないことしてるんだから!!
私の役割何てたいしたことない!」

アルヴィス
「分かった。では、唯ちゃんに付いて行くとするよ。
由紀ちゃんも気を付けるんじゃよ?」

由紀
「はい!!じゃあ、行ってきます!!」








第17話「一時落着。。」







「・・・・・。」

カスム
「ふむ・・・どうやらあの少年も所詮は口だけの輩だったと言うことですな。」


「さぁ、それはどうでしょうね。」

カスム
「ヴァルヴェルドの一撃を受けて無事で済んでる筈が無いでしょう?」


「いえ、常に優太さんは予想の斜め上をいく人です。
アレくらい、きっと何ともなかったはずです。」

カスム
「ご冗談を・・・アレで生きていたら人間では・・・」



ゴウッ!!!


ふと、上空をもの凄い勢いで何かが駆け抜けていく。
それは北の方向から飛んできたように感じたが・・・
カスムは恐る恐る背後を振り向く。
そこには、赤いオーラを全身に纏わせた男が一人浮いている。
その姿を忘れる筈も無い。
アレはさっき北門の方向へ吹き飛ばされた優太だ。


カスム
「なっ・・・!は?な、何で・・!?」


「ほら・・・言ったじゃないですか。
何時だって、予想の斜め上をいく人なんですよ・・・優太さんは!!」



『おーーーーーーい!!!蓮!
無事かーーーーーーー!!?』




「はい!とりあえず大丈夫です!」



『そっかーー!それじゃあもう少し待ってろ・・・
このトカゲを、時空間ごと吹き飛ばしてから・・・助けに行くからな。』



カスム
「ば、バカか!!さっき力の差を見せつけた筈だぞ!!
それでもなお挑もうと言うのか!!」



『あれ・・・アンタは確か、ムスカさんだっけ?』


カスム
「カスムだ!!!名前を逆から読むんじゃない!!」



『とりあえず今はそんな事どうでもいいけどな・・・。
さて、一時的にケリつけるか?トカゲ野郎!!』









由紀
「も、もう・・・!どんだけ長いんだよこの階段!!
エレベーターくらい設置してよねホント!!」



長い長い階段を駆け足で登りながらぼやく。
運動が苦手と言う訳でも無いが、コレは流石に堪える・・・
終わったらもう一回お風呂に入りたい気分だ。


由紀
「あれ・・・もしかして、屋上?」



由紀の視界に階段の終わりが見える。
最後の力を振り絞り、その最後の数段を二段飛ばしで駆け上がる。
登りきると同時に自然と体が前のめりになる。
額から汗が伝い、髪や顎からポタポタと垂れる。
2、3度深呼吸をしてから呼吸を整え、辺りを見回す。
ココから王城は北西・・・
由紀は西側のテラスに踊り出る。
そして王城の上空に視線を向け、そこに居るはずのある人物を探す。
その人物はスグに見つかった。
見間違う筈も無い、あの龍の下で自分を待ってくれている男の影を。
由紀はもう一度大きく息を吸う。
そして大きな大きな声で叫ぶ。
優太に聞こえるように・・・








『優太ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!』


優太はその声を聴きとると、振り向くことなく時計塔の方に『竜牙』を向ける。
そしてその声に答えるように大きな声で返す。


優太
「待ってたぜ由紀!!!
寄越せ!最大チャージの『次元力』を!!!!!」



優太には見えないが、由紀は両手を上に掲げる。
すると、時計塔の遥か上空に球状の大きなエネルギーの塊が出現する。
その力は周辺の光、雲、ありとあらゆる物に干渉し、その存在その物を物理的に飲み込んでいく。


『優太!行くよーーーー!!
ちゃんと受け取ってよね!!!私の愛!!!!!』



優太
「ああ!!!!!
・・・愛はちょっと遠慮しとくがな!!」



優太には見えないが、由紀は大きな大きな溜息を吐く。
しかし瞬時に持ち直し、両手を振るう。
それにつられる様にエネルギー球が優太目掛けて飛んでいく。
その速度は決して早くもないが、優太に近付くにつれドンドン小さくなっていく。
『竜牙』がそのエネルギーを吸収しているのだ。
エネルギー球は優太まで辿り着く前に『竜牙』に吸収される。
『竜牙』を白く透き通った霧状の靄が覆う。


優太
「さ、て・・・とりあえず一旦退場願おうか!!!」



優太は天へ『竜牙』を掲げる。
すると刀身を覆っていた靄が刀身に張り付くように密着し、硬質化する。
刀身を白い輝きが覆いつくし、周囲を明るく照らし続ける。


グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!


龍が動く。
それに合わせるように優太は『竜牙』に手をかける。


優太
「喰らえ!!!
超銀河龍皇(ちょうぎんがブラスト)―――――――――――!!!!!!!!!!!!!!!!



龍の右腕を巻き込むように、優太は龍と自分の間の空間そのもの目掛けて『竜牙』を力の限り振り下ろす。
その瞬間、


優太
大次元斬(だいじげんざん)』!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



空間が裂けた。
その斬った部分は見る見るうちに巨大化し、正面方向・・・つまり龍を吸引し始める。
右腕が吸い込まれ、その体を徐々に飲み込んでいく。
龍はもがきながら吸引に抗っている。


優太
「抵抗しても無駄だ!!
一度吸いついたら離れないからな!この次元の一撃は!!!」



グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!


雄叫びを上げながら龍は完全に穴に吸い込まれる。
それを確認すると優太は東の空へ飛び立つ。
正確には、龍が吐き出される位置へ。
時計塔に差し掛かった時、テラスに居た由紀の元へ一旦降り立つ。
そして由紀の手を握ると由紀は軽く確認してくる。


由紀
「じゃあ飛ぶよ?準備いい?」

優太
「ああ、自分で飛んで行くより・・・
由紀に飛ばしてもらった方が早いからな。」

由紀
「私はタクシーかよ・・・」

優太
「あとで何でも一つ言うこと聞くから頼むよ。」

由紀
「マジかよぅ!!?早速行こうか!優太!」

優太
「おぅ、湖上空まで頼むな。」



一瞬だけ視界がボヤけたかと思うとスグに違う景色が飛び込んでくる。
そこは既に時計塔ではなく、アルヴィスと修行をした湖の上空だった。
暗くて良く見えないが、湖の中には龍が沈んでいる。
どんだけ深いんだよこの湖とか冷静にツッコんでいると、


ザバァ!!!!


龍の左腕が優太達目掛けて伸ばされる。
優太はスグに由紀を抱き寄せ、その場を離れると『竜牙』に水の魔力を纏わせる。
刀身が蒼く煌めくと、優太はその『竜牙』を握ったまま湖のふち目掛けて急降下する。
由紀は急な急降下に一瞬かなり驚いていたが、優太が強くその背を抱くとすんなり体を預けてくれた。
優太は『竜牙』の刀身を地面に思いきり突き刺す。
するとそこから湖の表面が次々と凍っていく。


優太
氷皇剣(ひょうおうけん)』・『縛氷柱陣(ばくひょうちゅうじん)』!!!



龍の左腕を巻き込み、湖を完全に凍らせる。
優太は地面から『竜牙』を抜き去ると、腰の鞘に納める。


優太
「さて・・・これでしばらくは大丈夫だろ。
これが溶けるまでに、もう一回みんなで作戦会議でもしようぜ・・・
って、何時までしがみついてるんだよお前は・・・」

由紀
「だって優太が凄い力で抱き寄せるから・・・
服同士がくっついちゃったみたいで~~。」

優太
「じゃあ服脱ぐからちょっと待ってろ。」

由紀
「冗談だよ!!こんな往来でイキナリ脱がないでよ!!
変態さんだよ完全に!!」

優太
「いや・・・まだ夜だし、由紀とオレしか居ないから問題無いだろ・・・」

由紀
「そ、そんな・・・こんな所じゃ流石に私でも恥ずかしいって言うか~~。」

優太
「何を想像してんだよ・・・
てかオレ、蓮を連れて来なくちゃならねえから・・・
一人で帰れるか?」

由紀
「うん、多分大丈夫。」

優太
「一旦、暁館に集合ってことでいいよな。
みんなには適当に伝えてくれ。」

由紀
「分かった。優太も気を付けてね。」

優太
「ああ、まあ・・・アイツが居なけりゃ何の脅威も無いと思うけどな。」









カスム
「ば・・・バカな・・・『神獣』の一角、赤龍ヴァルヴェルドが・・・
あんな小僧一人に・・・!!?」


「とりあえず・・・優太さんが来る前に投降してくれませんか?
そうするとそっちも無駄な怪我をしなくて済むと思いますけど・・・」

カスム
「・・・・・・!」

兵士A
「か、カスム様・・・!
ここは一旦身を引くのも止む無しかと・・・」

カスム
「バカが!!!ここまでやって引き下がれるか!!!
まだ私にはこの腕輪がある!!
ヴァルヴェルドよ、今すぐこの状況を何とかしろ!!!」



腕輪がギラギラと妖しい輝きを発し始める。
蓮は悠然と立ち続け、その輝きを正面から見つめる。
その輝きが最高潮に達した時・・・


ビキキ・・・!!


そんな不穏な音が連続し、腕輪が音も無く崩れ去る。
それと同時にカスムの顔も崩れ去る。
膝を折り、両手をつき完全にその場に倒れ込む。


カスム
「う、嘘だ・・・こ、こんなの・・・!!」


「あんな巨大な力の塊を動かそうなんて、普通に考えれば相当の負荷がかかると想像もつくと思いますが・・・。
限界だったんでしょう。」

カスム
「く、クソ!!!あの役立たずめ!!
不良品を渡しおったのか!!?」


「詳しいことは後で聞きましょうか・・・。
さあ、早くあの『神獣』を元の世界へ還しなさい。」

カスム
「くくく・・・」


「?」

カスム
「ははははははは!!!!!おめでたいですな姫様!!
そんなの無理に決まってるでしょう!!?
腕輪と、貴女の力があって初めてアレは現世に召喚されたのですぞ?
それを簡単に還せる筈がないでしょう・・・。」


「なんですって・・・?」

カスム
「還す方法があるとすれば・・・
召喚印を消すか、『神獣』を倒すか・・・この二つ以外ありえないのですよ!!」


「それだと召喚印を消す方が早そうですね・・・
どこに刻んだのですか?」

カスム
「それを教えるとお思いか?」



『おーーーーーーーーーーーーーーーい!蓮!!!』



「あ・・・、優太さーーーん!!」



東の空から自分を呼ぶ声に気付いた蓮は右手を挙げ、声のする方に向けて振る。
屋上の手すりに足をかけると、優太は翼を引っ込め王城の屋上に降り立つ。
そして蓮に駆け足で走り寄り、その手を取って


優太
「蓮!細かいことは言わずオレと来てくれ!!!」


「え?」

優太
「頼む!!本気めに急いでるんだ!!!」



優太はまくしたてるように蓮にズイズイと顔を寄せつつ説得を始める。
蓮はワタワタと戸惑っている様子だ。
気付くと優太と蓮の距離は吐息もかかるような距離だ。
優太の方は全く気にしてないが、蓮の方はさっきから心臓が早鐘のように鳴り続いている。
頬を朱色に染めながら、蓮は務めて冷静を装いながら優太に聞き返す。



「え、えっと・・・ぐ、具体的に説明してくれないと・・・その、よく分からないです・・・。
あ、あと・・・ち、近いです。」

優太
「あ、それもそうだな!
実はネロの奴が怪我しちまって・・・かなり重症そうなんだ!!
蓮ならスグ治せると思って頼みに来たんだ!!
あと、最後の方なんて言ったか聞こえなかったんだけど・・・」


「な、何でも無いです!
でも確かにそれは大変そうですね。
あ、でも・・・今は・・・」

ジゼル
「そういうことでしたら、私めにお任せください。」


「ジゼ!?」

ジゼル
「大臣の尋問はお任せください。
必ず召喚印の刻印場所を吐かせて見せます。
王の事も同時にお任せを・・・
レオナ様は、ごゆっくり優太様と朝までしっぽりやっちゃってくださいb」


「変な気は使わなくていい!!!
そ、それに私達はそう言う関係じゃないです!!!」

レーヴェ
「細かいことは置いておくとして・・・レオナ、行ってきたらどうだ。
お前も本当は行きたいのだろう?」


「お、お父様まで・・・!?」

優太
「二人くらいからおk貰ったから大丈夫だよな!?
とりあえずマジ急いでるから行くぞ蓮!!」



優太は蓮を抱き抱えると背中から翼を噴出させる。
そして顔を真っ赤にしてパニクっている蓮を余所に優太は王城から東の空へ飛び立つ。
蓮は急な飛翔に驚き、優太の首に腕を回すと体を寄せてくる。



「あ、あの・・・!!
ちょ、ちょっと優太さん・・・?!」

優太
「何だ!?もしかして何か忘れたのか?」


「い、いえ・・・その・・・!
この態勢は非常に恥ずかしいと言うか・・・!」

優太
「え、漫画とかだとよくあるじゃんこういうの。
お姫様抱っことか言う奴。
おぶるよりは早くて楽かと思って。」


「で、でもこれだとい、色々当たって・・・」

優太
「ん?何が当たるって?
悪いけど飛ぶ時って結構神経背中に集中してるからあんまり気にならないぞ?」


「そ、そうですか?ならいいですけど・・・」



蓮は自分と優太の体が触れ合っている部分に目が行く。
この態勢だと左側の胸から腰くらいまでが密着している。
胸が完全に押し当たってたりして、本来ならばウヒョーな展開かも知れないが優太にはそれを感じている余裕もない。
蓮はさっきから心臓がバクバクと鳴りっぱなしだ。
優太さんに伝わっていないといいですけど。と蓮は少々心配してしまう。
気を紛らわせようと優太に話しかけようと上を向いた時、優太の顔に疲労の色が見て取れた。
妙に息切れを起こしていたり、顔も多少青ざめているように見える。



「ゆ、優太さん・・・疲れてるんですか?
それとも具合が悪いんですか?」

優太
「え?ああ・・・ちょっと無理しすぎたかな・・・
ハードな修行を三日連続でやってさ、それの疲れとかが残ってるのに『魔氣』を使ったから・・・
少し疲れたのかもしんない、、、」


「とりあえず、また無茶なことをしたってことですか?」



蓮はそっと優太の胸に手を当てると自分の魔力を流し込み始める。
それが見る見るうちに優太の全身を満たし、体が軽くなるのを感じた。
全身の感覚が鋭く研ぎ澄まされ、『氣力』の方もさっきより出が良くなった気さえする。


優太
「あ、ありがとう。
悪いな、蓮・・・」


「いえ・・・私が居れば、毎日治して差し上げられたのにと・・・少し後悔してますから。」

優太
「そ、そこまで責任感じなくても良いよ・・・。」


「それでも・・・ごめんなさい。
優太さんには、無理をさせてばかりですね。」



蓮は優太の胸に当てていた手でそのまま優しく撫でる。
蓮の手の温もりが胸からゆったりと伝わってきて何だか少しドキドキする。
それと・・・蓮の胸が割とハッキリクッキリ当たっていることに気づく。
さらに蓮はネグリジェ姿のためか、基本的に体のラインが結構ハッキリ出ている。
胸元も谷間が覗けたり、腰からお尻に至るラインもハッキリ見て取れたり、かなり目のやり場に困る。
極めつけに蓮との顔の距離も近く、さらに優太の動悸が激しくなる。
蓮に気付かれないといいが・・・と優太は心配してしまう。


優太
「と、とりあえず・・・
帰ったら着替えた方が良いと思う。」


「あ、それもそうですね。
流石にこの恰好じゃあ出歩けませんし・・・」

優太
「ああ・・・目のやり場に困るしな。」


「はい?」

優太
「あ・・・!いや、別に胸の谷間が見えてエロいとか・・・!!
やっぱ蓮ってスタイル良いよなとか!
そういうこと全く考えてないぜ!!?」


「へぇ~~~~・・・さっきからそんな風に私のこと見てたんですね・・・」



急に蓮の視線がジトッとした湿り気のある視線に変質する。
しかし逆に蓮はさらに体を密着させてくる。
それはつまりさっきよりも胸とかが当たると言うことで・・・


優太
「ちょ!?蓮さん何してんの!??」


「これくらい密着しないと優太さんが私のこといやらしい目で見るので・・・
どうぞお気になさらず。」



いや、だからそれだとさらにいやらしいこととか考えちゃったりするんだけど・・・
とか思っても口には出せない優太は、早く蓮を下ろして解放されたいと思い、暁館へ向けてさらに加速するのだった。
しかしそんな優太の焦った様子を見ている蓮の顔は、何時の間にか満足げな笑顔に変わっていた。







第18話「繋がる想い。。」






優太
「ふぅーーー・・・エリスのコーヒーは美味しいなーーー。
目元スッキリ、気分爽快だよ。。」

エリス
「はい、ありがとうございます優太様。
そろそろ戻ってくると思ったので用意しておいて正解でした。
思わぬ客人が多くて少し大変ですけど・・・」

すみれ
「あ、こっちはお構いなく。
かすみに淹れさせますから。。」

かすみ
「ちょっと待てよ!!
何で私が淹れることになってんの!?
流石におかしくないかな!?かな!!?」

女将
「かすみ、私は濃いめの緑茶を頼むよ。」

かすみ
「お母さんまで!!?」

エリス
「だ、大丈夫ですよ・・・かすみ様。
私がお持ちしますのでゆっくり休んでいてください。」

かすみ
「ありがとーーー!!エリスちゃんはやっぱり優しいなーーー!
お母さんとか、おねえちゃんと違って!!」

女将すみれ
「「ア゛アっ!!?」」

かすみ
「素晴らしいお母様とお姉様の下で生きていられて、かすみはもの凄く幸せです!!
マジすんませんでした!!!!!」

アルヴィス
「あ、エリスちゃーーん!
ワシも優太と同じコーヒーで頼むぞい♪」

優太
「帰れ色ボケジジイ。」

アルヴィス
「まあそう言うな。
しかし、お主も無茶をする。
いくら『魔氣』を使っていたとはいえ真っ向から『神獣』と戦う奴が居るか・・・」

優太
「いや、時間稼ぎくらいはできると思ってたし・・・
それにホントに不味かったら逃げるつもりだったから問題無かった。」

アルヴィス
「しかし次元切断剣とは・・・面白い技を持っとるのう。」

優太
「火力=消費だから多用はできねぇけどな。
由紀に溜めてもらって、それを見晴らしの良い所で渡してもらう手はずだったんだが・・・
思いのほか上手くいった。」

由紀
「『次元力』は解放しちゃうと何でも吸い込んじゃうからね・・・
ある程度開けた場所じゃないと解放できないからね。」

アルヴィス
「それで時計塔か。
飛ばす先もあらかじめ決めてあったのかのう?」

優太
「ああ。あの湖が深いのは知ってたからな・・・
由紀に飛ばす場所は調整してもらって、オレが次元をぶった斬って・・・
龍を湖まで飛ばしたら、湖自体を凍らせるかどうにかしてしばらく閉じ込めようって作戦だったんだ。」

アラド
「でも、この後はどうするんだ?
あの龍を還すには倒すか、召喚印を消すしかないんだろ?」

優太
「らしいな・・・
ま、つまりはアイツが出てきたら・・・もういっちょやる事にはなるだろうな・・・どの道。」

ゼオラ
「勝算は?」

優太
「そうだなーー・・・
メダがやる気になれば大丈夫じゃないかな?」

メダ
「・・・・・・・・」

優太
「おーーーい、メダーーー?」



メダは食堂の戸に一番近い所で壁に寄りかかっている。
蓮がネロの治癒にあたっている為、その経過をいの一番に知りたいからだろう。


メダ
「ん?な、何だ?」

優太
「そんな心配しなくたって大丈夫だよ。
蓮なら何とかしてくれるって。。」

メダ
「そ、そうだと思いたいが・・・」

優太
「オレを信じろっつったろ?」

メダ
「分かってる・・・」



ガチャ


その時、扉が開かれる。
そこから現れたのは蓮だった。
メダはスグに蓮に駆け寄り忙しなくネロの様子を聞いているようだ。
そして蓮に説明を受けてからスグに部屋を出て行った。
蓮はそのままテーブルまで歩み寄り、適当に空いていた椅子に腰かける。



「ジゼから連絡がありました。」

鳳仙
「召喚印の情報が入ったの?」


「ええ・・・大臣を尋問した所、割とあっさり吐いたようです。
どうやら、あの頭にある『龍角』に召喚印を刻んだようです・・・」

アルヴィス
「それは本当ですかな!?」


「ええ・・・困りましたね・・・」

優太
「え?何が?
角をへし折れば良いってだけだろ?
簡単じゃん。。」

千草
「ユウ君・・・知らないの?」

優太
「何を?」

アルヴィス
「龍の角は・・・
この世で最も堅いと言われている物質なんじゃ・・・」

優太
「マジで?」

千草
「モンハンやってると嘘みたいに感じるけど現実なんだぜ?」

鳳仙
「そうすると・・・倒すのはもちろん無理だけど・・・
召喚印を消すのも、無理ってこと?」

女将
「・・・・・・」

アラド
「え、でもさ・・・
刻んである場所が表面だったらその部分を少しでも削ればいいんじゃあ・・・」


「ご丁寧に内部に刻んであります。」

ゼオラ
「用意周到なことで・・・
これはもしかして詰んだのかしら?」


「う、う~~~ん・・・もう一回・・・
今度はもっとスゴイ量の『次元力』を込めた次元斬で異世界とかに飛ばしちゃうとかダメなの?」

由紀
「ごめん、あの大きさの相手を異界まで吹き飛ばすような力・・・
溜めるのに丸一日はかかる。」

優太
「そっかーーー・・・じゃあ、気合いで折るしかねぇな。」

アラド
「はぁ!!?」

優太
「だってもうそれしかねぇじゃねぇか。」

ゼオラ
「優太、アンタちゃんと聞いてた!?
アレに傷をつけるのは不可能よ!!
気合いとかそういう精神的な物でどうこうできる物じゃないわよ!?」

優太
「うーーーーん・・・
何て言うかさ、みんなして勘違いしてないか?」

アルヴィス
「ほほぅ・・・」

優太
「今は、できるとかできないとか言ってる時じゃねぇだろ。
自分達にできることを、ただひたすらにやるだけだ!
無理は承知!!みんなでやれば怖くない!!!」







メダは思いの外、息が切れていた。
食堂からそんな遠い訳でも無いのに、階段を一足飛びで駆け上っただけでここまで疲れると・・・
思った以上に体が疲弊していると言うことなのかもしれない。
メダは二、三度軽くドアをノックする。


コンコン!


『メダ?』


ノックをしただけだと言うのに、ネロはメダだと言うことを平然と当ててきた。
透視能力でも持ってるのだろうか・・・


メダ
「ああ。入っていいか?」



ノブを回し、部屋の中に入る。
そこにはベットに横たわっているネロが居る。
その顔はつい先ほどまでと違い、血色も良くなっている。
どうやら持ち直したようだ。
メダはベット横の椅子に腰かけて


メダ
「全く・・・無茶なことしやがって・・・」

ネロ
「ご、ごめんね・・・。
何だか気づいたら体が勝手に動いてて・・・」

メダ
「心配かけさせやがって・・・
兎に角大事にならなくてよかった。」

ネロ
「メダ・・・うん、ごめんね。
ありがと、心配してくれて・・・」

メダ
「とりあえず寝てろ。
ネロが寝てる間に、全部片付けとくからさ・・・」

ネロ
「でも、メダ一人で大丈夫?」

メダ
「大丈夫だよ・・・
オレには、みんなが居るから・・・」

ネロ
「うん、そうだったね・・・」

メダ
「お前は十分働いたよ・・・
腑抜けたオレの代わりに、戦団をまとめてくれてた。
オレを守ってくれた・・・だから、今度はオレがお前を、みんなを守る番だろ・・・?」

ネロ
「うん。」

メダ
「だから・・・えと、ネロ・・・。」

ネロ
「うん?」

メダ
「これからも、オレの隣で・・・パートナーとして、一緒に居てくれるか?」

ネロ
「えへへ・・・何言ってるの?
メダ・・・そんなの当たり前だよ。」

メダ
「そっか・・・ありがとな。
ネロ・・・今度こそ、今度こそ・・・ホントに大丈夫だ。
オレ、行ってくるな!」

ネロ
「うん、行ってらっしゃい。メダ・・・
あ、そだ、コレ・・・持っていって。」

メダ
「え?」



ネロはベットから上半身を起こし、ポケットから小さい首飾りの様な物を取りだす。
とても不思議な形状をしていた、小さな持ち手の付いたキャップの先に金色の小さなドリルがついている。
メダはそれを手に取る。
するとドリルの中心が微かに蒼く光始める。


メダ
「何だ、これ・・・ドリル?」

ネロ
「うん・・・何かお父さんが最後まで握ってたの・・・」

メダ
「スコールさんが?」

ネロ
「うん、お父さんも何時も首から下げてたんだけど・・・
やっぱり、私が遺品として持ってるよりも・・・メダが持ってた方が良いと思って。」

メダ
「いや・・・でも、」

ネロ
「お父さんもそれを望んでると思うの。
それに、何かさっきからせわしなく光ってるでしょ?
この子も、メダと一緒が良いんだと思うよ?」

メダ
「・・・・・分かったよ。
じゃあ、借りとくな。」

ネロ
「あげるよ。
メダに持ってて欲しいの。」

メダ
「はいはい、分かったよ。
じゃあ・・・いくな?」

ネロ
「うん・・・」



そう言うと、メダは立ち上がらなかった。
急に俯き、微かに呻きながら何か迷っているようだ。
ネロも首をかしげる。


ネロ
「どうしたの?
行かなくていいの??」

メダ
「いや・・・えっと・・・」

ネロ
「んーーーー?」

メダ
「少しだけ、元気分けてくれないか?」

ネロ
「え?」



ネロは一瞬言っている意味が分からなくなる。
いや、でも普通こんなこと言われて分かる人間も珍しいと思う。
だがネロはスグに分かった。
つまり、こういうことだろう。


ネロ
「いいよ。私の枯れかけの元気で良かったら・・・
いくらでも持っていって?」



それだけ言うとネロは瞳を閉じる。
それを合図にメダはネロの頬に手を添える。
優しく頬を撫でながら、メダはネロの顔を引き寄せ・・・
唇同士を合わせあう。
それは二人にとって初めてのキスで、
二人にとって、気持ちを確かめ合う意味もこもったキスだった。
触れ合っていた部分が少しづつ離れ、お互いの顔を間近に拝みあいながら、二人は誓いを立てる。


ネロ
「メダは・・・帰ってきてくれるよね?
私を、一人にしないよね?」

メダ
「当たり前だろ。
絶対に、生きてお前の所に帰ってくる。その時は・・・」

ネロ
「えへへ・・・嬉しいけどその先は聞かないでおこうかな。
何か死亡フラグみたいで笑えないし。。」

メダ
「いや、だから死なないって!!」

ネロ
「じゃあ、もう一回キスして?
そしたら・・・メダのこと、信じてあげるよ。」

メダ
「オレのこと信じてないのかよ!??」

ネロ
「いや、それとこれとは別で・・・
えっと、ただもう一回して欲しくて適当に言ってみただけだし・・・」

メダ
「何だ、そういうことなら素直にそう言えよ。」



メダは強引にネロを抱き寄せ、ベットから引っ張り出すと、今度はすんなりとネロの唇に自身の唇を重ねた。
ネロは戸惑いつつも、メダの背中に腕を回すと、体を預けるように寄り添う。
そのまま、二人は何度も何度も気持ちを確かめ合うように、そして『元気』を分け合うかのように何度も何度も求めあった。








ガチャ!!


食堂の扉が再び開け放たれる。
どうやらメダが帰ってきたようだ。
優太は冗談交じりに


優太
「随分と長かったな・・・決戦前に頑張りすぎんなよ?」

メダ
「え、ああ。
まあ、そっちは帰ってきてからかな・・・」

優太アラド
「「帰ってきてからだと!!!!???
ど、どどどどどど・・・!!!どういう意味だぁぁぁあああああああああああああ!!!!!!!!」」

メダ
「冗談はほどほどにして・・・どうするか決まったのか?」

アラド
「ちょっと待てよユーー!!はぐらかすんじゃねぇ!!
帰ってきてから何だって!!??」

優太
「そうだテメェ!!一体全体二人で何してたんだよ!!!??」

メダ
「おい、そんなことはどうでもいいから・・・
これからどうするのか聞かせろ。」

優太アラド
「「そんなことはどうでもいい!!!!!!!!」」

アルヴィス
「いや、どうでもよくないじゃろ・・・
メダ、お主はどうする方が良いと思う?」

メダ
「???どういうことですか?」

アルヴィス
「とりあえず真っ向から戦おう派と、何らかの方法を考えよう派に考えが分裂しててのう。
お主の考えが聞きたい。」

メダ
「そうですね・・・ここに居る皆で戦えば勝機はあると考えますが。」

アルヴィス
「なるほど。」

優太
「お、たまには意見があったな!!
やっぱ男なら正面突破だよな!!」

メダ
「いや、そういう話じゃなくて・・・
どうせ何か考えるにも時間稼ぎが居るだろ?」

優太
「ああ・・・それもそうだな。
じゃあ方針はそれで良いんじゃないの?
オレとメダと他数人でガチンコしてる間に何か考える。」

メダ
「ちゃっかりオレを頭数にいれるのかよ・・・
ま、その方がオレも楽でいいけど。」


「ですが、何か考えると言っても・・・
やれることのほとんどが時間稼ぎのようなことしかできません。
最終的には倒すか、召喚印を消す以外には無いと思います。」

アルヴィス
「そのとうりですな。
ワシも人数を分散するよりも一丸となって挑み、あの脅威を払うことに尽力する方が効率的だと見ております。」

女将
「アンタがそう言うならもう決まったようなもんじゃないかい。」

鳳仙
「で、でも・・・
実際問題あんなのとどうやって戦えば・・・?」

アラド
「確かに・・・あの巨体相手だと、遠距離攻撃持ちか飛行魔術持ちでも無い限りまともに戦えないんじゃないか?」

アルヴィス
「ワシは飛べんが、駆け上ることはできるぞ?」

優太
「いや、駆け上りながら相手の攻撃避わすのって結構大変だからね。
みんなクソジジイみたいに超スペック持ちじゃないからね。」

ゼオラ
「と言うか・・・完全に戦う方向で話が進んでるけど・・・
本当にみんなそれでいいの?」

優太
「オレは元からそう言ってる。」

メダ
「今回ばかりはオレも戦った方が早いと思う。」

アラド
「何かもう空気的に否定できねぇ・・・」

鳳仙
「オレに何ができるか分かんねぇけど・・・
ダンナの足手まといにはならないようにするよ!」

千草
「私は遠くからチクチクやらせてもらうとするよ~~。。」

女将
「すみれ、かすみ・・・とりあえず一旦帰ってアレ持ってくるよ。」

すみれ
「はい、分かりました!」

かすみ
「あ、アレって・・・アレですか!!?
まだ試作段階じゃないですか・・・大丈夫なのかな・・・。」

女将
「それを試すんじゃないか・・・絶好の機会だしね。」

由紀
「これはもう決定かもね。」


「ですね。死なない限り、何でも治しますので・・・
無理だけはしないでくださいね皆さん。」


「私は・・・とりあえず応援してるよ!!」

愛依
「わ、私もそうしてようかな・・・
何もできそうにないし・・・」


「メンドクサイ展開キターーー。
でも何か吊り橋効果で愛依とラブラブするチャンスか?!」

アルヴィス
「決まったようじゃのう。
ワシも、アレを持ってくるわい。
優太にメダ・・・二人とも皆を導いてやるが良い。」

メダ
「はい!!分かりましたアルヴィスさん!!」

優太
「けっ・・・偉そうに・・・ま、言われるまでも無いって話だ。
メダ、オレ達の修行の成果・・・見せる時だぜ!」

メダ
「そうだな・・・生きて帰るぜ、優太!!!」

優太
「おぅ!!やる気十分だな!!!
マジでネロと何かあったのか?」

メダ
「色々だ。」

優太
「リア充爆発しろ。。」









第19話「開戦の狼煙。。」






春。
空飛ぶ自称魔法使いを名乗る一人の少女と出会い、訳の分からないうちに契約をさせられてから二週間が経った。
自称魔法使い少女の霜月由紀(何故か同じクラスだった)と何・故・か、同棲するハメになったりして慌ただしい、それでいて少しだけ楽しい毎日を過ごしているうちに、高校には少しづつだが慣れ始めていた。
だが、未だに友人は一人として出来ずに居た。
そんな高校生活のスタートをミスったんじゃないかと思うようになっていた日の放課後・・・
オレは委員会の当番に顔を出していた。
図書委員。
誰一人としてやろうとしないものだから選んだが・・・
これはこれで居心地が良かった。
基本的に放課後の図書室に来る連中などたかが知れていて、座って本を読んでいるだけで時間を消費できた。
どうせ帰ったって・・・オレには待ってくれてる人など居ないのだ。
最近、一人出来たけど・・・
それでも早く帰った所でやることも無い。
どうせ夕飯までげ~むするか、アニメ見るか、漫画orラノベを読むくらいだ。
何か、それはそれで違う気がしていたのでこの当番は調度いい気晴らしになっていた。
そんな訳で、オレは図書委員のカウンター当番をすることに嫌な気はしていない。
当番が一緒の子はずっと本を読んでおり、自分の世界に浸っているものだから変な気を使う必要もない。
オレはいつものように、司書の先生に任された本の管理簿を書いて過ごしていた。




何故か本日は仕事の進みが早く、ものの三十分でまとめ終わってしまった・・・。
完全に手持ち無沙汰になってしまった。
ボーッとしているのもありだが・・・
何か時間を有効活用しないと、と思ってしまった。
そもそも、気晴らし目的なのだから無理に何かすることもないと思えなくもなかったが何故かその時は何かしたくなったのだ。
オレはふと管理簿に目を落とす。
つい先日入った電撃文庫の「半分の月がのぼる空」の最終巻(と言っても番外編だが、、、)がある。
この巻は実はまだ未読だ。
調度良いのでここで読んでしまおう。
そんな軽い気持ちでカウンター前のラノベ棚を少し探すと、スグに見つかった。
カウンター内に戻り、表紙を眺める。
そこには、本作のヒロインである里香の花嫁姿が描かれている。
里香の晴れ姿に内心ニヤつきつつ、ページを捲ったその時・・・


『それ、面白いんですか?』


聞き慣れない声が、聞き慣れない方向から聞こえてきた。
オレはその方向、つまりオレの左隣を見やる。
そこには赤く縁どられた眼鏡をかけ、絵にでも描いた様な文学少女がそこに居る。
少女の体格はオレの肩より少し低いくらい。
オレの身長が175cm前後なので身長的には大体平均的ではないのだろうか。
腰よりやや上くらいまである髪を、今は二つに分けて肩から胸の方に向けて垂らしている。
少女は小首を傾げながらオレをじっと見つめてくる。
その瞳には、ただただこの本に対することを聞きたいと言いたげな熱い、暑い思いを感じた。
オレは数瞬考えを巡らせた後、軽く返した。


『あ、ああ。面白いよ。
ラノベだけど、これはハードカバーの作品と比べても遜色の無い・・・』

『ラノベ??』
『え、ラノベ知らないの?
正式にはライトノベルって言って・・・
ほら、そこの棚にあるのが全部ラノベって奴だよ。』



少女は正面の無数に並べられた腰くらいの高さの本棚を見やる。
そしてこちらに視線を戻して、


『あの辺りの本は、読んだこと無いです。』
『そ、そうなんだ・・・まあ、えっと・・・』



咄嗟に名前を呼ぼうと思ったら名前が出てこなかった。
どうせ話すこともないだろうと思っていたので、まるで覚えていなかった。
すると少女はその事に気づいたのか、


『私は、一年七組の泉蓮と申します。
貴方は六組の福島優太さん、でしたよね?』



そう、口元をほころばせながら自分の名を名乗った。
オレの名前を覚えていてくれていたのか・・・それに比べてオレはまるで覚えていないなんて・・・
少し情けなくなりつつもオレは蓮と名乗ったこの少女にラノベについて話した。
蓮と名乗る少女はオレの話を物凄く興味津々に聞いてくれた。
オススメのラノベ(できるだけソフトでエロ要素の無い奴。)を数冊教えてあげた。
後にこの出来事が蓮の新しい扉を開ける要因になってしまうことに、この時のオレは知る由も無かった。
春も半ばが過ぎ、季節は夏に向かい始めた時の出来事である。








バキ!!!


そんな音が夜明けを数時間後に控えた空に響く。
音の元凶は優太がガチガチに固めた湖に亀裂が走る音だ。
どうやら時間が経ち、少しづつだが氷が溶けてきているらしく、今にも龍が氷の結界を破り再度この世界に戻ってくるのではないかと連想させる。


ビキッ!!バキキッ!!!!!


亀裂は湖全体に放射状に走り続ける。
さらに湖から突き出された龍の腕が微妙にだが動いているのが見て取れる。
もう、猶予はそこまで残されてはいない。




その状況を湖の近くで見ている優太は悠長に体をほぐしながら同じく体を温めているメダに軽く語りかける。


優太
「そろそろ出てきそうだな。」

メダ
「そうだな。」

鳳仙
「ほ、本当に大丈夫かな・・・
流石に今回は気後れしちゃうよ。」


「まあ無理も無いな。私も本物を見るのは初めてだ・・・
それに、そんな奴とガチンコしようって奴も人類史上初なんじゃないかと思うがなーーー・・・」



そう言いながら奏は冷めた目で優太をジトッと見つめる。


優太
「そう言いながら奏も最前線組に混じってるよな・・・」


「しょうがないだろ・・・飛べて、近接戦ができる奴が居ないんだから。
別にお前のために戦うんじゃないぞ?
私は愛依とかを守るために・・・」

優太
「はいはい。人其々、目的は違うよねーーー。
あれ、てか鳳仙って飛べたっけ?」

鳳仙
「ううん。飛べないよ?
だけど、後ろで戦うのも嫌だし・・・
だったらダンナの側で戦いたかったんだ。」

優太
「ま、無理だけはするなよ?
鳳仙、防御はからっきしだからアイツの一発貰ったら即昇天すると思うぜ?」

鳳仙
「うん。気を付けるよ。」

アラド
「お待たせーーー!!」

メダ
「おぅ、アラド・・・
ボードの方は無事だったか。」

アラド
「まぁな。とりあえずこれでオレも最前線で戦えるわけだが・・・
正直張り付いて戦える気がしないから最前線のサポート役って位置付けで頼むわ。」

メダ
「何でもいいさ。
前でアイツを止めておく奴は一人でも多い方が良いからな。」



バキキ!!!ビキン!!!!


一際大きな音が辺り一面に響く、龍の腕を中心に無数の亀裂が一瞬の内に湖全体に走る。
そして次の瞬間、


バキャン!!!!!


腕の一部の氷が完全に砕け散る。
それを皮切りに次々と氷が砕け、腕がせり上がってくる。


優太
「どうやら追いでなすったようだな・・・とりあえず出鼻を挫くぞ。」



優太は体を捻りながら右腰の辺りに両手を持ってくる。
調度、何かの波を出すような感じのポーズだと思われる。
右手と左手の甲の中心に何かのエネルギーが収束していく。
そのエネルギーは見る見るうちに肥大化してゆき、最終的にハンドボールくらいの大きさになる。


優太
「開戦の狼煙変わりだ・・・!
寝覚めに喰らいやがれトカゲ野郎!!!
煌曝―――――――――――(ストナーァァァァアアアアアアアア)!!!!!



ドギャアアアアアアン!!!!


湖を覆っていた巨大な氷の結界が瓦解し、中から巨大な真紅の巨龍が姿を現す。
それを合図に優太は左足を踏み込み、力の限り赤く煌めくエネルギー球を握り込む。


優太
―――星烈弾(サーーンシャーーーーイン)』!!!!!!!!!!!



優太は龍の顔面目掛け、右腕を正面に突き出すようにしてエネルギー球を射出する。
そのエネルギー球は赤い軌跡を周囲に残しながら真っ直ぐと龍に向かって突き進んでいく。
そして、


ボッ!!!!!!!


エネルギー球が龍の頭部に激突する。
それを中心にあの大きさの球体に込められているとは思えないほど強力なエネルギーの余波が空気中を伝わってくる。
中心部分では強力な融合爆裂が起こっているのか、何度も何度も炸裂する音が響き渡り、その度に周囲一帯へ熱風と赤い光を放射し続ける。


ドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!!!!!!!ドッ・・・・・・ボン!!!!!!!!!!!!!!


最終的に強力な爆裂が起こり、湖全てを覆うほどの巨大な爆発になる。
それを眺めていた一同は正直に思う。


鳳仙アラド
「「「いや!!!アレでくたばらない方がおかしくね!!?」」」

メダ
「いや、無理だな。」

優太
「ああ・・・思ったほど効いて無さそうだわ・・・。」



グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!


爆発の時に生じた霧が晴れ、その先に龍の姿を拝むことが出来た。
その姿は悠然としたもので、どうやらかすり傷一つついていないようだ。


優太
「火に油だったかな・・・
さっきより雄叫びが凄まじいことになってるぜ・・・。」

メダ
「今更ビビってんなよ。」

優太
「ビビってねぇよ。
何でもいいや・・・さっきので向こう側にも伝わっただろうし・・・
そろそろガチで行くか。」

アラド
「(えぇーーーーー!!?マジで行く気かよ!!
正直さっきのでダメージ無しとか戦意喪失ルート一直線なんだけどオレ・・・!!)」

鳳仙
「だ、ダンナ・・・ほ、本当に大丈夫かな?
か、勝てるのかな?」

優太
「大丈夫とは言えないけどよ・・・
鳳仙、お前自分を誰だと思ってやがるんだよ・・・」

鳳仙
「え?」

優太
「お前はオレ達の中でオレの次に強くなりたいんだろ?
だったら、これくらい超えて見せろよ・・・お前ならできる。
オレは、お前を信じてるぜ!」

鳳仙
「ダンナ・・・、うん!!
オレ、頑張ってみるよ!!」


「あの堅さ・・・アレ使わないとならなそうだな・・・
クソったりぃーーー・・・。」

優太
「これが終わったら・・・最高級トマト料理食いに行こうかなーーー・・・。」


「勿論私も連れてってくれるんだろうな!?」

優太
「どうしようかな・・・」


「連れてけバカ野郎・・・。」

優太
「少なくとも、人に物を頼む態度じゃないな・・・」


「連れてけ・・・そしたら、えっと、そうだな・・・
あっ!足舐めさせてやる。」

優太
「お前・・・それでオレが喜ぶと思ってるのか?」


「なに!?この業界じゃあ、ご褒美じゃないのかコレ!!」

優太
「合ってる気がするけどそれはもっと特殊な性癖持ちの奴に言え!!!
もういいよ!連れてくよ!連れてくから真面目に戦ってください!!!
お願いしますOrz」


「しょうがねぇな・・・そこまで頼まれたら少しは頑張ってやるかな。。」

メダ
「おい、完全に攻守逆転してるけど大丈夫か?」

アラド
「・・・・・・・・・・・・フッ。
何か、真面目に考えるだけバカみたいに思えてきたぜ・・・。
オレも頑張ってみるかな!!!」

メダ
「(優太の奴・・・狙ってやってんのか?
器用なことが出来る野郎だな・・・。)」

優太
「よっしゃあ!気合い入れた所で行くぜ!!
財布的には大打撃だけど!!!」

メダ
「やっぱお前全然凄く無ぇよ・・・」









千草
「お・・・ユウ君が言ってた合図キターーーーーーー!!」

すみれ
「こっちでも確認しました。
交戦開始された模様です!」

かすみ
「こっちの準備もできたよーーー・・・
だけど、本当にコレ・・・浮くの?」

女将
「その性能テストも兼ねてるって言ったろ?
とりあえず行くよ。
前線組だって支援射撃してくれる奴らが居てくれてた方が楽なもんさね。」


「私も同行します。
傷ついた人たちの治療をしなくてはいけませんからね。」

ゼオラ
「後方からの射撃なら私も心得があるわ。
機関銃の扱いは任せといてよ!!」

千草
「後方からの応援なら私も心得があるよ!
応援歌の歌唱は任せといて!!」


「それはどちらかと言うと唯さんの役柄だと思いますが・・・」

千草
「私、巷じゃ花澤みたいな声だって言われてて・・・
結構イケてると思ってるんだぜ?」


「いや、どれかと言うと・・・
かな恵さん似じゃないですか?」

千草
「やっぱり!?私もそんな風に思ってたんだよね!」


「ま、そんなどうでもいいトークは置いといて・・・」

千草
「どうでもよくないよ!!
この作品がアニメ化したら私の声を誰が演じるのかを予想しようのコーナーは始まったばっかだよ!
ちなみにレンチーは・・・!」


「何でもいいからとりあえず乗ってください・・・出発できないじゃないですか。」










「あ!赤い光見えたよ!!!」

由紀
「始まったのね・・・」

エリス
「そ、それで私達はどうしましょうか!!」

綾香
「えりす~~~・・・あやか眠いーーー・・・。」

エリス
「あ、綾香さま!
とりあえず寝るならそこのベンチで寝ましょうね!」

綾香
「えりすーーー・・・」

エリス
「なんですか?」

綾香
「おっぱいまくらーーーー・・・。」

エリス
「え゛っ!!?い、今はちょっと・・・」

綾香
「やだやだ!!
えりすのおっぱいまくらでねるのーーーーーーーーー!!!」

エリス
「あ、あうう・・・!
由紀さま、唯さま~~~!た、助けてくださいーーー!!」

由紀
「いや・・・どうせ私、エリスに比べたら無い乳だし・・・」


「変わってあげたいけど・・・私もちょっと自信無いと言うか・・・
まず最初にどうやるのか分からないしーーー・・・」

エリス
「いえあの!そういう事ではなく、綾香さまを一緒に止めてくださいって意味でですね・・・!」

綾香
「おっぱいダーーーイブ!!」

エリス
「ちょ!!ちょっと待ってください綾香さま!!
ひゃ!!ちょ・・・も、揉んじゃダメですよ~~!!」

綾香
「ああ・・・やっぱこのやらわかさ、落ち着く・・・。」

由紀
「唯、頑張ろうね。色々。」


「そうだね。頑張ろうね。色々。」

エリス
「そんな遠く見てないで助けてくださいーーーー!!!」









アルヴィス
「なんじゃ・・・もう始めてしまったのか・・・
もうちと待っててくれれば、コイツの解凍にも間に合ったのにのう・・・。」



アルヴィスは階下に収められた一対の得物を眺めながらため息を零しつつ、東の方角から気のぶつかり合いを感じ取っていた。


ピーーーーーーーーー!


そんな電子音と共に階下の得物が少しづつ上にせり上がってくる。
その全貌が少しづつ明らかになる中、アルヴィスは天を仰ぎ見る。


アルヴィス
「これだけ血が騒ぐのは幾年ぶりか・・・
今宵は存分に暴れようぞ、相棒。」



腰から『白龍』を抜き放ち、アルヴィスは得物の柄部分にポッカリと開いた場所へ『白龍』をセットする。
するとアルヴィスの腕ごとその空き間が不思議な物質で埋まる。
アルヴィスが立っている場所もそのまま上昇を続け、数秒後に地上に辿りつく。
そして、完全に全貌が明らかになった得物を肩に担ぐと、アルヴィスは地面を思いきり蹴る。
最強と呼ばれた『白銀の剣聖』が今、戦場へと赴く。


アルヴィス
「さて・・・若い者に見せてやるとするかの。
『白銀の剣聖』の真の実力を!!!」









優太
「うっ!!」

メダ
「どうした!?」

優太
「何かもの凄い寒気が・・・!」

メダ
「あぁ?やる気あんのか優太・・・」

優太
「あるわボケ!!舐めんじゃねぇよ!!
オレを誰だと思ってやがる・・・」

メダ
「ま、オレの足だけは引っ張るんじゃねぇぞ・・・。」

優太
「コッチの台詞だ。」

メダ
「覚悟はいいか?オレは出来てる!」

優太
「ああ、オレとお前で先陣切るぞ・・・鳳仙たちはそれに続いてくればいい。
その内他の連中も行動を起こすだろうよ。
今度こそホントに行くぜ!!!
人間の底力、見せつけてやるぞ!!!!!」



優太とメダはヴァルヴェルド目掛け一気に、大きく跳躍する。
全力の『速鳥』により、一瞬の内に距離を詰め、湖のほとりに辿りつく。
そこから優太は地面を思いきり蹴り、背中から黒い噴出翼を展開し、上昇していく。
メダもそれに習い、ポケットから翼のような形をしたキーホルダーを取り出すとそれを宙に放る。
すると、途端にその翼は巨大化する。
その翼はV字の羽が両脇に展開した金属の翼だ。
どういう原理か、それを背中に装着しメダも空を翔る。
その行く手を阻むように、ヴァルヴェルドの右腕が振り下ろされる。
優太は軽く後ろから来るメダに目配せをしつつ、


優太
「メダ!」

メダ
「おう!!」



それだけ言い合うと、優太は減速する。
そしてメダがその横を通り抜け、右腕に飛びかかる。
メダは左拳に『螺旋力』を練り込む。
腕に巻きついたエネルギーは回転し続け、その回転は見る見るうちに激しくなっていく。
それが最高潮に達した時、メダの左拳とヴァルヴェルドの右手が接触する。


メダ
『螺旋――――――、砕波』(スパイラル・ドライバー)ーーーーーーーーーーーーー!!!」



メダの左拳から青い螺旋状の力が放出され、ヴァルヴェルドの右腕を抉り抜く。
その衝撃波は右手の甲から腕を駆け上がり、肩から突き抜ける。
衝撃の反動でヴァルヴェルドの腕は後ろに弾かれる。
その隙を逃がすことなく、優太は頭頂まで上り詰める。
既に『竜牙』には『魔氣』を纏わせてある。


優太
『灼皇剣』―――――――――――!!」



それを振りかぶり、正面に見据えた『龍角』目掛け振り下ろす。
斬撃が赤い軌跡を残しながら振り抜かれる。


優太
『鬼炎斬』(きえんざん)!!!!!」



刀身を真っ赤な炎が包み、『龍角』と『竜牙』が激突する。
元からかなりのサイズ差があるからか、それとも本当に堅いからか、刃が一ミリも喰い込まない。


優太
「なっ・・・!?」



優太はその事実に驚愕する。
まさかこれほどまでに頑丈だとは思いにもよらなかった。
ヴァルヴェルドは勢いよく頭を振る。
それだけで、優太は軽々と吹き飛ばされてしまう。
背中からもの凄い勢いで翼を噴出させ続けても、地面スレスレでようやくそのスピードを緩められた。
その勢いをあえて殺さず、地面を滑りながら着地する。
どうにか無事に着地した所で、メダが側に降り立つ。


メダ
「体は大したことない。『龍角』はどうだった?」

優太
「想像以上に堅いぞ・・・。
『魔氣』を纏った『竜牙』が一ミリも喰い込まなかった。」

メダ
「なるほどな・・・折るのは至難の技ってことか・・・」

優太
「それに、体が脆いと言っても・・・アレ見て見ろ。」



そう言って優太はヴァルヴェルドの右手を指差す。
メダはその部分に視線を向け、改めて驚愕する。
さっき空けた肩まで達した筈の風穴が完全に塞がっている。
しかも全く分からない程度まで回復している。


メダ
「自然治癒能力高すぎだろ・・・」

優太
「元から龍ってのはそういうものらしいぞ。
オレの『龍皇氣』も同じような能力があるしな。」

メダ
「それでもあそこまでの再生能力は無いだろ。」

優太
「まあな。つまり・・・
ドレイクと同じ能力持った、クソジジイ以上に強い相手と戦わなくちゃならない訳だな。」

メダ
「普通に考えたら勝ち目ねぇぞ・・・。」

優太
「いや、それは普通に戦ったらの場合だ。」

メダ
「何か策があるって言うのか?」

優太
「単純な作戦だ。
いくら堅くても・・・絶対に耐久値には限界があるもんだ。」

メダ
「つまり?」

優太
「戦力と、アイツらの準備が整ったら・・・
『龍角』を集中攻撃するんだよ。」








第20話「王都防衛戦線。。」






『これ、凄く面白かったです!優太さん!』


放課後、ほとんど二人きり状態の図書室にその声は響いた。


『そ、そうか・・・それは良かったな。』


あれ以来、なんかやたらとラノベにハマってしまったらしく、見る見るうちに図書室にあったラノベを食いつぶしていってしまった。
泉さん、恐ろしい人・・・
図書室にあるような奴は古いもので、正直分からない奴が大半である。
オレも最初に勧めた「半分の月がのぼる空」以外だと、ハルヒとかシャナとかくらいしか知ってるようなのは置いてなかった。
タイトルだけなら知っているが、読んだことのない物ばかりで早々に勧めることはできなくなった。
それでも泉さんはオレに逐一感想なりを話してくれた。
その感想は、たぶんにネタバレを含み、オレはそういうの気にしない人だから良いが・・・
普通の人だったら発狂物のバラしっぷりである。


『い、泉さんってホントに読書が好きなんだな。
まさかこんな速度で棚を制覇する人が居るとは思わなかったよ・・・』

『泉さん?』
『え、だって君の苗字だろ?』
『名前で呼んでくれないんですか?
私は、優太さんって呼んでいるのに・・・』

『え・・・あ、いや・・・
オレは何て呼ばれても構わないけど、い、泉さんはどう呼んだらいいか分からなかったから・・・』

『じゃあ今後は名前で、蓮と呼んでください。
もう私たち、友達じゃないですか。』



友達・・・
何かそんな言葉、久しく聴いてない気がした。
オレは嬉しくて、自然と口元が緩んでしまった。
そんな顔を見せたくなくて、オレは少し俯きながら


『分かったよ・・・蓮。
とりあえず、今後ともよろしくな。』



そう言ってオレは右手を蓮に差し出した。
その時の蓮は何だかとても嬉しそうな顔をしていた。
スグにオレの手を握ると満面の笑顔を浮かべて


『はい!こちらこそ、よろしくお願いしますね。優太さん!』


すると、それに合わさるように二人の繋がれた手が淡く輝き始める。
この光には見覚えがあった・・・
そう、これは・・・あの時と同じ・・・


「これは、私たち『魔法使い』と優太の相性が良いって証なんだよ。
つ・ま・り、相性バツグンってことだね!!
てな訳で、私と契約して・・・私を一人前の『魔術師』にして?」



その時の少女の言葉が、脳裏に蘇る。
つまり・・・この光が出るってことは、蓮は・・・


『「魔法使い」・・・』


その言葉を聞いた途端、蓮はバツが悪そうに顔を伏せたのだった。








シオン
「な、何だあのデタラメな強さは・・・!」

レーヴェ
「アレが『神獣』か・・・とんだ化け物を召喚したもんじゃ。」

シオン
「か、彼らだけで本当に大丈夫でしょうか?」

レーヴェ
「心配なら行っても構わんが・・・?」

シオン
「それは出来かねます!!
レオナ様に王の護衛を頼まれていますので・・・」

レーヴェ
「ならば信じるしかないのう。
レオナが信じた彼らを・・・それに、アルヴィスの御墨付きなら・・・
私とて信じずにはいられんのう。」



そう言うとレーヴェは王城の屋上テラスから東の空を見つめる。
その先で今も戦い続ける者達を思いながら


レーヴェ
「きっと彼らなら、この国を救う。
そう、私は信じておるよ。」









由紀
「妙に細かいわね・・・どこをどうやったらいいの!?」


「こういう時は適当にやっておけば大丈夫だってユウちゃんが言ってたよ!!」

由紀
「いやいや、また変なことして壊しても借金が増えるだけだから勘弁して!!」


「でもさーー・・・多分このボタン押せば上手くいく気がするんだよね~~。」

由紀
「ちょ!!そんな安直な理由でポチるなよ!??」


「え、それフリ?どの道もう押しちゃったけどね!!」

由紀
「このアホーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」



『このアホーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!』


自分の声が外から響くのを由紀は聞き逃さなかった。
一応確認するようにもう一度マイクに向かって声を発してみる。


由紀
「あーーー、あーーーー。マイクテス!」



『あーーー、あーーーー。マイクテス!』


同じような声が木霊のように帰って来るのを確認し、由紀は確信する。
隣に座って居た唯も流石に気付いたのか、目の前のマイクの電源を落としてから手近の入出力端子の列軍に適当に見えつつも正確に端子を繋げていく。
そのコードの先には愛用のギターがある。



「とりあえず・・・準備はできたね。。」

由紀
「まさか本当に適当にやったら上手くいくとは・・・
リアルラックパネェ・・・」


「それほどでもないよ~~~。。
じゃあ、そろそろ始めようか・・・私の、ソロライブ!!!」









優太
「とりあえず、今は時間を稼ぐことしかできないんだよ・・・
全ての条件が揃って初めて何とかなるかもって所なんだ。」

アラド
「じゃあ、適当に龍の気をこっちに向け続けてればいい訳だな?」

優太
「そうなる。適当にチクチク攻撃しながら、機を待つぞ!
由紀と唯が『時計塔』の放送管理室で放送を始めて、尚且つクソジジイと女将達が到着するまでの時間を稼ぐぞ!!」


「メンドイ。
でも、トマト料理のために頑張らないでも無い。。」

メダ
「よし、今度は肩から下を捻じ切るか。」

鳳仙
「それよりオレはどうやって登ったらいいかな?」

優太
「気合いで行け!!」

鳳仙
「おk!!じゃあ、気合いで這い寄るね!!」

優太
「這い上がるの間違いじゃね?」



そう言い合い、五人はそれぞれ散り散りに龍の方へ飛び込む。
優太は頭を目指し、メダは右腕、アラドは左脚、奏は左腕、鳳仙は右脚へ向かう。
とりあえずアラドは『ビルドイーゲル』に乗ると、左脚に突撃していく。
背中に背負ったハルバートを握り、通り抜けると同時に左脚を斬り裂く。
多少喰い込み辛さを感じつつも、一回刃が入ってしまえば意外とスンナリと鱗を吹き飛ばし下の肉を斬り開けた。
斬り裂いた場所から大量の鮮血が溢れだし、湖を朱に染めていく。
しかし、その傷も瞬時に塞がり、何事も無かったかのように龍は背後に駆け抜けたアラド目掛け尻尾を叩きつけてくる。


アラド
「マジかよ!!?」



アラドは『魔力』をブースターに送り、一気に加速する。
が、反応が遅れすぎた。
その巨大な尻尾が眼前に迫る。


アラド
「!!!!」



アラドは流石に直撃を覚悟し、身を固める。
がいつまで経っても衝撃を感じることは無い。
アラドは恐る恐る上を仰ぎ見る。
そこには確かに尻尾が天を覆うように存在している。
しかし尻尾はその場で静止している。
よく見ると尻尾に鎖の様な物が何重にも絡まっている。
その鎖の先には二本小さなナイフが尻尾に食い込んでいる。
さらに鎖の先へ視線を向ける。
そこに居るのは黒いマントに身を包んでいる奏の姿だった。
その背からは蝙蝠の羽を思わせるような翼を生やし、尻尾の動きを止めてくれているようだ。


アラド
「奏ちゃん!!」


「ああ!!?気安く名前で呼ぶなバカ野郎!!
てか早い所そこから退け!!
何時までも・・・持たな・・・!!」



自分の身長よりも何百倍も大きな尻尾を抱えているのだ、流石にいつまでも耐えられる訳も無い。
鎖もギチギチと今にも引き千切れそうな耳障りな音が連続する。
アラドはすぐさまその場から離脱する。
それを確認してから奏は尻尾に打ち込んだナイフを引き抜き、鎖を巻き上げる。
アラドは帰す刀の要領で尻尾へ突撃する。
その手にハルバートをしっかりと握り込み、尻尾の根元を思いきり斬り付ける。


ドガッ!!!


流石に根元の部分はかなり堅く、刃が全くと言っていいほど喰い込まない。



「そのままもう一度斬り込め!!
お前は下から!私は上からいく!!」



その言葉が上空から聞こえる。
アラドはもう一度ハルバートを振りかぶる。
タイミングを計るようにアラドは奏の位置を確認する。



紅乱舞刀(こうらんぶとう)』―――――!!



両手に握られたナイフを紅い輝きが包み込む。
そして瞳の色も同じような紅い色に変色する。
奏はそのまま力を二つのナイフに集約させる。



具現神器・禁じられし災厄の魔剣(モード・レーヴァテイン)』!!!!!



二つのナイフを一つに束ねるように持つ。
するとその紅い輝きが見る見るうちに肥大化し、巨大な炎の剣を形作る。
それを振りかぶりながら、奏は尻尾目掛け力の限り振り下ろした。


ドギャァア!!!!!!!


アラドもそれに合わせるように下からハルバートを振り上げる。
二人の同時攻撃は確かに尻尾に衝撃を上から下から中心目掛けて駆け巡らせる。
次の瞬間、根元から尻尾が切断される。


グギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!


龍は支えを失い、バランスを崩す。
が、左脚を踏ん張り転倒は避ける。
かに見えたが、その左脚に近付いていく人影が見える。
全速力で左脚まで駆け寄り、その人物は拳を振りかぶる。
その拳には朱い色をした闘気が纏わされる。
そのまま全力の一撃を見舞う。


鳳仙
『七式・灼劫』!!!!!!!!」



ゴバーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!


凄まじい爆発が左脚で起きる。
その爆発を受け、左脚が地面から離れる。
完全に龍はバランスを崩す。
それを逃すことなく、上空に居た優太とメダは即座に頭頂部、『龍角』まで登りつめる。
そして、


優太
『煌曝――――(ストナァァァーー・・・)―――――!!!!!

メダ
螺旋(スパイラル・)―――――――――!!!!!



すぐさま優太は腰下に両手を据え、メダも左拳を腰下に据える。
そのまま、二人はタイミングなど計ることなくコンマ一秒のズレも生じさせず、同時に技を放つ。


優太
―――――星烈弾(サァァァンシャァアアイン)』!!!!!!!!!

メダ
―――――砕波(ドライバー)』ーーーーーーー!!!



ドギャギャギャギャ!!ボボボボボボッボボボボボボボボボボッボボボボボボ!!!!!!!!!!!!!!!!


メダの衝撃波が優太の融合爆発を収束させ、一点に攻撃が集中させられる。
二人の攻撃が『龍角』を完全に捉え、態勢を後ろに傾けさせる。
龍は背中から転び、湖に半身を沈める。


ザバーーーーーーーーーーーン!!!!


優太
「よっしゃあ!!」

メダ
「まあ、これくらいじゃあホントに時間稼ぎくらいにしかなってないだろうけどな。」

優太
「そういうことは言うなや・・・でもま、オレ達何だかんだで息合ってきたな。」

メダ
「修行で何度も拳をぶつけ合ってる内に自然とお前の動きを覚えただけだ。」

優太
「そうだな・・・オレもそんな気がする。」



グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!


そんな雄叫びが木霊する。
今までとは比べ物にならないほどの猛々しく、獰猛な雄叫びに、その場に居た全員に戦慄が走る。


ザバァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!


湖から巨大な水柱が上がる。
それは遥か上空まで伸び、その先端から翼を広げ、全身の鱗を逆立たせ、鱗の隙間から赤い体表を覗かせる龍が現れる。
さっきとは違い、明らかな敵意をこちらに向けている。


ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!


雄叫びと共に、さきほど切断した筈の尻尾が生えてくる。
文字通り、切断面からヌルリと生えてきたのだ。
その様は見る者全てを圧倒する。
あまりにも生々しい尻尾の出現に、多少なりとも気持ちが悪くもなりかけたが気にしている暇すらなかった。
龍が、大きく息を吸ったからだ。
誰がどう考えてもやる事は目に見えている。


優太
「お前ら下がれ!!!!!!!!!!!!」



優太はすぐさま全員の前へ滑り込む、その瞬間・・・龍の口から煌々と輝く真っ赤な劫火が放出された。
その規模は想像を絶する物で、優太も一瞬ビビるが『竜牙』を正面に構える。
そして刀身に『魔氣』と水の『魔力』を練り込む。


優太
氷皇剣(ひょうおうけん)』・『反鏡雹壁(はんきょうひょうへき)』!!!!!!!!!!!!!!!!!!



正面方向に巨大な氷の鏡が出現する。
その鏡は龍の劫火を受け、その力を反射する。
筈だが、巨大すぎる力の前に反射が働かない。
どうにか炎を遮り、全員の身を守れている物の、優太自身に強烈な負荷がかかり続ける。
優太は全身に『魔氣』を纏い、そのダメージを防ごうと踏ん張るが、そのダメージは防御の膜を乗り越えて優太の生身に響く。
全身に言葉にすることもできないくらいの熱さが一気に駆け巡る。
優太は文字通り、言葉にできない悲鳴を上げる。
その慟哭にも近い叫びが夜明け前の空に響き、


ドドドン!!!!!


大砲の音が連続で起こったか。
龍の横っ面に何かが突き刺さり、爆発した。
その反動で龍の顔が逸れ、ブレスの方向がズレる。
優太はその場に倒れ込み、身を縮こませながら全身を痙攣させる。
全身を酷く焼かれたような感覚が連続し、口からは苦痛の叫びが漏れる。


優太
がああああああああああああああああ!!!!!!!!!!

鳳仙
「ダンナ!!!!!!」

メダ
「バカ野郎!!!なに無茶してんだ!
お前が居ないんじゃあ何にもならねぇだろうが!!!!」

アラド
「おい、やべぇぞ!!全身火傷だらけだ!!
しかもかなり酷ぇよ・・・!
このままじゃあ現代の志○雄さんになるぞ!!!」



その場で全員がどうするべきか慌てふためく、そんな時・・・
ポツポツと何かが頬をうった。
それが雨粒だとその場の全員がすぐに気付く。
しかしおかしい・・・
空には大きな黒い影が浮遊しているのみで、雨を降らせるような雲は存在しない。
心なしか、空に浮かぶ大きな黒い影のような物から落ちてきている様な気もする。
その大きな影の正体は、大きな飛行船だった。
龍と並ぶと大したことも無いように見えるが、かなり巨大な飛行船であることは分かる。
下から見ても分かるくらい船体全体に武器がしこたま配置されている。
さっきの砲撃もアレから行われた物だろう。
飛行船からは機銃による攻撃もされており、龍の気を完全に引きつけてくれていた。
そして、何故かその飛行船から何かが落ちて来る。
その何かは背中に簡易的なスラスターユニットらしき物を背負い、それの推進力でもって地表目指して降下してくる。
優太達の側に降り立つと、その影は足早に近付いてくる。
それは


鳳仙
「蓮!??」


「皆さん大丈夫ですか!?
すいません、思ったよりも来るのが遅れました!!
優太さんは!?」

メダ
「さっき、ヴァルヴェルドのブレス攻撃からオレ達を庇って全身酷い火傷なんだ!
診てやってくれ!!」


「艦橋から詳細は見てました!
気休め程度に軽く雨とか降らせてみましたが・・・あんまり効果は期待できませんね!
診せて下さい!!直接治療します!!!」

鳳仙
「蓮、ダンナ大丈夫だよね!!?
死んだりしないよね!!?」


「優太さんがこれくらいで死ぬと思いますか!?
それより、皆さんはヴァルヴェルドの気をここから逸らしてください!!
治癒に専念したいので!!!」

メダ
「分かった!!優太を頼む!!
行くぞアラド!」

アラド
「おう!」


「ホーセン、私達も行くぞ・・・
ここに居ても何もできない。」

鳳仙
「わ、分かってるよ!!蓮、頼む!!!」


「言われなくても!!!」



蓮は両手を優太のお腹にあてがい、全身に『魔力』を流し続ける。
少しづつだが火傷の跡が引いていく。
だが、優太の意識は未だに戻る気配が無い。



「どうしてこんなに無茶ばっかりするんですか・・・」



蓮は不満を投げかける。
が、返事は無い。
体から未だに引くことの無い熱が、蓮の手にも伝わってくる。
とても人間の体から発せられるような温度では無かった。



「何で、何で私やみんなに心配ばっかりかけるんですか・・・!!
起きてください、優太さん!!!!!!!」



蓮は治癒を続ける。
全身の火傷跡は既に消えた。
が、体を蝕み、焼き続ける熱だけが何時まで経っても引くことは無かった。








女将
「えらく頑丈だねあの『龍角』ってのは・・・
徹甲弾が貫通しないよ・・・」

すみれ
「弾頭が突き刺さると同時にひしゃげているみたいです。
これでは本来の威力を全く発揮できませんよ普通に考えて。」

女将
「効かないって言うなら援護射撃に徹するとしようか。
弾種、榴弾。かすみスグにそう伝えな。」

かすみ
「え、えっと・・・はい!
聞こえますか!?徹甲弾から榴弾に変更だそうです!!」

すみれ
「ゼオラさん、千草さん!
相手の注意を引きすぎるのも考え物なのでそこら辺は個々人で適当に加減はしてくださいね!!」



『巴・・・!聞こえるか!?』


女将
「うん?その声・・・アルかい?」



『うむ、ちょいとお前さんの船を踏み台にして龍まで飛ぶぞい。
揺れには注意しておいとくれるかのう。』



女将
「なに言ってんだい・・・
人一人がどれだけ勢いよく飛び乗って来ようがビクともしないよ・・・」



『そうか。なら、安心じゃのう。』


と、次の瞬間船が激しく縦に揺れる。
女将達はあまりにも唐突な振動に態勢を保てなくなる。
一体全体何がどうなったと言うのか。


女将
「何だい今の揺れは!??」



『だから言ったじゃろう・・・。』


かすみ
「べ!!??」

すみれ
「どうしたの!かすみ!」

かすみ
「あ、アルヴィスさんが持ってる剣が、剣が・・・!!」

女将
「ん?剣がどうしたって言うんだい?
ってまさかアイツ・・・アレを持ってきたのかい?」



女将は正面に映し出されたメインモニターを見て自分の予測が当たったことを確認する。
そこにはアルヴィスが映っている訳なのだが・・・
その右手に握られた得物が異常なまでの存在感あらわにしていた。
それは何時も使っている日本刀では無く、いや・・・正確にはこれも日本刀なのだが・・・
サイズがどう考えてもおかしかった。
アルヴィスを1としたら確実に100はあろうかと言うくらいに巨大な日本刀をその手に携えているのだ。
あんな物を人間が持てる訳も無いし、握れるはずがない。
そう思えるほどに巨大な日本刀を振りかぶり、アルヴィスはヴァルヴェルドの喉元に刃を振り下ろした。


ズギャアアアアアアアアアア!!!!!!!


その巨大な刃が龍の首に喰い込む、しかし浅かったのか右手によって刃を掴まれるとそのまま抜き去られ投げ飛ばされる。
アルヴィスは平然と態勢を空中で整え、空中を蹴り、再度ヴァルヴェルドに飛びかかっていく。


女将
「いや!!そんな物持って乗っかられたら普通揺れるだろ!!!!!」



『胸がか!!?』


女将
「セクハラで訴えるぞクソジジイ・・・」



『すまん!!!出来心じゃ!!』


女将
「ちっ・・・!適当にアイツを援護してやりな。」

すみれ
「わかりました!!」









アラド
「何だあのアルヴィスさんの得物・・・!
デカすぎじゃないか!??」

メダ
「百八式、星切・・・」

アラド
「ひゃくはちしき、ほしきり?」

メダ
「聞いたことがある・・・
全盛時代のアルヴィスさんはあの『百八式・星切』で隣国の侵攻を一人で食い止めたらしい・・・
その時に付いた二つ名が『白銀の剣聖』だったらしい。」

アラド
「いや、それにしたってデカすぎじゃないか・・・?
あんなの何であんな風に平然と振るえるんだ?」

メダ
「アレが・・・大陸三強の実力なんだろ・・・」

アラド
「三強・・・あんなのがこの大陸にまだ二人も居るのか・・・」

メダ
「味方だというのを喜ぼう。
あれが敵とか考えてくも無いし・・・」

アラド
「それもそうだ・・・
それより、もうそろそろ予定だと・・・」



ザザッ!!


『このアホーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!』


メダ
「おっ・・・準備できたみたいだぞ。」

アラド
「しかし歌で力が出るって言うのはどういうことなんだ?」

メダ
「知るか・・・そういう魔術か何かじゃないのか?」



『えーーー、どうも!!放課後ティ・・・』


ゴン!!!


『変な小ネタ挟むな!!』
『あ、あうう~~~ごめんなさい・・・
て、鉄板かと思って・・・』

『そう言う空気だけ読むの止めろ!!良いからとりあえず歌え!!
こっから反撃開始なんだから!!!』

『え、えと・・・それじゃあ聴いてください!!
「17歳の地図」!!!』



メダアラド
「「何で尾崎豊なんだよ!!!!!
もっとガールズポップ的な選曲しろよ!!!普通にさ!!!」」









第21話「黒龍の問い。。」






アレから・・・
何がどうしてどう転んだのかオレには到底理解の及ばない出来事が起こった。
その出来事は、オレの生活を著しく変えてしまった。
その変化に、オレはついて行けず・・・
今まさにどうにかなってしまいそうだった。


『優太さん、ご飯のおかわりいりませんか?』


オレは目の前の光景に現実味を感じない。
アレから・・・何故か蓮とも同居することになった・・・


『え・・・あーーー、じゃあ貰おうかな~~・・・』


そう曖昧に返しながら茶碗を蓮に手渡す。
そして今更ながらどうしてこうなってしまったのかオレは考え始めた。
事の発端はつい先日・・・図書室で蓮が由紀と同じ『魔法使い』だということが発覚した時・・・
蓮とあれやこれやと話すうちに、何か『契約』を交わしていたらしく、、、
気づけば家に押しかけて来た感じである。


『あれ・・・途中までは理解できてたんだけどな・・・
途中から訳の分からない濁し方された感じが・・・』

『そういう時ってあまり追求されたくない時だと思うんですよねーーー。』



そう言いながら蓮はお椀をオレの目の前に置いた。
言ってもいないのに盛られたご飯の量は適量だった。


『そうは言っても、何か色々納得できないというか・・・』
『優太・・・そういうのって聞くだけ野暮だと思うよ?
何となく蓮ちゃんも寂しかったんだよ一人でさ・・・』

『そうなんです・・・夜な夜な一人寂しく枕を濡らしていました・・・』
『いやいや・・・そんなキャラでしたっけ!?
むしろ一人でも平気で本とか読んでるタイプだと思ってました!!』

『そうですね。』
『そうですねって何?!
やっぱり一人で平気ってことなの!!?』

『あ、それよりデザートにゼリーとか作ってみたんですけど食べますよね?』
『え!?ホント?うわーーー、楽しみだなーー!』
『うわーーーお、何か煙に巻かれるパターンですねコレ・・・』



そのまま何でもない会話が続き、夕食の時間は過ぎていった。
由紀は話し相手が出来て嬉しそうに見えた。
蓮もこうして同い年の友達と話してる所を見ると、普通の女の子のように感じた。
そんな二人を見てると、オレもあまり深く考えるのもバカらしくなってしまう。
そうやって色々納得できないことを洗いざらい虚空に投げ出してから、今日も夜の帳は落ちていった。
四月も終わりに近づいた春の夜の出来事だった。







優太
「ん・・・・?」



優太はふと目覚める。
しかしそこは今まで居た場所とは全く違う場所だった。
風景と呼べるものは無く、見えるのはどこまでも続く真っ白な大地だけだった。
気持ちが悪いほどその白には不純な物が混じっておらず、完全に純白に塗りつぶされている。


『起きたか・・・』


優太
「???」



何も無い空間から声が聞えたかと思うと、そこの空間が揺らぎそこから一つの影が現れる。
その影は優太の方に向き直ると、


『問おう、お前が我のマスターか―――――――?』


優太
「そこはテメェ、あやねえボイスでやれよ!!!
中途半端なパロネタならやるんじゃねぇ!!!
何のための妄想空間だよ!!!」



『いや、妄想空間ちゃうねん。精神空間や・・・』


優太
「何で急に関西弁?」



『特に意味は無い・・・
それより、お前はこんな所で何をしている?』



優太
「そうだ!!オレは何でこんな所に居るんだ!?
てかここはどこだっつー話な訳だが・・・!」



『何処だと?ここはお前の精神世界だろう。』


優太
「はぁ!??オレの、心の中だってのか??
この、何にもないまっさらな空間が?」



『今は、そんなことはどうでもいい・・・
せっかくだ、一つ聞いておきたいことがあった。』



優太
「ええっ!!?いいの!!?
てか、聞きたいことって?」



『お前が我の力を使うに相応しいのか・・・
今一度問いたい。』



優太
「はぁ?」



『我がお前を認めなければ、お前の体はヴァルの劫火で焼き尽くされることだろう。』


優太
「なん、だと?」



『問おう・・・お前は、一体何のために戦う?』








戦場に響く尾崎の歌が若干空気を壊しかけている気もしたが、今正に戦力はそろいつつあった。
アルヴィスは一度地に足をつく。
するとそこへメダとアラドが駆けつける。


メダ
「アルヴィスさん!!」

アルヴィス
「すまんのう。
ちょいとコイツの解凍に手間取った。
優太はどうした?」

アラド
「オレ達を庇って・・・今は向こうで治療を受けてます。」

アルヴィス
「そうか・・・では、奴抜きでこの場はどうにかせねばならんのう。」

メダ
「はい!アイツにばかり良い恰好はさせません!!」

アルヴィス
「その意気じゃ・・・巴、聞こえるか?」



『ああ・・・聞こえてるよセクハラじじい。』


アルヴィス
「じゃからさっきのはちょっとしたジョークじゃと言うとろうが!!
確かにまだ若い者には負けはせんが・・・」



『そんなことどうでもいいよ・・・で、何なんだい?』


アルヴィス
「作戦を最終段階に移行する。
『龍角』に対して一斉攻撃をかけ、コレを叩き折る。
そちらも火力を頭部に集中させろ。」



『了解したよ。』
『あ、ちょっといいッスかね?』


アルヴィス
「む?」



『千草です。
私が『魔眼』で『龍角』の弱い部分を狙って傷をつけるから、
そこへ火力を集中させるのが得策だと思いますよーー。。』



アルヴィス
「優太の所の弓使いか・・・『魔眼』と言うのの精度は?」



『銀河の果てまで狙い撃てますが?』


アルヴィス
「団長に似て、無茶苦茶言う奴じゃのう・・・
じゃが、不思議と賭けて見たくなる。
やってくれるか?」



『かしこまりーー!んじゃ、早速・・・』








千草は通信を切ると甲板から目標に視線を向ける。
そして瞳を閉じ、


千草
『開眼』!!」



一気に瞼を開く。
エメラルドを思わせるような深い緑色をした二つの眼が龍の頭頂部、『龍角』に視線を向ける。
そして矢を弦にかけ、キリキリと引き絞り、狙いを定める。


千草
天崩・嵐風突貫(てんほう・らんぶうとっかん)』!!!!!!!!



周囲から大量の風を巻き込み、矢の周りを激しく回転し、渦を巻きながら飛んで行く。
それはさながら小さな台風のように、徐々に徐々に勢力を増しながら風の力を増し、『龍角』目掛け突き進む。


ガッ!!!!!!!!!!


先端部が『龍角』に激突する。
強烈な風の暴風が『龍角』を抉るようにしながら傷をつける。
が、それだけだった。
微かに傷がついたかと思うと、矢自体が真ん中から折れ、風が霧散してしまう。


千草
「あーーー・・・やっぱ私の『天崩』くらいじゃあこれが限界か・・・
あとは頼んだよーーーみんな。。」








『あとは頼んだよーーーみんな。。』


そんな間の抜けた台詞を最後に千草からの通信は切れる。
アルヴィスは遥か上空を仰ぎ見ると、身を屈め、足に『魔力』を込める。


アルヴィス
「行くぞメダ、アラド!!」

メダアラド
「「はい!!!」」



『魔力』を開放し、アルヴィスは空に向かい飛ぶ。
空間を蹴りながら、そのまま上昇を続ける。
メダは背中の翼を使いそれに続き、アラドもボードに『魔力』を送り込みながら続いた。







鳳仙
「奏!千草の奴が印を付けたみたいだぞ!!
私達も行こう!!」


「いや、私はココからやる。」

鳳仙
「え、どうやって!?」


紅乱舞刀(こうらんぶとう)』、『具現神器(モード)運命を超越せし主神の槍(グングニル)。」



奏の両手に握られたナイフが紅いオーラで一つに繋がり、巨大な槍を形成する。
槍の先端は鋭く尖り、その下から柄と繋がる部分まで炎を思わせるようなオーラが揺らめいている。
その槍を振りかぶると、空に鎮座するヴァルヴェルドの頭頂部目掛け放り投げる。


ゴッ!!!


瞬間、適当に放った割には目標目掛け真っ直ぐに突き進んでいく。
腕の隙間をすり抜け、気付いた時には『龍角』を捉え、深々と角に傷をつけると大きく弧を描くようにして手元まで帰ってくる。
それをしっかと掴むとオーラを解く。
するとナイフからオーラが霧散し、通常のナイフに戻る。



「こんな感じで・・・。」

鳳仙
「す、スゲェな奏・・・それ、もしかして・・・
ダンナが使ってた『魔氣』ってのと同じなんじゃ・・・」


「ん?そういう名前なのか?
確かに、『魔力』と『氣力』を混ぜ合わせたエネルギーを込めていたが・・・」

鳳仙
「そ、そんなのどこで覚えたんだよ?」


「生きるか死ぬかの瀬戸際に居たからかな・・・」

鳳仙
「生きるために独学で?」


「まあ、そうなる。
詳しいことは・・・まあ、勘弁して欲しいな。
あんまり思い出したくないし。」

鳳仙
「ああ・・・詳しくは聞かないよ。
と、とりあえずオレはここからじゃ戦えない・・・行ってくるよ!」


「・・・・・やっぱり私も行こうかな。」

鳳仙
「え?」


「『運命を超越せし主神の槍』は絶対必中の技だけど・・・
その分具現化させるのに必要以上に多くの『魔力』、『氣力』を使う・・・
それなら『禁じられし災厄の魔剣』や、他の『具現神器』を使って接近戦をした方が『魔力』、『氣力』効率は良い。」

鳳仙
「難しいことは分かんないけど・・・一緒に行こうって話だよな?」


「そうだよ・・・。とっとと行くぞ。
どうせホーセン飛べないんだし、途中まで連れてってやる。」

鳳仙
「マジで!?恩に着る!!」


「し、仕方なく一緒に行くんだからな!!
べ、別に他意とかは無いぞ!!」

鳳仙
「???何のこと???」


「何でもねぇよ!!行くぞ!!」









女将
「さて、そろそろ私達も本腰を入れようかね。
すみれ、例のアレ・・・温まってるかい?」

すみれ
「はい。計算上は問題無さそうですけど・・・本当に使うんですか?
機能テストもほとんどしてない兵器をぶっつけ本番で使うのは・・・」

女将
「大丈夫さ・・・私の見立てが正しければ、必ず成功する。そんな気がする。」

かすみ
「うわぁ・・・当てにならねぇーーー・・・。」

女将
「かすみ今月減給な。」

かすみ
「すみません!!嘘から出たまことって言う奴で・・・!!」

すみれ
「かすみ・・・それ本音ですって意味よ?」

かすみ
「マジで!?」

女将
「ま、そんなことは置いとくとして・・・
すみれ、『多連装徹甲墳進弾』撃ち方用意。」

すみれ
「母さん・・・やっぱりこれはもう少し試験してからの方が・・・!」

女将
「むしろここで撃てなきゃ意味なんて無いんだよ。
この一発で戦況を有利に傾けられるかもしれないんだよ?
腹括りなすみれ、撃ち方用意。」

すみれ
「・・・・・!
『多連装徹甲粉進弾』!!!撃ち方、用意!!
かすみ!!姿勢制御を怠るんじゃないわよ!!
反動で船が引っくり返る可能性だってあるんだからね!!」

かすみ
「うん、任せて!!」

女将
「全乗組員に告ぐ・・・対ショック態勢を取りな!!!
多連装徹甲墳進弾(たれんそうてっこうふんじんだん)!!!
撃ち方、始め!!!!!」







飛行船の前面部分が大きく開く。
その中から、三門の連結された砲台が姿を現す。
船体が回頭し、『龍角』に向きを合わせる。
そして次の瞬間、


ボフン!!!!!!!!!!!!


三門の砲身から一斉に黒い黒煙を噴出しながら、超音速の砲弾が爆発的な推進力を持って『龍角』に射出される。
その推進力の反動なのか、船体は凄まじい勢いで弾かれる様に後方へと後ずさる。
凄まじい速度で船体が動いたので、内部では乗組員が酷いことになっていることだろう。


ゴッ!!!!!!!!


射出された砲弾の一つが『龍角』に接触する。
それ以外の砲弾は顔をかすめる程度で外れたようだ。
直撃した一発の砲弾は激しい横回転が加わっているからか、『龍角』に喰い込み少しづつ表面を削っていく。
が、


メギョ!!!!


数cm喰い込んだ辺りで弾頭はひしゃげ、それにつられる様にして砲弾は失速し、その攻撃が止まる。
しかし、この攻撃により龍の態勢がやや後ろに傾く。
その好機を艦橋に居た女将は見逃さなかった。








『今だよ!!!誰でもいいからこの流れを繋いで相手に何もさせず、一気に叩き折るんだよ!!!!!』


そんな通信を聞いたアラドは手に握ったハルバートを強く握り込む。
そして


アラド
「オレが行く!!!
メダやアルヴィスさんは純粋に折る可能性がある!
ここはオレが行って、ダメージを蓄積させる!!!」



それだけ言うと『ビルドイーゲル』に『魔力』を最大限に込める。
スラスターから今までとは比べ物にならない量の推進力が生まれ、一気に音速を超え、超音速にその速度は達する。
アラド自身、この速度には慣れていた。
元からスピードを出すことに抵抗は無い。
亜音速すら生身で体験済みなため、これくらいじゃあ物足りないくらいだ。
体中に張り巡らせた『鋼猿』が全ての衝撃を受け流してくれるため、どんな速度で飛ぼうが体へのダメージはほぼ無い。
強いて言うなら、寒さをある程度のレベルで感じてしまうのが玉に傷である。
アラドはハルバートの柄に両手を掛け、『龍角』目掛けて振り抜いた。


ボキっ!!!!!!


そんな音が聞こえた時、手からハルバートが吹き飛ぶ。
アラドは視線を自分の右手に向ける。
そこには不自然な方向に曲がった腕だけが存在した。


アラド
ぐあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!



ただ闇雲に攻撃しただけではダメージなど通る訳が無かった。
超音速による攻撃の衝撃が、自身の『鋼猿』の防御能力を超えてしまったのかもしれない。
改めて自分自身の力の無さを痛感してしまう。
それが骨折の痛みと相まって、ボードを安定させることもままならなくなる。


アラド
「ちくしょう・・・何の役にも立てねぇのかよ・・・」



完全に推進力を失ったボードが一気に下を向く。
そしてそのまま、湖へ向けて真っ逆さまに落ちていった。





ボチャン!!!


そんな音を聴きながらもメダは止まることはできない。
アラドのためにも、このチャンスを逃す訳にはいかない。


メダ
「アラド・・・!!後で絶対助ける・・・!」

鳳仙
「メダ!!!」

メダ
「鳳仙!?と・・・奏、だっけ?」


「だから名前で呼ぶな!!
とりあえず私とホーセンで気を引くから、お前とアルヴィスで一気に畳み掛けろ!!!」

メダ
「大丈夫なのか!?
アイツ、さっきなんかよりも凶暴性が増してるぞ!!」

鳳仙
「ダンナが目覚めるまでの時間稼ぎさ!!
オレは、オレに出来ることをするんだ!!!」



そう言うと鳳仙は奏の手を離し、その身を宙に投げ出す。


鳳仙
「行くぞオラアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!『五式・爆星』!!!!」



自分の足に『魔力』を集中させ、それを一気に解き放つことで爆発を起こし、推進力を得る。
鳳仙はそのままの勢いを乗せ、龍の左腕に向かって拳を振るう。


鳳仙
四式・獄炎(よんしき・ごくえん)』!!!!!!!!!!!!!



鳳仙の拳が巨大な炎に包まれる。
その拳を龍の左腕に叩きつける。
すると、龍の鱗ごとその腕を瞬時に焼く。
その炎は見る見るうちに左腕を覆いつくしていく。


鳳仙
「どうだ、これが地獄の業火だぜ・・・」







鳳仙が下りてから身軽になった奏は右腕に向かっていた。
どうやら鳳仙は左腕を焼いているようで、それを消そうと龍はブンブンと逆に暴れだしている。



「何か逆に状況悪化させてる気もしないでも無い・・・。
しょうがないな、こっちはこっちでちゃんと仕事してプラマイゼロにするか。」



奏は両手に握ったナイフに『魔氣』を纏わせる。
紅い色に染まった両のナイフに形を与えるように奏は呟く。



紅乱舞刀(こうらんぶとう)』、『具現神器(モード)断罪与えし神罰宝剣(ダーインスレイブ)。」



紅いオーラが燃えるようにナイフを包み込む。
奏は左手に持った少し短い方のナイフを龍の右腕の上腕部分に投げ込む。
すると、それにつられる様にナイフの柄尻に付けられた鎖が伸びていく。
この鎖は『魔力』を込めることでどこまでも伸ばすことが出来る。
ナイフが龍の右上腕部に突き刺さる。
思ったよりは龍の体はどの部位も堅い。
その分込める『魔氣』の力も上乗せしなくてはならない。
この攻撃一つとってもあまり無駄には出来ない。
奏は龍の右腕を下から上へ何度も回転しながら鎖を巻きつけていく。



「ふん!」



鎖を引き、締め付ける。
拘束。はついでだ。
どうせ体格、体重差がありすぎるのだからそんな長い間拘束などできる訳も無い。
奏の目的は別にある。



「どうせ再生するんだし、一本くらい持ってても問題無いよな。」



奏は鎖で締め上げている部分の調度下辺りに思いきりナイフの刃を振り抜く。


ズバーーーーーーーーーッ!!!!!!!


龍の右腕が関節より少し上の辺りで切断される。
その巨大な腕が無造作にボトリと地表に打ち付けられる。


グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!


けたたましい雄叫びと共に右腕を思いきり振り乱す。
奏はナイフを抜き去り、鎖を短くしつつその場を離れる。
その直後に、今まで何とも無かった切断面からおびただしい量の鮮血が噴き出す。
耐性の無い人が見たら卒倒しかねない様なショッキングすぎる絵面だ。



「折角血止め代わりに鎖で抑えつけといてやったのに・・・
人の好意を無為にしてるとホントに死んじまうぞーー大トカゲ。」



そんなことをぼやきながら奏は切断面から吹き出す血を眺めながらナイフに付着した血糊を舌で舐めとる。
見ようによっては官能的にも見えなくもない。
しかし、



「うえ・・・まっず!!!ぺっぺっ!!」



味がお気に召さなかったのか奏はすぐさま吐き出す。
口直しのつもりなのか、ポケットから何故かトマトを取り出し一口かじる。
奏はさっきとは打って変わり、満面の笑みを浮かべた。








メダは、『龍角』目指しただひたすらに空を駆ける。
途中、何度も炎弾を吐かれたが放射するタイプと違い軌道は読みやすく、回避は容易だった。
左拳を握り込み、『螺旋力』を集中させる。
しかし、何度か『螺旋力』を纏わせた一撃を見舞っているが一度として有効打になった試しが無い。
そのためメダ自身、何かもう一つ上の攻撃をするべきだと思ってはいた。
この一発が最後のチャンスのような気がしてならない。
優太は満身創痍、他の面々も流石にこれ以上戦えるかは怪しい。
この人数で常に全力で当たっても押されるのだ。
一人でも欠けた時点で勝ち目は無いのかもしれない。
それでも、諦める訳にはいかなかった。


メダ
「ネロ・・・。」



一人の少女の名を口にする。
それだけで心が落ち着き、力が湧いてくる気がした。
その少女との約束、絶対に生きて帰る。
それを守るためにも、


メダ
「負けられない・・・負けられないんだ・・・!!」



ブォン!!


何処からともなく、耳に空気を震わせるような音が聞こえてくる。
それが自分の胸にぶら下げられた首飾りから発せられていることに気付く。
メダはその首飾り、取っ手の付いたキャップにはめられたドリルを手に取る。
心なしか、ぼんやりと光っているようにも見える。


メダ
「お前、力を貸してくれるのか?」



その言葉を合図にしてか、光が急速に広がっていく。
光はメダの左腕に巻きつくように絡みついてくる。
その光が消えた時、メダの左腕には一対のドリルが形成されていた。
所々が煤け、ボロボロに欠けた、どことなく懐かしい気がするドリルだ。


メダ
「これ・・・スコールさん、いや・・・親父のドリルか?」



メダは改めて『龍角』を見つめる。
そして、背中の金属翼に『魔力』を送り込み、一気に加速する。


メダ
「一緒に行くぞ!!
親父、スコールさん・・・ネロ!!!!!」



その言葉を発することにより、ドリルに意志が伝わったのかドリルが回転を始める。
ドリルの回転は、メダのスピードが上がれば上がるほど、早く、そして強く、大気を捻じ切りながらその回転を増していく。


メダ
必殺!!!『ギガ――――、ドリル―――――――――・・・!!!!!



瞬間、メダは音の壁を突破する。
その速度を乗せた一撃が、『龍角』を捉える。


メダ
―――――――ブレイク』ーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!



ギャギャギャガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


ドリルの切っ先が『龍角』を抉る。
今まで傷を付けるだけでやっとだった『龍角』に明確な穴を開けた。
しかしその穴は限りなく小さく、とてもダメージを与えたと言えるような傷では無かった。
メダは左腕にありったけの『螺旋力』を練り込む。
燃料を投下されたドリルはさらに巨大化し、回転を増し続ける。


メダ
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!



ドリルがさらに奥へ奥へと進行を開始する。
いける!!そう思った矢先、


ブン!!!!!!!!!!


龍はその頭を振り下ろす。
ようはメダを振り払ったのだ。
ドリルの切っ先が抜け落ち、メダは地面に向け吹き飛ばされる。
そんなメダの視界の端に、何か巨大な物が接近してくるのが見えた。


ドガッ!!!!


それは尻尾の先端部分だった。
急な攻撃に反応が一瞬遅れ、メダはモロにその一撃を喰らう。
そのまま飛ばされた勢いで地面に叩きつけられた。








アルヴィス
「メダ!!」



後方から気を窺がっていたアルヴィスはメダの吹き飛ばされた方向を目で追う。
メダはピクリとも動くことが無かった。
ここからでは無事なのかどうなのかもわからない。


アルヴィス
「不覚じゃった・・・!
もう少し気を張っていればさっきの一撃を、間に入って止められたものを・・・!!」



アルヴィスは『星切』を改めて強く握り直す。
そして全身から今まで以上に凄まじいオーラを発する。


アルヴィス
魔氣・龍帝(イクシード・ドラグオン)』・・・!
もう容赦はせん!
我が必殺の一太刀で、キサマを異界に吹き飛ばしてくれる!!!!!!」



アルヴィスの姿が忽然と消える。
しかし次の瞬間、その姿を龍の眼前に現す。
どうやら目にも止まらぬ速度で空中を移動したらしい。
アルヴィスは龍へ向け、『星切』を振りかぶる。
アルヴィスの背後に薄ぼんやりとだが、巨大な白い龍の影がチラついた気がした。


アルヴィス
天覇(てんぱ)―――――――――!!!!!



アルヴィスは『星切』を『龍角』へ振り切る。
その軌跡を追うように、背後にチラついた白い龍が両の手についた鉤爪を振るったような気がした。


アルヴィス
――――――白龍爪(はくりゅうそう)』!!!!!!!!!!!!!!!



ズガガガガガガキン!!!!!!!!!!!!!


瞬間、『龍角』へ六つの巨大な斬撃が叩き込まれる。
一振りの筈なのだが、『龍角』に六連斬が発生しその角をさらに深く、深く切り刻む。
メダが開けた小さな穴を起点にして、『龍角』の外周を亀裂が走る。


アルヴィス
「もう一太刀・・・!」



アルヴィスは再度『星切』を振りかぶる。
が、しかし


アルヴィス
ガフッ!!



アルヴィスが咳き込んだかと思うと、何故かその口元から大量の血が噴き出す。
その所為か、一瞬だが完全に動きを空中で止めてしまう。
その隙を、龍は見逃すことは無かった。


ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!


頭を思いきり振るう。
メダの時と違い、『龍角』をアルヴィス自身に叩きつけた。
意識が飛ぶかと思えるほどの衝撃が全身を駆け抜ける。
そのままアルヴィスまでも地面目掛け吹き飛ばされる。


グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!


雄叫びを上げながら、龍は両手付近をさっきから飛び交う二つの影を弾き飛ばす。
それはあまりにもあっけなく、二つの影はあっさりと薙ぎ払われてしまう。
返す刀で空へ目を向けた龍は、そこに浮かぶ船へ口を開くと


ゴバッ!!!


巨大な炎弾を数発飛ばす。
船は辛うじて何発かを避わすものの、数発は船体に直撃を受けた。
どうやら機関部をやられたらしく、船は明らかに失速し続け落下を始めた。


グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


そんな雄叫びが天を震わせ、大地にその存在を轟かせる。
既に、夜明けまで残り数分・・・
東の空には夜明けの瑠璃色がチラついていた。








優太
「何のために戦うか?」



『そうだ・・・お前は何故戦うのだ?』


優太
「考えたこと無いな。」



『なら、戦う必要は無いのではないか?』


優太
「まあ、必要無い時に戦うのは嫌だな。
けどよ、今は別だろ・・・」



『・・・。』


優太
「今は家族と、仲間が暮らしてる王都がピンチなんだよ・・・
見て見ぬフリはできねぇ。」



『お前が戦う必要が無いのではないかと言う話をしているのだが?』


優太
「ああ、オレもそう思いたいね。
でも違うんだよ・・・『約束』したから・・・。」



『約束?』


優太
「そうだよ・・・。
『盛夏祭』が終わったら、みんなで打ち上げするんだ!
その時に蓮のケーキをみんなで食おうって約束だ・・・」



『そんなことのために、お前は命を懸けられるのか?』


優太
「できれば懸けたくは無いけど・・・オレが必要だと思ったからやるんだ!
細かいことはなぁ・・・終わってから考えればいいんだ!!!」



『・・・・・お前は、時代が変わっても・・・世界が変わっても、
時間軸自体が変わっても考え方を変えないのだな・・・』



優太
「は?何の話だよ・・・」



『良いだろう。今はそれで納得しよう。我の力、存分に使うことを許可する・・・』


優太
「いや、てかそもそもお前は誰なんだよ?」



『我はお前の中に存在する力の一部にすぎん・・・
我が名は「黒炎龍」・・・破壊の王にして、人からは忌み嫌われし存在だ。』










「!!?」



蓮は優太に当てていた手を引っ込める。
何故かは不明だが、優太の体を何か得体の知れない力が駆け巡っている。
その力は優太の体から漏れ出てくる。
どこまでも黒く、底の見えない純粋な黒一色のオーラ・・・



「こ、これは?優太、さん・・・?」

優太
「ん・・・」


「優太さん!??」



蓮は優太の顔を覗き込む。
微かだが瞼を開け、蓮の顔を見つめてくる。
その口元が弱弱しく動く。


優太
「どした・・・蓮、そんな心配そうな顔して・・・
へへっ、死んだかと思ったか?」


「じょ、冗談はやめてください!!!
だ、大丈夫なんですか?体の熱は・・・」



蓮は優太の体に触れる。
しかしさっきまで優太の体を蝕んでいた熱は完全に消え去っていた。
そっと手を離すと、蓮はあらためて優太に向き直り、



「優太さんはバカなんですか!?どれだけ人が心配したか・・・!!」



その顔は今にも泣きだしそうで、自分のことを本当に心配してくれていたことが痛いくらいに伝わってくる。
優太は優しく微笑むと、その頭に手を伸ばしゆっくりと撫でる。


優太
「ごめん。オレが悪かったよ・・・
ありがとうな蓮、助かったよ。」


「そ、そうやって素直に謝られたら何も言えないじゃないですか・・・」

優太
「それより、状況は?オレ、どれくらい寝てた・・・」


「状況は・・・最悪です。」



蓮は湖上空に浮かぶ巨龍に視線を向ける。
それを優太も見やると、感覚的に状況を認識する。
どうしてか分からないが、この場に流れる空気で全てが理解できた。
見えるはずのない龍の頭頂部にそびえる『龍角』にヒビが入っていることすらも、肌が感じ取った。


優太
「どうやら・・・もうあと一押しって所らしいな・・・」


「そ、それは分かりませんけど・・・」

優太
「じゃ、オレが行くしかねぇな・・・
見た感じ、誰も動けそうに無さそうだろこの状況・・・」


「そんな!!無茶です!!
優太さんの体は当の昔に限界を超えています!!
『魔氣』とか言いましたか!?あれを使ったことで体に必要以上に負担がかかっているんです!!
これ以上の戦闘は、本当に死にに行くような物で・・・!!」

優太
「でも、誰かがやらないとならない訳だろ?」


「で、でも・・・!!」

優太
「大丈夫、オレを誰だと思ってるんだよ・・・」



そう言うと優太は近くに転がった『竜牙』を拾い上げ、龍に視線を向ける。
そして


優太
「さあて・・・これが本当に最後だぜトカゲ野郎・・・決着をつけるとしようぜ!!」



優太の体を黒いオーラが覆い尽くす。
それと同時に、優太の中で何かが壊れるような音がした。
その音は、誰かに聞こえるような物では無い。
限界を超えた体が警告として鳴らしたにすぎない。
その音を聞き取ったのは紛れも無く優太本人だ。
しかし優太は迷うことは無かった。
心に誓った約束を胸に、力の限り地面を蹴る。
その背から黒の噴出翼が展開されると、龍目掛け一直線に突っ込んでいくのだった。



「ダメ・・・ダメ、ダメです!!
戻ってください!優太さん!!
これ以上は・・・これ以上は本当に体が持ちません!!!!!!!!!」



蓮の声が届くことは無かった。
いや、届いてはいた。
それを聞く訳にはいかなかったのだ。
その蓮の最後の呼び止めに応じれば、自分は本当に動けなくなりそうだったのだ。
蓮はただ力無くその場に膝をつく、そしてその頬を大粒の涙が伝う。



「何で・・・何で・・・!
優太さん・・・!どうしてそんなになってまで・・・」

アルヴィス
「大切な何かを守るのに、理由など要らぬのです・・・姫。」


「アルヴィス・・・さん・・・」

メダ
「アイツは・・・きっとお前のために、いや・・・
この国の人達のために・・・無理を通そうとしている・・・」


「でも、でも・・・!死んでしまったら・・・
何も、何にもならないじゃないですか!!!」

アルヴィス
「死なせませんよ・・・もう、失うのはごめんですので・・・」

メダ
「そのとうりだ・・・オレ達が、優太を死なせねぇ・・・」



二人の男は一人の男の背を見つめる。
そして次の瞬間、力の限り二人は飛び立つ。
当に二人とも体の方が悲鳴を上げているはずなのに。



「優太さん、優太さん・・・優太さん・・・!」



刻一刻と決着の時は近付いている。
この場にいる全ての人物がそう思った。
太陽は、未だ登らない。








第22話「決着の夜明け。。」






『それ、面白いんですか?』


見たことのない本に私の興味メーターは振り切っていた。
今まで話しかけたこともない相手に話しかけてしまった。
しかも相手は男の人だ。
見た感じでは悪そうな人ではなさそうだった。
むしろ、普通より冴えない感じがした。
その人の手に握られていた本には可愛らしい女の子の晴れ姿が描かれている。
もしかするとこれは何か不味いことを聞いてしまったのではないだろうかと思いかけたその時、


『あ、ああ・・・面白いよ。
ラノベだけど、これはハードカバーの作品と比べても遜色の無い・・・』



と、意外に普通の返事が返ってきた。


『ラノベ?』


私はまず気になった単語を聞き返してみた。
返事が返ってきたことに背中を押されたのか、割とすんなり聞き返せたと思う。


『え、ラノベ知らないの?
正式にはライトノベルって言って・・・
ほら、そこの棚にあるのが全部ラノベって奴だよ。』



そう言って懇切丁寧にラノベについて教えてくれた。
その中からオススメの物まで見繕ってくれて、私の中の警戒心はすっかり消えてしまっていた。




それからと言う物、その人と当番になる度に本の話をし始めた。
彼は私の話を普通に聞いてくれたし、彼が話してくれる本の話はどれも興味深かった。
私はそれから彼の話にでてくるラノベを読み漁った。
ライトなノベルと言うだけあり、私からするとそんなに読み応えがあるというわけでもなかったが・・・
こういう軽く読めるというのは新鮮で、中々クセになる感じがした。
それに、彼と・・・優太さんと話すのがとても楽しかったから・・・
優太さんとお話するために必死にラノベを読み続けた。
気付いた時には、優太さんよりも読み込んでいて少し泣きそうになったのは秘密です。




色々あって、優太さんに私が『魔法界』の人間だとバレてしまった。
まさか優太さんと私の相性が良いとは思いにもよらず・・・
ま、まあ相性が良いと言うのは喜んで良い所だと思いましたが。







ヴァルヴェルドに向かって飛ぶ道中、優太は背後から物凄い速度で接近してくる二つの気配に口元をほころばせる。
この展開を待っていたのだ。


優太
「よぉ、寝てなくて大丈夫なのか?お二人さん。」

アルヴィス
「その言葉、まるごとお前に返すぞ・・・」

メダ
「お前が行くって言うから・・・
もう動きそうにない体引きずってまで来たんだよ・・・
感謝しろバカ野郎。」

優太
「そっか・・・それはありがとな。
じゃあ、最後にオレの提案聞いてくれるか?」

メダ
「聞くだけなら・・・。」

優太
「メダ、クソジジイ・・・
アイツの両腕を切り落とす、または吹き飛ばせるか?」

アルヴィス
「まあ、可能じゃろうが・・・それでどうするつもりじゃ?」

優太
「物理的な反撃をできないようにする。
そうすれば頭がガラ空きになると思わないか?」

メダ
「その作戦、穴だらけだぞ・・・尻尾はどうするんだ?」

優太
「そっちは・・・どうにかなるだろ。」

アルヴィス
「何か勝算があるのか?」

優太
「何か、そんな感じがするんだよ・・・
口で説明するのが難しいけど、分かるんだ。
とりあえず二人が両腕をどうにかしてくれれば、どうとでもなる。」

メダ
「エラく抽象的な作戦だな・・・
でもまあ、オレ自身これ以上にいい考えも浮かばねぇ・・・。」

アルヴィス
「ならこの作戦で行ってみるとするかのう。
ワシは右を落とす。メダは左腕を!!」

メダ
「任されました!!!」



メダとアルヴィスは全身に残った力の全てを使い、左右の腕へ飛翔する。
優太は一人、精神を落ち着かせるように大きく息を吸い、そして吐いた。


優太
「頼むぜ。二人共・・・」



優太は二人の後を追うようにして空を疾駆する。
右手に握りこんだ『竜牙』に着々と『魔氣』を練りこみながら。


アルヴィス
「メダ!できるだけ根元で落とすぞ!!」

メダ
「分かってます・・・!」



二人はそれぞれ腕による無差別な攻撃を掻い潜りながら上昇を続ける。
アルヴィスは右手に握りこんだ『白龍』を鞘に収め、『魔氣』を蓄積させていく。
メダは左腕に装着されたドリルに『螺旋力』を練りこみ続ける。
ドリルは空気を吸入された風船のようにドンドン際限のない肥大化を続けている。
その大きさが自分の身の丈を四倍も五倍も上回った時、二人は龍の両肩に辿り着く。


アルヴィス
斬音剣(ざんおんけん)』!!!



鍔音が聞こえたかと思った瞬間、龍の右肩から下がバッサリと切断される。
太刀筋自体が全く見えなかった。
その上、最後の鍔音以外の音を一切残すこと無く攻撃が終わっていた。


アルヴィス
「メダ!!!」



その声を聞いたメダは左腕で巨大化したドリルを高速回転させる。
それを天へ掲げる。
次の瞬間、一直線に左腕目掛けて突進する。


メダ
必殺――――――!!
『ギガ――――――!!
ドリル―――――――――――!!!
ブレイク』ーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!



左肩の上から腕の内部を抉りながら突き進む。
腕の直径を大きく上回るドリルに腕は内部から引きちぎられ、見るも無残な形になっていく。
最終的に残ったのはボロボロに引きちぎられ、一体何が何だか分からなくなった赤い肉片と皮が不均一に繋がった様な物だった。


グギャャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?!!?!!??!!


そんなけたたましい悲痛の雄叫びが木霊し、龍はさらに怒りをあらわにする。
全身から赤い燐光を迸らせ、それを大きく吸収する。


メダ
「ブレスか!??」



メダはすぐさま止めに入るために上昇しようとする。
が、さっきの一撃で『魔力』を根こそぎ持って行かれてしまったようだ。
背部のブースターから何一つ吹き出してくる気配がない。
アルヴィスも同じなのか、さっきまで勢いよくここまで宙を蹴って登ってきていたが、落下し始めている。
二人共本当に限界のようだ。
その時、一陣の風が二人の間を駆け抜けていった。
メダは精一杯の力を込めて叫ぶ。


メダ
「行ってこい!!バカ野郎!!!絶対勝て!!!!!!!」

優太
「たりめぇだバカ野郎!!!
お前こそ、下でしっかり見てろ!オレの勝利の瞬間を!!」




その声援を背に、優太はただ真っ直ぐに龍の頭を目指した。
どうやら発射まではもうしばしの溜めが居るようだ。
とにかく早くあの場に辿り着き、龍の口を閉じるなり、『龍角』をへし折って帰還させるしか方法は無さそうだ。
しかしその時、視界の端に何か巨大なシルエットが飛び込んでくる。
イチイチ確認する必要もない。
どうせ尻尾による撃ち落としが目的だろう。
優太はその攻撃に対し、何もしなかった。
が・・・
何故か何もしていないはずの尻尾が空中で動きを止める。
順よく見ていくと、尻尾の先に鎖のようなものが巻きついている。
そしてその鎖は地面の方向と、空中の二つの方向に伸びている。
地面の方には全身を朱色のオーラに纏われた鳳仙が引っ張っている。
空中では黒いマントを羽織り、沈みかけた月を背にその両の紅い眼を輝かせている。



「ユータ、とりあえず一つ貸しだぞ!
紅乱舞刀(こうらんぶとう)』、『具現神器(モード)運命を超越せし主神の槍(グングニル)』!!!



それだけ言うと奏は両手に握りこんだナイフに『魔氣』を込める。
そのオーラが見る見るうちにナイフを覆い尽くし、巨大な槍を形作る。
巨大な炎の槍を構えると奏はそれを尻尾目掛けて放り投げる。
その槍は尻尾を根元から容赦無く貫き、紅い軌跡を残しながら奏の手元に戻ってくる。


優太
「サンキュー奏!!鳳仙も!よく踏ん張ったぞ!!!」



『ダンナの力になれたならオレはそれだけで十分だよーーーー!!』



「ふん、別にお前のためにやったんじゃない。
私は最終的に愛依のためにだな・・・」

優太
「はいはい分かってるよ。
もういいから下で待ってろ・・・すぐ終わらせる!!」



優太は再度上昇を開始する。
しかし、さっきの尻尾に気を少しもいでいたのは流石に不味かった。
どうやらチャージが終わっているようだ。
龍は体を仰け反らせると、優太目掛けブレスを吐く。
かと思われた。
その瞬間、龍の腹部に黒い影が激突する。
割と凄い勢いで。
その衝撃により、龍は天に向かってブレスを吹き出してしまう。
その黒い影は飛行船のようだった。
所々から黒い消炎が上がっている。
もう放っておいても墜落しそうである。
と、その時脳内に聞き覚えのある声が響いてきた。


『あ、ユウ君ちなみにその飛行船既に自爆装置起動してるから。。』


とか超発言が急遽飛び込んできた。
優太の居る位置だと確実に爆発に巻き込まれてしまう。


優太
「テメェそういうことは早く言えよ!!何だよ自爆装置って!!」



『そりゃあ機密保持のために普通は備え付けてあるもんだろ。』


とか脳内に女将の声が木霊する。


優太
「知らねぇよ!!
てかそんなこと言ってる暇なかった!!
コイツに殺される前に爆発に巻き込まれて死んじまうよ!!!」



優太は必死に背中から翼を噴出させる。
しかし・・・


ボギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンンンン!!!!!!!!!!!!!!


背後からそんな情け容赦のない音が轟いたかと思うと、爆発の余波が優太の体を包み込みその姿を吹き飛ばした。




メダ
「あ・・・」

アルヴィス
「あーーーー・・・」



その一部始終を拝見していた二人は素直にため息にもならない言葉を発する。
そしてどちらからともなく、


メダアルヴィス
「「やっぱアイツに託したのは間違いだったかもしれない・・・」」



と、結構キツめの評価をされていた。
が・・・


アルヴィス
「お・・・」

メダ
「ん・・・?」

アルヴィス
「なんじゃ・・・どうにかなっとるみたいじゃのう。」





爆炎の勢いは凄まじく、ゆうに『龍角』を飛び越えるくらいの高さまで爆炎は伸びていた。
その頂点。
天に黒く燃えたぎるかのような一つの炎が見て取れる。
それはまさしく、



「優太さん・・・!」



優太は直下に『龍角』を見据え、今まさに最後の一撃を見舞うため背中の噴出翼を調整し、落下する速度と合わせ特攻する。
そして、優太の右手に握られた『竜牙』に巨大な黒い影がチラつく。
その風貌はまさに、



「黒い、龍?」







さきほどの爆発を逆に推進力変わりに使ったことで優太は調度ヴァルヴェルドの頭上を取った。
そこから真下に見えるヴァルヴェルドの『龍角』を注視する。


優太
「さて、長い夜もこれで終わりかな・・・決着と行くぞ!!!」



優太は柄に両手を掛ける。
そして全身に纏わせていた全ての『魔氣』を、黒いオーラを『竜牙』に込める。
それはしだいに巨大な一つの影を具現化させる。
風の流れの変化を感じてか、龍がこちらに目を向ける。
息を吸い、残っていた炎を吐き出す。
優太はそれを見据え、しかし引くこと無く、『竜牙』を握る手に力を込めた。


優太
「喰らえ!!!
天想(てんそう)――――――――!!!



具現化した影が巨大な黒い龍の形を形成する。
その龍を垂直に飛ばすよう、優太は力の限り『竜牙』を振るった。


優太
――――――黒龍牙(こくりゅうが)』ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!



黒龍は巨大な顎を開くと、一飲みで炎を飲み込む。
そして勢いを殺さぬまま、赤龍ヴァルヴェルドの『龍角』目掛け突進し、『龍角』にその強靭な双牙を突き立てる。


優太
噛み砕け、黒龍!!!
みんなの想いがこの一撃にこもってるんだ・・・!
負けられねぇ・・・!!絶対に、絶対に・・・!
負けらんねぇんだよぉおおおおおおおおおおおおお!!!!!



黒龍の双牙が『龍角』へ見る見るうちに食い込んでいく。
周回に駆け巡っていた亀裂が徐々に『龍角』全体に伸びていく。
もう一押し、もう一息・・・!
そう思った瞬間、


ピキッ!


優太の手元からそんな不穏な音が響く。
その音は紛れもない、『竜牙』から発せられているものだ。


ピキキッ!!パキッ!


そんな音が連続し、『竜牙』の刀身に同じく亀裂が走り始める。
無理もない、凄まじく高密度なエネルギーをこんな小さな物体に集約しているのだ。
普通に考えても耐久値の限界を超えている。
それに今まで幾度となく無茶苦茶な使い方をしてきている。
刀本来の寿命を迎えようとしているのだ。


優太
「くそ!!何で今なんだよ・・・!
頼む、あと少し・・・もう一息なんだよ・・・!
持ってくれ、『竜牙』!!!」



その想いが届くことはなかった。
亀裂はついに刀身全体に駆け巡った。
そして


バキャン!!!!!


優太の目の前で、『竜牙』の刀身は粉々に砕け散る。
それと同時に、『竜牙』に込められていた全ての力が拠り所を失い四方八方に霧散していく。
『龍角』に食いついていた黒龍すらも、『竜牙』の全壊によりその姿を消滅させた。
そしてヴァルヴェルドは頭の重しが無くなった事で上空に位置する優太にその顔を向ける。
すると、その口から巨大な火炎を噴き出した。


ボアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!


その炎が優太を包み、空を赤く染め上げた。
東の空から太陽が微かに顔を出す。
その光を受けたヴァルヴェルドは一瞬片目を瞑る。
一瞬。
まさに一瞬の出来事だった。
上空の炎が薙ぎ払われる。
そしてそこから黒いオーラに身を包んだ優太が現れる。
その手には、黒い刀身を形どった日本刀が握られている。
優太は『魔氣』を大量に纏わせることで『竜牙』の砕けた刀身を固定したのだ。


優太
まだまだだぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!



最後の力を振り絞り、優太は背中からエネルギーを噴射させ一気に『龍角』目指し特攻をかける。
その勢いはあまりにも早く、両手の再生が終わっていないヴァルヴェルドにその進行を止める術は無かった。
優太は『竜牙』をあらためて握り直すと、全身全霊の力を込めてその一太刀を『龍角』に叩きつける。


バキィィィイイイイインンン!!!!!!!


瞬間、優太の手元から『竜牙』が吹き飛ばされる。
固定化した破片が今度こそ四方に散っていく。
優太の全身から黒いオーラが霧散する。
それが、最後の合図になった。


ピキキっ!


遥か上空・・・
そんな音が周辺一体に響き渡る。
それはまさしく、


パキッ!バキッ!!


優太は口元をほころばせながら、ヴァルヴェルドを下から仰ぎ見るようにして呟く。


優太
「オレの・・・勝ちだ、トカゲ野郎・・・!」



バキャアアアアアアアアアアアア!!!!!


『龍角』が中心から二つに砕ける。
上下に分かれた『龍角』の片方は地面に向け、真っ逆さまに落ちていく。
残った片方は、ヴァルヴェルドと共に光の粒子となって徐々にその姿を消滅させていく。
優太は落下しながらその光景を眺めつつ、ホッと胸を撫で下ろす。


優太
「ど、どうにか・・・なったか・・・
あぁ、でもヤベェ・・・スゲェ頭ボーッとする・・・
流石に、疲れ・・・」



そこで優太の意識は完全に飛んだ。
その背に朝日を浴びながら優太は頭から地面に向けて落下していく。
長い夜が、明けたのだった。








第23話「祝杯の宴。。」






優太
「ん?」



優太が目を覚ますと、知らない天井が目の前に飛び込んできた。
どうやらベットの上に寝ているようだが・・・
少しづつ鮮明になっていく意識の中で、自分が何をしていたのかを思い出していく。
最後の最後で自分の打ち込んだ一撃がどうにかヴァルヴェルドの『龍角』を折るダメージを与えた。
その後、今まで湧き出るように出てきていた力が、まるで蛇口を閉めたかのように終息していくのが分かった。
それと共に意識が飛んだ。
以降の記憶は無い。


優太
「あのあと、一体どうなったんだ・・・」



優太は上半身を起こすと辺りを見回す。
どうやら暁館では無いようだ。
このしっかりとした部屋の作りから察するに王城の一室かもしれない。
枕元に携帯が置いてあるのを見つけた優太はそれを手に取り開く。
そこには自分の覚えていた日付から三日ほど経過した日数が表記されていた。


優太
「はぁ!??
オレどんだけ寝てたんだよ・・・!
てか、『盛夏祭』はどうなったんだろ・・・」



優太はベットから這い出る。
思ったよりも体から痛みは感じない。
動いても問題無さそうだった。
辺りをもう一度見回すと、近くに扉があるのを見つけた。
中から物音がするあたり、誰か居るのかもしれない。
とにかく話が聞きたかった優太は特にそこが何の部屋なのか確認することなく扉を開け放つ。
そしてごく普通に中を覗き込んだ。
すると、



「・・・・・あ。」



そこには蓮が佇んでいた。
濡れた髪をタオルで拭いている最中だったらしい。
もちろん、その身に何かを身に着けてはいない。
髪で胸を多少隠しているとは言え、下の方はまるで何も遮るものが間に存在しない。
キョトンとしながらしばらく見つめ合う。
優太はとりあえず何も言わずに扉を閉めた。
そして、すぐに駆け足でベットに飛び込んで毛布を頭から被った。


優太
「(はぁああ!??
な、なんだよこの取ってつけたようなサービスサービスぅ展開は・・・!!
こ、こんなんだから巷でエロファンタジーだの何だの言われるんだよ!!!
って、今はそういう問題じゃない!!
ま、不味いぞ・・・バッチリ見てしまった。
ってそうでも無ぇよ!!不味い不味い!!
蓮にまた色々どやされる!!
何か良い言い訳は無いものか!!)」



そんなことで悶々すること数分。


ガチャ。


扉が開く音がさっきの場所から聞こえてくる。
優太は誰が見ても分かるくらいビクッ!!と体を震わせる。
扉から出てきた人物はゆったりとこっちに向かって歩いてくる。
その足音がベットのすぐ横で止まる。
もう、深く考えず謝っておいたほうがいいかもしれない。
そう腹をくくると、優太は毛布を跳ね除け、土下座の体制で姿を現し、


優太
「いやマジゴメン!!
オレも流石に不注意でした!!
でもぶっちゃけそこまでハッキリとは見えなかったんで未遂ってことでここは一つ・・・!!!」



そこで優太は蓮の反応がまるで無いことに気づく。
こういう時、蓮なら謝罪の途中で「別にもういいですよ」とか言って許してくれるのだが・・・
優太は不安になって頭を上げた。
するとそこには涙を流しながらこちらを見つめる蓮の姿があった。


優太
「え・・・?れ、蓮?」


「・・・っ!!優太さん!!!



蓮は間髪入れず、勢い任せに優太に抱きついてきた。
咄嗟のことで一瞬反応に困った。
優太は軽くパニックになりつつ、蓮から漂うシャンプーの匂いにさっきの記憶がフラッシュバックしてきてさらにパニックった。
そんな内心慌てふためいている優太を尻目に、蓮は今にも消え入りそうな声で、



「良かった・・・良かった・・・!」

優太
「えと・・・あーーーー、」



戸惑うこと数分・・・
蓮の背中に腕を回すと、優しく後頭部を撫でながら優太はまるで子供をあやしつけるようにソっと抱き寄せた。


優太
「その、何だ・・・ご、ごめん。
心配かけて・・・」


「本当です!!!
どれだけ自分が無茶苦茶なことしたか自覚してますか!??
もう少しで本当に死んでたかもしれないんですよ!!?」

優太
「い、いや・・・あの時はそれでもやらなきゃって・・・」


「死んでもやらなきゃならないことってなんですか!!?
それで・・・それで本当に、優太さんが死んだらどうするんですか!!」

優太
「う、うーーーん。と、とりあえず今、生きてるし・・・」


「今回は運が良かったんです!
こんなこと、もうしないでください・・・!
本当に、本当に心配したんですから・・・!!!」



蓮はそれきり何も言わなかった。
しかし、体を小刻みに震わせている。
蓮の頬を伝って零れた涙が優太のTシャツを濡らす。
優太はただ黙って蓮を抱きながら、頭を撫で続ける。
自分はココに居る。と、声にならない思いを込めて、優しく、優しく撫で続けた。









「そ、その・・・お見苦しい所をお見せしました・・・」



ひとしきり泣いた後、蓮はすぐに優太から離れた。
顔を真っ赤にしてあたふたしてから急に縮こまってしまった。


優太
「あ、いや・・・こっちこそ本当にごめん。
謝ってどうこうって訳じゃないだろうけど・・・」


「それに関してはもう良いです・・・
それより、お加減の方はどうですか?」

優太
「ああ、それに関してはもう大分良いぞ!
多少はフラつくけど一人で歩けるし・・・」


「人の着替えも覗けますしね。」

優太
「いや・・・だからそれは未遂で・・・てか見てないって言ってるだろ!」


「いえ、あのタイミング・・・バッチリ見てましたよね。
私覚えてますからね・・・
優太さん、扉開けてからしばらく私の体を上から下まで眺めてましたよね?」

優太
「完全に誤解です!!」


「はぁ・・・せめて見られるんでしたら、剃髪くらいしておけば良かったですね・・・」

優太
「え?全身ツルツルスベスベだったじゃん。。」


「・・・・・・・やっぱり見てたんじゃないですか。」

優太
「誘導尋問じゃねぇか!!!」


「ま、優太さんがそういう時にバッチリ観察するクセがあるのは知ってるので今更何かを言うつもりも無いですけど。」

優太
「なんか気づいたら変な感じに納得されてる!!?」


「ふふっ。
とりあえずいつもどうりの優太さん式リアクションは取れるみたいですね。
これなら今夜のパーティも大丈夫そうですね。」

優太
「は?パーティ??」


「ええ。
『盛夏祭』も盛況なうちに終わりましたので・・・
関係者だけの立食パーティを今夜ココで執り行うんです。」

優太
「へぇーーー・・・
って・・・『盛夏祭』が終わった!!??」


「ええ、調度昨日。
幸いあの事件は私達や一部の関係者以外は誰も認知していなかったようでして・・・
城下町にも城にも被害は無く、ほとんど何の問題も無く祭りは進みました。。」

優太
「そ、そっか・・・
アレから三日も経ってるんだし・・・
終わっててもしゃーないよねーーー。」


「はい、でも・・・無事に『盛夏祭』が執り行えたのも優太さんや皆さんのお陰です!
本当にありがとうございます!」

優太
「あ、ああ・・・
そう言ってもらえると、オレも頑張った甲斐があったよ。」


「それで・・・物は相談なんですけど・・・」

優太
「うん?何だよ改まって・・・」


「今夜のパーティ、私と一緒に出席してくれませんか?」

優太
「はい???」









優太
「うぅ・・・スゲェ動きづらい・・・」



アレからスグに優太は蓮に言われるままにタキシード的な物に着替えさせられた。
まあ、お偉いさんが集まるパーティに出席するんだから当然だろうが・・・
こんな礼装を身に纏うのはこれが初めてなため、正直窮屈ささえ感じた。
優太は一人、蓮の部屋の前で蝶ネクタイを正しながらただ佇んでいた。
蓮が準備をしに部屋に篭ってから既に三十分以上経っている。
時計を確認すると今、調度四十分経った所だった。
女の人の準備には時間がかかるというのはよくネタにされるので知ってはいるが・・・
流石に遅い・・・


優太
「あーあ・・・
こんなんだったら携帯を持ってくるんだったなーーー。
アレがあればもう少し暇が潰せて・・・」



ガチャ。


そんなこと言っていたら後方でドアが開く音が聞こえた。
優太はスグサマ振り向くと、多少の不満を漏らす。


優太
「あのな蓮・・・
準備に手間取るのは分かるけど、流石におそ・・・」



そこで二の句が告げなくなる。
それはあまりにも想像を絶するものが視界に飛び込んできたからだ。



「す、すみません・・・優太さん。
その、準備に手間取ってしまって・・・」



そういう蓮の姿は、いつもの優太が知っている蓮とは別人に写った。
まず、青を基調にしたドレスを身に纏っている時点で雰囲気が変わっているからと言うのもあるのだが・・・
普段から全く化粧という物をしない姿ばかり見ていたので、軽く化粧をした蓮の顔は普段の数倍、綺麗に見えた。
まあ、素材が良いから何もしなくても普段から綺麗なんだけど・・・
優太はその蓮の姿に、素直に見惚れていた。



「??優太さん・・・?」

優太
「え、あ・・・ああ!ど、どうした?」


「いえ・・・ジッと見つめられてどうかなさったんですか?
それとも、どこか変な所がありますか?」

優太
「い、いや・・・そんなことない!
凄く似合ってる・・・綺麗だよ、蓮。」



改めて蓮のドレスに目を向けた。
正直、上半身の布面積が少なすぎである。
背中は腰の辺りまで大きく露出しているし、
前なんて二つの布だけで胸を覆い、その布を首に結んで固定しているのみだ。
横から見ると蓮のふっくらとした胸が一望できる。
かなり良い横乳と腋が拝めたことに優太は素直に喜んでおくことにした。
上半身の薄さとは打って変わり、スカート部分は足が見えないくらい丈が長い。
頭の右側に青い花をあしらった髪留めを付けている。
髪はそのまま垂らしており、かなり大人びて見えた。



「優太さん・・・どこ見てるんですか?」

優太
「いや・・・薄いなーーーと思って・・・」


「こ、これでもマシなのを選んだんです!
ほ、他のはもっと際どくて・・・ジゼ、後ではっ倒します・・・!!」



そう言うと、蓮は腕にかけていたストールを肩から羽織り、胸の辺りで軽く結ぶ。
ストールを羽織ったことで露出度はかなり軽減されたが・・・
なんか色々物足りなくなった気がした。



「思ったより時間を取られてしまいましたね・・・
既に始まってしまってますが・・・まあ、大丈夫でしょう。」

優太
「本当に大丈夫か?
遅刻していくと意外と不味いんじゃあ・・・」


「それくらい悪目立ちした方が、この場合効率が良いので構いませんけどね。」

優太
「効率?」







二人はたわいもない会話をしながら階段を登って行く。
すると急に開けた空間に出る。
まるで漫画とかでよくあるパーティ会場を三倍は豪華にしたような大広間に出る。
そこには多くの貴族らしき豪奢な格好をした気品漂う集団が所狭しと佇んでいる。
皆、思い思いにパーティを楽しんでいるようだ。
ふと、視界の端に見慣れた男女の集まりが見えた気がしたが・・・
何だか物凄くドンチャン騒ぎをしているようである意味混ざったら色々不味そうな気がしたのでとりあえず他人のフリをしておくことにした。
と、
まるで違う方に注意が向いていたためか、自分達・・・主に蓮の周りに若い貴族の男達が集まっていることに遅ばせながら気がつく。
貴族の一人が蓮に話しかけてくる。


貴族A
「これはこれはレオナ様・・・お召しのドレス、とてもお似合いですよ。」


「ジョースター卿。
ご丁寧に、ありがとうございます。」

貴族A
「そちらの彼は・・・?
見ない顔ですが・・・」


「ああ、彼は・・・」



そう言いながら、何故か蓮が左腕に抱きつきながら



「私の婚約者です。」



とか、結構大きめの声で、しかもよく通る声で、ハッキリとその場の全員に聞こえるんじゃないかと思えるような感じで言い放った。
もちろんそんなこと急に言われても誰一人としてスグに自体を飲み込めずに居た。
それは優太自身も例外ではない。


貴族A
「え・・・こ、婚約者・・・??
ふぃ、フィアンセ的な奴ですか?」


「はい!
もう将来を誓い合って、子供も授かりました!
まだ目立ちませんけど、二ヶ月くらいでしょうか・・・」



とかまたもくっきりはっきり言い放ち、お腹の辺りを愛おしそうにさすってみせる。


貴族B
「え、あ・・・そ、それはお、おめでたいですね・・・!」


「はい、式はまだ先になりそうですけど・・・
この子が生まれる前には正式に発表もしようと思うので、それまでこのことは内密にお願いしますね。。」

貴族C
「そ、そうですね!
こ、こんなこと公にはできませんもんね!!
ど、どうぞ・・・お、お幸せに・・・」



そんなことを言いながら、一人、また一人と若い貴族の男達は蓮の前からササッと立ち去っていく。
中には何故か優太を睨みつけながら「こんなどこの馬の骨とも分からない奴にレオナ様が・・・!!」とか毒つくような言葉まで聞こえてきた。
周囲から人だかりが消えると蓮はそっと優太から身を離し、



「ふぅ・・・これで今夜は変に口説かれることもなさそうですね。」

優太
「いやいやいやいや!!!
そのために失ったものが多すぎるんですが!!!
主にオレの!!」


「え、別に良いじゃないですか。
むしろ私と結婚できるんだったら飛んで喜ぶ所ですよ?
逆玉ですし・・・」

優太
「そんなしょうもねぇ理由で結婚なんかしねぇからね!!
てか、口説かれるって・・・」


「一応、正当な王位継承権を持っているのは私ですからね・・・」

優太
「ああ、蓮と結婚すれば王位を手にできるとかそういうこと考える奴が居るって話?」


「そんな感じです。
一応弟が一人居るので、私がならなくても弟が変わってくれるんですけどね・・・」

優太
「結構しょうもねぇこと考える奴らが居るもんだな・・・」


「そうですよ。優太さんには想像もできないかもしれませんが・・・」

優太
「ああ、分かんねぇ。
だって、それって蓮が欲しいんじゃなくて、王位が欲しいってことだろ?
そんな愛もヘッタクレもない結婚、オレは嫌だな。」


「ええ、私も・・・そう思います。」

????
「そう思うのは自由じゃが、ちょいと冗談がすぎるなーーレオナ。」

優太
「あ・・・。」


「お父様・・・聞いてらしたんですか?」

レーヴェ
「ははっ、まあ、一部始終のぅ。
しかし・・・やはり、レオナの想い人はユウタくんじゃったのか・・・」


はぁっ!!!??

レーヴェ
「いやーーー、話の端々によくユウタくんの名前が上がると思っておったが・・・。
まさか冗談とは言え婚約者と言えるくらいの間柄とは・・・」


「い、いや、あの・・・お父様、本当にアレは冗談で・・・!」

レーヴェ
「まあ恥ずかしがることもあるまい。
ユウタくんのような男ならワシは反対はせんぞ。」


「いや、だから・・・えっと・・・!
ほ、本当に違うんですーーーーーーーー!!!!!



そう言うと蓮は一目散に走り去ってしまった。
あんなに慌ててる蓮は初めて見た気がした。
するとレーヴェは軽く微笑みながら優太に歩み寄ってくる。


優太
「え、えっと・・・国王様?
い、一応オレ・・・
あ、僕とれ、レオナさん?は別にそういう仲では無くてですね・・・」

レーヴェ
「知っとるよ。
アルの奴から聞いておるからの。
じゃが、レオナもさっきの反応から察するに満更でもなさそうじゃぞ?」

優太
「いや、結構真っ向から否定してましたけど・・・」

レーヴェ
「あのくらいの年頃の女の子はそんなものじゃ。
それより、調度良かった。
君とは二人で話がしたかったのだ。」

優太
「お、僕とですか?」

レーヴェ
「はは、かしこまる必要はない。
いづれは、お義父さんになるかもしれないからね。。」

優太
「いや、多分そんなことにはならないじゃないかと思いますけど・・・」

レーヴェ
「そんなこと言って・・・本当は結構進んどるんじゃないのか?
どこまでいったんじゃ?
お義父さんに正直に話してみなさい!!」

優太
「いやいや、何かあったとしても話しませんよ!??
てか、お義父さんって決定ですか!?」

レーヴェ
「レオナとの結婚なら無条件で認めるぞ。」

優太
「いや、そういうことではなく・・・!
てか良いんですかそんな軽く娘さん嫁に出して!!」

レーヴェ
「娘が心から好いている相手なら、ワシはどこの誰でも構わんさ。
元より、ワシはあの子の幸せを願っておるからな。」

優太
「国王様・・・」

レーヴェ
「その呼び方は止めてくれ。
せめてお義父さんとかお義父さんとかお義父さんとかにしてくれんか。」

優太
「どんだけお義父さん推してんだアンタ!!流石にしつこいわ!!!」

レーヴェ
「お、それじゃそれ。。
アルと話す感覚で接してくれて構わんよ。
アルが認め、レオナが愛した男ならワシにとっては息子も同然じゃ!」

優太
「そ、そうですか・・・もういいです。
ツッこむの疲れたんで・・・でもクソジジイと同じ接し方は流石に失礼だと思うので諦めてください。」

アルヴィス
「ま、それが無難じゃろうな。」

優太
デターーーーーーーーーーーーーーー!!!!

アルヴィス
「主に名を呼ばれた気がしてのう。すっ飛んで来た所じゃ!!」

優太
「いいよ来なくて!!話が脱線するからマジで!!!」

レーヴェ
「ワシの方からもこの場は下がってもらいたいのう。
出来ればユウタくんと二人で話したい。」

アルヴィス
「我が王がそう申されるのでしたら私は下がらせてもらいます。
では、また後ほど・・・」

優太
「???我が王???」

レーヴェ
「かつてワシに忠義を尽くしてくれた男なのだよ、彼は・・・。
退役してからも、ワシが呼べば馳せ参じてくれる・・・良き忠臣じゃよ。」

優太
「ああーー、そういえばクソジジイは『騎士王』とも呼ばれてたことがあるって聞いたことありましたけど・・・
そのことだったんですね。」

レーヴェ
「そういうことじゃ。
それで、話というのはな・・・あの事件の件じゃ・・・」

優太
「ま、まさかちょっとはっちゃけすぎて色々壊したから・・・
それの請求か何かですか??」

レーヴェ
「いや、それに関してはワシの方で負担させてもらった。
と言っても、ほとんど王都内では被害はほぼ出ておらんかったからのう・・・
湖周辺に比べれば都内は無傷に近い状態じゃったよ。」

優太
「そ、そうですね・・・主戦場は湖周辺でしたし・・・
街道とかボロクソになってたかも・・・」

レーヴェ
「それも数日中には整備が終わる・・・問題は無い。
それとは別に、ワシから言っておかねばならないことがある。」

優太
「な、なんですか?」



優太に緊張が走る。
レーヴェの顔が急にシリアスな感じにキリッとし始めたからだ。
唾を飲み込みながら、優太はレーヴェの言葉に耳を傾ける。


レーヴェ
「この度は我が国を、我が民を守ってくれたこと・・・とても感謝している。
改めて礼を言わせてくれ、ありがとう!!」



そう言うとレーヴェはその頭を垂れる。
その場に居た全ての人がざわめく。
当たり前だ。
一国の王がどこの馬の骨とも分からない男に頭を下げているのだ。
事情を知らないものが見れば確実に問題になりかねないような場面だ。
優太はその場の空気を敏感に感じ取り、かなり慌てふためきながら


優太
「ちょっ・・・!!
ま、待ってくださいよ国王様!!
お、オレ何かにそ、そんなことまでしてくれなくていいです!!
あ、頭を上げてください!!!」

レーヴェ
「何を言う・・・君は、自分がやったことがどれだけの功績か分かっているのか?」

優太
「え、でも・・・オレはただ、蓮との約束を守るために・・・!」

レーヴェ
「約束の内容は知らんが・・・それのついでとは言え、国を一つ救ったことは評価されて当然。
本来なら勲章を贈るべきところじゃが・・・この事は公にすることができん。
ワシが頭を下げることでしか、感謝を表現することができん・・・本当にすまない!」

優太
「い、いや・・・こんな所で頭下げる方が色々問題になると思うんですけど・・・!」

レーヴェ
「兎に角、ワシは本当にユウタくん!君に感謝している!!
だから・・・レオナを幸せにしてやってくれまいか!!?

優太
「どうしてそこに繋がるんですか!??意味不明ですからね!!!」

レーヴェ
「ちっ・・・この流れでも頭を縦に振らんとは・・・中々に手強いのう。
アルの言うとおりじゃ・・・」

優太
「ちょっと・・・今までの全部ここに繋げるための前座!?
どんだけ壮大なネタ仕込んでくれてんですか!!
紛らわしいですから!!!」

レーヴェ
「ふっ・・・褒め言葉と受け取っておくよ・・・。」

優太
「何だこの人、無駄に前向きだ・・・!!」

レーヴェ
「それより、レオナを追わなくて良いのか?」

優太
「あ・・・そう言えば・・・」

レーヴェ
「ワシからの話は以上じゃ。レオナの所に行ってやってくれ・・・
そして、後ろからハグして良い雰囲気に持ち込んでそのままイケるとこまでイクのじゃ!!若人たちよ!!!」

優太
余計なお世話じゃーーーーーーーーーーーーー!!!!!
あ・・・」

レーヴェ
「良いぞ良いぞ。調子が出てきておるようじゃないか。」

優太
「す、すいません・・・興奮するとつい・・・それじゃあオレはこれで。」

レーヴェ
「ユウタくん。」

優太
「はい?」

レーヴェ
「今回のことは本当に感謝しておるよ。
それは、本当じゃからの。」

優太
「はい。分かってます!
レーヴェさん、じゃあまた!!」

レーヴェ
「やっぱりお義父さんとは呼んでくれんのか?」

優太
呼びません。







アルヴィス
「随分とご機嫌ですな・・・」

レーヴェ
「うん?そう見えるか?」

アルヴィス
「ええ。口元がニヤついてますぞ。」

レーヴェ
「ああ・・・ユウタくん、彼は面白いな。」

アルヴィス
「王も気に入ってくださいましたか?」

レーヴェ
「ああ、それはもう。
彼なら本当に、レオナの良き夫になってくれるだろう。」

アルヴィス
「いやだから間を端折りすぎですぞ・・・あの二人はまだ恋人でも何でも無いですし。」

レーヴェ
「そんなのは見れば分かる。
じゃがのう、分かるんじゃよ。
レオナが彼をどれだけ好いているのかが・・・あの子が彼のことを話すときは何時だって笑顔なんじゃよ。
それはもう、嬉しそうに、嬉しそうに話すんじゃ。」

アルヴィス
「そうですか。それは、良きことですな。」

レーヴェ
「うむ、良きこと良きこと。」



レーヴェは手に持ったグラスを揺らしながら、ゆっくりとその中のワインを一気に飲み干す。
そしてそのグラスをテーブルに置くと、


レーヴェ
「美味いな。
ただのぶどう酒が・・・ここまで美味く感じるとは。
長生きはするものじゃのうアル。」

アルヴィス
「はははっ、それを私に言いますかな。
私の方が十二も年上ですぞ!!」

レーヴェ
「なに、言ってみただけじゃよ。
さ、て・・・ワシは仕事に戻るとするよ。
今日も警備の方、頼んでも良いのだろう?アル。」

アルヴィス
「勿論ですとも。我が王の仰せのままに・・・。」









最終話「おかえりとただいま。。」






優太
「おーーい!お前らーーー!!」



優太は一際騒がしい集団に向かって声を投げかける。
その先に居るのは紛れもなく『暁の地平線』と『天統べる煌星』の主要メンバー達だった。
優太の存在に気づいたのか、メダがこちらを向き、


メダ
「ん、ああ優太か・・・てかお前生きてたんだな。」

優太
「おお、何か生きてた!」

メダ
「ふん、まあお前が死ぬわけないとは思ってたがな。」

ネロ
「とか言ってるけどねーーー・・・
実際は三日間ずっと優太くんのこと心配してて警備の仕事にも身が入ってなかったのよ~~。」

メダ
「ば、バッカかお前!!そ、そんなことねぇよマジで!!!」

アラド
「ああ、何か四六時中ユウタのことばっかり話してたもんな。」

優太
「なんだよ、オレのことがそんなに心配だったのか・・・
そいつは悪いことしたな。」

メダ
「べ、別にお前のことなんてどうでもいいんだよ!
ただお前が居ないと何か物足りねぇとか思ってただけだ!!!」

ネロ
「はいはい、ツンデレ乙乙。。」

メダ
「っせぇ!!で、何の用だ?」

優太
「ああ、蓮の奴知らねぇかなと思って。」

ネロ
「蓮さんならさっき庭園の方に行くのをみたけど・・・」

優太
「庭園?」

メダ
「スグそこの扉を出て真っ直ぐ行けば出られるぜ。」

優太
「そっか!んじゃあオレ急ぐから!!」

鳳仙
「ヴぁ!!ヴァンナ!!!」

優太
「ん?」

千草
「あ、ホントだ!!
おーーーいみんなーーー!!
ユウ君居たよーーー!!!」

由紀
「え、マジで!!?」


「ユウちゃん起きてたんだ!!」

綾香
「パパーーー!!」



一斉に詰め寄られたからか少し戸惑ってしまう。
しかし皆の顔にはどことなくホッとしたような、安心した様子が見て取れた。
どうやら相当心配をかけていたらしい。


優太
「そ、その・・・」

由紀
「優太!!
ここの料理って持って帰るのアリかな!!?」

優太
「え?」


「何だか信じられないくらい美味しいんだよ~~。
だからこっそり持ってっちゃおうかって話ししてて~~。」

千草
「ユウ君、レンチーと一緒なんでしょ?
ついでに大丈夫か聞いてきてよ~~~。。」

優太
「え、いや・・・お、お前ら・・・
オレのことを心配してたとかそういうのじゃないの!?」


「誰がお前を心配するんだよ・・・」

愛依
「そ、そんなこと言っちゃダメだよカナちゃん!」

鳳仙
「でもダンナだったら何だかんだで大丈夫だよねーーーってみんなで言い合ってたし。」

優太
「・・・・・・・・・・あ、さいですか。
料理については・・・蓮に一応聞いとくわ。」

由紀
「うん!お願いね!!
これを持って帰ってレシピにおこさないと・・・デュフフ、腕がなるぜ!!」

優太
「ははは・・・ま、適度に楽しめよ~~~。」



そう言うと、優太はメダから教えてもらった扉の方に向かって歩き始めた。
その背中は何だかとても重く、黒いオーラで濁っていた。




優太の背中を見送ってから由紀はホッと胸をなでおろした。
見ると、他の皆も同じようだった。
なんだかんだと言ってやっぱり優太のことが心配だったのだ。
でも、塞ぎ込んでる私たちを見せるより元気な私たちを見せた方がきっと良い。
その方が優太も気負わずに済む・・・
そう思ってたのだが、


由紀
「何だか優太予想以上に凹んでたように見えたんだけど・・・」

千草
「うーーーむ、ユウ君意外とナイーブだったのかな・・・
ま、やっちまった物はしょうがないし、良いんじゃないの~~?」

鳳仙
「と、とりあえず後でフォローするくらいの気で居た方がいいと思う。」


「あ!!何かこのカレー激ウマだよ!!!」

綾香
「カレー私も食べたい!!」


「フォローねぇ・・・面倒だから愛依任せたbb」

愛依
「丸投げ!?
そう言わずにカナちゃんも一緒におにいちゃんをフォローしてあげようよ。」


「いや、それは流石に・・・
あ、でもアイツにトマト料理奢ってもらうとか約束してたな・・・
仕方ない、凹まれて連れて行くの止められても困るからフォロー一緒にしようか愛依!!」

愛依
「うん、何か理由がもの凄く不順だけどここは気にしないでおくことにするよ。」

由紀
「それより・・・優太は一人でどこへ行ったんだろ・・・」







会場から出て、道なりに進むと左手側に白い花(何の花だかは分からない)が咲き乱れる綺麗な庭園を見つけた。
その中心と思われる場所には小さな石造りの机の様な物と椅子が設置されている。
そこに蓮と思しき少女が一人座り、花を眺めながらお茶のようなものをすすっている。
優太はゆっくりとそこへ近づきながら蓮に話しかける


優太
「綺麗だな・・・何て花だ?」


「さあ・・・私も詳しい学名は知りません。
何でも昔からこの城に咲いてるみたいです。」

優太
「ふーーーん。そうなのか・・・」



優太は空いてる椅子に腰掛けると、目の前に置いてあるティーカップを手に取りそれにお茶を注ぐ。
香りから察するに紅茶らしい。


優太
「ラベンダーか?」


「ええ。これ飲むと落ち着くんですよ。」

優太
「ジゼルさんに用意させたの?」


「まあ、私が呼べば一秒以内に来ますからね。」

優太
「それ人間じゃないんじゃないの?」


「そうですね。多分、変態なんだと思います。」

優太
「いや、そういう事ではなく・・・」


「優太さんはどうしてここへ?
お父様とのお話は済んだんですか?」

優太
「ああ、何か引っ切り無しに蓮との結婚を仄めかされたけど全部適当にあしらっといたよ。」


「そ、そうですか・・・ホントに困ったお父様です。」

優太
「そうだな・・・流石にオレと蓮じゃあ色々釣合い取れないし・・・」


「・・・・・そんなこと、無いんじゃないですか?」

優太
「いやいや、蓮にはもっと良い人が・・・」


「優太さん・・・」

優太
「ん?」


「優太さんは、私と結婚したくないんですか?」

優太
「はい?」


「いえ、別に他意はありませんけど・・・き、気になっただけです。」

優太
「そ、そうだなーーー・・・
蓮とは結婚できないな。」


「え!??な、何でですか!!」

優太
「いやだって結婚する前に付き合って見ないとダメだろ・・・」


「はい?」

優太
「いやーーー・・・
流石にいくら一緒に暮らしてて色々分かってるといっても、それとこれとは別だろ。
付き合ってみてホントにこの人とならやっていける!!
とかそういう風に思えないとダメだと思うぞオレは・・・」


「あ、そ、そうですか・・・
て、てっきり私のことが嫌いだから結婚したくないとかそういう話かと・・・」

優太
「蓮のことは好きだぞ?」


「はいはい。どうせ、友達としてですよね~~~。」

優太
「そうだけど・・・
でも、蓮と結婚したら何か夫婦仲は円満になりそうな気がするけどな。」


はぁ!!?

優太
「え?」


「な、な、な・・・!!何言ってるんですか!!

優太
「あ、ごめん。
オレ何かまた不味い言い回しした?」


「本当に自覚無いんですか!??
ワザとやってるんじゃないですよね!!?」

優太
「ごめん、結構素だったりするかも。」


「ま、全く・・・
落ち着こうと思ってこんな所で一人涼んでいたのに・・・
優太さんのせいでまた熱くなっちゃったじゃないですか。」

優太
「すいません・・・」


「ふぅ・・・もういいです。それより・・・」

優太
「え、まだ何か?」


「優太さんって誰にでも優しいですけど・・・
実際誰か好きな人とか、居ないんですか?」

優太
「はい?」


「いえ、調度良い機会なので聞いておこうと思いまして・・・気になってたんですよね。
優太さんって本当は誰が好きなんですか?」

優太
「オレは蓮が好きだな。。」


「・・・・・・え?ほ、ホントですか?」

優太
「あ、ゴメン冗談のつもりで・・・」


「紛らわしいんでそういうの止めてくれますか!!?」

優太
「今日一番のキレっぷり!!?」


「そういうのは冗談でも言わないでください!!!
ちょ、ちょっと期待しちゃったじゃないですか・・・優太さんの馬鹿。」

優太
「と、とりあえずこういう場所でそういうことを言うのはダメということは勉強になりました・・・」


「分かればいいです・・・」

優太
「そう言えば蓮は今後はどうするんだ?」


「どうするって?」

優太
「いや、蓮このまま王族としてここに居残るのかなって・・・」


「・・・・・どっちがいいですか?」

優太
「え・・・」



蓮は立ち上がると、庭園の奥に向かって歩き出す。
その先には城下町の光が見える。
優太もそれに習うように立ち上がり、蓮の後を追う。
蓮は城下を見下ろしながら、隣に佇む優太に語りかける。



「優太さんは、私が暁館に帰るのと・・・
ここで王族として生きていくの、どっちがいいですか?」

優太
「な、何でオレにそんな事聞くんだ?
れ、蓮が決めることだろ?」


「そうですけど。
優太さんはどうして欲しいのか、それが聞きたいだけです。」

優太
「お、オレが・・・?
オレは・・・蓮の意思を尊重するけど。」



蓮は「やっぱり」と言ったような表情を浮かべると、視線を動かさぬままスッパリと言い放つ。



「じゃあ、私は城に残ります。」

優太
えぇ!!?


「だってここに居る方が色々楽ですからね。
それに、私もいずれはこの国を背負わなければならない身ですからね。」

優太
「いや、それはそうだけど・・・れ、蓮はそれでいいのか?」


「いいですよ。
だって、私はそのために生まれてきましたから・・・
王族に生まれるってことは、そういうことですから。」

優太
「な、なんだよそれ・・・納得できないんだが・・・
蓮は嫌なんだろ?
ハッキリ言ってくれよ!」


「嫌じゃないですよ。
それより優太さんは私の意思を尊重してくれるって言ってくれたじゃないですか・・・」

優太
「いや、そうは言ったけど・・・」



途端に優太は自分が分からなくなる。
優太自身、蓮がそうしたいならそうすべきだとは思う。
思うけど・・・
それを良しとしてはいけない様な気もした。
そんな自分でもよく分からない気持ちがグチャグチャに混ざり合い、思考が一時停止してしまう。



「だったら私の意思を尊重して、背中を押してください。
そうしたら私の中の未練も少しは和らぐってものです。」



未練。
優太はその言葉を聞き逃さなかった。
未練とはなんだ?
ホントはそうしたくないんじゃないのか?
蓮はホントの所、こんなこと事態言いたくなかったんじゃないのか?
だったら、だったとしたら・・・
今、自分がするべきことは・・・自分が蓮にかけてやれる言葉は・・・
一つしか、思いつかなかった。


優太
「・・・・・!!
蓮、悪い・・・やっぱさっきの取り消しだ・・・!」


「え?」

優太
「やっぱりオレは・・・蓮に行って欲しくない!!!」



優太は隣でキョトンとしている蓮の手を握ると、自分の方に引き寄せる。
そしてその小さな体を抱きしめた。
夜風に当たりすぎたからか、微かに蓮の体は冷えていた。
自分でもこれはやりすぎたんじゃないかと思いつつも、もうあとには引けない。
蓮を抱く腕に力を込めた。



「えっと・・・優太、さん?」

優太
「蓮、ごめん・・・
オレ、お前の意思とか尊重できないよ・・・。
だって、そうしたら蓮が居なくなっちまうんだろ?
それは、流石に勘弁だ。」


「あ、あの・・・えっと、」

優太
「オレは、やっぱり蓮と一緒がいい。
蓮が居て、みんなが居て、それがオレにとっての日常なんだ・・・
それに、蓮が居ないんじゃあ・・・何のために戦ったんだか分かんねぇよ。」


「優太さん・・・」

優太
「蓮、城に何て帰るな・・・帰るなら、オレと一緒に帰ろう。
皆の居る家へ・・・」



そっと、蓮の腕が優太の背に回される。
隙間も無くなる程に体が触れ合う。
今更だけど、自分の鼓動が早くなってることに気付いた。
こういうことに耐性も無いのに無茶したなーーと今更自問自答していると、




「・・・・・やっと、本音を言ってくれましたね。
優太さん・・・」

優太
「え?」


「こうでも言わないと優太さん、本音を言わないと思ったんですよ・・・
優太さん、意外と本気スイッチ入るの遅いですから。」

優太
「な、何だよ・・・
そ、そういう冗談をこういう時に言うの止めようぜ、マジで・・・」


「ふふ・・・ごめんなさい。
でも私の気持ち、少しは分かりましたか?」

優太
「ああ。今後は気をつけます。」


「あ、それと・・・さっきの返事ですけど、元から『盛夏祭』が終わったら帰るつもりでしたし・・・
それに、優太さんが私と一緒に居たいと言ってくれましたの・・・
またお世話になります。」

優太
「うん、わかった。
じゃあ・・・これからもよろし、」



蓮の顔が、何故かもの凄く近く感じた。
それもそのはずだった。
息もかかるような距離で、蓮の鼓動すら感じる。
蓮の唇と、優太の唇が触れ合う。
優太は目を見開き、体を硬直させる。
蓮はふぅーと息を吐くと、優太から身を離す。



「・・・今回の件でのお礼がわりです。
その、の、ノーカウントでお願いします!!」

優太
「え・・・あ、そう・・・?
え、てか何が??」


「だから、その・・・このキスはノーカウントでと言ってるんです・・・。
それとも、私としても嬉しくありませんでしたか?」

優太
!!?
そんなことは無い、けど・・・
はぁ、何で女の子ってそんな簡単にキスできるの・・・?
何かオレの中でどんどこキスのランクが下がっていくんですが・・・」


「その意味深な発言について深く追求はしませんが・・・
少なくとも、そんな簡単にしたりはしませんよ。普通・・・」

優太
「え、じゃあ何でこんなあっさりできるんだよ・・・」


「ホント鈍感ですよね・・・ま、それも含めて優太さんでしたね。」



そう言うと蓮は優太の手を取り、来た道を戻るように歩き出す。
その歩みは、さきほどよりも軽くなっているように見えた。



「優太さんは、もう少し女の子について勉強するべきだと思いますよ?」

優太
「一夜漬けでどうにかなる?」


「無理でしょうね。」

優太
「ですよねーーー。あ、そうだ・・・蓮。」


「はい?」

優太
「おかえり。」



蓮は一瞬だけ挙動が止まる。
だが、すぐにこちらを振り返る。
不思議と、繋ぐ手に力がこもる。
優太はその手を強く握り返すと、蓮を真っ直ぐ見つめる。
蓮は優太に向けて優しく微笑む。
そんな今日一番の笑みを浮かべながら、



「はい、ただいま戻りました。
優太さん、これからも・・・よろしくお願いしますね。」







「蓮篇」 完。。






「蓮篇」・アナザーエピローグ







「・・・今回の件でのお礼がわりです。
その、の、ノーカウントでお願いします!!」



そう言った蓮の頬はものすごく赤くなっており、傍から見ても恥ずかしがってるのが見て取れた。
そんな蓮を、堪らなく愛おしく感じてしまうのは、意外としょうがないのかもしれない。


優太
「蓮!」



優太は強く少女の名を呼ぶ。
そして再度優太は蓮の体を抱き寄せる。
何だか衝動的に触れ合いたくなったのだ。
完全に本能的に動いてしまった。
その後のことなどまるで考えていなかった。
しかし、その時蓮の方からアクションがあった。
蓮が身を寄せてきたのだ。
具体的に言うと、腕を優太の首に回し体を密着させてくる。



「その、どうしたんですか急に・・・ビックリしたじゃないですか。」



上からだと蓮の顔を覗えないので今どんな表情をしているのか分からない。
でもその少し緊張が含まれた言葉から察するに、


優太
「蓮、照れてる?」


「・・・・・い、いえ・・・
照れてるというより、嬉しいです。」



直球な反応が返ってきた。
どうやらこの展開は満更でもないと言うことなんだろうか・・・
こんな時に経験値の低い優太は判断に困った。
しかし蓮は嫌そうではなく、むしろ自分から身を寄せてきている。
ど、どうしよう・・・
今更冷静に考えると何でこんなことをしたのか、
本能的に動くって、コワイ。



「あの、優太さん?」

優太
「な、なんでしょう?」


「な、何もしないんですか?」

優太
「な、何もって!?」


「いえ・・・その、お・・・押し倒したりとか?」

優太
「展開早すぎだろ!!!」



そのツッコミで我に返った。
スグサマ蓮から身を離すと、冷静に平謝りに入るヘタレな自分が居た。


優太
「い、いやゴメン・・・急でビックリしただろ?
ちょ、ちょっと魔が差しただけなんだ・・・」


「そ、そうでしたか・・・
てっきり優太さんに襲われるものだとばかり・・・
ま、まあそうしたら既成事実ができるってことなのでそれはそれでありですけど・・・

優太
「え、何だって?」


「いえいえ!!なんでもないんですよ!!
あ、あーーー・・・な、何だか興が冷めてしまいましたね。
も、もうパーティーとか放っておいて部屋に戻りませんか?」

優太
「え?いいのか?
そんな適当で・・・」


「も、元々顔を出すだけで良いんですよ、ああいうものは・・・。」

優太
「まあ蓮がそういうなら別に良いけど・・・」


「そ、それじゃあ行きましょうか!!」



そう言うと蓮は優太の手を引いてズカズカと部屋へ向かって歩き出した。






部屋に帰って早々、蓮はシャワーを浴びに行った。
蓮に言われ、隣の部屋のシャワーを浴びた優太は、何もすることがないので一人ベットに寝転がっていた。
蓮は未だにシャワーを浴びているのか・・・
随分と長いな。
むしろ湯船に浸かってるんじゃないかと思えるくらいの時間が流れた。
それに対して優太は適当に体を洗って汗とか流した程度なのでスグに終わった。
ものの数十分の話である。
しかし何だか違和感を感じた。
さっきまで自分が居た部屋とは別の部屋なのだ。
蓮の部屋でも無いし・・・
まあ、違いと言えば妙に大きなベットがあるくらいで何一つ違う所など無いのだが・・・
しかし大きなベットだ。
いつも優太が使ってる布団を二つ並べたような広さだ。
そして極めつけに良い感じにスプリングとか効いてたり・・・


優太
「ははは・・・、まるで話に聞くダブルベットのようじゃないか~~~
・・・って、あれ?」



何だか凄くアレなことに今更気付いてしまったような気がする。
着々とそんな想像(妄想)が波紋疾走している時、


ガチャ。


後方で浴室の開く音がした。
そこから蓮が出てくる。
バスローブを着てはいるのだが、胸の辺りがかなり開いている。
髪も乾かしていないのか、まだ湿っていた。
何だか何時もの蓮からは想像もできないようなあられもない格好である。



「またまたお待たせしてすみません。」



そう言いながら隣に腰を下ろすと、持っていたタオルで髪を拭き始める。
正直目のやり場とか、自分自身の妄想の持ってきどころに困りつつ優太は口を開いた。


優太
「ど、ドライヤー使わなくていいのか?」


「使いますよ?その前に少し体を冷まそうと思って・・・」

優太
「な、なーーんだ・・・みょ、妙にやらし・・・
いや、涼しそうな格好してるから何かと思ったぞ・・・」


「ああ、これですか。
実は普段からこんな感じですよ?
普段、人前でこんなはしたない格好したりはしないですけど。」

優太
「ふーーーん、そ、そう・・・」



頑張って視線を泳がせつつ、ある部分を注視しないようにしていたが・・・
脚も太ももの辺りまで出されててそっちも見れたものじゃなかった。
完全に蓮の方向を見れない状態に陥り、とりあえず蓮の後ろの窓から夜景でも見ていようと思った矢先、



「気になりますか?この格好・・・」

優太
「え!?」


「さっきからチラチラと見てますよね?
・・・そんなに見たいんですか?」



蓮はからかうように目を細めながら不敵に微笑んだ。
そしてワザと胸を強調するように身を乗り出してくる。
とりあえず頑張って視線を外しつつ、優太は徹底して興味無いですの体を装った。


優太
「べ、別に興味なんて無いですよ(棒読み)」


「すごい片言ですけど・・・」

優太
「と、兎に角あんまり冷やしすぎるなよ・・・
湯冷めして風邪ひいてもしらないからな・・・」


「はいはい。気をつけます。」



そう言うと蓮はベットから身を起こす。
そして戸棚からドライヤー?のような形をした何かを取り出す。
『魔力』の気配がしたかと思うと、その器具から風が出てくる。
その風を髪に当てながら蓮は髪を乾かしているようだ。
数分後、風を止め櫛で髪をすきはじめる。
そしてそれが終わったのか、戸棚に器具を戻すと身なりを整えて再度ベットに腰を下ろした。



「これで良いですか?」

優太
「ああ、その方が目のやり場に困らなくて済むよ!!」


「終わった途端に正直になりましたね・・・」

優太
「べ、別に蓮の体に興味なんて無いですよ(棒読み)」


「そうですか、興味津々ですか。それはそれで何よりです。。」

優太
「いや、だから無いってばよ。」


「はいはい。それで、どうしますか?もう、寝ます?」

優太
「蓮眠いのか?」


「はい、誰かさんの看病を寝ずに三日くらいしてたのですごく眠たいです!!」

優太
「すっごい爽やかな笑顔で言われた!!」


「まあ、寝ずに看病したのは嘘ですけど・・・
ちょっと疲れてはいますね。」

優太
「じゃあもう寝ちゃえば?
それならオレも部屋に戻って寝るし。」


「え?」

優太
「え?何か変なこと言った?」


「一緒に寝てくれないんですか?」

優太
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・
はぁ!?????????????????


「な、何のためにこんな誰も来ない城の奥の方まで連れ込んだと思ってるんですか!!」

優太
「いやいや!そのこと事態初知りだよ!!」


「な、何も言わなくても優太さんは、今夜ずっと一緒に居てくれるものだとばかり・・・」

優太
「何で!??何時そんな意思表示しましたか!!?」


「キスしたあとに私を手篭めにしようとしたので・・・」

優太
被害妄想激しいぃぃいいいいいいいいいいいいい!!!!


「別に良いじゃないですか一緒に寝るくらい。
それとも、今夜は寝かさないぜコースにしますか?」

優太
「しません・・・てか帰る。」


「あ、扉には強力な鍵がかかってて私の許可無く出入りすると爆発しますよ?」

優太
「さっき二回ほど出入りできたのに!!?」


「一回の往復だけ許可しておきましたから。。
もう出られませんよ?」

優太
「あ、あのな蓮・・・あんまりこういうのは感心しないぞ・・・」


「はい?」

優太
「こんな誰も来なそうな所に身を置くってことは・・・!!」



優太は蓮をベットに押し倒す。
覆いかぶさるようにして蓮を拘束する。
蓮は一切抵抗してこなかったが、そんなことはどうでもよかった。


優太
「こんなことされても、文句とか言えないんだぞ?」


「良いですよ。」

優太
「はい?」


「別に良いですよ?
私、優太さんになら別に・・・
元からこういう展開を想定して連れ込みましたので。」



そんなどこか投げやりに見えなくもない言葉を聞いた途端、
優太は急な脱力感に見舞われる。
その脱力感は、優太の口から溜め息として吐き出された。


優太
「・・・・・・・はーーー。」



優太は蓮の上から退く。
そして、


優太
「蓮さ、あんまりオレをからかうなよ・・・」


「あ、いえ・・・そ、そういうつもりじゃ・・・」

優太
「オレが、そういう無理やりするみたいなの嫌いなの知ってるだろ?
頼むから、そういうこと・・・冗談でも止めてくれ。」


「あ、その・・・」

優太
「帰るよ・・・。」



優太は身を起こすと、窓の方へ歩いていく。
窓を開ける。
特に何も起こらない。
どうやらここからなら出られそうだ。
思いの他高くもないし、翼が無くても『鋼猿』使えば耐えられるだろう。
優太は窓に足をかけ、



待ってください!!!



後ろから急に抱きとめられた。
蓮は震えるような声で懇願してくる。



「お願いです、待って・・・待ってください・・・!!
わ、私どうかしてました・・・!
ゆ、優太さんに抱きしめられて、何か急にその気になって・・・!
ごめんなさい、ごめんなさい・・・!」



嗚咽にも似たそんな声を聞くうちに自分の中で何かよからぬことをしてしまったと言う罪悪感が芽生え始める。
蓮の言うことももっともで、その気にさせたのは自分なのかもしれない。
そう思うと、途端に申し訳なくなる。
優太はそっと、蓮の手に触れるとその手を解く。
そして、蓮に向き直りその体を優しく抱きしめた。


優太
「お、オレも無責任なことしたかもな・・・ご、ゴメン。」


「・・・・・い、良いですもう。
その・・・本当にごめんなさい。
か、鍵は外すので優太さんは客室に戻って休んでください。」

優太
「あーーー・・・そ、それなんだけど・・・」


「?」

優太
「やっぱり、一緒に寝てもいいか?」


「え・・・
えぇぇぇええええええええええええええええええ!!!!!!!!!??

優太
「な、なに狼狽えてるんだ!!
じ、自分から誘ってきたんだろ!!!」


「そ、それは変な魔が差したからで・・・
や、やっぱりその・・・ちょ、ちょっと恥ずかしいというか・・・」

優太
「そ、そうか・・・あ、ゴメン。
べ、別に無理にとは言わないよ!!
蓮が無理ならしょうがないじゃん!?
じゃ、じゃあ・・・オレはかえ、」


―――――ッ!!
や、やっぱりダメです!!
せ、折角なので・・・い、一緒に・・・!」

優太
「え・・・あ、まあ、蓮が良いなら・・・」


「は、はい。
その、優太さんとなら大丈夫です・・・
こ、これはホントです!!」

優太
「わ、分かった・・・じゃ、じゃあ・・・寝る?」


「は、はい。」



そのままよそよそしくお互いベットに入る。
しかしベットは広い。
お互い、ベットの端によっていた。
絵面的にはもう台無しの状況である。



「あの、優太さん。」

優太
「え、な、何だ?」


「そ、傍に行ってもいいでしょうか・・・?」

優太
「あ、そ、それは・・・構わないけど・・・」


「じゃ、じゃあ・・・失礼して・・・」



蓮は真ん中くらいまで移動すると、そこで動きを止めた。
そして、



「優太さんも来てください。」

優太
「え!?そっちから来てくれるんじゃないの!??」


「わ、私だけなんて不公平です!!
優太さんも半分来てください!!」

優太
「わ、分かったよ。」



優太も真ん中くらいまで移動する。
すると蓮の顔が割と至近距離にあることに気付いた。
暗くてよく見えないけど、その顔は笑ってるように見える。


優太
「や、やっぱり恥ずかしいなこういうの・・・」


「そうですね・・・
でも、優太さんが傍に居てくれるのは、やっぱり落ち着きます・・・。」

優太
「そ、そうか?オレはソワソワしっぱなしなんだが・・・」


「Hな妄想が波紋疾走するからですか?」

優太
「うんうん、そんな感じ・・・
って何言わせるんじゃーーー!!


「その・・・いいんですか?」

優太
「え?」


「今だったら、本当に誰も来ませんよ?」

優太
「いや、だからそういうのは冗談でも・・・」


「冗談で、こんなこと言うと思いますか?」

優太
「は?」


「さっき言いそびれましたけど・・・
優太さんになら何されてもいいって言ったのは、本心です。」

優太
「ばっ!!だからそんなことこんな状況で言うなって・・・!!」


「こ、こういう時以外に言わないで何時言えばいいんですか!?
ゆ、優太さんだって・・・
ほ、本当は私に触れたいとか・・・そういうこと思ってるんですよね?
だから、城内庭園で私のこと抱いてくれたんじゃないんですか?」

優太
「え、そ、それは・・・」


「あの時、本当に嬉しかったです。
優太さんに求められて・・・本当は今だって、もっと傍で優太さんと・・・」

優太
「れ、蓮・・・」


「優太さん・・・」



二人の距離が徐々に近くなる。
そして、どちらからともなく唇が触れ合い、お互いの温もりを分かち合う。
さきほどの一瞬触れ合わせただけのキスとは違い、今度は蓮の唇の柔らかさを感じることができた。
二人でとても長い時間、その甘いひと時を味わった。
何度も息継ぎを挟みながら、二人は求め合い、欲し合う。
どちらからともなく離れると、何だか素直な気持ちが込み上げてくる。
優太は今の気持ちを正直に口から発していた。


優太
「その、順序とかそういうの滅茶苦茶かもしれないし・・・
さっきみたく意味の分からないことで蓮を困らせたりするかもしれないけど・・・
蓮、オレの隣に居てくれるか?」


「プッ!ゆ、優太さん・・・それじゃあまるでプロポーズですよ?」

優太
「ああ、結婚を前提に付き合おうって意味で!!」


「そういうことでしたか。
優太さんもちゃんと考えてるんですね。」

優太
「まあな。。」


「でも、いいんですか?
私の方が優太さんに迷惑かけることのほうが多いと思いますけど・・・」

優太
「問題ないな。
蓮が居るなら、別になんだって構わないよ。」


「そうですか・・分かりました。
それでは改めて・・・不束者ですが、よろしくお願いします。」

優太
「うん。
何か色々引っかかるけど気にしないことにする・・・」



そう言い合うと、また口付けをし合う。
優太は蓮を抱き寄せると、背中に回した手で腋から腰の辺りまでを優しく撫でる。
くすぐったかったのか、蓮は少し妙な声を発する。
それが何だか心地よく耳に響いてくる。
優太はそのまま手を腋の下からそっと胸の膨らみに持っていき、横からその膨らみに触れた。



「んっ・・・!
ゆ、優太さん・・・どこ触ってるんですか・・・」

優太
「あ、いや・・・その、出来心で!!
い、嫌だよな!!す、スグ止めるよ!!」


「い、いえ・・・別に構わないですけど・・・。
その、急に触られると・・・ビックリしますから。」

優太
「え、じゃ、じゃあ・・・触ってもいい、の?」


「触るだけで、良いんですか?」



潤んだ瞳でそう聞かれると理性が今にも吹っ飛びそうになる。
だが、優太はその気持ちを抑えると蓮を抱き寄せた。



「・・・・・ふふっ。
押しが強いんだか弱いんだか・・・」

優太
「う、うるさいな!!
や、やっぱりそ、そういうことはもっと交友を深めてから・・・」


「そうですね。それが良いと思います・・・
今は、こうして隣に居てくれるだけで幸せです。」

優太
「そ、そうか・・・
こんなので良いなら、毎日でも・・・一緒に居るよ。」


「はい。優太さん・・・」

優太
「うん?」


「大好きです。」

優太
「ああ、オレも大好きだ。」



二人は微笑み合うと、お互いの温もりを共有し合うように寄り添い合い眠りにつく。
明日からは、何か充実した夏休みがおくれそうな予感がした。








~蓮~ HAPPY END♪








あとがき。。






はい、と言う訳で~過去物語~「蓮篇」お楽しみいただけましたでしょうか・・・
期待値上げるだけ上げてのぞんだ今回ですが・・・
正直個人的に思ったような出来に出来なかったのが悔やまれます。
どういうことだよ、、、
オレの脳内ではもっとカッコイイ展開とか用意していたんですが、全部やろうと思うと後半がもの凄く肉厚になる・・・
そうすると読むの大変書くのも大変・・・
そして最後にまとめるのも大変!!!
そんな訳で、今回は途中から少しだけネタの投下を止めてました。
温存したとも言う。。
今回の話は、とりあえず大きな敵と戦わせたい
無駄に壮大にしたい。
というコンセプトで書いてました。
なので描写不足でしたけど、赤龍ヴァルヴェルドはかなり大きな奴です
そしてスンゴイ強いです。
設定上、アルヴィスより強いです
まあ、本気を出した全盛期時代のアルヴィスだったら勝てますが・・・
彼は本気を早々出さないので昔も苦戦したと言う訳です。
そこら辺は置いといて・・・
今回の相手も強いという設定が独り歩きしてて、ぶっちゃけアイツ腕とか尻尾斬られたり引きちぎられてたりしかなかったように思われますが、正直そんなに強かったの?って感じです。
オレが書くとどうしても相手を強く見せられないのが分かりました。
つーか個人的にアイツ強く見えねぇよ!!
とか途中からスッゴク思ってたけど載せちゃったからもう変えられないし・・・
悩みに悩んだ末、このまま行くことに。
まあ最終的に優太が決死の一撃で倒す展開には持っていけたので別に良いかなって思いました。。
新技の『魔氣』ですが、簡単に言えばスーパーサイヤ人状態だと思ってもらえば簡単に伝わりますよね。
この『魔氣』にはまだ派生技が存在し、今回その一部、いや・・・ほぼ全てが、語りはしなかったけど出てきています
それに関しては次回の「愛依篇」の頭で先生に指導してもらうとします。
ほら、あの具現神器とか具現化したの龍とか奏のマントとか星切とか・・・
そこら辺のことですね!!うん、意味分かんね!!
そして我らがもう一人主人公のメダもようやっと真の意味で力を目覚めさせ、過去をしょって生きていくことになりましたね。
二人の殴り合い(と言っても一方的な)ももっと熱く書いてあげたかった・・・
でもあの時点で既に予想以上に話数使っちゃってて削りに入ってたからな
ゴメン。
メダも気づけば彼女持ち(しかも結婚前提)・・・何だこの展開、爆発しろよ。
次はアラド辺りの成長だったり、秘められた力について焦点が当たり始めますが・・・
それは「鳳仙篇」で!!
それと「千草篇」の時と違い、過去話がかなりあっさりしてたのは・・・
正直、蓮の過去はそこまでクローズアップする必要が今のところ無いからです。
ぶっちゃけ何かのついでで語れるくらいの部分なので・・・
そのため、今回は優太との出会い部分のみを語ることに
少し物足りないかもしれないけど・・・ごめん、削りに入ってたから(ry
今回のアナザーエピローグ・・・
ぶっちゃけると当初の予定では最後までイク予定でした。
てか既に書いちゃってました。
「な、何だか・・・少しづつ、平気になってきました・・・」とか言わせてましたスミマセン。
で、書いてから・・・オレの中の優太は間違っても告って速攻こんなことしない!!
とか綺麗事&妬みを込めて削除。。
綺麗な感じにまとまりました。
本編、最後の最後で蓮が「ただいま」って言って戻ってくるのは予定してませんでしたが・・・
何かこの方が帰ってきた感があって良いかもと思い、急遽そういうシーンに差し替えました
本当は「これからもよろしくお願いします」とだけ言って幕引きだったんですけどね・・・
それじゃあ味気ないですものね。。
そんな訳で、長々とあとがきを書きましたが・・・
何が言いたいかって言うと、お前無駄に書き過ぎだと。
もっとコンパクトにできねぇのかのかと。。
長くするのは最終章の「由紀篇」だけにしろよと。。。
そんな神の声が聞こえた気がしました。
でも実際、長くなりすぎたなーーと思います。
この次の「愛依篇」は短いのでさらにそれが引き立つかも。
「愛依篇」「千草篇」と同じような話数で、10話くらいでまとまると思います。
むしろそこまで書くほどネタ広がるかが不明です。
てか待って、流石にあとがきという名の言い訳が長くなりすぎた!!
これは流石に不味い・・・
色付けるのも大変だから、ここらで〆ようかと思います。
では、また「愛依篇」の総集篇で会いましょうノシシ


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[ 1991/04/03 00:00 ] 小説(完全版) | TB(0) | CM(1)

うおおお!

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
ハッピーエンドすぎるーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!(泣)
俺も参加してーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーぇ!
…と我も被害妄想…では次編もがんばって!
[ 2012/12/03 23:37 ] [ 編集 ]

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