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~過去物語~「千草篇」

~過去物語~「千草篇」




第一話「新生活。。」






優太
「あのさ・・・クソジジイ。」

アルヴィス
「なんじゃ?」

優太
「確かにオレは家をくれって言ったよ。言ったけどさ・・・いくらなんでもできるの早すぎだろおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!前回から内部時間的に一夜しかたってないよ!!??」

アルヴィス
「知り合いの奴に何の気無しに頼んだら早速作ってくれたんじゃ。」

優太
「何なんだこの世界・・・存在そのものがチートな奴結構居そうだな・・・。」

アルヴィス
「ははははは!!!まあ、そう落ち込むな!!お前もその内できるようになる心配するな!」

優太
「オレは大工志望じゃねぇよ!!どれかって言うと農林業志望じゃボケえええええええええええ!!!」

アルヴィス
「それは見上げた根性じゃ農。。」

優太
「いやいや、そんな言葉遊びみたいなのやってもアニメ化したら分からなくなるから止めようよ。」

アルヴィス
「書籍化もしてないのにアニメ化何てある訳無いじゃろ・・・。」

優太
「ちょっと言ってみただけだよ!!マジにしないで・・・」

アルヴィス
「ま、そんなことはどうでもいいがの。それじゃ、確かに報酬は渡したぞ。」

優太
「おお、サンキュー!これでイチイチ宿代を払う必要性無くなるぜ。」

アルヴィス
「水道光熱費、食費やらを合わせたら宿に泊まった方が安くなるかもしれんがの・・・」

優太
「え?」

アルヴィス
「ここら辺の税金は高いぞ・・・頑張って稼ぐんじゃな。はっはっはっはっはっは!!!」

優太
「え?え?え・・・・・・・・・?えぇぇぇっぇぇぇぇええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!??????????









由紀達が攫われた『人攫い事件』から一夜が明けた。
あの後、旅館「桜花」で何故か飲めや騒げの宴会が催された。
最初は普通に会食って感じだったのだが・・・
クソジジイ・・・アルヴィスやスコールに酒が入った途端かなり騒がしくなった。
完全に周りを巻き込んで宴会空気にしてしまったのだ。
優太達のほとんどが未成年のため飲まされはしなかったが、メダは完全に飲まされてた。
開始数分で沈んでしまった。
難を逃れたオレ達だったが・・・結局かなりは、ねちっこく絡まれ二人が酔い潰れるまで付き合わされた。
時間的に日付を完全にまたいでいたと思う。
そんな騒がしい夜の後だったと言うのにまるで何事も無かったかのように朝早くにクソジジイに起こされた。
睡眠時間はザッと計算しても四時間くらい。
報酬である家が完成したとか言うので半信半疑付いてきたらマジで完成していたと言う話だった。
しかしクソジジイの言うとおりだ。
水道光熱費、食費・・・そこら辺のことはまるで考えて無かった。
て言うか基本的に戦団としての資本はほとんど0に等しい訳で・・・
貯蓄なんてある訳も無く・・・今日からマジで頑張らないとまず明日以降のエリスとアヤカの生活が怪しい・・・
昨日の今日であんまり働きたくないんだが、四の五の言ってられない・・・
朝食を済ませて、みんなを家に移動させたら今日は自分も一仕事しよう。
優太はそう心の中で決心を固めつつ、「桜花」に戻ってきた。
門を潜ろうとした時、中から誰かが顔を出した。
アレはすみれだ。
すみれとかすみは顔立ちや身体つきもほとんど同じなのだが微妙に違う部分がある。
昨日一日一緒に居て気付いたが、すみれは基本的に常に背筋を伸ばしてシャンとしている。
逆にかすみはどこかだらしなく、背中を軽く丸めている時が多々ある。
もちろん常にではないが・・・
髪型もそれぞれ気を使っているのか違う。
基本的に二人とも長い黒髪なのだが、すみれは髪を後ろで一つにまとめている。
かすみも同じく一つにまとめているのだがその髪を右側で一つにまとめているのだ。
まあ、昨日出会った時点で気付いてはいたがどっちがどっちだか覚えるまでに一日をようしたのでやっとその違いで見分けられるようになった。
それに普段のたたずまいで大体予測がつく。
すみれは常にキチンとしている。
今だって打ち水をしているのだろうが、その一挙手一投足に淀みや無駄がない。
何かかなり完成されているイメージだ。
逆にかすみは一つ一つの行動が雑で、昨夜も徳利を何度もひっくり返して女将に叱られてた。
まあ要するに・・・見た感じしっかりしてそうだったら、すみれで・・・どうも危なっかしい山田みたいなオーラを纏ってたら、かすみだということだ。
そんな訳でこの語シリーズ始まって以来初めてまともな地の文をお送りした所でそろそろ会話シーンに移行しようと思う。
優太は門に近付きながら、打ち水をしているすみれに声をかけた。


優太
「よお、おはよう!すみれ。早いんだな。」

すみれ
「あら、ユウタさん。おはようございます。ユウタさんの方こそお早いんですね。まだ六時前ですよ?」

優太
「いや、クソジジイに起こされてさ・・・。どうやら昨日言ってた家が完成したんだと。それを見に行ってたんだ。」

すみれ
「え、もう完成したんですか?ちなみにどちらに居を構えたんですか?」

優太
「えっと・・・東街のちょっと奥の方。東門の手前の道を南に入って少し行った所。」

すみれ
「ああ、あの辺りですか。結構な一等地ですね。」

優太
「やっぱそうなのか?結構あそこら辺税金が高いって言うからさ・・・今日は真面目に働こうと思うんだ・・・眠いけど。」

すみれ
「ふふっ、昨夜は遅くまでお楽しみでしたものね。」

優太
「へっ・・・おっさんとかとじゃなくて、すみれとかと一緒だったらもっと楽しめたかもしれないけどな・・・」

すみれ
「え・・・?あ、あの・・・それって・・・」

優太
「ああ・・・むさくるしいおっさんの相手してるよりは全然楽だろうって話だ。」

すみれ
「で、ですよね~~~。」

優太
「どうしたんだよ。顔が少し赤いけど・・・」

すみれ
「い、いえ・・・何でも無いんです。」

???
「お・ね・え・ちゃーーーーーーん!!」



突如、背後から声がしたと思ったらすみれの背中にかすみが抱きついてきていた。
走ってきたらしくその勢いが乗っていたためか、すみれは多少上体が前に傾いた。
すみれの手から桶が落ちかける。
寸での所で、踏ん張り倒れることもなかった。
すみれは怒気のこもった声を背中に抱きついてきた妹に発した。


すみれ
「か~す~み~?危ないからイキナリ背後から抱きつくのはよしなさいって何時も言ってるでしょ?」

かすみ
「あ、ユウタ君居たんだ!おはよう!早いんだね!!」

すみれ
「人の話を聞きなさいこの愚妹!!!」

かすみ
「あははは・・・ごめんごめん。やっぱりおねえちゃんと一緒に居ると落ち着くからさ~~。」

すみれ
「全く・・・仕事中なんだから自重しなさいな。それよりアンタ、朝食の準備は済んだの?」

かすみ
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ。」

すみれ
「かすみ・・・アンタ今日賄い抜き。」

かすみ
「ええええええええええええええええええ!!??それは勘弁してよおねえちゃん!!い、今から作るからーーーー!!」



優太は溜息を付きつつ、東の空を見やる。
もうこの時季ともなると日の上りは早い。
刻々とその姿を現す太陽を見つめながら優太は体を思いきり伸ばす。
本日も雲一つない晴天。
清々しいほどに仕事日和だ。
体を伸ばしてから門を潜り旅館に入る。
優太の一日がまた始まった。








由紀
「ほぇーーーーーーー。」


「おっきいね~~~。まあ、ユウちゃん家ほどじゃないけどね。」

優太
「いや、オレの家もここまで大きくは無ぇよ。そりゃあ、農地入れればこれよりは広いけどよ・・・」

千草
「こ、こんな広い家を私達だけで使っていいのか・・・!!」


「一人一部屋でも余るくらい部屋があります。お風呂も広いですし、応接室、調理場、テラスまでありますよ・・・これは値段的に相当な額なんじゃないでしょうか・・・。」

鳳仙
「スゲェ!!地下室まである!!こっちにはトレーニングルームみたいなのもあるぞ!!」


「眠い・・・」

愛依
「か、カナちゃんこんな所で寝ちゃダメだよ!!せめてお部屋で寝ようよ!」


「んーーーーー。私の部屋、どこ~~?」

優太
「勝手に好きな所使えよ。」


「んーーーー。」

優太
「アイツマジで朝に弱いな・・・太陽の下で活動できる時点で結構おかしいんだけどさ・・・。」


「奏さんは特別らしいですからね。普通の吸血鬼とは、肉体の構造が違うのかもしれませんね。」

エリス
「あ、あの・・・本当に御厄介になってもよろしいんですか?」

優太
「ああ。それは気にするなよ。オレ達が居ない間の管理をしてくれるなら別に問題無いから。」

エリス
「え、でも・・・こんな場所、場違いじゃないんですか?め、迷惑ならスグに出ていきます!」

優太
「いやいや・・・迷惑なんて思ってないよ!アヤカ共々、余裕ができるまで・・・いや、もしよければずっとここで働いてくれてもいいんだ。」

エリス
「そ、その・・・ホントに私でよろしいんですか?」

優太
「うん。いいよ。オレだけじゃなくてみんなが良いって言うんだから良いんだよ。」

エリス
「で、でも・・・タダで住ませてもらえる上にお給金も出してもらうなんて・・・」

優太
「いや、だってこの家のことは全部エリスに任せることになるからな・・・それくらいは普通だと思うけど・・・その代り、アヤカの面倒見るのも頼むぜ。」

エリス
「・・・・・はい。わかりました!!こんな私で良ければ・・・ここで働かせてください。」

優太
「よし、そうと決まったらまずは・・・とりあえず買い物だな。必要な物を由紀達と買ってきてくれ。」

エリス
「はい!分かりました!ご主人様!」

優太
「ぶふっ!!?ご、ご主人様~~?」

エリス
「え、ダメですか?千草様はこう言えばご主人様が喜ばれると・・・」

優太
「千草ーーーーーーーーーーーー!!!テメェどんだけメンドクサイこと吹き込んでんだーーーーーー!!!」

鳳仙
「千草ならもう仕事に行っちゃったけど・・・」

優太
「ちぃ!!逃げ足の速い奴め・・・!帰ってきたらただじゃおかねぇ!!」

エリス
「あ、あの・・・でしたらご主人様のことをどうお呼びしたらよろしいですか?」

優太
「え?そうだな・・・別にオレは呼び捨てでも何でもいいんだけど・・・それじゃあ嫌なんだよな?」

エリス
「い、いえ!!嫌だなんて滅相もないです!私はご主人様の命とあらばどんなことでも従います!犬ですから!!!」

由紀
「優太・・・サイテーーー・・・」


「そこまで言わせるなんて・・・救えませんね・・・。」


「え!?エリちゃんって犬だったの!!?てっきり猫だと思ってたよ!!」

愛依
「おねえちゃん、それは一体どういう意味なのかな・・・」


「もしくは兎とか!」

愛依
「お、おねえちゃん・・・!?」

優太
「何故かあらぬ方向から攻撃を受けてしまった・・・ああ、もういいよ。せめて優太様とかにしてくれ・・・その方がひっかりが無い。と、思う・・・」

由紀
「うわぁ・・・自分から様を付けることを強いているよ・・・」


「やっぱり男性の方は上に立ちたい物なのでしょうか・・・」


「え、私もユウちゃんのことユウ様って呼んだ方がいいの?何か韓流スターみたいで嫌だな・・・。」

愛依
「おねえちゃんそういう問題じゃないと思うよ!」

優太
「どうしろと!!?」

エリス
「とりあえず・・・優太様、でよろしいんですか?」

優太
「え・・・うん!そうしてくれ・・・その方がエリスはいいんだろ?人間自然が一番な物だ・・・嫌なら好きなように呼んでくれ。」

エリス
「いえ、嫌だなんて・・・さっきも申しましたが、私は優太様の犬みたいなものですので・・・主人の命に付き従うまでです。」

優太
「うん、その忠誠心は分かった。うん。それはいいよ・・・でもね、エリス・・・頼むから『犬』って言うのは止めてくれ・・・周りからの視線が痛い・・・!!」

エリス
「は、はい!申し訳ありません優太様!!犬の分際で主人の意に反することをしてしまうなんて・・・エリスは犬失格です!!」

優太
「お前人の話聞いてた!!?その『犬』を止めろって言ってんだけど!!??」







その後・・・エリスが何度も「犬」と言う単語を連呼したお陰で由紀達の視線が背中に刺さりまくった。
とりあえず・・・仕事が終わったらエリスと真面目に話し合おう。
それだけは胸に誓った。
由紀、愛依、エリスの三人は必要な物資の購入に街に出た。
お金の方はとりあえず昨日のうちに千草や鳳仙が稼いできた即金があったのでそれを使うことにした。
鳳仙と千草それぞれの取り分のうち、鳳仙が取る筈だった分を鳳仙が譲ってくれたのでそのまま資金として利用させてもらう話になった。
鳳仙曰く、お金は別に今の所必要ないらしく、元から手に入った報酬は優太に渡すつもりだったらしい。
その鳳仙も千草の後を追って仕事をしに行った。
蓮と唯は午前中は身の回りの整理をするとかで家に残った。
奏も残っているが、昼寝ならぬ朝寝をしている。
多分あの調子だと夕方まで起きないかもしれない。
優太はと言うと、実は事前にスコールに呼ばれていた。
なので東街でも北の外れにある『天統べる煌星』のホームと言える場所を目指していた。
どうやら仕事の話らしいが・・・
そうこうしている内に目的の場所が見えてきた。
大きさは優太達のホームに負けず劣らずという感じだ。
入り口前に立て看板が出ており、そこに『天統べる煌星事務所』とか書かれている。
優太はとりあえずドアを二、三度ノックする。
すると中から、


??
「はいはい。少々お待ちください!」



そんな女性の声が聞えたと思うと、少しの間が開いた後にドアが開かれる。
その向こうに居たのはメダのパートナーだと言っていたネロだった。
ネロは微笑みながら中へと通してくれた。


優太
「で、話って言うのは?」

ネロ
「あ、それはお父さんから聞いて。部屋に居ると思うから、すぐ案内するね。」



お父さんとはスコールのことらしい・・・。
昨夜知ったことだが、どうもこの二人は親子らしい。
まったく似てないけど。
どうやったらあんな筋骨隆々とした親父からこんなキレイな人が生まれて来るんだ・・・
母親がきっと美人なんだな。
そう勝手に解釈しているとある部屋の前でネロが歩みを止める。
どうやらここがスコールの部屋らしい。


ネロ
「お父さん。優太君を連れてきたわよ。」



『おぅ!来たか・・・通せ。』


ネロ
「入っていいって。」

優太
「案内してくれてありがとな。」

ネロ
「ううん、別にいいのよ。あ、そうだ飲み物は何がいいかしら・・・日本人だから緑茶がいい?」

優太
「いや、ありあわせの物でいいよ。面倒だろうし。」

ネロ
「そう、ならコーヒーにしておくわね。スグ持ってくるわ。」

優太
「ああ。」



ネロはそう言う階段を下りて行った。
それを見送ってから優太は改めてドアのノブを回し、室内に入った。
ドアを開けてすぐ目の前にスコールが居り、その手前のソファーには何故かメダが寝転がっている。
優太は何してんだコイツと思いつつも、まずはスコールに向けて呼び出した用件を聞いた。


優太
「それで、オレに何の用があるって?」

スコール
「なに、ちょっとしたお使いを頼もうと思ってな。そこで倒れてるオレの弟子と一緒にな。」

優太
「お使い?」







第二話「復讐者。。」






今日はとてもいい天気だ。
あ、これ本日二度目だねとかそういうことを思いつつ、優太はバスに揺られながら窓の外の景色を眺める。
隣では未だにメダがダルそうにしている。
どうやら昨夜の酒が残ってしまっているようだ。
いわゆる所の二日酔いと言う奴らしい。


優太
「おい、メダ。お前マジで窓際じゃなくていいのかよ・・・。」

メダ
「止めろ・・・話しかけるな・・・もう、結構限界なんだよ。」

優太
「それ早く言えよ!!と言ってもオレ何も持って無いんだけどさ!!あーーもう!もうちょっと我慢しろよ!?」

メダ
「心配するな、絶対・・・吐かない。」

優太
「え?穿いてないの??」

メダ
「ふざけるな・・・!そんな言葉遊び的なのに付き合えるほど・・・ウプッ!!」



マジで辛そうなメダを横目に、優太は今までの経緯を思いだしていた。
そう、あれはつい数十分前・・・







優太はスコールに呼ばれ、『天統べる煌星事務所』に足を運んでいた。
団長室に通され、ソファーに横たわるメダとがやけに滑稽に見えたのを覚えている。
ネロが出してくれたコーヒーを片手にスコールは黙々と「お使い」について話しだす。


スコール
「『お使い』と言っても、何か買って来いって訳じゃない。ちょっとした言伝を頼みたいんだ。」

優太
「??言伝くらいなら電話かなにかで話せばいいじゃなイカ・・・。」

メダ
「バカかお前は・・・電話で話せないから言伝を頼むんだろ・・・」

スコール
「ま、そういう訳だ。本当ならメダ一人で行かせようと思ったんだが・・・コイツ昨日の酒が抜けて無いみたいでな。ちょっと心配になってお前に声をかけたのさ。」

優太
「え・・・ネロと行かせりゃあいいんじゃあ。そうじゃなくても一緒に行ける奴がいるだろ?」

スコール
「生憎、団員のほとんどが違う仕事で居ないんだ。ネロも人手不足で事務所のカウンター役をやってもらってるからな・・・今日は事務仕事。」

優太
「なるほど・・・でも、何でオレ?オレ以外にもっと良いヤツが他の戦団に居るだろ・・・オレ、昨日戦団立ち上げたんだぜ?」

スコール
「そこはアレだ・・・お前が気に入ったから。じゃ、ダメか?」

優太
「本当の所は?」

スコール
「メダがお前のこと気に入ったみたいだから。」

メダ
「団長!!アレはそういう意味で言ったのでは・・・ウッ!!」

優太
「おいおい、大丈夫か?」

メダ
「お前に心配されることは・・・無い!」

スコール
「ま、何はともあれ一人で行かせるのも心配だから一緒に付いて行ってやってくれ。」

優太
「まぁ、暇だからいいけど・・・報酬は?」

スコール
「とりあえずメダとの割り勘ってことで・・・十万Gの半分、五万Gでどうだ?」

優太
「ん?確かそれって日本円に換算すると・・・五十万!!??こんな簡単な依頼でそんなに払ってくれんの!??」

メダ
「それだけ・・・重要な言伝を頼むと言うことだ・・・いい加減学習しろ・・・オエ・・・!」

優太
「いや、お前そんなゲロ吐きながら言われても説得力ねぇぞ。」







と、そんな感じでスコールからイキナリ五十万という多額?な報酬をチラつかされ、割と簡単に快諾はしたが・・・
今更ながら何かありそうでちょっと不安だ・・・。
少なくともこの二日酔いの相手は普通にしんどいんだが・・・精神的に。


優太
「お、見えてきたぜ。アレが『工房街』って奴か!」



バスで王都を出て数十分。
東門を抜けて草原地帯をしばらく進んだ先にその街はあった。
『工房街』と呼ばれるその街は、その名が示すとうり工房が盛んな街らしい。
『ギルド』で支給される武器などの類は大概ここで作られたものらしい。
バスは門を抜け、街にはいる。
ほどなくしてバスは止まり、到着のアナウンスが流れる。
優太はメダをどうにか立たせ、二人分のお金を払うとバスを降りる。


メダ
「わ、悪いな・・・。」

優太
「いや、これくらいはいいけどさ。で、どっちだよ。王都ほど広くないとは言え、オレは初めてなんだ。どこが目的の店だ?」

メダ
「ああ。こっちだ・・・いや、その前に・・・オボロシャーーーーーーーーーーーー!!!



何の脈絡も無くメダが道の脇で吐き出した。
優太は一瞬ビビるが、とりあえず見ないようにしてメダの背中をさすってあげた。
どれくらいの時間、こうしていただろう・・・
もう機械的に撫でる程度に収めていた手がふと持ちあがる。
メダが立ち上がったようだ。
優太はそれに習って立ち上がる。


優太
「もういいのか?」

メダ
「ああ、全部出た。もう大丈夫だ・・・多少は気持ち悪いが・・・」

優太
「そうか。んじゃ、行こうぜーー。」

メダ
「そ、その・・・悪いな。さすってもらって。」

優太
「いや、だから別にいいって・・・とりあえずお前は、酒を飲まない方が良いぞ。」

メダ
「分かった。善処する。コッチだ。」

優太
「え・・・そんな路地裏なのか?」

メダ
「まあ、ちょっと特殊な店でな。」



メダに連れられ路地裏をしばらく進む。
元々明るい街ではないが、路地裏ともなるとそれが顕著だ。
さっきから足元をネズミが何度も行ったり来たりしている。
どんだけ不衛生なんだ・・・と考えながら周囲を見回す。
そこかしこに酒の瓶が散乱し、残飯の類が散らかっている。
それが合わさって一種の悪臭を放っているのが特にキツイ。
これ、服に臭いつかないよな・・・と心配していると目の前に一つのボロ屋が見えてくる。
所々が隙間だらけで風通しはよさそうだ。
屋根もトタンで出来ているが、錆びていて元の色がほとんど判別できないくらいになっていた。
メダはそのボロ屋のドアを開ける。


ボキッ!!


とてもドアを開けたとは思えないような音が聞えた。
それもその筈。
ドアを支えていた蝶番が真ん中から折れたからだ。
しかし、それもその筈。
蝶番自体が錆びてボロボロになっていた。
これじゃあ開けた瞬間に折れて当たり前だ。


メダ
「おい、じいさん。スマネェ、またドア壊しちまった。」

???
「な~にがスマネェじゃ!!どうせまた無理矢理開けたんじゃろ!!」

メダ
「フィルじいさん・・・。流石にオレもそこまでバカじゃないんだが・・・。まあ良かったじゃないか。また一段と風通しがよくなったんだし。」

フィル
「なんじゃと!!?ワシがハゲだと言いたいのか!??」

メダ
「言ってないだろそんなこと・・・ああ優太、この人がフィルじいさんだ。」

フィル
「ん?だれじゃソイツは・・・まさかメダ、お前・・・衆道に目覚めよったのか!!??」

メダ
「断じて違う!!!」

優太
「どうも始めまして。優太と言います。」

フィル
「ワシはこの工房を預かるフィルじゃ。」

メダ
「じいさん。今日は団長から言伝を頼まれたんだ。『アレを磨いておいてくれ』ってさ。」

フィル
「・・・ふむ。なるほど、分かった。やっておこう。」

メダ
「じいさん、アレってもしかして親父の・・・」

フィル
「ワシから教えられることは無い。強いて言うなら・・・時が近付いておるのかもしれんのう。それだけじゃ・・・」

メダ
「・・・もしかして、親父に関わることか?」

フィル
「さあのう・・・。」

メダ
「まさか・・・!アイツが見つかったのか!!?」

フィル
「だから、ワシが知るわけないじゃろ・・・。」

メダ
「そうか・・・なら団長に直接聞く!優太、用は済んだ!帰るぞ!!」

優太
「え・・・あ、おい!!待てって!!」



メダは急に顔色を変えて工房を後にする。
優太もそれに続いて工房を出る。
工房内にはまたさっきまでの平穏が戻って来ていた。
フィルは手近にあったパイプを咥える。
そして物思いにふけながら二人が開けていったドアの外を見やる。
二人の姿は既に見えなくなっていた。


フィル
「そうか、もうメダも十八・・・ダリウスよ、お前の息子は強くたくましくなった。もう、良いのかもしれんのう。」



そう言うと、机の下から布にくるまった物体を取り出す。
その大きさは横の長さだけでこの机と同じくらいの長さがある。
机の長さは約二m。
フィルはその布を捲る。
その中身は煤けて、所々がボロボロに欠けたドリルだった。
フィルはそのドリルを持つと、奥の工房に入っていく。


フィル
「スコール・・・お前がコイツを使うと言うことは、つまりアイツが来ているのじゃな・・・王都に。皮肉なものじゃ・・・この廻り合わせは・・・。」







フィルの工房を出てからメダは終始無言のままだ。
早々に帰ってきたため、さっき乗ったバスが折り返して王都に向かう所だったのでそれに乗り込んだ二人だったが・・・
さっきからメダが妙にピリピリしており、優太は若干居心地の悪さを感じていた。


優太
「(・・・あんまり他人のプライベートに踏み込むものじゃないが・・・流石に気になるな・・・)」

メダ
「さっきから何だ?」



優太の奇異の視線に気付いていたのか、メダはイキナリ話しかけてくる。
結構突然だったので優太は多少気持ちが後ろに向いた。
が、折角聞いてきたのだ。
この流れは大事にしないといけない。
優太は意を決し、気になっている事柄を問いただすことにする。


優太
「その、さっきのやりとりはどういう意味が?」

メダ
「お前には関係無い。」



即答。
ですよねーーー。と内心思いつつ、優太は諦めがついたのか追及は止めた。
まだメダとはあまり仲が良い訳じゃない。
一度共闘しただけで、まだランク的には顔見知り程度なのだ。
そんな相手に自分のプライベートを暴露する奴が居るとは思えない。
と言うか自分だったら多分話さない。
優太は速攻で思考を回し、口を閉じる。
言いたくない相手にこれ以上何を聞いても同じだと思ったからだ。
もうこのままさっさと王都に帰って報酬を貰おう。
あ、て言うか報酬って手渡しされるものなのかな・・・と考えていると、突然メダが切り出してくる。


メダ
「さっきのだが・・・オレの親父のことだ。」

優太
「え?」

メダ
「聞きたかったんじゃないのか?」

優太
「いや、オレとお前ってそんなに仲良くも無いし・・・話してくれないと思ってた。」

メダ
「オレもお前のことはまだ好かん。だが、あんな言い方されたら気になるのは確かだからな。」

優太
「まあな。」

メダ
「十ニ年前・・・王都である事件があったんだ。」

優太
「事件?」

メダ
「ああ。度々戦団員を狙う殺人事件が起こったんだよ。」

優太
「・・・。」

メダ
「その事件で・・・オレの親父は殺された・・・。」

優太
「え?」

メダ
「親父は・・・団長の師匠だと聞いている。あの団長が師と仰ぐんだ。相当の強さだったんだろう。」

優太
「そ、そんな人が何で殺されたんだ?」

メダ
「分からない。でも、親父はその事件の犯人を突き止め、追い詰めた。だが、あと一歩と言う所で返り討ちにあったらしい。」

優太
「・・・」

メダ
「何で最後の最後で返り討ちにあったのか・・・オレは知らないが、団長は知っているらしいんだ。聞いても教えてくれないが・・・」

優太
「何でだ?」

メダ
「知るか。だが、決まってそう聞くと団長はとてつもなく険しい顔をして席を外すんだ・・・きっとオレの知らない何かを知っている。今回だってそうだ、何かを隠しているんだ。もしかしたら・・・アイツが、親父を殺したアイツが見つかったのかもしれない!」

優太
「え?やっぱりソイツは捕まってないのか?」

メダ
「ああ。親父に追い詰められたからか、それを最後に王都から姿を消したんだよ。」

優太
「じゃあ・・・まだどこかで。」

メダ
「生きてる、ハズだ。いや・・・生きていてほしい。」

優太
「え?何で・・・」

メダ
「決まってるだろ・・・アイツを見つけ出して、復讐するためだ。」

優太
「なっ!」

メダ
「オレが絶対に見つけて、捕まえてやる!そして親父の仇と、親父が果たせなかったことを果たす!それがオレの生きる意味なんだ。」

優太
「いや・・・でも、」



優太は喉まででかかった言葉を飲み込む。
それだけメダから覇気を強く感じたからだ。
こういう相手に何を言っても無駄な物だ。
かつての自分がそうだったように・・・


メダ
「多分、アイツが見つかったのかもしれない・・・そうだとしたらオレも捜索に入らないとならない。誰にも邪魔させない・・・絶対に、この手でアイツを・・・!」



そういうメダの目は窓の外を見ていたが、多分実際は見てはいない。
メダが見ているのは、窓の外では無く・・・その捕まえるべき宿敵の姿なのだろう。
優太はかける言葉も見つからず、ただ黙って座って居るしかできなかった。
バスは何事も無く草原を進んでいく。
そしてものの数十分で王都に着いた。








???
「・・・コイツはどういう訳だ?」

????
「何って請求書ですよ?この前、私が買った商品代金の全額返済を請求させて頂こうと思いまして。」

???
「ま、アレはこちら側のミスな訳だし・・・仕方がない、が。この百万Gってのは何だ?」

????
「賠償請求ですが・・・?」

???
「ちょっと待て・・・代金を全額返済の上に慰謝料までせびろうってのか!?カリスト・・・!」

カリスト
「せびろうなんて・・・そんな気はありませんよ?当然の請求だと思いますがね。アレはとても貴重なサンプルだったんですよテッカ・・・アレの体を調べれば私の目指す『頂き』に近付けたかもしれないんですからね。」

テッカ
「ふん。どうせ悪趣味な人体実験でただの肉片にしちまうのがオチだろ・・・。」

カリスト
「『頂き』を目指すための尊き犠牲と言う奴ですよ・・・。」

テッカ
「よく言うぜ・・・この異常者が・・・」

カリスト
「別に現金で百万を払えとは言いません。それに見合うだけの素体を提供してくれるなら考えなくもないですよ?」

テッカ
「はっ・・・生憎そんな『希少種』の手持ち、今は無ぇよ・・・。」

カリスト
「ま、いいでしょう・・・数週間待ちますから百万払うか、それに見合う素体を見つけて来るか・・・好きな方を選んでください。個人的には、お金よりも素体の方がいいですねぇ~。」



カリストと呼ばれた男はそれだけ言い残すとソファーから立ち上がり、後ろにあるドアを開けその場を去った。
テッカはそれを確認するとソファーへ寄りかかる。
顔を上へ向け、大きな溜息を吐きつつ・・・


テッカ
「なぁにが『素体がいいですね』だ・・・。クソが・・・」



と、毒づいた。
すると背後から誰かが近付いてくるのに気付く。
頭をそのまま後ろに向ける。
そこには柔和そうな微笑みを浮かべている一人の優男が立っていた。
しかし、その微笑みからとは裏腹に全く隙が無い。
むしろこっちに若干殺気を飛ばしてきている。
そして一番不釣り合いなのはその手にハメられた長さ十cmはありそうな鉤爪だ。
男はさっきから引っ切り無しにその鉤爪をガチャガチャと鳴らしている。
油断すると今にもあの鉤爪をこちらに向けるのではないかと思えてくる。
テッカは呆れたようにその優男に声をかける。


テッカ
「ドレイク・・・お前、オレに殺気を飛ばしてどうしようってんだ?」

ドレイク
「いえ、なに・・・これは仕事柄上全身から溢れてしまう物で・・・あまり気にしないでください。」

テッカ
「じゃあ、その手にハメた鉤爪をガチャガチャするのを止めろ。」

ドレイク
「おっと失礼・・・。昔からのクセでして・・・最近はメッキリ人を殺して無い物で・・・ちょっとばかり欲求不満なんです。」

テッカ
「あわよくばオレを殺ろうと思ったって訳か・・・」

ドレイク
「さあ・・・どうでしょうなぁ~?」

テッカ
「・・・」

ドレイク
「そう睨まないでください。私も流石に今度のパートナーさんとやり合おうなんて思いませんて・・・」

テッカ
「パートナー・・・だと?」

ドレイク
「次の仕事はご一緒する。と言う意味ですが?」

テッカ
「ああ・・・王都での例の下準備の仕事か・・・昨日のアレの所為でこちとら予定よりも損害が厳しくて割ける人員が残ってねぇってのに・・・あのブタ野郎。」

ドレイク
「そのための共同戦線ですよ。私もちょっとばかし王都に用がありましてね・・・」

テッカ
「なんだよ・・・それ。」

ドレイク
「収穫、と言う奴ですかねぇ・・・十二年待ち続けた果実をこの手で摘み取りに行くんですよ・・・」

テッカ
「けっ、そうかよ・・・好きにしやがれ。決行は明日だ。準備だけはぬかるなよ、殺人鬼。」







第三話「メイド誕生。。」





すみれ
「はい、それでは・・・二万Gちょうどお預かりします。」

優太
「悪かったな。ちょっとの間とはいえ滞納しちまって・・・」

かすみ
「そんなこといいんだよ~~。ちゃんと払ってくれたしね。それより、ユウタ君はお昼食べた?よかったら食べていかない?」

優太
「あ、いいや。昼は戻って食べようと思ってたから・・・悪いな。」

すみれ
「いえ、気にしないでください。お食事はまたの機会に。」

優太
「そうだな。また今度誘ってくれよ。じゃ、オレは帰るわ。またな!」

すみれかすみ
「「またのご利用お待ちしております。」」



優太はメダと一緒に一回事務所の方に戻った。
そこでメダが一人で団長室に行ってしまい、どうしようかと思った所にネロが下りてきたので事情を説明・・・
するとテーブルの中から封筒を取り出して中に報酬の五万Gを入れてくれた。
それと何だか知らないが「これもあげる。」と言われ、小包の様な物を貰った。
ネロに聞くと洋服らしい。
物を間違って注文してしまったらしく、どうしようかと思っていたようだ。
その場で開けはしなかったが、とりあえずもらっておくことにした。
その後帰る前に入ったお金で昨日の宿泊費を払ってしまおうと思い、南街の「桜花」に出向いていたわけだ。
何故かちゃっかりエリスとアヤカの分の宿泊費を払わされた時はちょっと泣きそうだったのは秘密だ。
そんな訳で優太は中身が三万に減った封筒と中身不明(洋服だと言う話だが)の小包を持って我が家である「暁館」(今付けた)に向かっている最中だった。
その道すがら、中心街の噴水傍で聞き慣れた歌声に目がそちらを向く。
そこには老若男女問わず様々な人たちに囲まれながら歌っている唯の姿があった。
アイツ家で部屋の整理(と言っても今日入居したばかりで何もないけど)するとか言って無かったけ?
と、疑問を思い浮かべつつその輪に混ざる。
唯の歌っている歌は誰でも知ってる童謡だった。
他愛のない普通の歌の筈なのに、聞いているだけで何だか体の底から力が湧いてくる感覚がある。
その所為か人を惹きつけているのかもしれない。
しかし、唯本人はその事を意にも介してない(多分気付いてないだけ)ようで悠然と歌い続ける。
そして、その歌が止んだ時・・・周囲から拍手が鳴り響いた。
唯はかなり本気目に驚いていた。
どうやら今の今まで本当に気付いていなかったらしい。
いくら目を瞑って歌っていたとはいえ鈍すぎる・・・
人が次々と引けていくと、その隙間から唯と優太の目が合う。
唯は笑顔で走り寄ってきた。



「ユウちゃん!こんな所でどうしたの?お仕事してるんじゃなかったけ??」

優太
「ああ。何かキリもいいから帰ろうと思ってたら唯の歌声が聴こえてさ・・・。」


「そうだったの?えへへ、何か気付いたら色んな人たちに囲まれててビックリしちゃったよ~~。」

優太
「お前はもうちょっと周りに気を張れ・・・。」


「うん、気を付ける~~。あ、と言うか何だか知らないけどみんながちょこちょことお金くれたんだけど・・・」

優太
「マジで?」



優太は唯が差し出してきた硬貨に目を向ける。
まだどれがどれくらいの価値のある硬貨か判別がつかないので正確な額は分からないが・・・
大小様々な種類の硬貨ばかりで、お札は見当たらない。
多分大して額でも無いだろう。
きっとチップと言う奴なんだろう。


優太
「多分、チップかなんかじゃないか?どうせ大した額でもないだろ・・・貰っとけよ。」


「うーーーーん。でも、お金が欲しくて歌ってた訳でも無いんだけどなーーー。」

優太
「唯の歌を聴いて元気をもらったからそのお礼みたいな物だろ?別にそこまで深く考えなくてもいいと思うぜ?実際、凄く上手かった。」


「ホント?」

優太
「ああ。また上達したんだな・・・あとはギター弾きながらできたら完璧なんだけどな。」


「あうっ・・・それは言わないでよ~~。これでも頑張って練習してるんだから!」

優太
「そうだな。知ってるよ・・・とりあえず腹減ったし、帰らないか?」


「うん。そうだね!」



二人は並んで歩きだす。
足を「暁館」へ向けて進め始めると、唯が優太の持つ小包に気付いたのか軽い調子で聞いてくる。



「それ、な~に?」

優太
「ん、何か洋服みたいなんだけど・・・」


「へ~~。誰かにプレゼントするの?」

優太
「ん・・・そう、なるのか?ああ・・・そうか。じゃあ、唯いるか?」


「くれるの?」

優太
「いや、別にこれ自体貰い物だし・・・別に誰にあげても同じだし。」


「あ・・・それならさ、エリちゃんにあげれば?」

優太
「エリス?」


「うん。エリちゃんそんなに服持って無いみたいで・・・って当たり前か。昨日までアレだもんね・・・」

優太
「そうか・・・それもそうだな・・・サイズが合うか分からないけどエリスにあげるか。唯、悪いな。一度はお前にやろうとした物なのに・・・」


「そんなの別にいいよ~~。それより、そうと決まれば善は急げだよ!早く帰ろう!」

優太
「ああ。そうしよう!」







エリス
「おかえりなさいませ。優太様、唯様。」

優太
「ただいまーーー。って他の連中は?」

エリス
「由紀様と愛依様はまだ買う物があると言って引き続き買い物に出かけました。蓮様と奏様は部屋におられます。鳳仙様と千草様はさきほど戻られましたが仕事を引き続きするようなのでお昼はいらないと言っていました。」

優太
「そっか・・・。じゃあ、とりあえず居る奴らだけで昼飯にしよう。唯、蓮と奏に声かけてきてくれるか?」

エリス
「あ、それなら私が・・・」


「いいよ~~。エリちゃんは食事の準備とか色々あるでしょ?私が行ってくるよーー!」

優太
「そういう訳だ。準備頼むぜ、エリス。」

エリス
「はい。それでは、そうさせてもらいます。と言ってももうできていますので温めるだけですけど。」

優太
「あ、そうだ。エリス・・・コレ。」

エリス
「これは?」

優太
「何か服みたいなんだけど・・・エリス、まだそんなに服持って無いだろ?コレ、足しにしてくれ。」

エリス
「よ、よろしいんですか?」

優太
「ああ。まあ、サイズが合うか分からないけど・・・て言うか何が入ってるのかすら分かんないけど。」

エリス
「・・・嬉しいです。優太様からの贈り物だなんて・・・一生大事にします!!」

優太
「そんな大げさな・・・あ、そうだ。折角だから着て見せてくれよ。見せられそうな奴だったら・・・」

エリス
「はい!それじゃあ、ちょっと着替えてきます!!」

優太
「え、中身くらい確認してから着替えろよ!??何が入ってるか分からないんだからな!!」

エリス
「はい!存じてます!!」

優太
「大丈夫か・・・ホントに。」





とりあえず玄関に居ても仕方がないので食堂で待つことにした。
食堂とキッチンが併設されて居るため、入るとすぐにキッチンの方から良い匂いがする。
優太は適当な椅子を引いて席に付く。
すると、その後に食堂の扉が開く。
そこから唯と蓮の二人が入ってきた。
蓮は自然と優太の左隣、唯は右隣に座ってくる。
優太は別に気にはしなかったが、話すんなら対面の方が話しやすいんだけどなーーとか思ったが言わないでおいた。




「優太さん、お疲れ様です。」

優太
「ああ、そこまで大変な仕事でも無かったから問題無いよ。蓮は午前中何してたんだ?」


「とりあえず昨日買って手元にあった本を整理していました。本棚も数個購入して・・・あ、そうでした。二階の大広間を図書館に改装しましたのでお伝えしておきます。」

優太
「既に!!?どんだけ本棚購入したんだ・・・」


「いえ、まだそこまでは・・・これから増える予定ですけど・・・」

優太
「増えんのかよ・・・まあ、いいけどさ。どうせ部屋余ってる訳だし。あれ、そういえば奏は?」


「声かけたけどまだ寝たりないみたい。その内起きて来るんじゃないかな?」

優太
「ま、それは予想の範囲内だな・・・」



三人でしばらくの間談笑を続けていると食堂の戸を叩く音が聞こえた。
三人同時にそちらを向くと、戸の向こうから律儀に


『エリスです。失礼します。』


と、言ってから戸が開いた。
しかし、そこに居たのは・・・『メイド』さんだった。
いや、何と言うか服装からして『メイド』さんなのだけれど何故かその立ち振る舞いといい完全無欠に『メイド』さんしていた。
どこかの電気街でよく見かけるような、なんちゃって『メイド』ではなく、完璧な『メイド』がそこに居た。
頭にはフリルと両サイドに紺色のリボンの付いたカチューシャを付け、下地が紺色のエプロンドレスを身にまとっている。
スカートの長さも膝下まであり、この時点でなんちゃってではない所謂「ヴィクトリアンメイド」を彷彿とされる。
黒のパンストか、タイツを穿いている様で妙に脚のライン(と言ってもほとんど膝下数cmしか見えないけど)がキレイに見えた。



「あーーー・・・なるほどそう言う話でしたか・・・優太さんって結局そう言う趣味があったんですね。」



蓮はそう言うと黙って二つほど隣の席へ移動した。
それが今の自分たちの心の距離だと言うかのように・・・


優太
「え!?あ、いや違う!!これには深い事情があって・・・!!た、確かにあのメイド服はオレが上げた物だけど・・・!!」

エリス
「そうです。これは優太様が私にくれた初めての贈り物です・・・本当にありがとうございます。こんな素敵な服をプレゼントされたのは生まれて始めてです!!」

優太
「いや、ちょ!!?エリスも話抉らせないでくれるかな!??蓮がさらに席を離されておりますので!!」


「ふぉぁぁ~~~~・・・ねむ・・・ん?エリスなんだその恰好・・・メイド??」

エリス
「はい!優太様が服と一緒に私に役目をお与えくださったのです!!私はこれから優太様、引いては皆さまのメイドとして精一杯働いて行こうと思います!」


「・・・つまりユータはメイド好きの変態野郎ってことか・・・引くわぁーーーー・・・。」

優太
「だから誤解だって言ってるだろ!!人の話を聞けーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」



その後食事中ほぼずっとその話題で持ちきりだった。
どうにか誤解は解けた物の・・・
これを残りの奴らにも説明するのかと思うと気が気じゃなかった・・・Orz








昼食後、手持無沙汰になってしまった優太は自室で適当に武器の手入れをしていた。
そんな折、コンコン!と戸を叩く音が聞こえた。
エリスかと思ったが、聞こえた声は違う人物の物だった。



「優太さん、よろしいですか?」

優太
「蓮?どうした・・・。」



戸を開けて入ってきたのは蓮だった。
その手にはパイの様な物とティーセットを載せたトレイを持っていた。
蓮はそのまま室内に入り、テーブルの上にトレイを置きながら



「一緒にお茶でもどうですか?」



と、訪ねてくる。
そういえば調度小腹が空いていた。
優太は二つ返事で了承すると、『竜牙』を鞘に納めてベットに置くとソファーに適当にかけた。
蓮は手馴れて様子で紅茶のカップと十等分にされていたパイの一つを皿に盛ると優太の前に置く。


優太
「ありがとう。」



優太はまず紅茶を口に含む。
正直紅茶はそこまで好きでもないのだが、蓮の淹れてくれる紅茶は美味しいので普通に飲めた。
そこまで銘柄に詳しくも無いのでこれが何の紅茶なのかは分からなかったが、鼻から抜ける香りは何となく心を落ち着かせてくれた。



「今日は八朔が何故かあったのでマーマレードパイにしてみました。」

優太
「何で八朔・・・?随分とマニアックなの出てきたな・・・。」


「私も初めてでしたけど、思ったよりは簡単に出来ましたよ?」

優太
「へぇーーー。どらどら?」



優太は目の前に配膳されたマーマレードパイを手に取る。
フォークを使って一部を切り取る。
思ったより生地は固くなく、あっさりフォークが入ったのはちょっと驚いた。
それを口に入れる。
すると、一噛みしただけで口内に八朔の若干の苦みが広がる。
が、すぐにそれを丸めてくれるまろやかな味が苦みを包み込んでくれる。
これはなんだ?チーズ?



「どうですか?」

優太
「うん、美味いよ。でも、このまろやかな感じは?チーズかなにか?」


「クレームダマンドとクリームチーズです。本で読んだんですけど、こうすると苦みを活かしつつ味を拮抗させてくれるみたいです。」

優太
「へぇーーー。そうなのかーーー・・・ある意味クセになる味だな。」


「お口にあったならよかったです。」



蓮はそう言うと、自分もパイを口に運ぶ。
ゆっくりと噛んでしばらく味わうと・・・



「個人的にはやはり苦みを味わうにはチーズが邪魔かもしれませんね・・・。」

優太
「そうか~?コレくらいの方がオレは好きだけど。」


「やはりそこら辺は好みなのでしょうか・・・でもまあ、優太さんはコレくらいが好き・・・ですか。覚えておきます。」

優太
「ああ。オレはコレくらいが好きだな。」



優太は紅茶とパイを交互に食べる。
苦みを丸めてくれてるとはいえ、やはり苦いことには変わりが無く紅茶が甘く感じた。
その後も蓮と軽い談笑を交えつつ、紅茶を二杯も飲んでしまった。
自分の分のパイを食べ終え、四杯目になる紅茶を飲んでいると蓮が話しかけてきた。



「そう言えばアヤカさんの容体は大分安定してきましたよ。」

優太
「そうか。じゃあ、帰る前に起きるかな・・・せめてオレの口から色々と説明したいし・・・」


「そうですね・・・何時目覚めるかは分かりませんが今日中には意識を取り戻すと思います。」

優太
「しかし・・・結局『凄然の風』の団長は見つからないらしいな。」


「らしいですね。どうやらあの施設には居場所を特定できそうな証拠は残されていなかったそうですし・・・」

優太
「テッカ・マングローブとか言ったか・・・団長の名は・・・。エリスやアヤカをあんな目に合わせた張本人だ。会ったらタダじゃおかねぇぞ・・・」


「まあそうですね・・・そのためにも、これからは少しづつでも情報を集めませんとね・・・。」

優太
「やっぱそう言うことには奏の方が精通してそうだよな。そういう裏方生活長かったらしいし・・・。ちょっと頼みづらいけど、トマトで釣れるかな?」


「大漁だと思いますbb」

優太
「今週はもう帰らないとだから、来週からでいいか・・・GWも先だしなーーー。週に二日が限界だもんなこっちに居られるの。」


「まあ、私はなんでもいいですけど・・・あ、私はちょっと出かけるのでここで失礼しますね。」

優太
「え、今から?」


「夕飯までには帰ります。心配はしないでください。」

優太
「ん、分かった。パイありがとな。美味しかったぜ。」


「はい、お粗末さまでした。」



蓮は戸を閉めて出て行った。
優太はソファーから立ち上がるとベットに腰を掛け直す。
そして『竜牙』を手に取り、鞘から少し刃を出す。
コイツも結構使ってきているからか最近は少しガタついている印象をうける。
今度来た時は鍛冶師辺りに整備、調整を頼んだ方が良いかもしれない。
どこまでいっても優太はこの手の素人でしかない。
扱い方が分かるからといって、整備の仕方が分かる訳ではなかった。
今までは適当に磨いたり、研いだり・・・かなり雑に扱ってきたのは確かだ。
ここいらで本職に見せるのもいいかもしれない。
とりあえず来週になったら鍛冶師を探しに工房街に行ってみるか・・・。
優太は鞘に刃をしまう。
時計を見ると四時を回っていた。


優太
「さて、どうするかな・・・」



優太は途方にくれながら目を瞑る。
すると思いの外スグに睡魔が襲ってくる。
そう言えば昨夜は遅くまで起きていて、今朝は早く起こされたことを思い出した。
優太は睡魔に逆らうこと無く身を委ねる。
そして優太の意識は刻々と遠退き、すぐに小さな寝息をたてて眠りに落ちた。






第四話「どきどき初仕事。。」






優太
「・・・ん。」



瞼を開けると部屋は暗くなっていた。
どうやら結構な時間眠りこけてしまったようだ。
ポケットをまさぐり携帯を取り出す。
二つ折り型の携帯を慣れた動作で開き(と言っても携帯の横についてるボタンを押すだけで開く簡単仕様なのだが)そこに映る時間を確認する。


PM:6:13


確か寝たのは四時過ぎだったから・・・軽く二時間も寝ていたようだ。
優太はベットから身を起こし、身体を伸ばす。
しかし未だに眠気が飛ぶ気配が無い。


優太
「そういえば風呂があったな・・・入れば少しくらいサッパリするかな・・・」



優太は適当に身支度を済ませ、浴場のある一階に降りる。
浴場は確か隅の方にあったような気がする・・・
優太は寝ぼけてブレまくりの思考で浴場に向かって歩いていく。
階段を下りて左に進んだ突き当りに「ゆ」と達筆な字で書かれた暖簾が垂れさがっている。
どうやらアレが浴場のようだ。
優太は暖簾を潜って中に入る。
何でか知らないがどっからどう見ても日本の銭湯に感化されましたな感じMAXの様相が目に飛び込んでくる。
ここまでTHE・銭湯だとここが『魔法界』だと言うことを忘れそうになる。
優太は寝ぼけていたが一応確認のために脱衣所内の籠や棚を虱潰しに確認する。
この流れだと何故か誰かが入っていてバッタリ会って・・・な黄金展開がありそうだったからだ。
しかし全部の棚と籠を確認したが自分以外の衣類は見当たらない。
ほっ。と一息付き、優太は衣服を手早く脱ぐ。
そして一応タオルを腰に巻きつけ、浴場への戸を開ける。
戸を開けると同時に熱気がムワッと顔や全身にかかる。
ちょっと心配していたがちゃんと湯は張ってあったみたいだ。
多分エリス辺りが気を利かせて準備してくれたんだろう。
浴場の感じはこれまたTHE・銭湯である。
ここまでくると何でこんなに日本文化を取り入れてんだよってくらいにクオリティが高い。
ルシウスさんとかが作ったんだろうか・・・
そんなことを思いつつ優太は手近にあった桶を取り、まず体を洗うために壁際のシャワーがある方に向かう。
そして蛇口を捻り、お湯の温度を確認していると・・・


カララッ。


と、後ろの方で戸が開く音が聞こえた・・・
一気に眠気が吹き飛ぶのが分かった。
相手は誰だ!?まず間違いなくアイツらの内の誰かだと思うけど・・・
確認しようにも、振り向くと同時に普通に裸の女の子が立ってるに決まっている!
この状況だ、まさかタオルでALL GUARDしてる訳が無いと思う。
どうしようか結構深刻に悩んでいると・・・


???
「あっ・・・」



スグ後ろにその誰かが立っているのが分かった。
一応湯気の所為で近付くまでオレだと言うことが分からなかったようだ。
二人の間にどうにも気まずい空気が流れる。
どう切り出したらいいか・・・やっぱ最初に謝るべきか・・・
そう悩んでいると、空気に耐えられなくなったのか向こうから話しかけてきた。


???
「あの・・・優太様?」

優太
「え・・・あ、ああ!?エリス、か?」

エリス
「は、はい・・・。」

優太
「え・・・えっと・・・コレには色々深い事情があってだな!別にこうなりそうだったからお風呂に入りに来たとかそう言うのじゃないんだぜ!!?」



何を言ってるんだろう・・・これじゃあただの怪しい奴だろ・・・
とか自分で言った台詞を客観的にツッコみつつどうしようか考える。
まあ、ここは黙ってササッと去るのがきっと良い選択肢だろう。
そう思い、立ち上がろうとした時・・・


エリス
「ちょ、調度良かったです。その、お背中をお流ししてもよろしいでしょうか?」



と・・・エリスが切り出してきた。
当の優太は完全に「?」が頭の上に浮かんでいる。
ちょっと冷静になってエリスの言葉を反芻してみる。
え、なに?背中を流していいかって??
え??何で??
優太はチンプンカンプンになる。
普通こういう状況になったらビンタの一つでも飛んでくるものだと思っていたのだが・・・
もしかしてこのまま普通に流れに任せれば何事も無かったかのように全て丸く収まる?
既に優太の思考は普通の状態ではないのだが・・・本人がそれに気付くことも無く


優太
「え・・・えっと・・・・じゃあ、その・・・お願いしちゃおうかな?」



と、返してしまっていた。


エリス
「はい!お任せください!!」



そんなエリスの言葉を聞くとどうも自分は正しい選択をしたんだな。と思えてきた。
そんなことは決してないのにそういうマイナスな方向へは考えないようにした。
どう考えても泥沼へ踏み込んでいるのは明らかだったからだ。






メダ
「団長、本当のことを話してください!!アイツが、アイツが見つかったんですか!?」

スコール
「知ってどうするんだ?」

メダ
「探し出して、この手で捕まえます!!」

スコール
「・・・・・・そういう所は、師匠にそっくりだよ。お前・・・」

メダ
「そんなのが聞きたいんじゃないんです!!はぐらかさないでください!!」

スコール
「どうしてそう思うんだ?ちょっと伝言を頼んだだけだろ・・・。」

メダ
「オレは知ってるんです・・・フィルじいさんに団長はアレを預けてるんでしょ?アレを磨いておいてくれってことは・・・つまり、そういうことじゃないんですか!!?」

スコール
「アレってのは?」

メダ
「親父のドリルのことですよ!!!」

スコール
「『親父のドリル』ってちょっと語呂的に笑えるな。。」

メダ
「ちゃかさないでください!!本当のことでしょう!!」

スコール
「まあ、確かにダリウスさんのドリルをフィルじぃに預けてあるが・・・別にそれがアイツに繋がるとは限らんだろ・・・?」

メダ
「そんなことはない!!あのドリルは言わば親父の形見・・・それを磨くってことは少なくともそれだけ重大な何かが迫ってるってことでしょ!!」

スコール
「意外に抜け目ねぇな・・・。まあ、そういう風に育てたからだけど・・・。」

メダ
「何でもいいですけど・・・オレにも話してくれたっていいじゃないですか!!オレはこの戦団の副団長ですよ!?」

スコール
「そうだな・・・ま、いつもは冷静なお前がそこまで言うんだ・・・ちょっとだけえ教えてやろう。」

メダ
「本当ですか!?」

スコール
「明日・・・テッカが王国入りする知らせが来た。」

メダ
「テッカ・・・『凄然の風』の団長でしたよね?」

スコール
「そうだ。そのテッカが首領・・・アルに直接呼ばれたんで明日訪問することになってる。まあ、人攫いについて聞きだすんだろうが・・・」

メダ
「???それとアイツとどう関係が?」

スコール
「どうやらもう一人テッカと王国入りする奴が居るらしい・・・。その男は右手に鋭い鉤爪を付けているそうだ。」

メダ
「鉤爪・・・!??」

スコール
「あの事件の首謀者も鉤爪の男だった・・・同一人物かどうかは分かんねぇが、どうも臭う。オレは明日アルと一緒にソイツに会う予定だ。」

メダ
「そ、その会合に俺も同席させてくれませんか!?」

スコール
「同じ部屋に入るのはダメだ。だが、一緒に連いてくるくらいはいいだろう。」

メダ
「ありがとうございます!!」

スコール
「話は終わりだ。とろあえず今日はとっとと寝とけ。」

メダ
「はい!では、失礼します!」

スコール
「そう言う硬いの止めろってのに・・・。」



メダは戸を開けて部屋から出ていく。
それを確認してからスコールはふと視線を机に向ける。
机の右側に立てかけられている写真立てを見つめつつスコールはつぶやく。


スコール
「ダリウスさん、ユーナ・・・。アイツは・・・アイツだけはオレが必ずこの手で・・・!」



そう言うスコールの目は黒く淀んでいた。
無意識なのか、体中から殺気を飛ばしてもいる。
スコールは窓の外の月を仰ぎ見て、決意を新たにする。
二人の仇を討つことを・・・
そして、全てを終わらせることを・・・
それが、自分の全てだと思い込むようにして。


スコール
「メダ・・・お前には何も背負わせない。オレが、全部終わらせるからな・・・」



スコールはそれだけ口にすると椅子から立ち上がる。
そして部屋から出ると、自分の寝室へと歩いていくのだった。






どうしてこうなった・・・?
今更考えて答えが見つかる訳も無く、優太は背中を擦るスポンジの感触を感じながらちょっと冷静に考えてみていた。
これで何回「冷静になって」考えただろうか・・・
それすらも分からない。
それくらい一杯一杯だった。
後ろではエリスがせっせと背中を洗ってくれている。
優太は完全にそれをだまーーって静観していた。
エリスは最初からタオルを巻いていたようだった。
最初に後ろに座られた時に目の前の鏡にその姿が映ったのでそこで確認したのだが・・・
あの時は自分でも結構軽率なことをしたと思っている。
もしかしたらそこには一糸纏わぬ女性の裸体が映りこむかも知れなかったのだからだ。
いや、まあ・・・見えちゃったらしょうがないとは思うけど・・・
ちょっと申し訳なくなる気がしたのでタオルを付けててくれて助かった。
改めて鏡で後ろを確認する。
エリスが一生懸命に背中を洗っている姿が映っている。
体全体を使って腕を動かしているからか胸の辺りがちょっとたゆんたゆんしてるような気がするけど考えないようにした。
タオルで隠しているとはいえ、タオルが何故か体のラインを浮き彫りにしており結構目の毒だった。
あまりエリスを注視したこと無かったからだが、まさかここまで上から下まで出たり引っ込んだりしてる凹凸の激しい体だとは思わなかった。
メイド服を着てるとそれがほとんど隠れていたので気付かなかったのかもしれない。
そんなわけで今更ながら普通にヤヴァイ展開なのでは?と考えてる始末である。
エリスが手を伸ばしてシャワーを手に取る。
背中を流してくれているようだ。
シャワーと一緒にエリスの手が背中を撫でる。
一瞬ビクッとしてしまったが、スグに落ち着くように自分を律する。
優しく背中をエリスの手が滑って行く。
何かコレだけで随分と色々と反応してしまう自分の男としての本能を呪った。
しかし、極楽(悪夢)はここで終わらない。
流し終わると何の気なしにエリスはこう切り出す。


エリス
「次は前を洗いますのでこっちを向いてもらえますか?」

優太
「ちょっと待て!!!!!!!!」



流石にコレはおかしいだろ・・・
優太は脊髄反射でそれだけ言うと、上半身を後ろに向ける。


優太
「せ、背中はまあ良いとしよう!でもま、前は色々問題があると言いますか・・・そういうのはダメ!絶対!!だ!!!」

エリス
「そ、そうですか?優太様がそうおっしゃるのでしたら構いませんが・・・。」

優太
「あ、ああ!前は自分で洗うからいいよ。て言うかエリスも風呂に入りにきたんだろ?だったらエリスも体洗って風呂入ればいいと思います!」

エリス
「よ、よろしいんですか?ご一緒しても・・・」

優太
「ああ、それは別に構わないぜ!!」



と、何故か肯定が口からこぼれる。
優太は一瞬自分が何を言ったのか分からなくなる・・・
え、もしかして泥沼ハマった?
そう確信した時やすでに遅し・・・


エリス
「では、ふつつかものですが・・・ご一緒させていただきます。」



それは嫁入りする時の言葉だよ!!
って喉まででかかったが言うのは止めた。
もうちょっとどうでもよくなっていたのもあるが・・・
エリスは優太の隣に座ると何故かタオルを外した。

























何と言うのだろう。
目の前に表現の限界を超えた世界が広がっている。
さっきまでタオルで隠れていた部分が全てさらけ出され、もう何一つ遮る物が無くなっていた。
優太は何故かそれを数秒眺めてしまった(と言っても意識は無い)
すると、エリスがこちらを向きちょっと恥ずかしそうに囁く。


エリス
「あ、その・・・別にもうこの体は優太様の物で・・・見ても触っても何をしても私は何も言うつもりは無いのですが・・・その、やっぱり裸を見られるのは恥ずかしいですね。」

優太
「っ!!!!!??????!?!?!?!?!!!!???!!??!?!?!?!??!」



これまた表現しきれないような奇声を発しながら優太は立ち上がると湯船に向かって走っていた。
もう、色々限界かも知れない。


ザバーーーン!!!


ほぼノーストップ(入る直前に滑っただけ)で湯船に落ちる。
頭だけ湯船から出すとやっと冷静になれた気がした。


優太
「(スゲェ体だったな・・・今思い出しても・・・って何を思い出しているんだオレはぁぁぁぁああああああ!!!)」



目をつぶるとさっきのエリスの裸体が浮かび上がってくる。
目を開けても脳内にさっきの光景が再生される・・・
もう完全にエリスの裸のこと以外考えられなくなっている。
これは色々不味い。
この状態でもうひと押し何かムフフイベントが起こっても見ろ。
多分全ての理性がブロウクンアウトしてエリスを・・・
とか考えていると後ろから湯船に入る音が聞こえる。


エリス
「優太様、大丈夫ですか!?滑って落ちたように見えたのですが!!」

優太
「ボドドドゥドアー!!!」

エリス
「え?な、なんですかそれ・・・」

優太
「た、魂の叫びって言うかそんな感じの・・・あ、別にオレは大丈夫だから心配すんな。」

エリス
「そうですか・・・良かった。」



まあ正直に言うと一部分が天を仰ぎ見ているのだが・・・
それはある意味正常な反応なので心配しなくてもいいだろう。
優太はソレを隠すようにエリスに背を向ける。


優太
「(と、とりあえずコレが落ち着いたら速攻で出る!)」



優太はとりあえずそれだけ考えるともう関係無いことを考えまくることにした。
そうだ、こういう時は円周率を数えると落ち着くってどっかで読んだような気がする!!
優太は黙々と円周率を数え始める。
しかし、これも失敗だった。
完全にエリスのことを考えないようにしてしまったからだ。


エリス
「優太様。」



もの凄く近くで声がした。
て言うかコレ・・・真後ろじゃね?
優太は振り向かないようにしてエリスに尋ね返す。


優太
「な、何かね・・・ワトソン君。」

エリス
「え、ワトソンじゃないですよ?湯当りでもおこしましたか?」

優太
「いや、オレは至って冷静さ!!」

エリス
「そうですか・・・。それより、優太様・・・どうして私の方を向いてくれないのですか?」

優太
「え!!?」

エリス
「た、確かに私の貧相な体では優太様は満足できないのかもしれませんが・・・せめてこちらを向いて話して欲しいです。」

優太
「いや、エリスの体がどうとかそういうのは別に問題無いだろ!普通に良い体をしてると思うし!!」



何か既に言っちゃならないようなことを口走っている気がするのだが・・・
もう優太も自分でなにを言ってるのか分からないくらいにテンパってしまっている。


エリス
「そ、そうですか・・・?私の体、気に入っていただけたんですね・・・嬉しいです。」

優太
「あ、あの・・・エリスさん・・・オレそろそろ出ようかな~~って思うんだけど・・・」

エリス
「それなら私もご一緒します。」

優太
「え、いいよ!!」

エリス
「いえ、体をお拭きします!!」



そんなことされたらもう色々隠せなくなるだろうが!!
もう迷ってる暇はないのかもしれない。
優太は足に魔力を練り込む。
昨日覚えた『速鳥』でこの場を高速で離脱する!!
優太は湯船から体を出すとタオルで前を隠しつつ瞬時に振り向き、足の魔力を開放する。
この時、優太は一つ間違いをおかしていた。
それは、エリスを見ないように目をつぶっていたこと。
言わなくても大体の想像がつくと思うが・・・
優太は進む方向を大幅に間違えた。
幸運にもエリスに突っ込む形で突き進んでしまったのである。
もの凄い勢いでエリスに突撃した優太は割とスグに失敗に気付いた。
顔に柔らかい物が当たったからだ。
優太は恐る恐るそれが何か確認を取るまでも無く確認する。
それはエリスの胸についている二つの塊な訳で・・・
しかもその真ん中にある谷間に顔を埋める感じで優太はエリスに抱きついていた。
優太はスグに離れようとしたのだが・・・
何故か頭をロックされているのか動けない。
その間も目の前のもの凄く柔らかい物がプルンプルンと揺れてるのが分かる。
もう完全にアソコが凄いことになっているのだが・・・
優太はつとめて冷静にエリスに話しかける。


優太
「え、エリス?これはその・・・色々誤解が混じってると言いますか・・・」

エリス
「は、はい・・・大丈夫です。ちょっとイキナリだったのでびっくりしましたけど・・・その・・・優太様のお好きなようにどうぞ。」

優太
「あ、いや・・・それが誤解で・・・ちょっと勢い余って飛び込んでしまっただけでやましい気持ちはこれっぽっちも・・・あ、て言うかエリス腕解いてくれる?」

エリス
「あ、申し訳ありません!」



エリスは優太の頭にかけていた腕を解く。
ようやく色々と悩ましい事態から生還できた・・・
さて・・・しかし問題はこの後どうするか・・・立ち上がろうにも、今立ち上がればまず間違いなくこの荒ぶる分身がエリスの目の前に晒されるし・・・
そうなったらさらに勘違いスパイラルが巻き起こったりなんかしちゃったりして・・・
とりあえず・・・諦めて静まるのを待つか。
と・・・長丁場を覚悟した所に


カララ。。


と、無情にも戸が開く音が聞こえた。
優太は勿論エリスも身を返してその方向を向く。
そこには・・・由紀を始め、蓮や唯、愛依に奏まで居た。
鳳仙と千草が居ないなーーとか色々思ったけどとりあえずこれだけは言っておくことにした。


優太
「安心しろ!!お前らが思ってるような展開ではないぜ!!!」

由紀
「嘘コケ!!一部始終聞いてたわーーーー!!!エリスがちょっと良い娘だからって無理矢理抱きついたり体洗わせてたのは知ってんだよ!!」

優太
「ちょっと!!それ最初っから全部じゃないっすか!!」


「とりあえず優太さんは馬に蹴られて地獄に落ちた方が良いと思います。。」

優太
「いや、待て待て!聞いてたならオレが普通に何もしてないことくらい分かって・・・!」

由紀
「何もしてないけど、トラブってたんだろうがぁぁぁああああああああああああああああ!!!」

優太
「た、確かにそのとうりですけど・・・って、アッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!









結局その後キレた由紀にボロ雑巾のようにされて、浴室の隅っこの方にプカーッと浮いている所を後から帰ってきた鳳仙と千草に回収された。
だが・・・まだ夜は終わっていないことをこの時の優太は知る由も無かった。。






第五話「初夜的な何か。。」






優太
「はぁ・・・何で夕飯まで抜かれないとならないの?」



鳳仙と千草に救出され、何とか風呂から上がった優太だったが・・・
何故か夕飯が用意されておらず(優太の分)、途方に暮れている最中だった。
夕飯の支度をしたのは由紀らしく、どうやらさっきのことにかなり腹を立てていたようだった。
結局夕飯中謝り続けたのだが・・・一向に由紀の機嫌は治らず、最後の最後まで夕飯が出ることは無かった。
そんなこんなでとりあえず自室でベットに寝転がりながら気を紛らわせているが・・・


グーーーーー。。


そんなことで空腹が収まる訳は無く、完全に動く気力すら無くしもうこのまま寝ちまうかと思った矢先・・・


コンコン。。


と、戸を叩く音が聞こえた。
優太はかなりかすれた声で・・・


優太
「誰だーーー?」



と、戸の向こうに問いかける。
それに答えるように声が返ってくる。



『私。入っていい?』



優太
「由紀?いいけど・・・」



今更なんの様だろう・・・また説教でも始まるのかと内心ハラハラしっぱなしだった。
断ることもできたろうに優太はソレをしなかった。
気付いたら無意識的に答えてしまっていたのだ。
ちょっとだけ自分の考えなし加減を呪った。
まあ、食べるものを食べてないので脳に栄養が回らず思考能力が低下しているからというのが原因なのだが・・・
優太にはそれすら考える力すら失われていた。


ガチャ。


戸が開き、由紀が部屋に入ってくる。
部屋の中は明かりが点いておらず月明かりが入ってくるとは言え、かなり暗い。
由紀はとりあえず近場にある電灯のスイッチを押す。
するとパッと部屋の中心に備え付けてある電灯が灯る。
明るくなったことで気付いたが、由紀は左手になにか皿の様な物を持っていた。
その上には三角形の黒い塊・・・所謂おにぎりと言う奴が五、六個乗っている。
付け合せに漬物が色々乗っているが・・・


由紀
「ん。」



由紀は無言に近い感じで優太に皿を突き出す。
もしかして・・・食べていいのだろうか?
優太は皿を受け取るとおにぎりを一つ手に取る。
パリッ。っと、のりを噛み切る小気味いい音が上がる。
噛めば噛むほど、塩の味が口内を満たしていく。
美味い。
素直にそう思った。
その後は何も考えずに食べた。
その様子を横目に見つつ、由紀は優太の隣に座る。
そしてポツリと一言、


由紀
「ごめん。」



とだけ言葉を発する。
優太も食べる手を止めて由紀に向き直る。
やっぱりもう一回謝っておこう。
そう思った。


優太
「いや、オレも悪かった。」

由紀
「え、優太は私には別に何もしてないでしょ?私が一人で怒ってただけだし・・・」

優太
「それでも、不愉快な思いさせてゴメンな。」

由紀
「もう・・・。そうやって変な所で優しくするから・・・色々と誤解されるんだよ。」

優太
「いや、由紀になら誤解されてもオレは・・・」

由紀
「はいはい。分かってますよ。」

優太
「・・・・・それより、ありがとな。マジで腹が減ってたからどうしようかと思ってたんだよ。」

由紀
「たかが一食抜いたくらいじゃあ死なないから問題無いとは思ったけど・・・明日に支障が出ても困るしね。」

優太
「そうだな、明日からまた学校だし・・・」

由紀
「え?明日ってまだ休みでしょ?」

優太
「え??あ・・・開校記念日だっけ!!?」

由紀
「そうそう。だからこんな時間までコッチに居るんじゃん。そういうこと考えようね。」

優太
「いや、腹が減りすぎてそこまで気が回らなかった。」

由紀
「そう。じゃあ・・・ちょっと遅いけど、夜食代わりに何か作る?」

優太
「え、いいのか?」

由紀
「いいよ。優太、何が食べたい?」

優太
「うーーーん。とりあえず味噌汁・・・いや、汁物系が欲しい。」

由紀
「分かった。夕飯の残りはあるから温めて持ってくる。」





それから瞬く間に優太の部屋に夜食にしてはちょっと豪勢なメニューが並べられる。
と言っても夕飯の残りらしいから必然的に優太が夕飯の時食べる分だったみたいだけど・・・
優太は物の数分でそれを食べ切り、ベットに横になっていた。


優太
「ふぅーーー。流石にこの時間にこの量は・・・太るな。」

由紀
「優太は少しくらい太った方が良いと思うよ。じゃあ、私はこれ片付けるから・・・」

優太
「ああ、ありがとな。」

由紀
「うん、じゃあまたあとでね。。」



あとで?
言い間違ったのかな・・・と優太は適当に解釈しておくことにした。
時計を確認するともう十一時を回っていた。
明日は別に予定がある訳でも無いけどとりあえず今からすることも無いし寝るか・・・
と思い、優太は部屋に備え付けてある洗面台で歯を磨く。
その最中このまま寝るとかちょっと不健康かな・・・とかしきりに考えていた。
適当に磨き終え、口をゆすいでから部屋を出る。
洗面台はあるがトイレだけは部屋の外、しかも一階と三階にしかない。
三階よりも一階の方が優太の部屋からは近いので優太は階段に向けて進む。
階段まで来て、踊り場から下を見ると・・・


キィ・・・


と、扉が開く音が聞こえた。
優太は目の前の玄関口に目を向ける。
そこには何故か千草が居た。
しかも昼間と同じような仕事に行く用の服装だ。
こんな時間にどこへ?
優太は階段から飛び降りる。
すると、流石に着地時の音で気付いたのか千草はこちらを振り向く。
距離が開いていたため、優太は分からなかったが千草は少し顔をゆがめた。
見つかりたくなかった相手に見つかったかのように。
しかし優太はそこまで見えていないので普通に話しかけた。
何でも無く、普段どうりに。


優太
「どうしたんだよこんな時間に・・・そんな格好までして。」

千草
「あーーー・・・・・・アレだよ、ちょっと今から急ぎの仕事が入っててさ・・・」

優太
「はぁ?こんな時間からか?」

千草
「はっはっはっ!!ガメツイ千草さんは休む暇なく働いてお金を稼ぎたいんだよ!」

優太
「・・・・・そんなにお金が厳しかったのか・・・。全く、気を付けろよ。」

千草
「・・・・・うん。」

優太
「明日には帰ってくるんだろ?」

千草
「うーーん、まあ・・・夜までには帰るよ。」

優太
「随分と長い仕事だな・・・ま、頑張れよ。。」

千草
「うん・・・ユウ君。」

優太
「ん?」

千草
「ごめんね。」

優太
「は?何が・・・?」

千草
「へへっ・・・言ってみただけだよ。。じゃね、ユウ君!いってきます!!」

優太
「ああ、気を付けて行って来いよ!」



バタン!


千草を見送った優太は目的を思い出し、トイレに向かう。
しかし優太は知らなかった、千草がどこに向かったのか・・・
何をしに行ったのか・・・
千草のこの行動が新たな騒動の始まりだと言うことを、誰もまだ知る由も無かった。








用もたし、優太は部屋に帰ってきた。
すると部屋の電気が消えていた。
出る時には点けっぱなしだと思ったけど・・・
優太はまあ、誰かが来て居ないからついでに消してったのかな。と軽く考えてベットに向かう。
昼寝・・・て言うか夕寝をしたにもかかわらず優太は良い感じの眠気を感じていた。
多分このままベットに入ったらすんなり寝れるだろうと思った。
そんな訳でベットに潜りこむ。
・・・・・・・・・・・・・・・何か妙に暖かい。
少し前まで由紀と一緒に座っていたから暖まったのかな?と考えるが・・・
妙に良い匂いがするなーーー。とも感じた。
夕寝の時はこんな匂いしなかったような・・・由紀が座ってた時についたのか?
それにしてははっきりとした由紀の匂いが結構至近距離から感じる気がする・・・
て言うか・・・何か狭く感じる。
何でだろうか・・・答えは簡単だった。
ベットの中に誰かもう一人入っているからだ。
しかもさっきからわざとらしく体とかにしがみついてくる上に息を吹きかけてくる。
ああ・・・妙にすんなりと色々してくれると思ったらこういう訳ででしたか。
優太はこのまま無視し続けようかとも思ったが流石にここまでされてそれは無理だろうと思い、そのもう一人に話しかける。



優太
「で、何で居るんだ・・・由紀。」

由紀
「あ、バレちゃった?」

優太
「何がバレちゃっただよ・・・あざとすぎるわ。」

由紀
「優太はコレくらいの方が好きかなーーーと思って。」

優太
「もう深くはツッコまない。これだけは言わせろ・・・今すぐ出t」

由紀
「やだ。」

優太
「すんませんまだ台詞の途中ですが・・・」

由紀
「やだ。今夜は一緒に寝る。」

優太
「えーーーーーーーーーーーーーーーーーー・・・・・・・・」

由紀
「ほら、これも私への贖罪だと思ってさ・・・」

優太
「いや、オレ一応謝ったし・・・」

由紀
「誠意を見せてもらうってことで。。」

優太
「いやでも・・・」

由紀
「ねぇ、むしろ何で優太はそうやってチャンスを棒に振るおうとするの?普通に考えたらココは素直に私の服を一枚一枚脱がせて・・・」

優太
「無い無い。まあ・・・オレにも色々あってだな・・・そういうことができない理由と言う物もあって・・・」

由紀
「ああ・・・『だから僕はHができない』的な何かがあったの?」

優太
「随分と直球なのきたな・・・まあ、理由としてはこういう空気の時はこうしておけという主人公マニュアルが存在してだな・・・」

由紀
「へぇーーー。じゃあ、そのマニュアル見せてよ。」

優太
「いや、それは主人公だけが読めると言う物なので・・・」

由紀
「ぶっちゃけないんでしょそんなの。」

優太
「まあ・・・そうとも言う。」

由紀
「そんなに私とは嫌なんだね・・・もういいよ。」



由紀はぷいっとそっぽを向く。
しかしベットから出ていく気はないらしい。
何か別に優太自身が悪い訳でも無い気がするが何だか謝らないとならないような空気になっている気がした。
優太は頭をくしゃくしゃとかくと意を決して由紀に話しかける。


優太
「えっと・・・その・・・悪かったよ。別に嫌だとかそういうのじゃなくて・・・」

由紀
「じゃあ何で優太は私を抱いてくれないの?」

優太
「絵面と話的に不味くなるから。。」

由紀
「そうだね!そうですね!!でもさ、もっとこうやりようがあると思うんですよね。」

優太
「例えば?」

由紀
「とりあえずそっと抱き寄せるとか。」

優太
「えっと・・・こんな感じ?」



優太はとりあえずここはささっと合わせて終わらせてしまう方向でガチした。
由紀の背中と腰に手を回して軽く抱き寄せる。
さっきより近付いたからか、由紀からふわふわした良い匂いがしてくる。
もしかすると今更だが、結構不味い流れになってるんじゃないかと思わなくもないがとりあえず考えないようにした。


由紀
「あっ・・・。やっぱり、優太って優しいよね。」

優太
「え、そうか?」

由紀
「うん、だって・・・結構すんなり言うこと聞いてくれるし。。」

優太
「まあ、悪いことしたなーーとは思うしな。」

由紀
「優太に抱かれてると・・・ちょっとドキドキするけど、何か落ち着く~~。」

優太
「ダレるくらいならとっとと寝ちまえよ・・・。」

由紀
「えーー?ここで寝てもいいの?」

優太
「あ、出てってくれるならこっちとしては願ったり叶ったりで・・・」

由紀
「もうしょうがないなーー。優太がそんなに一緒に寝て欲しいって言うなら私もやぶさかじゃないですよ~~。。」

優太
「んなこと一言も言ってない!!」

由紀
「ねぇ、優太・・・」

優太
「今度は何だよ・・・流石に寝たいんですけど。」

由紀
「キスして。」

優太
「あーーハイハイ。キスねーーそれくらいお安いごよ・・・ってキス!!??」

由紀
「え、してくれるの?お休みのチューまでしてくれるなんて優太は本当に優しいな~~。」

優太
「何か既にする流れに!!?」

由紀
「優太・・・」



由紀は何故か瞳をつぶって何かを期待するように顔を前に少し突き出してくる。
優太は物の数秒くらい逡巡しつつ・・・


優太
「(別に唇にする必要も無いか・・・おでこ辺りにして上手く逃げとこう。)」



と、思考してから由紀のおでこに向かって顔を動かしたその時、


由紀
「あ、そっちは違うよ?」



何か見られてた。
目瞑ってたんじゃないんすか!!と言いたかったけど飲み込んで冷静に由紀を説得することにした。


優太
「由紀さん・・・流石にオレには難易度が高いので・・・」



適当にいつものグダグダ会話を始めて煙に撒くつもりで話を始めた。
だが、それが続くことは無かった。
開こうとした口を由紀の唇が塞いだからだ。
ほんのちょっぴり触れた程度の軽い物だった。
由紀は「えへへ」と言った感じで優太の顔を眺めている。
優太はしばらく呆然としつつ由紀の顔を眺める。
そして急に思考が加速して・・・


優太
「ばっ!!???お、おま・・・!な、何してくれて!!?」

由紀
「んーーー?嫌だったの?」

優太
「え・・・いや、別にそういうのじゃな・・・いとかそう言う以前の問題だ!!お前こんな軽く・・・」

由紀
「だって私は優太が好きだし、特に問題無いんだけどな。」

優太
「いや、だからそう言うことでは無く・・・って、言っても無駄か・・・たく、こっちは初めてだったと言うに・・・」

由紀
「そうだったの?私も初めてだよ。優太が最初の相手で良かったよ。。」



そう言って笑う由紀の笑顔は本当に嬉しそうで・・・
優太は確かにあまり嫌だと感じていない自分も居ることに気付き、それ以上何か言うのは止めた。
由紀はそのまま調子づいてしまったのか優太に抱きついてくる。
最初は引き離そうかとも思ったが・・・さっきの由紀の笑顔が忘れられず、優太はその背中に自然と腕を回していた。
体同士を密着させていると、何故かとても落ちつけて気が楽になっていく気がした。
そのままいい具合に眠気が襲ってきて優太は瞳を閉じる。
すんなりと眠りの世界に落ちた優太は、由紀の柔らかい匂いに包まれて静かな寝息を立て始めた。






第六話「緊張の初仕事。。」






出会いとはいつも突然だ。
例えばそれは入学早々同じクラスの委員長の秘密を知ってしまったことでごたごたに巻き込まれ、挙句の果てに同居することになったり。
委員会で一緒の当番になったことで交友が広がり、またしてもごたごたに巻き込まれ、気付いたら同居していたり。
いきなりケンカを売られ、それに勝ったら逆に好かれてしまい、気が付けば同居していたり。
そんな中でオレはまた一人の少女と出会った。
始めはそう、弓道場で的を正確に狙う彼女の横顔を見たことからだった。
その時の彼女はとても高校生とは思えないような凛々しい顔をしていた。
そんな彼女を見てオレは何かに打ち込むって言うのはやっぱり良い事だなって思った。
それから、オレは彼女のことを友人伝いに聞くことになる。
どうやら幼少時代から「神童」と呼ばれていたようで何があってか知らないがこんな辺鄙な高校に居るのがおかしいほど弓の実力を持っているらしい。
清楚で可憐な立ち振る舞いはその容姿と合わせて同学年、上級生関係無くかなりの人気があるらしい。
噂ではファンクラブまであるらしい。
何かコレだけ聞くとオレとは住む世界が違うなと素直に感じた。
だが・・・その認識はスグに改められることになる。




あの日、オレは蓮と一緒に図書室でカウンター当番をしていた。
司書の先生の用事を手伝うと言うことで蓮が居なかった時、噂の彼女が図書室にやってきた。
その彼女はオレと目が合うとニッコリと笑顔を浮かべ軽く会釈をして奥の方に向かっていった。
オレはしばらく本を適当に読んでいたのだがもう終盤だったためスグに読み終えてしまう。
図書室の本だったのでオレは自分の貸し出しカードに返却の判を押し、本を返すついでに続きを取りに奥へ向かう。
すると図書室の隅っこ、誰も見えないような場所で一人黙々と何かに集中する彼女の姿を見つける。
何か妙に激しく体を動かしているが何をしているのだろう?
その時はただの興味本位だった。
オレはここ数カ月で身に着けた気配を消すと言う技を使い、ソロリソロリと彼女の背後まで近付く。
調度彼女の真後ろにあたる本棚からチラリと覗き見る。
するとどうだろう・・・何故かそこには携帯げ~む機と格闘する彼女の姿があった。
オレは一瞬何が起こっているのか理解に苦しんだ・・・
え・・・?何でげ~む?いや、それはいいとしても何でこんな所で・・・
ココまで来たオレはもう迷うことなく一歩を踏み出していた。
その一歩がまた面倒を持ち込むと半ば分かっていたにもかかわらず、その歩みを止めることができなかった。
それだけオレは人との関わり合い、繋がりに飢えていたのかもしれない。







優太
「・・・ん、朝?」



目の端に朝日を感じた優太は体を起こそうとする。
が、何故か左腕を何かに捕まれているからか起き上がれない。
そちらに目を向けると由紀が気持ちよさそうに寝息をたてていた。
そう言えば昨夜はなし崩し的に一緒に寝たんだっけ・・・
よく見ると由紀は何故か浴衣なんて着て寝ている。
どうして浴衣なんだろうとか思ったが・・・由紀なら「この方が脱がす時楽だと思って~~。。」とか言いそうなので適当に流すことにしよう。
由紀は優太の左腕を枕代わりにして寝ている。
その所為か既に左手の感覚皆無である。
血が完全に塞き止められているために関節より先がまるで動かない。
別段どうしようってほどでもないができれば早く起きて欲しいなーーと思った矢先・・・


由紀
「あのさーーー、隣で女の子がかなり無防備で寝てるのに何で何もしないのーーー?」

優太
「何だよ起きてんのかよ・・・だったらちょっと頭退けてくれ・・・手が動かせないんだよ。」

由紀
「んーーー?あ、ゴメンゴメン。腕枕と言う物に憧れていたもので・・・ま、別段寝やすくも無かったなーーー思ったほどは。」

優太
「のわりにグッスリだったように思えたが・・・?」

由紀
「そりゃあ優太と一緒なら別にどんな状況でもグッスリイケる自信があるよ!!」

優太
「ああ・・・さいですかーーー。。」



そんな会話を皮切りに由紀は部屋から早々と出て行った。
朝食の準備をするからだそうだ。
優太はやっとこさ血が巡り自由に動くようになった左腕を適当に慣らしつつカーテンを開ける。
今日もどうやら晴天。
仕事日和だ。。







鳳仙
「ダンナ!今日は一緒に仕事しようよ!!」



朝食(何だかんだで由紀とエリスが共同で作ったらしい)を食べつつ、向かいに座って居た鳳仙がそう提案してくる。
優太は手に持ったパンを適当に千切ってスープに付けて口に放り込みつつ


優太
「そうだなーーー。まあ、暇だし別に構わないけど・・・」

鳳仙
「本当!?ワーーーイダンナと一緒に仕事だーー!!」

優太
「喜ぶとこ違くね?まあ、いいけどよ・・・」



鳳仙のはしゃぎ様はいつもの事なので適当に聞き流し、スプーンでスープを掬って口に運ぶ。
ポタージュはいい具合にトロトロしており、そのままだでも喉を程よく流れていく。
これはエリスが作ったようだ。
昨夜はオニオンスープだったから・・・コレは今朝用に作り直したのだろうか・・・
とすると結構早起きして作ったか、昨晩から仕込んでおいたのだろう。
何はともあれエリスはちゃんと仕事ができるようなので安心した。


優太
「で・・・具体的にどんな仕事をするか決めてるのか?」

鳳仙
「うーーーん、実は詳しいことは全然決めてないんだけど・・・とりあえず本部に行ってメボシイ依頼を請ければいいんじゃないかな?」

優太
「つまり行き当たりばったりってこったな・・・おk把握した。」


「私はどうしようかなーーー・・・ねぇねぇ、私も付いて行っちゃダメかな~?」

優太
「んーーーー・・・依頼の種類にもよるけど唯にはちょっとキツイんじゃないか?」


「できるだけ頑張るよ~~。」

鳳仙
「オレは別にいいよ。ダンナが決めてよ。。」

優太
「それじゃあ・・・あんま気乗りしないけど一緒に行くか。」


「うん!!」

由紀
「私はとりあえず買い出しかな・・・何だかんだで昨日もあんまり良い物買えなかったし・・・エリスも一緒に行くでしょ?」

エリス
「はい。由紀様とご一緒に買い物、いいですね。是非ご一緒させてください。」

由紀
「うん、じゃあ一緒に行こう。」

愛依
「私達はどうしようか、カナちゃん。」


「えーーー・・・今日?んーーーー・・・愛依とイチャコラする~~~・・・。」

愛依
「え?えっと・・・そういうのじゃなくて一日の予定的な意味で聞いたんだけど・・・」


「一日の予定・・・やっぱり愛依とチュッチュする~~~~・・・」

愛依
「何かさっきより具体的になっちゃてるよ!!カナちゃん寝ぼけてないで起きて!!ほら、口の周りスープがべったり付いちゃってるよ?」


「んーーー??」



奏は手で適当に拭おうとしているのか口元に無造作に右手を這わせようとする。
それを見た愛依はその手をがっしりと制止する。


愛依
「か、カナちゃん・・・拭いてあげるからじっとしてて。」


「え?いいのか~~~??愛依は優しいな~~。。」

愛依
「ま、まあ別に何でもいいんだけどね。予定は朝食の後で適当に決めよう。」


「うん~~。。」

鳳仙
「あれ・・・そういえば千草は?」

優太
「千草なら昨日の夜出て行ったぞ?何か急ぎの仕事があるとか何とか・・・」

鳳仙
「ふーーーん・・・そっか。それならべつにいけど・・・」



ガチャ。


そんな時だった。
突如部屋のドアが開いた。
部屋の中に居た全ての視線がその扉に向く。
扉の陰から出てきたのは小さな小さな少女だった。
年齢にして十歳そこそこと言った所だろうか・・・
少女は奏の寝巻(体格が一番近かったため。それでも若干大きい程度だけど・・・)を着ており、今起きてきたのか寝癖で髪がボサボサだ。
少女の視線が優太に向く。
すると、急に明るい口調で・・・


「パパ!!」


と・・・元気に走り寄ってきた。
その場にいた全員が「えーーーーーーーーーーー・・・・・」っと優太に白い目を向ける。
優太自身も体から血の気が引いていくのが分かった。
優太はつとめて冷静にその少女へ向けて言い聞かすようにして説明する。


優太
「えっと・・・アヤカ?オレはお前のパパでは無いんだけど・・・」

アヤカ
「え?そんなことないよーーー。。パパはパパだよ~~。」

優太
「や、いや!!ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!オレは十六だよ!?」

アヤカ
「アヤカ九さい~~!」

優太
「妹って設定なら全然問題無いけど・・・親子って言うのはちょっと無茶苦茶な設定じゃないですかね!!?」

アヤカ
「あやかそういうむずかしいこと分かんなーーい。でもパパはパパだからパパだよね?」


「何と言いますか・・・仕込むにしては徹底しましたね・・・睡眠教育って奴ですか?」

優太
「ち、ちげぇよ!!オレがそうすることにどんな意味があるって言うんだ!??」

由紀
「ゆ、優太酷いよ!!私と言う者がありながら・・・一体誰との子よ!!」

優太
「待て待て!!落ち着いて話を聞いてくださいお願いします!!何か大事なことを忘れてませんでしょうか!!」


「えーーー?なになに?」

優太
「アヤカは『凄然の風』がどこからともなく連れ去ってきた人達の一人でしょ!??それが何でオレと親子だって言う話になるの?おかしいでしょ!!」

由紀
「いや・・・でもパパって言ってるし・・・」


「少なくともそう呼ばれることで優太さんは個人的に満足感を得ているんじゃないんですか?」

優太
「うーーーん、言われてみると確かにこそばゆい感じはするが嫌じゃないかも・・・」

由紀
「「サイテー!!」です!!

アヤカ
「???パパ、何で泣いてるの?」

優太
「いや・・・何かここんところついてないなーーーって。。」









そんなこんなで何故こんなことになったのか蓮が詳しく調べてみると言うことなので一時アヤカを預け、優太達は仕事に向かうことにした。
アヤカに見送られ、その際も主に周囲二方向から若干棘のある視線が飛んできたがあまり気にせず『暁館』を出た。
まあでも、悪い気はしなかった。
とりあえず三人で本部に向かうことにした。
そういえば優太自身本部で依頼を請けるのは初めてだ。
始めて本部を訪れた時は右手側だったかな?大量の張り紙がされた掲示板があったなーーと思い出す。
まあ、そこら辺はここ二日で鳳仙辺りがやり慣れてるだろうから大丈夫なんだろう。
でもまあ・・・リーダーがそう言うことに疎いのもどうかと思うのでここは一回鳳仙辺りに聞いておくことにしよう。
聞くは一瞬の恥、聞かぬは一生の恥とも言うしな。


優太
「なあ、鳳仙。依頼ってのは基本的にどう請けるんだ?」

鳳仙
「んーーー、基本的には掲示板を見て・・・気に入ったのがあったらその張り紙を持って窓口を通せばあとは勝手に鳴がやってくれるよ。」

優太
「へぇーー、そうなのか。」

鳳仙
「ああ、あとたまに有名な戦団になると直接依頼が来ることもあるんだって。」

優太
「そういうのもあるのかーーー。まあ、オレ達はまだ駆け出しだからそう言うのは無さそうだなーー。」

鳳仙
「そだねーーー。来てても腕が絶対伴わないようなのがこられても困るもんねーーー。まあ、オレはそれくらいの方が燃えるから全然いいけど。。」

優太
「まあ、今日は唯も居るんだしあんまり難易度の高くなくて報酬もそこそこって奴狙おうぜ。」


「ついに私も戦団デビューか・・・。何だか指が鳴りすぎてちょっと痛いよ!!」

優太
「痛いなら無理に鳴らすなよ!!つか、正しくは『腕がなる』だからね!!」


「そうそう。そうとも言うんだよね~~。。」

優太
「いや、そうとしか言いませんけど・・・」










「『暁の地平線』宛てに緊急依頼が届きましたよ。。」

優太
「え?」

鳳仙
「す、スゲェ!!!オレ達何時の間に名指しされるくらい有名になったんだろうね!」


「きっとユウちゃんが前の事件で大活躍したからだよ~~。」

優太
「い、いや・・・前の事件は公にはメダ達『天統べる煌星』とクソジジイの『海風の憑代』が解決したことになっててオレ達は一切関与してなかった的な展開になってたと思うんだが・・・」


「スゴイですね皆さん!アルヴィス様から直々の依頼ですよ!!こんなのみたことありません!私も窓口役として凄く鼻が高いですよ~~。」

優太
「何だクソジジイからか・・・丁重に断っとけ。」

アルヴィス
「そう、冷たいこと言う無い若人よ。。」

鳳仙
「うおっ!!?何時の間に!!」


「うわぁ~~~・・・後ろに立たれるまで全然気づかなかったよ~~。あれ、でもお爺さん誰??」


「あ、あ、あ、あ、あ、あ・・・!!アルヴィス様!??なぜこのような場所に!??今日は『時計塔』で大事な会合があると伝え聞いておりますが!!?あ、て言うか握手してください!!それとサインください!!」

優太
「こんな枯れ果ててる奴と握手したり、サイン貰ってどうすんだよ・・・どうせ老い先短いんだしあまり担ぎ上げてやんなよ。」


「いやいや!!優太さんご存じないんですか!!?この方はかの高名な『聖騎士王』と『白銀』の二つの異名を持つ、今をときめく超時空シンデレラでして!!」

優太
「いや、鳴・・・超時空シンデレラは違う違う。。それはランカちゃんだろうが・・・」

アルヴィス
「まあ細かいことは置いておいて・・・ワシは今日『時計塔』である重要人物と会合をする。優太、お前にはワシの護衛を頼みたい。」

優太
「あ、鳴・・・オレ今日はこれとこの探し物は何ですか的な依頼が請けたいんだけど・・・」

アルヴィス
「上手いこと煙に撒こうとするない。。」

優太
「えーーーー・・・だってジジイ強いんだろ?護衛なんていらないだろうが・・・てか、オレよりそこらに居る奴らの方が強そうだぜ?」

アルヴィス
「あんな見た目だけ強そうな奴では役不足も良い所じゃ。逆にお前は、内に何か秘めている気がする。主人公的な意味で。。」

優太
「まさかのメタネタ!!まあ、期待してくれるのはありがたいんだけど・・・オレはごく一般的な高校二年生でして・・・」

アルヴィス
「鳴と言ったか・・・契約書には勝手に判を押しておいてくれ。」


「はい!!喜んで!!!」

優太
「ちょっと!!?何でオレ達の意志を無視して話し進んでんの!!?つーか鳴も何を言われるがままに判押しちゃってるんだよ!!」

アルヴィス
「コレで契約成立じゃ。付いて来い。会合はもう十分後に始まってしまうのでな。。」

優太
「おい、この人十分前行動もできねぇのかよ!!いい歳して恥ずかしくないのか!!」

アルヴィス
「『時計塔』はここから目と鼻の先じゃ。五分もあれば余裕で着くわい。」

優太
「何だよこの、学校は歩いて三分くらいだから朝はギリギリまでテレビ見てました的な発言は・・・もういいや、ささっと終わらせて普通の仕事に復帰しよう。」







第七話「時計塔会議。。」






その少女がやっているげ~むは今噂の某格闘げ~だった。
かなりシビアな難易度がとてもコアな方々に大人気の超誰得なげ~むだ。
オレもちょっと興味があったのでやってみたが・・・
どう考えても調整を厳しくしまくった感が否めないクリアできる奴が居ることすら信じられないような超ドM仕様のげ~む難易度にオレは一ステージ目で投げた。
だって相手の殺人コンボがホントに殺人技で、ガードを緩めたものならそこを完膚なきまでに狙ってくる上に喰らった時のダメージも半端じゃなかったりする。
それだけならまだいい。
問題はその後だ。
どうにか相手の超反応コンボを凌ぎ、掻い潜った上で自分のコンボを叩き込むのだが・・・
相手の防御力は一律高めに設定されているようで・・・
こっちが繋げられる限界のコンボを必死に叩き込んでも相手のゲージの十分の一も削れないのだ。
さらにさらに・・・
超必殺技的な位置の技も設定されてる訳だが・・・
これのコマンドがあまりにも長い上に複雑すぎて人間が入力できたものでは無い。
だが、COMにそんなことは無い。
その超必殺技も使ってくるわけだが・・・
これが即死技なのだ。
ダメージ倍率がこっちに不利になるように設定されてるからと言うのもあるが・・・
しかしこの目の前の光景はどうだ?
その少女は殺人コンボをいともたやすく捌き、見る見るうちにコンボを叩き込んでいく。
その動きに全くの乱れが無い。
常に一定。
ガードからの反撃。
その一連の流れはまるでインプットされたかのような正確な物だった。
極めつけに、相手の一瞬の怯み時間に超必殺技のコマンドが入力される。
早い。
その一言に尽きた。
ぶっちゃけ目で追えるレベルの入力じゃない。
PSP壊れちゃうよとかそう言うレベルだ。
画面が暗転し、少女の操るキャラが拳から極太のレーザーの様な物を発する。
聖剣の一撃かと思えるような神々しい技が見事に決まり画面に勝利を表す英文がドドンと表示される。
すっかり見入ってしまっていて、気付くとすぐ後ろで覗き込むようにして見ている自分に気付いた。


『このげ~むのこと・・・分かるの?』


そう少女は問いかけてきた。
むしろ他に聞くことあるだろとか色々思うこともあったが・・・


『ああ、知ってるよ。こんな誰得げ~、よくここまで極めたな・・・素直に驚きなんだが・・・』
『へへん!この千草さんに不可能なんて無いのさ!』
『・・・・・て言うか・・・もしかして、そっちが素なのか?』
『あ、やっべ!つい分かってくれる人って珍しいから舞い上がっちゃったよ・・・!』


その後・・・
どうやら自分のイメージ的にこう言うことが公にできないことを聞かされた。
一応気にするだけの恥じらいは持っている様である。安心した。
家だと違うげ~むばっかりやってしまってこういう携帯機のげ~むは学校でしかやる暇が無いらしい。
それで放課後、部活の無い日は決まってこの図書室のこの席でこっそりやっていたようだ。
普段は人が来ると気配で分かるみたいだが・・・


『何で今回は隠そうとしなかったんだよ?』
『何となくだけど・・・同じ様な気配を感じたから?』
『意外と電波なこと言うな・・・』
『まあ、魔女だしね~~。。』
『サラリと重要そうなことを言っちゃってますけど!!?』
『いや、ぶっちゃけると鳳仙から色々聞いてたんだよ。部活は違うけど、部室が隣同士でよく話す機会もあるから。』
『鳳仙が?どんな話を・・・』
『ユウ君カッコいいとか、ユウ君カッコいいとか、ユウ君カッコいいとか?』
『何か素直に喜べないような話キターーーーー・・・。てか、ユウ君って・・・』
『ん、名前は優太君でいいんでしょ?略してユウ君。。』
『普段の性格とのギャップがありすぎだぞ・・・これじゃあ普通の人は引くレベルだな・・・』
『そこに萌えてキュンキュンするんじゃーーん!!』
『うーーーん・・・そういうのがあるってのは分かるが・・・ま、何でもいいや。じゃあオレは千草って呼ぶことにするか。よろしくな、千草。』
『うん。こちらこそ夜露死苦!!ユウ君。。』
『お前本当に同一人物かよ・・・』


そんなこんなでオレと千草は知り合い、秘密を共有し合うことになった。
まあ・・・完全に一方的にだけど・・・
その後もたまに二人で会うことがあればげ~むやアニメの話で盛り上がった。
千草は女の子とは思えないくらいそういう知識に長けていて、相当マニアックなネタでも軽くリアクションを取ってくれたりした。
そんな時間が楽しくてしばらくは放課後に会うのが楽しみになっていたりした
そして・・・何故かその数週間後・・・
千草も家に引っ越してきていた。
初夏の日の出来事である。。








東街の北の外れ。
北街との境に『時計塔』がある。
高さは天辺まで入れれば200mくらいだろうか。
そこまで高くはない。
一階は基本的に開けており上の階へ続く螺旋階段が天井を突き抜けるようにしてあるのみだ。
つまりは中心は空洞と言うことである。
フロアと言う物は一階と最上階とその一つ下の二階(概念的には)のみにだけ存在し、それ以外は螺旋階段と壁のみで作られている。
その一階に優太達とアルヴィスは居た。
アルヴィスは上を見つめながら口を開く。


アルヴィス
「まあ護衛と言っても部屋の外で待機してもらう形になるんじゃがのう。」

優太
「それって完全に必要無いってことじゃないかよ!!」

アルヴィス
「まあ・・・保険と言う奴じゃ。スコールもおるし必要も無いかと思ったが・・・何があるか分からんからのう。」

鳳仙
「そうするとオレ達はどうしたらいいの?ダンナ。」

優太
「んーーーー・・・そんな何人も必要無いだろうし・・・お前たちは一階の警護でもしててくれるか?」


「うん、分かったよ~~。。」

鳳仙
「何かあったらすぐに呼んでよねダンナ!!壁を駆け昇ってでもスグに駆けつけるからね!!」

優太
「気持ちだけもらっとく。お前の役目は、どっちかと言うと唯の護衛みたいなもんだ。唯のことだけ気にしてろ。」

鳳仙
「うん、ダンナがそう言うならそうするよ!唯、あんまりオレから離れるなよーー。。」


「分かった~~。。あ、何か向こうの方から良い匂いがする!!行ってきます!!!」

鳳仙
「フラグだとは思ってたけど早すぎだよ回収!!ちょっと待てよ唯!!」

アルヴィス
「大丈夫かのう?」

優太
「大丈夫じゃねぇかな・・・。」









テッカ
「おせぇな・・・とっくに約束の時間は過ぎてるぞ?」

スコール
「もう少し待ってろ。どうせ気まぐれでそこら辺ほっつき歩いてるんだろう。」

テッカ
「はっ・・・。ついに夢遊病を患っちまったか?まあ、ピンピンしてるのがおかしいくらいだもんな。」

スコール
「口を慎めテッカ・・・お前自分が何のために呼び出されたか分かってるのか?」

テッカ
「ちょっとした話し合いだろ?オレも仕事が忙しいんだ・・・早く解放してもらいたいもんだな。」

スコール
「仕事、ねぇ・・・その後ろの奴もそう言う筋の関係者か?」

テッカ
「コイツか?まあ、似たような物かもな・・・今回はオレの護衛役みたいなものだが。」

スコール
「(悪趣味な仮面を付けていて下の顔は分からないが・・・この殺気、只者では無いな・・・)」



ガチャ。


背後から扉の開く音が響く。
三人の視線がそちらを向く。
扉の向こうにはアルヴィスの姿がある。
アルヴィスは務めて軽そうに


アルヴィス
「いやーースマンスマン。ちょいと助っ人を連れて来るのに手間取ってしまった。」

テッカ
「時間厳守は常識だと思ったがな・・・?時間間隔も覚束無くなったか?爺さん。」

アルヴィス
「なぁに、ワシはまだまだ現役よ。」

スコール
「アル、助っ人て?」

アルヴィス
「ちょいとな。まあ、メダと一緒に外に置いてきた。何かあればスグに入ってくるように言ってある。」

テッカ
「何かって何だよ・・・まるでオレ達が爺さん達に危害を加えるみたいに言ってくれるが・・・」

スコール
「少なくともそっちの仮面の男は・・・そう言うのを所望しているように見えるが?さっきから終始殺気を漂わせやがる。やろうってなら相手になるぜ?」



そう言うと、仮面の男の口元がほころぶ。
と言っても仮面に隠れてそれは見えないのだが・・・
代わりにさっきより数段激しい殺気が部屋中に飛び交う。
常人なら腰を抜かすような強烈な物だ。
スコールもアルヴィスもまるで意に介していないが、それを回答と受け取ったのかスコールは右の拳を握りしめ・・・


アルヴィス
「止めんかスコール。」



アルヴィスの制止にハッと己を取り戻し、握り拳を解く。
仮面の男も殺気を飛ばすのを止める。
どうやら興ざめしたようだ。


アルヴィス
「随分と血の気の多いヤツを連れている様じゃが・・・」

テッカ
「護衛だからな。できるだけ強い方が良いだろう?」

アルヴィス
「そうじゃのう・・・人を殺すことに躊躇わないような奴っぽそうじゃのう。」

テッカ
「(殺気の毛色だけで人柄まで読めるか・・・流石は『白銀の剣聖』。老いても感は鈍ってねぇみたいだな・・・)」

アルヴィス
「しかしスコールもスコールじゃぞ・・・安い挑発に乗るなどお前らしくも無い。少しは落ち着いたらどうじゃ?」

スコール
「すまない・・・ちょっと、オレも気が張っていてな。」

アルヴィス
「餅つかんか?」

スコール
「こんな時に言葉遊び!!?」

アルヴィス
「落ち着いたじゃろう?」

スコール
「確かに・・・悪いな。」

アルヴィス
「よいよい。さて・・・話し合いを始めようかのう・・・テッカ?」

テッカ
「好きにしろよ・・・オレに決定権何て無いんだろ?」








優太
「・・・・・・・・さっきの奴、殺気か?」

メダ
「だろうな。て言うかそのギャグ寒いぞ。」

優太
「ゴメン、自分でも言ってからギャグだって気付いた。壁越しでも感じるってどんだけもの凄い殺気だよ・・・ちょっとブルっちまったぞ。」

メダ
「鍛錬が足らんな。オレなんてビクッとした程度だ。」

優太
「ブルったのと同じようなもんじゃねぇかよ!!」

メダ
「全然違うだろ!!」

優太
「どこがどんな具合で!??」

メダ
「何かもう語呂的に大違いだろうが!!」

優太
「結局どっちも震えちゃったことに変わりないんだからあんまりカッコつけるの止めようよ!!」

メダ
「カッコつけてなんか無ぇよ!!てかお前どうしてここに居るんだよ!!」

優太
「いや・・・クソジジイに半強制的に連れて来られた。」

メダ
「本当にそれだけか?」

優太
「それ以外に何があるんだよ・・・」

メダ
「例えば・・・オレへの当てつけ?」

優太
「お前がオレをどういう風に見てるのかはよく分かった・・・とりあえず殴らせろテメェ!!!」

メダ
「上等だコラァ!!ここで一昨日の決着つけてやらぁぁぁぁああああああああああ!!!!!」

ネロ
「止めんかバカども!!!!」



ゴスっ!!!!!!!


二人の間に入ると、右でメダ、左で優太の脳天を容赦なくバールの様な物でぶん殴る。
「ぐえっ!!」と言う悲鳴を両者上げつつ、地面にうずくまる。
何か漫画でよく見るような血が噴水のように噴き出すのが両サイドで起こっているがそんなの意に介さずネロは続ける。


ネロ
「どうして護衛の任務をしててこういう展開になるのよ・・・もう少し時と場所を考えてよね二人とも。」

優太メダ
「「あい、すんません・・・・・」」

ネロ
「分かれば良いわ。」

優太
「それより・・・何でこんな場所で話し合いをしてるんだ?」

メダ
「そうだな・・・強いて言うならこの時計塔は外部からの侵入が階段以外からは不可能だからな。下手な妨害を受けることも無いからだと思うが・・・」

ネロ
「そうね。ま、それって階段を落とされたり、占拠されたら終わりってことなんだけど・・・少なくともそこだけ警戒していればいいって言うのは楽よね。」

優太
「え、でも空が飛べれば外から入れないか?ウチの奴らは一部媒体無しで飛べる奴いるぞ?」

メダ
「この時計塔の魔術結界は相当の物でな。下手な攻撃じゃあピクリともしない。そういう意味ではここの防御能力は王城に匹敵してるかもな。」

優太
「へぇ~~。そんなに堅いのか?じゃあちょっと試してみようかな・・・」

ネロ
「止めといた方が良いわよ。優太の武器って日本刀でしょ?刃が欠けるわよ?」

優太
「そんなに堅いの!??」

ネロ
「いやいや、そもそも日本刀って切れ味を追求した物だから武器同士をぶつけ合っての鍔迫り合いとかをするようには作られてないのよ・・・。」

優太
「へぇーーーそうなのかーーー。。」

メダ
「お前自分の得物の特徴くらいは把握しておけよな。」

優太
「あぁ?そう言うメダだって自分のツール一つ一つの基本構造理解できてねぇんだろ・・・?」

メダ
「ふん、アレは種類が多すぎるからな。ま、実戦で使えるようなのは数が限られるが・・・て言うか基本構造何てオレじゃなくてネロが覚えてれば問題無い訳で・・・」

ネロ
「いやいや、ちゃんと覚えて使ってくれるともうちょっとくらい寿命が延びるんだけどね・・・」

優太
「て言うかネロがあのツールって奴を作ってるのか。」

ネロ
「ええ、そうよ。そういうのは結構得意でね。」

優太
「うーーーん、関係無いんだけどさ・・・ちょっとオレの武器みてもらえないかな?ちょっとここらで手入れした方が良いかなーーーって思うんだけど・・・」

ネロ
「日本刀は専門外なんだけど・・・とりあえず興味あるから見せて見せて。。」

優太
「ん。」



優太は腰から日本刀を抜くとネロに渡す。
ネロは鞘から少し抜いて刀身を見つめる。
表、裏とグルグル回して色んな角度から観察し、時には刃の部分を指で触り刃の状態を確認する。
一通り見てから鞘に納める。


ネロ
「パッと見た感じだけど・・・コレ、本当に日本刀?」

優太
「え、何で?」

ネロ
「コレが鉄でできてる感じがまるでしないんだけど・・・確か日本刀の基本的な材料は玉鋼の筈だから・・・こんな硬いはずないんだけどな。」

優太
「オレも『竜牙』のこと詳しくは知らないんだ・・・。由紀と『契約』ってのをしてさ、その時次元の亀裂から抜き取ったのがコイツだったんだ。」

メダ
「次元の亀裂?」

優太
「説明するのがめんどくさいんだけど・・・とりあえず何か空間にヒビが入ってさ、それに手を突っ込んで引き抜いたら出てきた的な?」

メダ
「もの凄くファンタジーな話だな・・・にわかには信じられん。」

優太
「それ言われるとオレはお前らの存在その物が信じられ無ぇよ。」

ネロ
「これ・・・何の物質出来てるんだろう。くちゃくちゃ硬いんだよ。とりあえず。」

優太
「ふーーーんそうなのか・・・。」

ネロ
「うん、何か柄とか柄撒きの擦り減りから考えるとさ・・・刃の部分だけ妙にボロが無いんだよね。見た目は。」

優太
「見た目は?」

ネロ
「まんまの意味だよ。だって他がコレだけ摩耗してるんだよ?普通に考えたら刃だってもっとボロボロになってて良い筈なのにほぼ無傷状態・・・もしかしたら内部的にはダメージの蓄積があるかも。私、本職じゃないからこれ以上は分かんないんだけど・・・」

優太
「そっか、それだけ分かれば良いや。じゃあ今度鍛冶師でも探して見せてみることにするよ。」

メダ
「鍛冶師じゃないが・・・昨日会ったフィルじいさん居たろ?あの人なら武器に詳しいから見せれば何か分かるかもしれないぞ?」

優太
「そうなのか?じゃあ今度行って・・・」



バギャアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!


突如部屋の中から何かが吹き飛ぶ音が響く。
それと同時に誰かの叫び声、そして


ベキベキベキ!!!


次の瞬間、その扉を突き破り一人の男が飛んできた。
三人は反射的にそれを左右に飛んで避わす。
するとその破壊された扉の中から高速で何かが男へ向かって飛んでいく。
それは矢だった。
しかも男へ向かって正確に追尾して飛んでいく。
その矢が男の体を貫くと、扉の向こうから一人の少女が飛び出してくる。
その少女と優太の目が合う。
優太は目を疑う。
その少女の姿に。
そして少女は手に持った鋼の弓を男の腹部に叩きつける。


ミシッ!!


骨が軋む音がした。
もの凄い勢いで床に叩きつけるとそのまま薄い床を突き破り階下へと落ちていった。


優太
「な・・・何でアイツがここに?アイツ確か仕事があるって・・・どういうことなんだよ、千草・・・」



迷い、躊躇うのも一瞬。
優太は腰に『竜牙』を納め、穴のある方へ向かう。
メンドクサイのは嫌いだ。
だから、直接聞きだす。
優太はそれだけ思考すると穴に飛び込んだ。
しかし・・・


優太
「はっ!!そういえばココって地上200mくらいの場所だったっけ!!ヤヴェ・・・着地失敗したら死ぬじゃん。」



と、今更階段から降りればよかったと後悔しつつ既に一階の床が見えてきた。
そこでは今正に千草と男が戦っている。
男の手には青竜刀の様な物が握られている。
対する千草もどこから調達してきたのか、鋼の弓を片手に近中距離で立ちまわっている。
が、千草は基本は中、遠距離型なのだ。
あの距離で戦うのは普通なら不利でしかない。
しかしその不利を全く感じさせない。
次の瞬間、優太は調度千草と男の間に着地する。
優太は着地と同時に相手を攻撃するために『竜牙』を抜き放つ。
千草はそれに気付いていたのか、攻撃の手をスグに止める。
優太はそれを受けて、スグに目の前の男へ『竜牙』を振るった。
今、一つの戦いの幕が開ける。






第八話「復讐者、千草。。」






セルセタ。
それが私の故郷の名前だ。
『魔法界』では田舎の部類に入ってしまうような小さな町だ。
私はこの町で生まれ、そしてずっとここで生きて、きっとここで死ぬんだろうなって漠然と思っていた。






私には父親と母親、母方の祖母と一緒に暮らしていた。
貧乏では無かったけど、裕福と言う訳でも無かった。
友達もそれなりに居て、毎日代わり映えの無い日々を過ごしていた。
そうやって生きることに特にコレと言って不満は無かった。
コレはコレで満たされている。
この平穏がずっと続けばいいな。
そうやって思っていた。






ある日・・・
私は用事で町の外に出ていた。
出たと言っても近くの森に食べられる物を探しに行っていただけだ。
基本的に私の町では自給自足が当たり前だ。
今日食べる物は今日採る。
その日はたまたま私がその当番だった。
いつもなら畑に色々な野菜が作ってあるのだが・・・
生憎今は季節の変わり目でまだ苗を育てている段階なのだ。
幸い近くの森には多種多様な野菜や果物が自生している。
見つけるのにコツが居るので原住民である(こんな言い方するとまるで私達が何かの部族みたいだな)私達以外の人では到底見つけられない。
私も五歳の頃までは全く見つけることができなかった。
でももう私も八歳だ。
コレくらいは朝飯前だった。
思った以上に捗ってしまい、もうすっかり日も暮れ始めていた。
ちょっと夢中で探し過ぎた!
私は背中に背負った籠を必死に抑えながら町まで走った。
しかしおかしい。
何故か、町のある方の空が夕焼けとは思えないような赤い色をしている。
未だに森の中に居た私には何が何だか分からなかった。






町まで戻っても何が何だか分からなかった。
町が、燃えてる?
何で、どうして・・・一体何がどうなっているの?


『お父さん!お母さん!お祖母ちゃん!』


私は燃える家々を尻目に、自分の家へ向かう。
頬に照りつけてくる熱気が尋常じゃないくらい熱く、所々から上がっている煙が喉を犯す。
さっきから何度も煙を吸っては咳き込む。
そして眼から涙がこぼれる。
それはこの惨事に対する不安からくるものだった。


パキッ。


近くで何か音がした。
周囲を見渡すと、スグ目の前の家から数人誰かが出てくる所だった。
あそこは確か友達のみっちゃんの家・・・
だが、出てきたのは知らない大人たちだった。
私は反射的に近くの家の陰に隠れる。
するとその大人たちは口々にこう言い始めた。


『この家にも居ない。』
『くそ・・・どこに居やがるんだ?この町に「純血種」が居るって話だろ?』
『と言うか、居るか居ないかはさておき・・・どうやってそれを見分けるんだ?』
『さあな・・・テッカ様の話では興奮すると瞳の色が変色するタイプの「純血種」らしい。』
『ははは!どこの○ラピカだよそれ!』
『冗談言っている場合か・・・見つけられなければオレ達の首が危ないんだぞ?』
『それもそうだなーーー。いや、でも火まで点ける必要無かったんじゃねぇの?』
『どうやら交渉の方が決裂したらしい。なら力づくでってことらしい。』
『ひゅーー!何時ものことながらエゲつねぇな。』



てっか?じゅんけつしゅ?こうしょう???
私には到底理解できないような話だった。
分かったことと言えば、早く自分の家に行かないと不味いと言うことだけだった。







至る所に知らない大人の人が居て、見つからないように家まで来るのに苦労してしまった。
自分の家だった物を見やる。
既に火の手が家全体を覆っていて中に入るのはどう考えても無理な話だと思えた。
一応、中の様子を確認するために窓から家内を見る。
やはり家の中はもぬけの殻だ。
誰一人としてそこに居る様子も無い。
もしかしたら逃げたのかもしれない。
だったらここに居る意味も無い。
スグここから離れよう。
そう思い、町から出るために歩き出す。
しかし、事態はそうそう良い方に傾いてはくれなかった。


『おい、そこに居るのは誰だ!!』


後ろからそんな声が聞こえた。
スグに自分のことだと言うことが分かる。
見つかった!?
不味い、逃げないと・・・!
痛む喉や胸など構わず走った。
後ろから数人の足音が追いかけてくる。
それだけで今まで以上に不安が胸の中でぐちゃぐちゃになって今にも吐き出しそうになる。
それでも走った。
それ以外にこの状況で助かる方法などない。
町の外が見えた。
既に夜の帷が下りてきており、すっかり周りは完全な暗黒世界だ。
だが、こんな場所よりは幾分もマシに見えた。
そこへ一歩踏み出す。
このまま森に戻って闇に乗じて逃げれば追手が来ても安心だ。
そう安堵した瞬間、背後から肩を掴まれた。








テッカ
「なにっ!!?」

優太
「ふんっ!」



ガッ!!!


日本刀と青竜刀がぶつかる。
テッカはそのまま体重を乗せ青竜刀を押し込んでくる。
読んでいた訳では無い。
優太はその押し込みに逆らわず後ろに体重を傾ける。
テッカは焦った。
相手が拮抗してくるとばかり思っていたからだ。
テッカの体は支えを失い、前につんのめる。
逆に優太は右の脚を支点にしてそのままテッカをいなす。
完全に態勢を崩したテッカの頭に既に千草は狙いを定めている。
千草は何の迷いも無くその矢を離し、矢を射る。


ドッ!!!!!


そんな音と共にテッカが吹き飛ぶ。
数m飛んでいくと地面に頭から落ちて動かなくなる。


優太
「・・・・・・・おい、マジで殺しちゃってないコレ?」

千草
「殺っちゃったよ?それが何か?」

優太
「いやいやちょっと待って!!!アイツが誰で一体何が何だか全然分からないんですけど・・・そこら辺の説明は無いんですか!!」

千草
「・・・・・・・・私、千草っち。アイツゲロ犬。」

優太
「そんな取ってつけたようにリトバスネタ挟まなくていいよ!!何だよリトバス流行ってんのかよ最近!!」

千草
「うーーーーん、説明すると長くなるからできれば聞かないでくれると助かっちゃうって言うか~~。」

優太
「・・・・・まあお前が話したくないって言うなら無理には聞かないけどよ・・・。」

千草
「え・・・本当にいいの?」

優太
「はぁ?だって話したくないんだろう・・・。だったらいいよ別に。話したくなったら話せよ。」

千草
「ユウ君・・・。」

優太
「何はともあれマジで死なれても困るな・・・急いで医者にでも・・・」



『その必要は無いぜ?』


千草
「!!?」

優太
「・・・。」

テッカ
「ペッ!イテテ・・・口で止めるって言うのはダメだな。歯を痛める。」

優太
「おいおい、漫画じゃないんだから口で飛び道具防ぐとか止めようぜ・・・。」

テッカ
「まあ口で止めることに必死で頭の方は守れなかったがな・・・コブ出来たぜこりゃあ。」

千草
「テメェ・・・性懲りも無く生き残りやがって、今ので死んどけば楽だったと思うよ?」

テッカ
「へへっ・・・オレも色々と悪さはしてるからどこでどうやって恨みを買ったのか知らねぇがよ・・・あんまりお痛がすぎると、殺すぜ?」



その言葉を発すると同時にテッカの全身から殺気が溢れだし、優太と千草を威圧する。
さっき上の階で感じた物とはまた違った狂気を感じる。
優太はこの瞬間相手が完全に自分より数段各上の相手だと確信する。
しかし、隣の千草はそれを受けてもなお戦う意思を解こうとはしなかった。


千草
「殺されないよ・・・だって私がその前にお前をこの場で射殺してやるからだ!!!」



千草の瞳の色が緑色に変色する。
『魔眼』と言われる千草特有の能力だ。
普段の千草は風の力を操り矢の軌道を操作することで飛距離と命中精度を得ている。
それを成せるのは千草自身の視覚能力の高さがあるからだ。
通常の状態であっても数km離れた場所をはっきり見通すことができる。
しかし『魔眼』を開眼した千草は数百km先であろうと正確に狙うことも可能である。
今の千草に捉えられたら最後、数百数千の矢の雨を全身に浴びることになるだろう。


テッカ
「・・・・・!その眼、『魔眼』か!」



テッカの表情が何故か嬉々としたものに変わる。
通常なら逆に青ざめる所だ。
何せこの『魔眼』にはいくつもの特殊な能力がある。
それを知っている物なら危機感を覚えるものだ。
例え知らなかったとしても人間、自分の認知の外にある事象には恐怖を感じるものだ。
テッカにはそれが無い。
まるで格好の獲物を見つけた肉食動物の様な眼だ。


テッカ
「『魔眼』持ち・・・しかも緑ってことは上から数えて四番目、かなりの高ランク・・・『希少種』どころじゃねぇ、これなら百万じゃあ釣りがくるぜ・・・。」

千草
「何をぶつくさかましてるんだよ!!」

テッカ
「いやぁ?まさか王都に来て早々良い物見つけたな~って思ってよ。」

優太
「・・・。」

テッカ
「まあいい・・・こんなバカげたことササっと終わらせて一緒に来てもらうぜ。お前は、良い商品になりそうだ。」

千草
「・・・!!てめ・・・」



千草の口が開けかけた刹那・・・
その隣を凄まじい風が吹き抜けた。
テッカも千草もある種の興奮状態のためかそのことに全く気が付かない。
先に気付いたのはテッカだった。
急に目の前に人影が瞬間移動でもしてきたかのように出現し、何かをこちらに向けて突き出してくる。
しかしあまりにも唐突なことに体が反応できず、テッカの顔面に優太の拳が叩きつけられた。


ゴバキッ!!!


完全に芯でとらえた。
クリティカルヒットと言う奴だ。
さっきとは比べ物にならないような勢いでテッカは吹き飛ぶ。
きりもみしながら空中を回転し、床を何度もバウンドしながら壁まで突き飛ばされる。
壁に激突してその勢いは止まるがそこに優太は再度踏み込む。
テッカの胸倉を掴むと拳を振り上げ、何度も、何度も何度も、何度も何度も何度もその顔に叩きつける。


ゴッ!!ベキッ!!ドッ!!グシャッ!!


そんな乾いた音が響く。
その音と合わせるように優太は叫ぶ、


優太
「テメェが何だとかそんなことはどうでもいい・・・だが、オレの家族を『物』だぁ?『商品』だと?ふざけてんじゃねぇぞ!!!」



ドフッ!!


優太
「よくよく考えたらテメェにはエリスとアヤカのこともあったな・・・その分も今からついでに返しとくかぁ!!?」



ベキャ!!


優太
「なにさっきからだんまり決め込んでんだ・・・何か言ったらどうなんだよクソ野郎!!!」

テッカ
「・・・・・・・言いたいことはそれで終わりかよ?」



ゾワッ!!


素直に背筋が凍った。
間近で感じた本物の殺気。
それは紛れも無く優太に向けられた物だった。
よく見て見るとテッカの顔には傷一つ付いていない。
さっきから全くのノーガードだった筈だ。
それなのに、まるでダメージが無い。
優太は初めて身の危険を感じた。
咄嗟に胸倉を離し、距離を開ける。


テッカ
「ふぅ・・・『速鳥』の入りがほとんど分からないな。だが、『唸犬』は全くできてないみたいだな・・・。」

優太
「こうけん?」

テッカ
「知らねぇなら別にいいんだよ・・・簡単な話、お前の攻撃はオレには一切届かないって話だからよう。」

優太
「あぁ!?」

千草
「いや、ユウ君・・・満更嘘じゃあないみたいだよ。アイツの全身を何か強固な魔力が覆ってる。」

優太
「魔力!?」

千草
「使ってる量は微々たる物なのに見た感じ魔法障壁以上の防御能力がありそうだよ・・・。なんなのアレ・・・」

テッカ
「種明かしをすると・・・これは上級肉体強化術、防御の極意『鋼猿』。」

優太
「上級肉体強化術防御の極意だと!?なげぇ!!」

テッカ
「そうだ。お前が使える『速鳥』と同じだ。もっともコレは全身に魔力を纏うことにより防御能力を通常の何倍にも膨れ上がらせる術だ。」

優太
「おい、いいのかよそんな簡単に教えちまって・・・」

テッカ
「別に構わないが?何せこの『鋼猿』は一長一短で使えるようになる物じゃあないからな。」

優太
「へっ!!その余裕、打ち砕いてやるぜ!!」



脚に魔力を注ぎ込み、床を思いきり蹴る。
瞬間的に視認できる速度を超え、テッカの前に踏み込む。
そして優太は全身に魔力を纏わせ、再度拳をテッカの鳩尾に叩き込む。
攻撃は最大の防御。
そしてその逆も然り。
強力な防御は裏返せば強力な攻撃にも成りえる。
その原理で見よう見まねの『鋼猿』を使用し、テッカに叩き込んだのだが・・・


テッカ
「効かんな・・・」

優太
「なっ!!?」



テッカはピクリともしない。
やせ我慢などでは無い。
全く効いてないことがその余裕そうな表情から窺がえる。


優太
「な・・・どうして!?」

テッカ
「筋は悪くないな・・・だが、オレの『鋼猿』を破りたいなら、コレくらいはできねぇとなあ!!!!!」



ブワッ!!


テッカの右拳に膨大な魔力が集約されたかと思うとその魔力が一気に凝縮される。
そしてその拳が優太のどてっ腹を捉える。
優太は避けるつもりでいた。
が、反応する前に一撃が飛んできた。
まるで見えなかったのだ。
テッカの拳が。


メキメキメキッ!!!


どう考えても人間の体から聞こえてはいけない音が連続した。
それは骨が折れる音だ。
今度は優太が床を何度もバウンドしながら吹き飛ぶ。
しかしテッカと違い、優太はかなりのダメージを追っている。
『鋼猿』をかけているにもかかわらず、だ。


優太
「グ・・・ッ!!ガフッ!!」



口から大量の血が吐き出される。
びちゃびちゃと吐き出された血が床に零れて周囲に跳ねる。
この出血だと折れたあばらが内臓に刺さったのかもしれない・・・


千草
「ユウ君!!」

優太
「ガ・・・ッ!ゴハッ!!」

テッカ
「ふん・・・お前らじゃあオレには勝てねぇよ。見ただろ、この埋めようも無い実力差をよぉ。」

優太
「ど、どうして・・・オレはちゃんと『鋼猿』を・・・!」

テッカ
「あんなの全身に魔力を纏っただけじゃねぇか。そんなもんは『鋼猿』とは言わ無ぇよ・・・。それに、『唸犬』を纏わせたオレの拳を防げる奴はそうは居ないんだ。お前の急ごしらえの『鋼猿』じゃあ無理無理。」

優太
「こうけん・・・?な、何だよ、それ・・・」

テッカ
「単純に言えば、攻撃の極意だよ・・・。」

優太
「・・・・・!」

テッカ
「さて、どうする?言っとくがオレは手加減を知らねぇんだ・・・。これ以上やるって言うならお前は確実に死ぬぜ?」

千草
「テッカ・・・お前は私から家族や町のみんなだけじゃなく、ユウ君まで奪おうって言うの!?」

優太
「家族・・・、みん・・・な?」

テッカ
「・・・・・・ん?よく見るとその眼・・・あぁ、なるほど・・・もしかしてお前、セルセタの時に逃げたガキか?」

千草
「・・・・・。」

テッカ
「あの時はすまなかったなぁ・・・アイツら、特にお前の親父はどうも聞き分けが悪くてよ・・・。おとなしく『純血種』を渡せばよかったんだよ、そうすりゃあみんな死ななくて済んだのになぁーーー・・・。」

千草
「ユウ君、私が合図したら逃げて。」

優太
「え・・・」

千草
「その傷じゃあもう動くのは無理だよ・・・お願い、ここは素直に逃げて。」

優太
「お前、は?」

千草
「戦うよ・・・例え負けると分かっててもさ、ユウ君が敵わないような相手に勝てるとは思わないしね。」

優太
「だ、だったら・・・!」

千草
「それ以上は言わないで・・・。」

優太
「!?」

千草
「ねぇ、ユウ君・・・私はね、コイツが憎いんだ・・・殺してやりたいくらい。」

優太
「え・・・」

千草
「コイツは私の家族を、友達を・・・私の故郷その物を奪いやがったんだよ・・・」

優太
「・・・・・」

千草
「これは、私の問題なんだ。ユウ君は関係無いんだよ・・・だから、ごめんね。」

優太
「千草・・・」

千草
「じゃあ私が一気に踏み込むから・・・その隙に逃げて。」

優太
「・・・。」

千草
「・・・・・・・・ふぅ。」

テッカ
「内緒話は終わったかぁ?なら答えを聞こう・・・。」

千草
「消えやがれ!!うおらあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」



そんな怒号と共に千草は無謀にも真正面から突っ込む。
だがその表情に迷いは無い。
ただ、ただ真っ直ぐに宿敵を見定めてその足を踏み出す。
テッカは青竜刀を構えると千草との距離を一気に『速鳥』で縮める。
それを読んでいたのか千草は既に狙いを定めている。
矢をほぼ零距離から放つ。
しかしその矢はテッカの体に当たると同時に先端がひしゃげた。
『鋼猿』と魔法障壁の二重の壁の前に単純な物理攻撃は意味を成さない。
テッカはそんなことには目もくれず青竜刀を振り落す。
千草の手から弓が叩き落される。
しかし千草は矢を握り込むようにしてテッカの胸に突き刺す。
効果は全く無い。
またもや先端がひしゃげて意味を成さなくなってしまった。


テッカ
「終わりだ・・・今は眠てろ!!」



そう言うとテッカは青竜刀の持ち手で千草の後頭部を狙う。
衝撃を与えて気絶させようとしているようだ。


ドンッ!!


グラリ、と態勢が崩れる。
後ろからの衝撃で千草の体が前に倒れた。
地面に体を強く打ちつけられ、思考が瞬間的に停止する。
自然と瞳が閉じていくのが自分でも分かった。







第九話「天壌の雷。。」






後ろに立っていたのは紛れも無くさっきの見知らぬ男達の一人だった。
手には見たことも無い銃を持っていた。
そしてその男の胸元には毒々しい、蜂の頭を模したマークが見えた。
圧倒的な銃の存在感に私は完全に抵抗する意志を失った。


『何だ、まだ残ってたのか・・・調度良い。お前も来い。』
『どこへ?』
『勿論、オレ達と一緒に。他の人達も居るぜ?一部、だがな・・・』


その言葉の意味を理解するのは、当時の私では無理だった。
全てが急すぎた。
既に私の頭の中は色んなものがグチャグチャになっており、何も考えることなどできない状態だった。


『お父さんやお母さんも居るの?』
『さあ・・・それは分かんねぇが、少なくともこれから一人で居るよりは良い生活が送れると思うぜ?』


その後男は「人にもよるがな」と小声で付け足していたが、どういった意味が含まれていたのか知る由も無かった。
しかし深く考えるまでも無くこの後一人で逃げて何ができる?
お金も無い、身寄りも無い、それに・・・家族が居ない・・・
こんな所で逃げるなんてせず、この男の言うとうりにした方が百倍マシに見えた。
私はその男に付いて行ってみることにした。
もしかしたら、付いて行った先にお父さんが、お母さんが、お祖母ちゃんが・・・もしかしたら友達の誰かが居るかもしれない。
そう、ここで逃げなくても別にいいじゃないか。
少なくとも一人じゃなくなる。
寂しくなくなる。
「連れてって。」と、喉から出かかった時・・・
近くの茂みから大きな影が一つ飛び出してくる。


『チャル!!!!!』


そう、私の名を呼ぶ声は紛れも無く父の物だった。
私はスグ声のする方を向いた。
茂みから勢いよく飛び出し、一直線にこちらに向かってくる。
男はスグに手に持った銃を構え、父に向かって撃つ。


ババババババ!!!!!


しかし暗がりを思うように狙えないのか父に当てることはかなわなかった。
父は勢いを乗せ、男に肩から突っ込む。
軽く男を吹き飛ばすと、私の手を取って森に向かって走り出した。








どれくらい走っただろう。
もうここがどこかも分からなくなるくらいメチャクチャに森の中を走り回った。
そして開けた場所に出た。
知らない場所だった。
こんな所がこの森にあったんだ・・・そう思っていると、急に前に居た父が倒れた。
私は何事かと思い父に寄り、その背中に触れる。
すると、何かぬめりを帯びた物が手に付着する。
それを確認するために手を裏返す。
そこに付いていたのは、血だった。
今まで森の中が暗くて見えていなかったが、よく見ると父は体中に傷を負っている様だった。
こんな状態で私を連れ回していたのか・・・
父は手近の大きな木にもたれ掛ると私を見つめながらゆっくりこう切り出した。


『チャル・・・よく聞くんだ。お父さんはここで別れる。』
『何で?どうして?こんな状態のお父さんほっといてどこかに行くなんてできないよ!!』
『お父さんは・・・これから母さん達の所にいかなくちゃならないんだ・・・分かってくれ、チャル。』
『だ、だったら私も一緒に・・・』
『ダメだ!!!!!』


何でこの時ここまで父が怒ったのか全然分からなかった。
でも、私はただ不安で・・・父にすがるしかできない。
そんな私に父は優しく、


『大丈夫だ・・・チャル、お前には一族の血が流れている・・・その力がお前を守ってくれる・・・』
『な、なんなの・・・力とか血とか訳が分からないよ!』
『アイツらは・・・お前を狙ってきたんだ。』
『ど、どうして?』
『お前が、その力を持っているからだ・・・』
『ち、力って?』
『全てを見通す力・・・だ。』
『みとお・・・す?』
『そうだ・・・その力を誰にも渡すな・・・それが、お前の運命でもある・・・』
『・・・・・??』
『本来なら・・・お前がもっと大きくなったら話すつもりだった・・・早すぎたんだ。』
『お父さん・・・』
『こんな小さなお前にこんなことを言っても分からないと思う・・・それは分かってるんだ・・・だが、知っておいてほしかった。』
『・・・・・』
『ごめんな・・・チャル。お前一人残して、』


途中で父は私の後ろに目を向ける。
私も釣られてそちらを見やるが何も見えない・・・
いや、見えた。
夜の闇に包まれた森の中にさっきの男達と思われる数人のグループを発見する。
そう遠くない。
早くココを動かないと見つかるのは必然だとさえ思う。


『お父さん!アイツらが・・・!』
『!!?チャル・・・お前、見える・・・のか?』
『え?』
『チャル・・・逃げるんだ。』
『で、でも・・・!』
『いいから・・・大丈夫だ。スグに父さんも追いかけるよ。』
『本当?約束してくれる?』
『ああ、約束だ・・・。』


そう言って指切りをした。
私は父に言われるままに森の中を走る。
そしてその後、父と再開することは無かった・・・








とりあえず森を駆けまわり、ようやく森を出たと思った矢先に倒れてしまい偶然通りかかった近くの村の人に介抱してもらった。
二、三日その村で静養させてもらってから危険だと思いつつも町に一度帰ってみた。
しかしそこには焼けて黒焦げになった家々と、見る影もないくらいに焼け焦げた死体の山しか残っていなかった。
父と最後に別れた場所に行ってみたが何も残っていなかった。
あったと言えば近くの川の傍に黒焦げになった死体が一体転がっていた。
今思えばアレが・・・




私はそれから各地を転々としながら王都に向かった。
お金も無く、歩きで向かうとなると結構遠かった。
その間、色んな人たちに助けられた。
世の中優しい人も居ると思った。
そんな生活を数か月続けているとようやく王都に着いた。
私はまずお金を稼ぐために仕事を探した。
だが、こんな子供を働かせてくれるような場所はほとんど無く、日払いの仕事を続けてお金を貯めていた。
体を売る以外のことはほとんどやった。
年数が経つに連れ、できる仕事の量も増えていった。
そんな折、ようやくそれなりにお金を稼ぐことができた。
既に私は十二歳になっていた。
その間に様々なことを学び、もう十分だと思った。
私は、『外界』に行くことにした。








『外界』はコッチと違って色々やりやすいと聞いた。
もうこちらに私の居場所は無いと思っていた。
だったら新しく自分で作ってしまえばいい。
その場所が『外界』だ。
もうこの『魔法界』に新しい居場所を作る気にはなれなかった。
ココには嫌な思い出が根付いてしまっている。
それはこの数年ずっと引きずってきたから分かる。
ここに居る限り私はこの嫌な思い出から解放されない。
もう夜な夜なうなされるのはたくさんだ。
私は決意を新たに『外界』に逃げるように移住した。




そこでは思ったよりも簡単に事が運んだ。
町を出てから、王都に向かうまでの旅路の中で記憶操作の魔法と言う物を覚えていたのだが、これを王都在住中の数年で私は数段練度を上げていた。
これを使ってまずどこかの家に昔から住んでいたと言う設定の元で記憶の操作を周辺一体にかけた。
普通ならこんな単純な魔法はちょっとのことで解けてしまう。
結局の所記憶の不整合がどこかで起こって気付いてしまうと言うのがパターンなのだが・・・
それは基本的に魔法に耐性のある人達に言える話なのだ。
魔法に耐性があると最初効いたと思っても、記憶の不整合から見る見るうちに記憶を思い出してしまう。
が、耐性が無い一般の人達ならちょっとの不整合はどうってことは無かった。
私は自分があたかも昔からここに居たように振る舞う。
それを数年も続けていたら完全に周囲の人達は私が昔から居たという記憶にすり替わった。




私は所謂、清廉潔白、大和撫子的な感じのキャラで通していた。
基本的に真面目で清楚な感じで通していれば誰からも怪しまれることも無かったからそうしていたが・・・
これが結構なストレスだった・・・
元から清楚だの可憐だの・・・そういった物とは程遠い性格だったからだ。
そんなストレスを発散させてくれていたのがげ~むだ。
学校の帰り道、ふと寄った店で気晴らしに買ったのが最初だった。
もちろんこんな物やったことがある訳では無かったので最初は挫折の連続だった。
だがやっている内にドンドンその道にハマっていく自分が居た。
こんな楽しい物が世の中にあるなんて・・・そう思うと自然と買い集めて回ったりもしていた。




高校は適当に近くの実業高校に入学した。
今までどうりのキャラで通しつつ、嗜み程度でやっていた弓道も頑張っていた。
でも私はそんな生活に渇きを感じていた。
満たされていない・・・
こんなにも周りからチヤホラされて充実してるはずなのに、あの悪夢にうなされることも全く無くなってきたのに・・・
どうして私はこんなにも渇いているんだろう。
そんな時だった、あの人に会ったのは・・・









「あ~~、このホットドック美味しいねぇ~~。。」

鳳仙
「確かにコイツは美味い・・・特にこのチョリソー、ピリッとした辛さがパンの甘味を惹きたてて・・・って違ぇよ!!!」


「ん~~~?どしたの鳳ちゃん。」

鳳仙
「いやいやいや!!さっきまで結構重めの過去語入ってやっと本編だ~~先週それなりに気になる終わり方したな~~と思って読んでた人達置いてけぼりの日常パート来ちゃったよ!!?」


「たま~~にこういうの挟まないとストーリーは成り立たないんだよーー。」

鳳仙
「うあーーーーーーーーー!!て言うかオレも現在時間的にはまだ千草が『時計塔』侵入前の状態だからこういう話してるのもおかしいんだけどさ・・・」


「よくあるよくある。。ほら、このどろり濃厚ピーチ味ジュースでも飲んで落ち着きなよ~~。」

鳳仙
「出たよ濃厚ピーチ!!夏が近いからってAIRネタは良いです!!てか去年の同じ時期にも同じネタ使いましたからーーー!!!」


「うん、知ってるよ~~。」

鳳仙
「いや、だからそれ自体がおかしいんだって・・・」



バギャアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!


鳳仙
「!?」


「鳳ちゃん!『時計塔』の上の方から煙が上がってるよ!」

鳳仙
「追いでなすったか・・・よし、ダンナの手伝いに行こう!唯!!」


「うん!何かできることあるよねきっと!」










「ん?」

愛依
「どうしたの、カナちゃん。」


「何か凄い音が東街の方から聞こえたような気がしたんだけど・・・」

愛依
「そうだったかな・・・私には特にコレと言って聞えなかったよ?」


「そっか・・・じゃあ気のせいかな。」

愛依
「それより梓ちゃんへのお土産どれが良いかな?」


「適当に陳皮渡しておけば喜ぶんじゃなイカ?」

愛依
「無い無い。」


「んーーー・・・じゃあ、この猫じゃらしで手懐けるのはどうかな?」

愛依
「いや、梓ちゃん人間だから・・・」


「いや、何か猫っぽい気がする・・・」

愛依
「カナちゃん、色々ツッコみたいけどそれ以上は何も言わない方が良いと思うよ?」


「よし!決めた!!これで愛依とイチャつく方向でどうだろうか!!?」

愛依
「どうだろうかって・・・普通に却下で。」


「だよねーーー。。」









体が前のめりに倒れていく。
しかしこれはテッカに殴られて倒れているのではない。
何故なら後頭部を叩かれたのではなく、背中を押されたから倒れているのだ。
あまりに思いきりよく押す、もとい叩くものだから一瞬呼吸が止まって目が閉じかけた。
飛びかけた意識の中、千草はテッカの攻撃を片手で防いでくれている男を見やる。
何でそう何時も何時もトラブルに飛び込みたがるんだろう・・・


千草
「ユウ君の・・・バカ・・・」

優太
「あぁ!?助けてもらっといて凄い言い草だな・・・ま、別にいいけどよ!」

テッカ
「お前、バカか?こんな奴助けてどうなる・・・お前に何の得があるって言うんだ・・・」

優太
「別に損や得で動く人間ばっかじゃないって話だよ・・・オレはただ何となく助けたいから助ける。それだけだ・・・」

テッカ
「くだらない正義感、か・・・じゃあもういい、死ねよ。」



テッカは右の手を握り込み、目にも止まらない速さで拳に『唸犬』をかける。
そしてそれを優太の脳天に振り下ろした。


グシャ!!


そんな生々しい音が響く。
辺りに鮮血が飛び散り、少しの間をあけて腕が落ちる。
それは紛れも無くテッカの右手だ。
テッカは目を疑っている。
自分の右手が・・・切断されていた。


テッカ
「グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」



絶叫と共に地面にうずくまり、左手で右腕を抑える。
それで痛みがひく訳でも無いのに無意識に体がそうしてしまう。
テッカは苦悶の表情を浮かべつつ、優太を睨みつける。


テッカ
「て、テメェ・・・何故、オレの『鋼猿』を破れた・・・魔法障壁との二重の壁を早々突破できる物じゃねぇ・・・な、何か隠してやがんのか・・・!?」

優太
「別に何も・・・言うなれば、肉を切らせて骨を断つ的な?」

テッカ
「?」

優太
「お前、さっきの一撃でオレを倒し切っちまってればよかったんだよ・・・ま、オレが寸でで急所を外したんだが・・・」

テッカ
「何を、言ってやがる?」

優太
「アレで『唸犬』って奴のコツを見切った。自分で喰らったからその魔力の練り込み方まで事細かに見させてもらったぜ・・・代償はちと高くついちまったがな。」



優太は適当に腹をさする。
未だに激痛が腹部を中心に広がりつつある。
たまに口から血が吐き出されることもあり、そのダメージの高さは誰が見ても明らかだ。


テッカ
「ま、まさか・・・アレだけで『唸犬』を習得した・・・?バカな・・・!!」

優太
「実際やって見せただろ・・・まさか武器にまでかけられる物だとは知らんかったがな・・・」

テッカ
「クソ!!テメェ・・・絶対生かして帰さねぇ!!!殺してやる!!オレの腕は、テメェの命で償ってもらうぞ!!!」

優太
「上等だ!!テメェが千草とどういった関係で、何が何だか知らねぇけど・・・オレの家族に手を出した代償は、テメェの腕一本じゃあ済まさねぇぞ!!!」



テッカは左手に青竜刀を掴むと力の限り振り下ろしてくる。
その一撃を『竜牙』で防ぐ。


ガッ!!!


重い。
素直にそう思った。
右手が利き手だと思ったが、実の所左が利き手?
もしかしたら両手とも使えるのか?
そんなことを考えつつ、『竜牙』を捻って一撃をいなす。
そのまま体を回しながら横一閃に振るう。


ガキン!!!


その一閃は確実にテッカの左の脇腹にぶつかった。
文字どうり。
通常鳴る筈の無い音がそこから響く。
どうやら障壁と『鋼猿』の壁は想像以上に硬いようだ。
まるで何も纏わせていない『竜牙』では刃が立たない。
この一撃は命がけの戦いの最中には確実に命取りになりかねない。
優太は自覚しつつも試しておかなければならなかった。
それは単なる知的好奇心と言う奴だったりもするが、主に魔力の流れを見るためだ。


優太
「(なるほど・・・ただ纏わせるんじゃなく、障壁と融合、いや癒着させるように魔力を練り込むことで障壁を硬くするのか・・・)」



優太は『速鳥』でスグに間合いをあける。
テッカもそれを追うようにして接近してくる。
ふと優太の視界に青白い閃光が目にとまった。
一瞬瞬いてスグに消えたが、テッカの周辺を度々瞬いているようだ。
攻撃を防ぎながらよく観察してみるとその閃光はテッカの動きが激しくなればなるほど勢いを増している。
まるで電気を身に纏っているような・・・
その時、一瞬だけ脳内に昔やったげ~むの映像が蘇る。
それはピンク色の玉みたいなキャラが敵の能力をコピーしながら進むげ~むの映像だ・・・
そのげ~むの能力の中にこんなのあったなーーーと思い出していると


テッカ
「そろそろか・・・」



と不穏な台詞を口にする。
今の今までテッカはガンガン攻めてきていた。
が、急遽向こうから攻撃の手を止めて間合いを離してきた。


テッカ
「見せてやる。コレが、全てを焼き焦がす天壌の雷だ・・・!!」



テッカは右左の足からスパイクの様な物を出して床に突き刺す。
そして左手の青竜刀を前に掲げる。
すると何故かテッカの体中からさっきとは比べ物にならないような閃光が瞬く。


バチ!バチチッ!!!


不味い。
優太は素直にそう思った。
何が来るかなんて分からないが、とりあえずもの凄いのが来る。
優太は『速鳥』で間合いを詰める。
間に合え!
それだけ思いながらテッカとの距離を詰めたが、


テッカ
「甘い。」



体が寸での所で押し返された。
まるで何かに強く押されるように体が後ろに飛ばされる。
考える間もなくテッカとの距離がまた倍もあいてしまう。
テッカは顔をいびつに歪めながら


テッカ
「死ね。」



ボッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


それは何と表現すればよいのか、例えるなら優太の使う『電磁波動砲』と同じような極太のビームが照射される。
その速度は目で追える物でも無い。
ほとんど脊髄反射で優太は考えるよりも早く体を動かす。
態勢を急いで立て直し、『速鳥』で射線上から逃げる。
青竜刀から放射された極太ビームは『時計塔』の壁を軽々吹き飛ばし、雲に風穴を開ける。
しかしそのビームは真っ直ぐは撃たれなかった。
どうやら反動が強すぎたのか、発射と同時に腕が上に振れたようだ。
優太は内心ホッとする。
この威力のビームを真っ直ぐ飛ばされていたら確実に射線上の人達を大多数巻き込むことになる。
が、テッカは再度発射態勢に入っている。
今度は無くなった右の腕で左手を上から支えている。
次撃たれたら、確実に不味い。


優太
「(どうする・・・止めようにも寸でで吹き飛ばされた意味不明なアレをどうにかしないとならないし・・・。まず近付けたとしてもどうするんだ?あの威力を打ち消せるような技何て・・・)」



その時優太の脳裏に閃く一つのビジョン。
それは見る見るうちに形を成し、優太の脳内を駆け巡り一つの策を導き出す。


優太
「(もしかしたら、どうにかなる?いや、でもこの方法が成功するとして・・・どうやって近付く・・・)」



それが最後のネックだった。
あの押し返されたのが何かの魔術なのか、それともテッカの隠し持っている能力かもしれない・・・
それを突破できなければこの策も意味をなさない。
どうする、時間が無い。
テッカは今にもさっきの一撃を放とうとしている。


優太
「くそ・・・何とかなりそうなのに、どうしても近付く方法が思いつかない!!」



『じゃあ、私が協力しようか?』


優太は声の方向を振り向く。
そこに居る一人の少女の眼がテッカの周囲を見つめる。


優太
「何が見える?」

千草
「風・・・」

優太
「風?」

千草
「そう。しかも結構強力な奴。テッカの周囲一帯に張られた結界みたいな感じかな?名付けて『風王結界』!!」

優太
「インビジブル・エアかよ!!」

千草
「ナイスツッコミ!!やっぱユウ君は分かってるよね~~。」

優太
「いや、て言うか『風王結界』って剣を見えないようにして間合いを測らせないようにする技じゃなかったっけ?」

千草
「そんな原作知らん!!」

優太
「テメェ知らないのに使うなよ!!原作ファンに怒られるだろうが!!!」

千草
「ま、そんな門答はさておき・・・あの結界、破る方法があるって言ったらどうする?」







第十話「送る言葉。。」






あの日、図書室でいつもみたいにげ~むをしてた。
その時カウンターにはたまにみかける少年が居た。
何度か見かけていたので適当に会釈だけして奥に向かった。



図書室の一番奥、いわゆる辞典類の置いてあるスペースには滅多に人は来ない。
と言うか放課後にわざわざこんなエリアに来る勤勉な連中がこの学校に居ないだけだが・・・
そこの窓際にある仕切りのある読書スペースは私の特等席のようなものだ。
前述のとうり人など滅多に来ないのでやりたい放題である。
私はいつものように鞄からげ~む機を取り出すと早速昼の続きを始めた。
調度一番最後の相手の所で予冷が鳴ってしまったので泣く泣く止めていたのだ。
でもこのげ~むはもうかなりやりこんでいると自負している。
正直まるで歯応えなど感じなかった。
まあ、これまだノーマルだから歯応えなくてもしょうがないけど・・・
上に三つは難易度残ってるからそれでもやろうかな。
そう考えていると背後から人の気配がした。
表現的にオカシイかもしれないが私は振り向かずにそちらを見た。
私の視野角はほぼ360度なので真後ろでも見えたりする。
疲れるからこれやりたくないんだけどね。
そこに居たのはカウンターの少年だった。
どうやら既にこちらが何をしているのか見えているらしい。
物好きも居た物だな~~こんな所まで見に来るなんて・・・
それとも私を攻略しようと思ったのかな?
そうやって適当に考えつつも放って置くことにした。
彼の顔は信じられ無い物を見るような感じだったからだ。
それは私がげ~むをやってるからと言うのもあるだろう・・・でも、それ以上に私のテクに魅入ってる節があった。
もしかして・・・同族??
ちょっと期待しつつ黙ってプレイを続けた。
適当にコンボが決まったので超必殺技で沈めて終わりにした。
やっぱノーマルでやること無くなったわ。
そう改めて思い直すとすぐ近くに人の気配を感じる。
どうやら真後ろで覗き込むようにして見ているようだ。


『このげ~むのこと・・・分かるの?』


気付いたらそう聞いていた。
何故だろう、まずこういう時は適当に誤魔化す所だと思っているのに・・・
さっきの彼の魅入るように見つめる眼が忘れられず、そう聞いてしまっていた。


『ああ、知ってるよ。こんな誰得げ~、よくここまで極めたな・・・素直に驚きなんだが・・・』


と、彼は返してきた。
その言葉に正直有頂天になってしまった私はつい、


『へへん!この千草さんに不可能なんて無いのさ!』


なーーんて答えてしまっていた。
やっべ!!完全に素が出ちゃったよ!!
ちょっとこのげ~むのこと知ってるって言うのが嬉しくて、それに・・・自分のプレイを褒められたのが初めてで嬉しかったから・・・


『・・・・・て言うか・・・もしかして、そっちが素なのか?』


流石にコレは引かれた・・・
確実に明日から私の今まで築きあげてきた物全部崩れ落ちる・・・
そう確信した。


『あ、やっべ!つい分かってくれる人って珍しいから舞い上がっちゃったよ・・・!』


てな訳で完全に開き直って素で会話することにした。
もうどうにでもなれーーーー・・・と完全に投げやり気味に・・・






その後、何だかんだでユウ君とは仲良くなって一緒にげ~むしたりオタク系の話で花を咲かせまくったりすることになった。
話してみたら普通に面白い人で気付いたら完全に気を許すようになっていた。
それにユウ君は「このことは秘密だよ」と言ったら黙ってくれてるようだし・・・
何か秘密を共有するのっていいなーーー。とかまるで少女のように浮かれている自分が居た訳ですが・・・
何だかんだあるうちに私もユウ君の家に押しかけたりして、ユッキーやレンチー、鳳仙にユイチー、愛依ちゃんに奏っちゃん。
それにユウ君と一緒に過ごした。
その生活の中で私は、これも『家族』って言うのかなってちょっと思うようになっていた。






そんなハートフルな日々を続け、つい一昨日げ~むやら何やらを買う資金を作る名目で『魔法界』に来た。
正直な所はあまり良い気分はしなかった。
でも、今の私にはみんなが居る。
昔のことは昔のこと。
今は今だ。
そう割り切っていた筈なのに・・・
アレを見た瞬間に全てが崩れていった、あの蜂の頭を模したマークを見るまでは・・・
見た瞬間は全然分からなかった。
少し考えたら思い出した。
忘れようとしていたあの日の出来事を・・・
失ってしまった本当の『家族』のことを・・・







『魔法界』の情報ラインは本当に凄い。
ちょっとしたことならスグに調べられるのだから。
私は次の日は鳳仙と仕事をする傍ら情報屋からある情報を入手した。
あのマークを従えている連中のトップが明日この王都に来ると言うことを。
別に私は復讐とかそういうのがしたかった訳じゃない。
でも、その情報を知ったら居ても立ってもいられなかった・・・
私はありったけの準備を整え、その夜遅くに一人でかけることにした。
みんなに迷惑はかけたくない。
多分アイツに会ったらまず間違いなく殺してしまうだろう。
それだけ今の私の中はグチャグチャになっていた。
そして、館を出ようとしたその時・・・
後ろで誰かの気配がした。
見なくても分かる、ユウ君だ。
あちゃーー、と思った。
本当にこういうことにはピンポイントに遭遇するんだなこの人・・・。
と初めて思った。


『どうしたんだよこんな時間に・・・そんな格好までして。』


いつもどうりに聞いてくるユウ君。
私は適当なことを言って誤魔化した。
ユウ君は気付いていないのか、いつもどうりに「気を付けろ」って言ってくれた。
こんな私のこと、心配してくれるんだなって思ったら自然と口元が緩んだ。
そしたら自然と


『ごめんね。』


と言っていた。
私自身意味が分かんなかった・・・
何でこんなこと言ったんだろう。
もしかしたら、急に申し訳なくなったのかもしれない。
多分事情を説明してればユウ君は、いやみんな普通に協力してくれたと思う。
そうしたら私も全うな方法でアイツを捕まえて・・・罪を償わせるとかそう言うことにできたかもしれない。
でも・・・それを分かってても言えない。
やっぱりこの手で決着を付けたいと思ってしまっていたからだろう。
その申し訳なさから出てしまった言葉だったんだと思う。






それでも何だか知らないけど『時計塔』の壁を私の『魔眼』の能力でぶち抜いて中に入ったらユウ君に遭遇した。
ああ、何なんだよコイツ!!
人が折角色々気を回したって言うのに結局突っ込んでくるのかよ!
でも、ちょっと嬉しかった。
事情は話してもいないのに私のために戦ってくれてるユウ君。
コレが終わったら全部話してみよう。
そしたら今度こそ引かれるかな・・・
ちょっと心配だけどそれは杞憂だと思う。
だってユウ君は、こんなことで人のこと嫌いになれるような人じゃないって知ってるから・・・
私の一番好きな人だから、・・・だから、多分、大丈夫だろう。。








優太
「破る方法、あるのか!??」

千草
「多分ね。あのレベルの操作魔術程度なら・・・あるいは、って感じだけど。」

優太
「もう考えてる時間も惜しい・・・!頼めるか!?」

千草
「いいよ。て言うか、無理かもって言っても、もう止めないんでしょ?」

優太
「当たり前だろ?」

千草
「ユウ君、私のこと信じてくれるの?」

優太
「何で今そんな事聞くんだよ・・・お前のことはちゃんと信じてる。」

千草
「もしかしたらまるで駄目かもしれないのに?」

優太
「やってみなくちゃ分からねぇだろ。」

千草
「そっか・・・うん、じゃあやろうか。ユウ君!」

優太
「ああ!」



そう言って千草は弓を引き絞る。
その態勢のまま優太に語りかけてくる。


千草
「ユウ君、コレが終わったらさ・・・色々話したいことがあるんだけど・・・」

優太
「おい、このタイミングでそれは止めろ。完全に死亡フラグだぞ・・・」

千草
「うん。そうかもね・・・でもさ、ユウ君が守ってくれるから大丈夫でしょ?」

優太
「・・・・・分かってるじゃねぇかよ。」

千草
「帰ったら、一緒にげ~むしようね。」

優太
「ああ。」

千草
「一緒に春アニメチェックしたいな・・・」

優太
「おぅ、オレもそう言えばまだ一個も見てねぇよ!帰ったら一緒に見っか!」

千草
「ユウ君・・・」

優太
「ん?」

千草
「大好き・・・」

優太
ブッ!!!!!!!!???



優太は完全に隙を突かれたかのように噴出した。
て言うかそのまま咳き込んで血がドバっと出た。
結構洒落にならない。


千草
「あり、ちょっとした冗談だったんだけど・・・そこまで動揺されるとこっちがビックリだよ。。」

優太
「バッキャろう!!この状況で何をかましてくれてんだよ!!危うく出血多量でぶっ倒れる所だ!!!」

千草
「めんごめんご。。」

優太
「あーーーもう!!いいから行くぞ!!こんなギリギリでやるようなネタじゃねぇよコレ!!!」

千草
「でもさ・・・」

優太
「あ?」

千草
「私っぽいでしょ?」

優太
「・・・・・・そうだな。」

千草
「行くよユウ君・・・銀河の果てまで!!」

優太
「いや、それは流石に勘弁してください。」



その掛け合いが合図になった。
優太は『速鳥』で一気に踏み込む。
それに対し、テッカは再度結界を張り出す。


テッカ
「無駄無駄無駄!!!この『風王結界』を越えることは何人たりともできねぇよ!!!」

優太
「え!?マジで『風王結界』なのそれ!!!」



軽く驚きつつ、『風王結界』に体が押し返される。
その時、背後から無数の矢が優太とテッカの周囲に突き刺さる。


テッカ
「残念、外れだ・・・!!」

千草
「いんやー?大当たりだよ・・・」



ボフッ!!!


その矢を中心にいくつかの風が巻き起こる。
優太は体に抵抗を感じなくなったことに気付く、むしろ追い風を背に受けた感じだ。
どういう原理か知らないが千草が起こした風がテッカの『風王結界』に干渉して風の向きを変えたようだ。


テッカ
「な、何っ!!?オレの『風王結界』が!!」

千草
「そんなちゃちな操作系魔術で『風王』名乗んなよ・・・私からしたら児戯同然だよソレ。ま、年期が違うって奴?」

テッカ
「この小娘がぁぁああああああああ!!!!!」



テッカは青竜刀を千草に向ける。
そして撃ちだそうとした刹那、優太がその傍らに踏み込む。
『竜牙』を振りかぶり、青竜刀を叩く。


ガッ!!!


青竜刀は真下を向き、その方向にビームが射出される。


テッカ
「しまっ・・・!!」



一度撃ちだした物を途中で止めることはできず、テッカはそのままビームの推進力に耐えられず上昇する。
さらにそれを支えるように千草の矢から発せられた風が上昇を手助ける。
その力を自身の『風王結界』が干渉して増強していることにテッカ自身気付かない。


テッカ
「う、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!???」

優太
「やっぱりな・・・」

テッカ
「なにっ!??お前何時の間に・・・!!」



優太はテッカの肩に捕まるようにして一緒に上昇してきている。
テッカは振り払おうにも片手は切り落とされ、もう片方の手は青竜刀を握っているのが精いっぱいだ。
離したら落ちる訳だから離すわけにもいかない。


優太
「反動で射線がズレたのは威力がありすぎるから。だからスパイクなんかで足だけは固定した・・・じゃないと踏ん張りが効かないからだろ?ま、そんな威力の物を足元へ撃ちこんだらこうなるわな。」

テッカ
「き、キサマ・・・離れろ!!コレ以上オレに触れるな!!」

優太
「ああ離れるよ。もうスグ屋上だしな・・・」



テッカは上を見上げる。
確かに既に天井が見えつつある、このままでは激突する・・・
魔力を青竜刀に流している関係上今は『鋼猿』を上手く使えない、このままでは・・・


テッカ
「た、頼む!!助けてくれ!!!」

優太
「あぁ?」

テッカ
「このままじゃあ、ぶつかってお陀仏だ!!頼む、金ならいくらでも払う!!なんならいい女でも、望む物は何でもくれてやってもいい!!なあ、助けてくれ!!!」

優太
「・・・・・・何だよ、ここまできて命乞いか?随分と安っぽいプライドなんだな・・・」

テッカ
「し、死ぬよりマシだろ!!!!」

優太
「そりゃあ確かにそうだが・・・よし、気が変わった・・・」

テッカ
「!!じゃあ・・・」

優太
「自滅させようと思ってたが・・・オレがこの手でトドメさしてやる。」



優太はテッカの肩から手を離す。
そして右手の『竜牙』に千草の風を纏わせる。


優太
『風皇剣』・・・」

テッカ
「や、止めろ!!止めてくれえええええええええええええええ!!!!!」

優太
「喰らえよ、コイツが真の『風皇』の一撃だ!!!!!『翔皇(ライジング・)――――――!!!!!



『竜牙』を見る見るうちに激しく渦巻く竜巻が覆い尽くす、そのまま優太は竜巻と共に急上昇し続ける。


優太
閃風刃』(エア)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」



振り上げるとともにテッカの腹部に竜巻を叩きつける。
竜巻の刃がテッカの体中を切り裂きながら上昇を続け、そして・・・


ボゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!


突き抜けた。
天井を突き抜け、屋上とその階下の天井もぶち破りながら『時計塔』の真上まで上り詰める。
優太はテッカの胸倉を掴み下に振り下ろす。
そして『竜牙』を握った右拳に『唸犬』を練り込みテッカの顔に叩き込む。


ボグッ!!!!!!!!


今度は逆にテッカは千草の元まで急降下する。
既に骨は所々砕け、歯も何本か折れ、体中キリ傷だらけだ。
そのまま何の緩衝剤も無いような硬い地面に背中から叩きつけられる。


ドガッ!!!


テッカ
「グエッ!!!?」



まだ息がある。
どうやら最後の最後で『鋼猿』をかけ、落下の衝撃だけは和らげたようだ。
が・・・


千草
「良かった・・・生きててくれたんだね・・・」

テッカ
「ヒッ!!?」

千草
「やっぱり最後の一発は自分で決めたかったから・・・それともユウ君は私にトドメ譲ってくれたのかな~~?」

テッカ
「や、やめ・・・!も、もうこれ以上は・・・!」

千草
「大丈夫だよ・・・痛くないから・・・感じるよりも早く、テメェの息の根を止めてやるよ!!!」



千草の眼が見開かれる。
緑の奥から徐々に光が消え、まるでどこかの外道主人公のように瞳から光が消えうせる。
その眼でテッカを見据え、千草は弓を引く。
狙いは・・・


千草
『天涙・命封貫』(てんるい・めいほうかん)!!!!!



テッカの胸の中心にドカッと矢が突き刺さる。
それは完全に心臓を貫き、テッカの心臓を停止させた。
まるで線を切られた人形のように四肢を投げ出し、力無く頭を垂らした。


千草
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。私も、やっぱ人の子だなーーー・・・。」



バンッ!!!


突如目の前の扉が開く、そこには息も絶え絶えの鳳仙と唯が立っていた。
二人は千草と目が合った途端走り寄ってくる。


鳳仙
「千草!ダンナは!?」

千草
「んーーー、そういえば落ちてこないなぁーーー。」


「え!!?どゆこと!!」

千草
「上の階で引っかかったのかな?とりあえず医者呼んでから私達も見に行ってみよう。」

鳳仙
「医者・・・?って、うおわ!!何だよコイツ、ボロボロじゃん!!もしや死・・・」

千草
「死んでないよ・・・仮死状態だけど。」


「え?」

千草
「それ以上血流したら死んじゃうだろ?心肺停止させて荒い止血しといた・・・その矢抜いたら心肺もどっから早く医者呼んでやりなよ。流石に長い間そのままだと確実に死ぬから・・・」

鳳仙
「うぉおおおい!!早く言えそういうの!!唯!電話だ!!」


「えぇ!!でもどこにかければいいの!!?」

鳳仙
「とりあえずギルド本部にかければいいんじゃね!!?」


「本部って何番?」

鳳仙
「知らね。。」


「ダメじゃん結局ーーーーーーーーーーー!!!」

千草
「とりあえず・・・終わったよ、お父さん、お母さん、お祖母ちゃん、みんな・・・」



そう天を仰ぎ見た千草の目線の先には優太が開けた空洞があり、その先には青く透き通った空が見えた。
その中に、何故か見知った人達の顔が映る。
一瞬目を疑うが、そこには紛れも無く父と母、祖母と町のみんなの姿が映っている。
これも、『見通す力』なのかもしれない。
千草は頬を伝う物を必死に堪えながら、笑顔でソレを見送った。
もう、大丈夫。
一人じゃないから・・・みんなが、居るから・・・


『もう、大丈夫だよ。』


そう心の中で呟くと、その影たちは消えていく。
これ以上無いくらいの笑顔と


『頑張れ、チャル。父さんたちはいつもお前の傍にいるからな・・・』


そんな言葉を残し、消えて行った。
千草は鼻をすすり、手で涙を拭う。
そして、何食わぬ顔で後ろで右往左往してる二人の輪に何時もどうり混じっていくのだった。


千草
「番号なら私が知ってるから問題無いんだぜ?」

鳳仙
「「早く言おうよ!!手遅れになったらどうすんの!!?」」









優太は正直困っていた。
勢いとかノリでテッカと上昇したはいいが・・・
ただいま絶賛落下中である。
しかも優太自身、武空術的な感じの魔術だったりは使えない。
その割にいつも高い所から落ちたりはよく経験するのだから困った話だ・・・
これを機にソッチ方向の修行に努めるべきか。
そう考えてる間に『時計塔』の屋上が見える。
と言っても自分が開けた穴を介してだが・・・
とりあえず穴の縁に魔力を使ってしがみつけばどうにかなるかなーーー。
そう軽く考え、優太は魔力を全身に纏う。
まだ、完璧では無いが『鋼猿』モドキをかける。
これなら万一失敗して色んな所ぶつけても痛いで済むと思う。
狙いをすまし、穴の縁を両手で掴む。
が、落下の勢いと自分の体重をそんなボロボロの部位が受けきれる筈も無く、空しくも崩れ落ちた。
しかし落下の勢いを一瞬とは言え殺すことにも成功した。
優太はすぐさま部屋の中に前回り受け身感覚で転がり込む。


優太
「いって~~~~~~~!!!!」



とりあえず五体満足であることを確認しつつ周辺を見回す。
するとどうだ、さっきまで居た筈の連中が一人もいやがらない。
と言うか、部屋中もの凄い破壊のされ具合で何があったんだって感じだ。
所々にヒビが走り、そこかしこに大小様々な穴まで開いてる。


優太
「どういうこった?ジジイは、メダ達は・・・」



すると一つ下の階からもの凄い力の波動を感じる。
殺気と一緒にもの凄い量の力が優太の肌を震わせた。
優太はスグに近くの穴から下の階を覗く、そこには血だらけで倒れるスコールと、必死に呼びかけるネロとアルヴィスと・・・
体中から朱く燃えたぎるような力を放出させるメダの姿があった。
そしてメダの視線の先には見慣れない男が一人立っている。
その男は柔和そうな線の細い優男だ。
だが、その手にハメた刃渡り十センチはあるであろう鉤爪が異様に浮いている。
さらにメダを見つめながらとても満面の笑みを浮かべつつ、こぼれんばかりの殺気を乗せて


ドレイク
「良い、実に良い・・・私が求めていたのは君の様な逸材だ・・・ハハハハハハハ!!!!!!!!!!私は運が良い!こんなくだらない仕事で君の様な前途有望そうな少年に出会えたのだからな!!!」

メダ
「黙りやがれドレイク!!お前は、お前だけは・・・オレがこの手で殺してやる!!!!!!」

ドレイク
「そうだ、もっと怒ると良い・・・怒りは判断を鈍らせるが、人間本来の力を引き出す感情でもある!!」

メダ
「知ったことか!!!親父の仇、そして団長、いや・・・師匠の仇はオレが討つ!!!今日、ここで!!」







第十一話「復讐者、メダ。。」




優太
「な、何が・・・?え?」



訳が分からなくなる。
そこまで長い間、場を離れていたわけでもないのに状況がおかしくなっている。
優太は穴から身を投げ、階下に降り立つ。
そして近くに居たネロとアルヴィスに近付き、


優太
「ジジイ!ネロ!!なにがどうなってんだ!!?」

アルヴィス
「やはりさっき下から上がってきたのはお前じゃったか・・・」

優太
「そんなの後で良いだろ!どうなってんだよ!」

アルヴィス
「テッカが襲われたことで向こうはこっちが自分達をハメたと思い込んだらしい。お前が居なくなってからスグにあのドレイクが本性を現してな、スコールと一騎打ちを始めよったんじゃ。」

優太
「で、スコールさんが負けちまったのか・・・?」

アルヴィス
「スコールとドレイクの一騎打ちはかなり拮抗しておった。しかしスコールの方が押されることが多くての、メダが加勢に入った。が、メダではとても敵わず隙を突かれ殺されそうになった所をスコールが庇ったんじゃ・・・」

優太
「スコールさんが、庇った?」

アルヴィス
「くっ!ワシが付いていながら・・・今も予断を許さぬ状況、メダ一人ではどう考えてもドレイクに勝ち目はない・・・何とか止めねばならんがこの場で治癒魔術はワシにしか使えん・・・ワシがここを離れる訳には・・・!!!」

優太
「状況は分かった・・・要は、メダを手助けすればいいんだな?」

ネロ
「!!ダメ!!メダを止めて!!あの人と戦っちゃダメ!!」

優太
「分かってるよ・・・あの殺気、アイツが飛ばしてたのか・・・テッカとは比べ物にならねぇ・・・アレは本物だ。」

ネロ
「だったら止めてよ!!メダまで居なくなったら、私・・・私・・・!!」

優太
「大丈夫だ・・・オレが、死なせない。」

ネロ
「優太、くん・・・。」

アルヴィス
「しかし・・・優太、お前も相当の深手を負ってるように見えるが・・・」

優太
「ん、ああ・・・何か治った。」

アルヴィス
「なに?」

優太
「そういえばさっきから痛みが無いんだ・・・少し前まで痛くてしょうがなかったんだけど、血とかも大分吐いてたし・・・。」

アルヴィス
「ちょっと診せてみぃ。」



アルヴィスは何の遠慮も無く優太のシャツを捲る。
その下には痣の様な物が残っているものの目立った外傷がなくなりつつあった。
と言うか、現在進行形で治っている。
内部もこの感じだと再生が続いていそうだ。


アルヴィス
「まさか・・・この治癒能力は・・・」

優太
「って!!なにをマジマジと人の腹見てんだよ!!気持ちわりぃな!!!」

アルヴィス
「む、スマン。一応大丈夫なようじゃが・・・コレを飲んでおけ。」



アルヴィスはポケットから丸い10円ガムのようなものを取り出すと優太に手渡す。
何かの薬だろうか、結構凄い臭いがする。


優太
「うっ!何だよコレ・・・」

アルヴィス
「再生を促す促進剤の様な物じゃ。飲んどけ、力が湧くぞ。」

優太
「そ、そうなのか?じゃあ・・・」



ガリッ!


優太
ブッ!!!!にっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっげぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええ!!!!!!

アルヴィス
「良薬口苦しと言う言葉があるじゃろう?」

優太
「に、苦過ぎ・・・オエッ!水かなんかないのかよ・・・」

アルヴィス
「スプライトならあるぞ。」

優太
「何でそんなの持ってんだよ!!透明だけど水では無いじゃん!!飲み合わせ悪そうじゃん!!!でも四の五の言ってらんねぇ・・・」



優太はスプライトで無理矢理薬を飲み込む。
ぶっちゃけスプライトの炭酸が強すぎて喉を一気に通すと痛くてしょうがない。
その上薬の苦みはスプライトの甘さでさらに強調され、想像を絶する味になってしまう・・・。
どうにかこうにか全部飲みきる。
まだ口内に苦みと甘味のハーモニーが残っているが、そんな細かいこと気にしてはいられない
そしてスグにその効果は表れた。
腹部を中心に急に熱を持ち始め、ジワジワと体の奥から力が湧いてくる気がした。
心なしか腹の痛みがドンドン引いていく。


優太
「スゲェ速攻で効くんだなコレ・・・よし、これならイケそう!!んじゃ、ちょっくらメダと一緒にアイツブッ飛ばしてくる!!」

アルヴィス
「(あの薬を飲んで楽になると言うことは・・・まさか、優太の奴・・・持っとるとはおもっとったが、まさかワシと同じ・・・いやそれ以上の物を持っとるかもしれん・・・。)」





メダ
ドレイクゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!!!!!!!!!!

ドレイク
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!!!!!」



二人の距離が一気に縮まる。
メダの『速鳥』の方が一歩多くドレイクに踏み込む。
その一歩の差でメダの拳がドレイクの腹部にめり込む。


ボッ!!!


衝撃が背中の方へ抜けるほどの一撃を与えるが・・・


ドレイク
「良いですね・・・実に良い・・・。」

メダ
「!!?」



ドレイクはケロッとした表情でメダの顔を見つめる。
その表情はまるで逆に快感を感じているかのような蕩けた表情だ。
見てて背筋が凍る。
メダは瞬時に『速鳥』で距離を開ける。


メダ
「(どういうことだ・・・オレの『唸犬』は確かにまだ練度は浅い、だが奴は『鋼猿』も障壁も張ってる感じには見えなかった・・・それであの顔・・・どういう体してやがる!!)」

ドレイク
「悪くないですが・・・やはりまだ甘いですね。私と戦うにはまだ早い・・・」

メダ
「ああっ!!?」

ドレイク
「何せ・・・『氣力』も知らないようですし、それではまず間違いなく私に殺されるだけですよ?」

メダ
「『氣力』・・・?あの生命エネルギーの総称の事か・・・?」

ドレイク
「そうですが・・・今はそんなこと教えた所で・・・」



メリッ!!!


突如視界の端から鞘による一撃が決まる。
優太が何の気なしに『速鳥』で踏み込み、適当に振るっただけの一撃があっさり決まった。
ドレイクはメダの時と違い、激しく吹き飛ばされ壁に激突する。


メダ
「!!?」

優太
「あり?何だよ、てっきり躱されるものだと思ったが・・・入っちゃったな。」

メダ
「優太!?テメェ邪魔すんな!!!」

優太
「バカ野郎!肩肘張ってる場合か!!アイツの殺気は半端じゃねぇ!!それに何かオカシイぞアイツ・・・全然ダメージがねぇ・・・。」



優太の視線の先、ドレイクは土煙の中から立ち上がる所だった。
その頬にはまるで傷跡が残っていない。
殴られた後すら残っていないのは流石にオカシイ。
優太は自分なりに『唸犬』を施した一撃をお見舞いした筈だ。
それが何の防御も取ってない相手に傷一つつけられなかったのだ、これは異常以外の何物でもない。


ドレイク
「今のは良い一撃だった・・・まるで迷いも無い。そして微量だが氣力を感じた。それも強力な・・・」

メダ
「なに?優太、お前氣力が使えるのか!!?」

優太
「え、何のこと?」

メダ
「無意識でやってるのか?しかし・・・」

ドレイク
「だが君も練度が浅い・・・それでは私に傷一つつけられはしない。」

優太
「おい、どうするメダ・・・多分、勝ち目ねぇぜ?」

メダ
「弱気だな・・・まあ、オレもそうは思うが・・・引けない戦いってのはあるんだぜ?」

優太
「なる。分かったよ・・・じゃあ、もう少しがんばってみっか?」

メダ
「当たり前だ・・・止めるならアイツに一つでも傷をつけてからだ・・・!」





アルヴィス
「やはり・・・あのドレイク、氣力使いか・・・。」

ネロ
「氣力使い・・・?」

アルヴィス
「魔力は精神エネルギー、氣力は生命エネルギー・・・心の力か体の力かと言う話じゃな。」

ネロ
「それだけなの?」

アルヴィス
「いや、全然違う。何故なら氣力は強化に特化した力じゃ。」

ネロ
「それってつまり、上級肉体強化術と同じってことですか?」

アルヴィス
「いや・・・アレとは比べ物にならない出力を生み出すことができる。単純に五倍位は違う。」

ネロ
「そんなに!?」

アルヴィス
「しかし氣力と言うのはコントロールが難しく、誰でも扱える訳では無い。特別な才能が必要になってくる。少なくとも努力や根性では絶対に習得できん。」

ネロ
「その力をあのドレイクは使えるって言うんですか?」

アルヴィス
「恐らくな・・・下手をすると『魔氣』を使える可能性もあるが・・・」

ネロ
「い、色々あるんですね・・・」

アルヴィス
「達人になればこんなのの使い手はごろごろ居る。じゃが・・・あの二人は今正に才が芽生え始めている。」

ネロ
「そうなんですか?」

アルヴィス
「ああ・・・スコールがメダの奴を気にいる筈じゃ・・・流石はダリウスの息子。素質は十分か・・・じゃが、不思議なのはあの優太じゃ・・・」

ネロ
「優太君が?」

アルヴィス
「そうじゃな・・・アイツからはワシと同じ物を常々感じとったが・・・もしかすると・・・」





優太
「兎に角、しこたま攻撃しまくってみるってのはどうだ?」

メダ
「数撃ちゃ当たる・・・か。よし、それで行くか。」



二人は左右からドレイクに突っ込む。
ドレイクは平然と両手を上げ、完全に無防備な姿勢を取る。
二人は一瞬躊躇ったが、逆にプッツンときた。
優太は『竜牙』に、メダは左拳にそれぞれ最大練度の『唸犬』を纏わせる。
踏み込むと同時に振り抜き、撃ちつける。


ズドバッ!!!


かなり豪快な音が響いたが、ドレイクの服にすら傷一つつかない。


優太
「なろう!!!」

メダ
「まだまだぁああああああああ!!!」



二人は何度も何度も斬り付け、打ち込む。
だがその一発もドレイクに届かない。
ドレイクは依然として涼しげな顔で無防備に立ち続ける。


メダ
「クソクソクソ!!!!」



メダの拳から逆に血が噴き出す。
まるで純度の高い鉱石を殴っているかのような気分だ。
手の皮が剥けてそこかしこに血が飛び散る。
しかし、それでもメダは止めない。


優太
「うおおおおおおおおおおおおお!!!」



『竜牙』の刃が随分と欠ける。
これまで幾度となく硬い物を斬ってきたが、『竜牙』の刃がこぼれる所なんて初めて見た。
しかし、それでも優太は止めない。




二人の一撃一撃はまるで意味を成さない。
ドレイクはそれを分かった上で撃たせている。
ドレイク的には氣力の薄い膜を体全体に纏わせているだけで他には何もしていない。
悲しいが、これが現実。
埋めようのない実力差である。
ドレイクもそろそろ飽きかけていた。
これ以上は時間の無駄。
そう判断したのか右手の鉤爪を鳴らし、メダの拳に目を向ける。
さっきとは違う。
拳に朱いエネルギーが伝播し、それがドンドン膨らんでいる。
心なしか次第に回転し始めている。
さらに優太の刀にも変化が見て取れる。
何故か刀身が赤黒いエネルギーに覆われ始め、それが全身に伝播し始めている。
不味い?
そう思った時は既に遅かった。
決死の一撃を二人が撃ち込む方が早い。
ドレイクは腹部にそうそう感じることの無い『痛み』を感じた。




優太メダ
「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」」



ン!!!!!!!!!!!!!!!!


二人の決死の一撃がドレイクの生身の肉体を捉えた。
メダの拳から放たれた回転するエネルギーが氣力の膜を突き破り、優太の『竜牙』に纏った赤黒いエネルギーが同時に氣力の膜を斬り裂く。


ブシャーーーーーーーーーーーーーーーー!!!


鮮血が迸った。
それはかなりのおびただしい量だ。
メダの一撃が背中を貫き、優太の一閃が胴に大きな傷を付ける。
ドレイクは目を疑う。
やった二人も目を疑う。
次の瞬間、ドレイクは地面に倒れた。


メダ
「え・・・・・やった、のか?」

優太
「こ、これは・・・一体・・・」

ドレイク
スバラシイ!!!!!!!



突如ドレイクが跳ね起きる!!
優太の付けた傷から内臓が一部はみ出てきていたがそんなことは意にも介していない。
ドレイクはこれまでにない恍惚の表情を浮かべながら


ドレイク
「それがキミ達の力・・・クハハハハハハ!!スバラシイ!良い!!若いと言うのは本当にスバラシイ!!」



ドレイクは適当にはみ出た内臓を中に戻す。
するとどうだ、傷が見る見るうちに再生していく。
あまりにも現実離れしすぎた映像を目の当たりにして二人は顔をしかめる。


メダ
「くそ・・・コイツ、不死身か?!」

ドレイク
「これが私の能力さ、完全再生能力・・・私を殺すのは不可能だよ。」

優太
「なん、だと・・・?」

ドレイク
「ふむ・・・だが残念だ。もう私は帰らないとならないようだ・・・」

メダ
「なに!?逃げられると思ってるのか!!」

ドレイク
「勿論。私は逃げようと思えばどんな所からだって逃げられる。こんな感じでね。」



ドレイクは鉤爪で適当に壁を斬り裂き、穴を開ける。
ここの壁の耐久度高いんじゃなかったのか・・・
素直にそう思いつつも優太はドレイクに手を伸ばすが、ドレイクはその穴に落ちた。


優太
「マジかよ!!?」



優太はスグに下を見るがどこにも姿は見当たらない。
と言うかここから下なんてほとんど何があるか見えるもんでも無い。
千草なら別だが少なくとも優太には何も見えなかった。


メダ
「団長!!」



メダのそんな叫び声につられて優太は壁の穴を覗くのを止め、メダの元に歩んでいく。


スコール
「う・・・、メダ・・・どこだ?」

メダ
「こ、ここです!!団長!!」

スコール
「ああ・・・そこに居たのか・・・メダ、よく聞け・・・今から、『天統べる煌星』の団長の座をお前に譲る。」

ネロ
「えっ!?」

メダ
「な、何言ってるんですか団長!!冗談もいい加減に・・・!!」

スコール
「冗談なもんか・・・オレはもう、ダメだ・・・目がさ、見えねぇんだよ。」

メダ
「そんな!諦めないでください!!ば、バース先生の所に行きましょう!!きっと治してくれる!」

スコール
「いい・・・どうせもう助からねぇよ・・・自分のことだぜ、よく・・・わかるよ。」

メダ
「待ってください!!団長!!まだ、まだオレは・・・!」

スコール
「あの時・・・ダリウスさんに救われたこの命、ダリウスさんから受けた恩の全て、やっと返せた気がするよ・・・」

メダ
「団長・・・!!」

スコール
「そっか、ダリウスさんも・・・こんな気持ちだったんだな・・・それなのにオレは、ずっと自分の所為だと思い込んで・・・」

メダ
「なに言ってるんですか団長!!もういいです!!引きずってでも連れて行きます!!」

スコール
「なぁ・・・メダよ・・・自分の所為だなんて思うな・・・お前は、オレなんかよりずっと・・・天に近い存在だ・・・」

メダ
「天?」

スコール
「ダリウスさんが目指し、届かなかったあの『天元』へお前なら・・・きっと、だから・・・グフッ!!」

ネロ
「ダメ!お父さん、喋っちゃダメ!!本当に死んじゃう・・・!!」

スコール
「ネロ・・・ごめんなぁ、何もしてやれなくてよ・・・母さんの分まで、お前のこと大事に、しようって・・・あの日誓ったのに・・・」

ネロ
「もういいよ!私は幸せだよ!お父さんと、メダやみんなと入れて凄く幸せだよ!!だから、そんなこと言わないで!!」

スコール
「はは・・・最後まで怒られちまった、メダ・・・わりぃ、後は頼んだ・・・ぜ・・・ネロを・・・、みんなを、そして・・・オレ達の想いを・・・たの・・・」

メダ
「団長!!!」

スコール
「お前は・・・オレの弟子で、ダリウスさんの息子だ・・・貫けないもん何てこの世に無ぇよ・・・だから、お前はお前の意志でこれからも前に向かって突き進め・・・間違っても、復讐なんかに生きるな。」

メダ
「そんなこと言うの止めてください!!オレはそんな大層な人間じゃないんですよ!」

スコール
「そんなこ、と・・・ねぇ・・・よ。お前は、まだ分かんねぇんだ・・・自分の、内なる可能性を・・・それを信じて・・・や、・・・れ・・・。」



スコールの瞳が静かに閉じる。
頭が力無く、ガクンと垂れ下がる。
メダの腕に、その体重がのしかかってくる。
しかしその顔はとても穏やかで、まるで救われたかのような微笑みを浮かべている


メダ
「団長?嘘ですよね・・・何で、何で・・・そんな笑いながら死んでるんですか・・・笑えないですよ・・・全然笑えないですよ・・・」

ネロ
「うっ・・・!うっ・・・!!うわぁあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!

メダ
「団長・・・団長・・・だん、ちょう・・・!!スコール団長ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!







最終話「本当の自分。。」






あれから一夜明けた。
急いでスコールさんを医者に運んだ。
蓮も呼んだ。
でも、助からなかった・・・
オレ達は、いや・・・メダ達はかけがえの無い者を失った。
一瞬だった。
メダはずっと呆けっ放しだった。
ネロやアラド、ゼオラの三人が何を言っても反応を返せないような状態だった。
オレもできるなら側にいて励ましてやりたかった。
でも、流石に学校を休む訳にもいかず・・・
いや・・・オレ達は休む気満々だったんだがクソジジイに強制送還くらった。
お陰で今は学校の自分の机の上だ。
まだ朝早いのか誰も来て居ない。
朝練とか言って鳳仙と千草は先に来てるはずだが、HRギリギリまで来ないかも。
由紀、蓮、唯は電車通学なので家を出る時間が若干違う。
とりあえずまだ来てはいないようだ。
愛依と奏に関しては学年が違うので居る訳も無い。
しかしそんな一人の時間も終わりを告げた。
後ろの扉がガラガラと開く音が聞こえたからだ。
とりあえず今は気分を持ち直して学校生活と言う名の日常を送ることにした。








平山
「ぶっちゃけ連休中ずっと練習でさ・・・マジありえなかったんだよね・・・」

雄大
「はは!流石は野球部こんな時でも練習か!オレ達は土曜以外の日月は休みだったぜ。」

平山
「マジかよいいなーー!!」

板垣
「へっ・・・坊主には休み無しの練習が御似合いだぜ~~。」

平山
「うっせぇよ!!こっちだって休みてぇよ!!色々もうボロボロなんだよ!!!」

須田
「そういえば尾崎、ライブに行ってきたんだって?」

尾崎
「ああ・・・奈々ちゃんのライブ最高だったなーーー。。」

須田
「オレなんてずっと引き籠ってげ~むしてたぜ!!」

駿一
「オレなんてずっと引き籠って縛られてたぜ!!」

須田尾崎
「「うわ・・・引くわーーー・・・。」」

駿一
「ああん!!もっと蔑んだ目で見てぇぇええええええええ!!」

大野
「鍋ちゃんは何してたの?」

川鍋
「そうだね・・・滝にうたれてたよ。」

大野
「それは最高にバカだな。。」

川鍋
「ありがとう最高の褒め言葉だよ。」

大野
「ごめん、冗談で褒めたんだけど通じなかった?」



そこには普段と何も変わらない空気が流れていた。
優太はその空気に「ああーー、これが平和な日常か~~~」とかちょっと感激していると


平山
「ハカセは連休中どうしてたの?」

優太
「オレ?オレは・・・」


「ユウちゃんは私と一緒にまほ・・・モガッ!!!」



突如乱入してきてバカ正直に何かもの凄いことを暴露うとした唯を由紀が羽交い絞めにしつつ口元を抑えている。
由紀、GJ。。


由紀
「わ、私達はちょっとプチ旅行的な感じで旅に出てたって感じかな~~~?」

雄大
「なにぃ!!?うら若気なピチピチJK(死語)と一緒に二泊三日の温泉旅行だとおおおおおおおお!!!??」

優太
「温泉とか行ってねぇから・・・それ二年後の話だからーーー。。」

尾崎
「いや、でもズリぃよハカセばっかり!!今度はオレ達も呼べよ!!」

優太
「え・・・ああ、機会があったらな・・・」



正直全く気乗りしないけど行ったら行ったで楽しいんだろうな~~とか考えてると廊下からもの凄い勢いで鳳仙が駆け込んできた。
時計を見るとどうやらもうすぐHRみたいだ。
いわゆるギリギリセーフって奴か・・・


優太
「よぉ、鳳仙。ギリギリだったな。」

鳳仙
「う、うん・・・千草の奴待ってたら・・・何か先に行っていいって言うから・・・よく見たら結構ギリギリで・・・ハァ、マジ死ぬ・・・」

優太
「ははは・・・まあ、お疲れ。水でも飲むか?」

鳳仙
「ワーーーイ・・・ダンナの水、キンキンに凍ってるから冷たくておいしいんだよねーーー・・・飲む~~。」



そんな掛け合いをしている時だった。
その後を追うように千草が教室に入ってくる。
そして千草はこっちに目を向けると


千草
「おはっす!ユウ君、今日もいい天気だね~~。。」



と、何時もの感じで・・・
あれ?


優太
「え、千草・・・おま・・・」



かなり衝撃の展開だった。
休みの前までずっと千草は学校では猫を被っていたのだ。
基本自分達と居る時以外は軽い喋り方をしない。
まあ、優太達からすればこっちが自然な訳で・・・別段違和感も感じないのだが・・・


千草
「どうしたんだよユウ君、そんな九官鳥みたいな顔しちゃってさ・・・そんなに私に会いたかったの?」

優太
「いや、そうじゃなくて・・・お前、いいのかよ?」

千草
「何が?」

優太
「いや、だって・・・それ・・・」

千草
「え、ああ。コレ?いやーーーだって疲れるんだもんアレーーー。やっぱ人間自然が一番大事だよね~~。ユウ君いつも言ってるじゃん。」

尾崎
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

優太
「ほら見ろ、尾崎の奴が白目向いちゃってるよ・・・。コイツ実はお前のファンで・・・」

尾崎
「マァァアアアアアアアアアアアアアアアアベラス!!!」



その場にいる全員が肩をすくめた。
突如奇声を発した尾崎は机から飛び退き、千草の目の前へ。
そしてその両手を包み込むようにして握ると


尾崎
「千草ちゃん・・・とってもいいよ。」

全員
「「「「「「「「「「「「えぇぇーーーーーーーーーーーーーーー・・・・・・??」」」」」」」」」」」」

尾崎
「き、今日の君はとてもセクシィだ・・・今までもずっと君を見ていたけど、その中でも一番輝いてるよ・・・」

優太
「おい、尾崎?頭大丈夫かーーー?医者呼ぶかーーー?」

尾崎
「オレの中のパッションがはじけちゃったていうか、めざめちゃったっていうか・・・千草ちゃん!オレと付き合ってくれ!!!」

千草
「え?やだ。。」

全員
「「「「「「「「「「「「速攻でフラれたーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」

尾崎
「そっか~~。じゃあしょうがないねーーー。。」

全員
「「「「「「「「「「「「立ち直りはええええええええええええええええええよおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」

尾崎
「とりあえず、理由を聞きたいな・・・」

千草
「う~~~ん・・・私、ユウ君が好きだから。。」

全員
「「「「「「「「「「「「結局お前かよおおおおおおおお!!!!!このリア皇がああああああああああ!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」

優太
「いや、みんな・・・上手いこと煙に撒かれてるけどツッコむ所そこじゃないべ?て言うかコレ千草の冗談だよ?みんな分かってやってるの?」

雄大
「ああ!!?それ以外のどこにツッコむ所があった!??ツッコむのは穴だけにしろよコラあああ!!!」

由紀
「そうだそうだーーーーー!!ツッコむなら私の穴にしろーーー!!」

優太
「由紀さん、それノリでも許されない発言ですよ・・・」

由紀
「え、マジで?どれくらいヤヴァイ?」

優太
「メインヒロイン降板くらい?」

由紀
「もう、穴って言えば全部そう言ういかがわしい方向に持って行くのは思春期の悪い癖だよ?みんなはそんなことないよね?」

優太
「それで誤魔化しきれると思ってる時点でスゲェよ・・・」


「穴ってどの穴のこと?」


「そうですねーーー。簡単に言うと太ももと太ももの間にあ・・・」

優太
「ちょっと蓮さん何吹き込んでんの!!」


「なに、ちょっとした保健体育ですが・・・」

優太
「それ全然違う!!完全に思春期全開知識やから!!!」


「え?私に直接指導して欲しいって言うんですか?優太さんて結構大胆ですよねーーー・・・。」

優太
「言ってない!!そんなこと全く言ってない!!!」

平山
「ハァ・・・今日も平和だな~~~。。」

優太
「無理矢理落ち着けてくれた所悪いんだけど・・・全然平和とかそういうのちゃうからねコレ・・・」









そんなこんなで千草の変化についてとやかく言ってるのは最終的に優太だけだった。
割とみんな自然とあの千草を受け入れられるキャパを持ち合わせていたってことなのだろう。
そんな日の放課後・・・。
優太は何故か屋上に呼ばれていた。
呼び出し人は言わずものがな、その千草本人である。
帰ろうと思って荷物をまとめていた所、後ろから肩をワシっと掴まれ有無を言わせず引きずられてきた。


優太
「で・・・何だよ、話なら別に学校じゃなくてもいいじゃないかよ・・・」

千草
「んーーー?こういうのって雰囲気が大事だと思うから・・・」

優太
「何だよ、告白でもするのか?」

千草
「うん。」

優太
「もうその冗談には引っかからないからなーーー・・・。」

千草
「あれ~?なーーんだツマラナイの。。」

優太
「そんな何度も繰り返されれば誰だって慣れるわ。」

千草
「それもそうかもね。。まあ、今日はちょっと違う話がしたくて・・・」

優太
「ああ・・・何か言ってたな・・・」

千草
「うん、私のこと・・・少し話そうかなって・・・。」



その後、千草は自分の生まれ故郷の事を話し始める。
聞いていて気分の良くなる話では全くなかった。
その話を聞き終えてからも、千草は割と軽いノリで


千草
「なーーんてこととか合ったんだけど・・・今回の件で自分の中でも色々決着がついたからもう何でもいいんだ。」

優太
「何でもいいって・・・」

千草
「あ、ごめん。ちょっと軽すぎた・・・でも本当にもう私の中では終わったことなんだ。」

優太
「それを、オレに話してどうするんだよ。」

千草
「知ってて欲しかったんだ。」

優太
「まあ、話してくれてありがとな・・・。」

千草
「うん。ところでユウ君・・・」

優太
「んー?」

千草
「女の子って、こういう傷心気味の時に優しくされるとコロッと落ちちゃったりするんだよ?」

優太
「それがなに?」

千草
「慰めてくれてもいいのよ?」

優太
「さて、帰るか・・・。」

千草
「ちょ!マジ酷くね!!?私だけ扱い方が他と違いすぎる気がするんですけどーーー!!」

優太
「てのは冗談だ・・・。」



優太は翻しかけた身をもう一度千草の方に向ける。
そして片手を伸ばして千草の頭に乗せ、優しく撫でまわした。


千草
「!!!??!ゆ、ユウ君!!??な、何してんの!!??」

優太
「いや、お前こそどんだけテンパってんだよ・・・声裏返ってるぞ。」

千草
「そ、そんなのユウ君がイキナリこんなことするから・・・!」

優太
「慰めろって言ったのそっちじゃんか・・・。」

千草
「う~~~~~・・・・・お、女の子の髪に気安く触るのはどうかと思うんだよね・・・!」

優太
「あ、悪い!嫌だったか・・・」



そう言われたら離すしかない。
優太はソッと頭から手を離し・・・


千草
「え!?あ、いや・・・そのぅ・・・べ、別に嫌とかそう言うのじゃない・・・けど。」

優太
「え・・・結局どっちなんだよ・・・」

千草
「えっと・・・じゃあ、もう少し優しく撫でて?」

優太
「え、あ・・・おぅ。」



急にしおらしくしてくるものだから一瞬本気でドキッとした。
まあ、千草も女の子だし(失礼)見た目は普通にキレイだし・・・
それに優太にとっては数少ない趣味を共有しあえる気心知れた少女だ。
千草の頭を撫でる度、ほのかに千草の頬が赤くなっていくように見えた。
いや、もしかしたら夕日に染まって赤く見えただけかもしれない。
優太は数分くらいそんなことを続けると、おもむろに手を頭から離した。


千草
「ふーーー、、満足した~~。。」

優太
「そっか、じゃあ帰ろうぜーー。」

千草
「ユウ君・・・!」

優太
「え、何だよまだ何か・・・」



目の前に千草の顔が見えたと思ったら、瞬く間にその距離は縮まって・・・
千草の唇が、優太の唇に触れる。
とても軽く、一瞬だけ触れ合った程度だった。
ポカーーンと突っ立つ優太の顔を、千草は若干うるんだ瞳で見つめつつ


千草
「ユウ君、ありがと。お返しだよ。。」

優太
「・・・・・・・・!!!!??!!おまっ!!冗談でもこんなことすんなよ!!び、ビックリするだろ!!??」

千草
「え~~?でもユウ君嫌そうじゃなかったな~~。。て言うかユウ君こそ声裏返ってるよ~~?テンパってるの丸見え~~。」

優太
「あ、あのなーーー・・・」

千草
「ささっ!用事も済んだし、そろそろ帰ろうか!!」

優太
「ん、そうだな・・・。」

千草
「帰ったら、久しぶりに非想天則で勝負しようよ。」

優太
「また急にスゴイの出してきたな・・・まあ良いけど。」

千草
「へへん!私のナマズテクを見せる時が来たようだね!!」

優太
「いや、ナマズは自分で操作できるキャラじゃないから・・・」



千草と若干奇妙な空気に包まれていた筈だったが、それもどこへやら・・・
二人はまた肩を並べて歩き出す。
これが、日常。
少女が確かに存在する一つの日常。
そんな何時もを取り戻した少女は自分の想う一番大切な少年と一緒に夕暮れの帰路につく。
この想いが届かなくても、側に入れれば十分だ。
少なくとも、今はそう思えるから。。





「千草篇」完。。








「千草篇」・アナザーエピローグ






千草
「ユウ君、ありがと。お返しだよ。。」



そう言って見つめてくる千草が愛おしくてたまらなくなる。
優太は自分の中で急激に千草への想いが溢れだすのが自分でも分かった。
よくよく振り返ってみれば、あのテッカとの最終局面で冗談交じりだったが千草に「大好き」と言われた時から随分意識してしまっていた。
ついさっきだって告白しようとする雰囲気を醸し出す千草の挙動に一喜一憂してたし・・・
優太自身もう何が何だか訳が分からない。
とりあえず、これはもしかしたら結構良い機会なんじゃないのか?
優太はそう思うことで行動することを決意する。


優太
「千草!」

千草
「え?」



優太は目の前の千草を思いきり抱き寄せる。
別段何の抵抗も無く千草は優太に抱え込まれる。
が、かなり動揺しているのか、さっきの比では無いくらいにテンパり始めている。


千草
「なっ!!?は!??えええええええええええええええええええええええ!!」

優太
「お、落ち付けよ・・・べ、別に変なことはしないから・・・」

千草
「う、うん。」



何か妙に素直な反応が返ってきた。
正直抵抗されるんじゃないかとか内心ヒヤヒヤしていたのだが・・・杞憂だった。
優太はそのまま千草の後ろ髪を撫でる。
すると今までにないくらい千草の心臓が跳ね上がるのが伝わってきた。
しかし千草は嫌そうなそぶりは見せず、そのまま黙って撫でられ続けている。


優太
「(あ、あれ・・・もしかしてコレ、千草・・・喜んでる?)」



こんなことするの初めてなのでどうしたものかと適当に撫でてみたのだが・・・
思いの外好感触だったようだ。
千草は少し落ち着きを取り戻したのか優太の胸に顔を埋めながら問いかけてくる。


千草
「き、急にどうしたの・・・ユウ君。」

優太
「い、いや・・・ちょっと千草のこと抱きしめたくなったと言うか・・・何と言うか・・・」

千草
「へ、へぇーーー・・・ユウ君私のこと抱きたくなったんだ・・・。どして?」

優太
「ちょ、ちょっと千草が一瞬、可愛く見えて・・・」

千草
「一瞬・・・?」



何か急に不機嫌オーラが飛んでくる。
これは普段由紀がよくなるアレだ!!
優太は経験からまず間違いなく自分が不味いことを言ったんだと思考が回る。
とりあえず弁解すべきと判断したのかさっきの言葉を訂正した。


優太
「いや、一瞬じゃなくて・・・その、普段から普通に千草はキレイだと思う・・・よ?」

千草
「最後が疑問形なのが腑に落ちないんだけど・・・まあいいや。で、いつまでこのままでいるの?」



そう問われて初めて、千草と大分密着していることに気付く。
急に気恥ずかしくなった優太は、千草から数歩飛び退いた。


優太
「いや、そのですね・・・一種の気の迷いとかそう言うのも混じってて・・・」

千草
「ははっ、ユウ君にしては珍しいね。。自分からトラブルしに行くなんて・・・。まあ、その・・・嬉しかったよ?」

優太
「え?」

千草
「そのぅ・・・ユウ君に抱かれて嬉しかった。」

優太
「そ、そっか・・・ならいいんだけど・・・」

千草
「ねぇ、ユウ君・・・」

優太
「な、何だ?」

千草
「ユウ君が良ければ・・・その、もう一回抱いて欲しいな・・・。」

優太
「はあああああああああああああ!!!???」

千草
「やっぱり、ダメ・・・かな?」

優太
「そ、そんなの・・・おkに決まってるだろうが!!!」



優太は千草に再度歩み寄ると力一杯抱き寄せる。
そして今度は屋上の手すりを背に座る。
手すりに寄りかかるようにして千草を抱え込む。
すると千草はいたく素直に優太の胸へ顔を埋めてくる。
優太はもう色々我慢しているのが限界になりつつあった。


優太
「千草・・・」

千草
「ん?な・・・んむっ!」



名前を呼び、こちらに顔を向かせるとその唇に口づける。
さっきと違って千草はスグに離そうとはしない。
優太も千草の体を腕で寄せる。
そしてどちらからともなく舌を絡ませ合いながら随分と長い間キスが続く。
しばらくして、優太の方が離すと


千草
「な、何か・・・こういうの・・・は、恥ずかしいなぁ~~。」

優太
「ま、まあ・・・よ、予習だけならげ~むで済ませてたから良かったな・・・お互い。」

千草
「え・・・じゃあ、その・・・続き、する?」

優太
「え、続きって・・・」

千草
「えっと・・・こういうこと、とか?」



千草は首元に付けていたリボンを外し、ブラウスのボタンを一つづつ開けて・・・


優太
「え!?あ、いや・・・ちょっと千草さん!!?ま、マジで・・・い、いや・・・個人的にはウェルカムなんですけどやっぱりこういうのはもう少し付き合ってみてから・・・!!」

千草
「え・・・ユウ君、私と付き合ってくれるの?」

優太
「はい?」

千草
「い、いやーーー、てっきり今だけ私のキモチに応えてくれてるのかと・・・」

優太
「な、な訳無いだろ!!オレは千草が好きなんだ!!!」

千草
「え・・・、ま、またまた~~冗談が上手いなーーユウ君は~~。いいんだよ?私の体が目的だって言っちゃったって・・・別に高校生にはありがちな・・・」

優太
「そんなことねぇよ!オレは本気でお前が好きだから・・・好きだからこうやってお前を抱きしめてるんだ。」

千草
「な、何だよぅ今更・・・昨日も今朝も、それにさっきも私の告白スルーしといてよくもまあ平然そんなこと言えるね・・・。」

優太
「いや、お前はタイミングとか空気とか考えずにしかもしれっと言いすぎなんだよ・・・」

千草
「わ、悪かったね・・・」

優太
「別に今はそんなこといいけど・・・で、返事は?」

千草
「え・・・うんと・・・ユウ君のことは好きだよ?」

優太
「うん。」

千草
「その・・・私で良ければ、付き合おうか。」

優太
「ああ。そうしよう・・・これからもよろしくな。千草。」

千草
「う、うん。」



そう言って優太はまた千草を抱き寄せ、軽く口づける。
軽くのつもりだったのだが・・・
千草が離してくれず、また長い時間その場で二人の時間を過ごした。








そんなこんなで・・・
オレと千草は付き合いだしたわけだが・・・
特にコレと言って何が変わった訳でも無く時は過ぎていった。


千草
「ぶっちゃけさ・・・何で逆鱗ってこんな出難いの?ケンカ売ってんのかコイツは・・・」


「ボチボチやってればその内でるよチーちゃん。もう一回行こうユウちゃん。。」

優太
「ああ。でもそろそろ息抜きがてら他のクエいかねぇ?」

千草
「ああーーーー、じゃあ久しぶりにアルバ行くか、アルバー。。」


「いいけど何か必要な素材でもあるの?」

千草
「いや、もうアルバ装備は全部一式完成してるから素材は一切必要ありません。ただの暇潰しです。」

優太
「別にいいけどそれ相当時間無駄じゃね?」

千草
「そんなこと無いって。この三人で行ったら十五分くらいで行けるんじゃねぇ?」

優太
「流石にキツイんじゃないのか・・・」



いつもどうりの生活。
何もかもがいつもどうりすぎて正直何も変わっていない気さえする。
まあ、千草と一緒って言うのは概ねこう言うことなのかもしれない。
それでもオレは千草と一緒になれてよかったと思う。
千草とは結局の所深い所で色々繋がれてる気がするし・・・
何の気なしにオタトークできるのもそれはそれで良い物だなーーーと思う。
まあ・・・正直オレの目の前でエロげ~(抜きげ~)やるのは勘弁してほしいのだが・・・
むしろ誘ってるのかもしれないけどあえて全スルー決め込んでいる。
今の所。
こんな生活長く続いたらもしかするといつの日か・・・
いや、でもいつかはするんじゃないのか?
いやいや、そういうのに繋げるのはよくない!!
それこそエロげ~のやりすぎだ!!
オレも千草もエロげ~好きだけど、そういう所はちゃんとしたいと思いたい。


千草
「ユウ君どしたの?もう張ったよ?」

優太
「あ、悪い今行くわ!」

千草
「さては私とユイチーとエロいことする妄想をしていたな~~?ユウ君は変態さんだなーーー。。」



いや、エロ妄想してたのはお前の事だけだぞ・・・
とかツッコんだら負けなんだろうか。
ま、そんな訳で何事も無く不変の日々を送ることができると言うのも悪くないものである。。






~千草~ HAPPY END♪






あとがき。。




皆さん久しぶりです!!
何だかんだと色々あって総集篇をまとめる時間が無くってこんな時期に流れ込んでしまいましたすみませんでした。
ただいま絶賛「蓮篇」連載中ですが、「千草篇」は本当に書きにくかった記憶が残っています
主な原因はただ今連載中の『蓮篇』を書きたくてしょうがなかったため。。
こんな感じでいこうってのが最初に決まってはいたんですけど・・・
アレよコレよとやってる内に話が変な方向に行ってしまったりで大変でした。主にまとめるのが。
なので結局何が言いたかったんだよってなってますが気にしない方向で。
「千草篇」のテーマは「復讐」ですが・・・
千草メダスコール二つの復讐を描くことが目的でした。
千草は何だかんだで相手を殺すことで復讐に終止符を討つのではなく、生きて罪を償わせるなんてちょっとベタな展開でしたが・・・
普通、親とか村の知り合いジェノサイドされてこんな結論出せる訳無いんですがね普通。
でも千草はそうすることで一つの復讐を終わらせたって話しでした。
問題はここからで・・・
メダの成長を描くのが「千草篇」から「蓮篇」にかけて行われると言うのは元から決まっている流れでした。
今現在、「蓮篇」でどこまで書いているのか分からないのであまり詳しくは明記しませんが、メダはもう一人の主人公です
優太は色んな意味で既に完成系にある主人公なんです。
それに関しては読んでいくと分かるのですが・・・
それは一時置いておきます。
完成系に近いと言うことはこれ以降あんまり成長しないんですよね。
いや、新技覚えたりだのなんだのはするので成長はしますが・・・
心の成長?とか葛藤だのは最後の最後「由紀篇」まで全くと言っていいほど無いのでその間に「全うに成長」する主人公が欲しかったんです。
それがメダです。
なので部分的に優太と似たような部分があるのはその所為です。
そんなメダですが、開始二章めにも関わらず師匠喪失します
電光石火の速さで逝ってしまったスコールさん。
もっと色々書いてあげたかった・・・なので今後機会さえあればスコールさんは掘り下げてあげたい所です
ドレイクですが、優太とメダに斬られたり殴られまくっていたような描写しかありませんが・・・
実際はもの凄く強いのよ?
ネタバレだけどメダが最後の最後に戦う宿敵キャラなのよ?
だから再生能力程度じゃ収まらないのよあの人。
バレはコレくらいにしておいて・・・
メダですがこの後の「蓮篇」にかけて怒涛の展開が待っています。
まあここまで言うと自分でハードル上げてるみたいで嫌なんですけど・・・
と、こんな感じで色々考えている訳です。
今回初めていれたアナザーエピローグですが・・・
千草の場合は日常をイメージしました。
何か千草と付き合っても何も変わらず日々が過ぎそうってイメージからきています。
それとこのアナザーエピローグ自体が今後の伏線になってたりもするので出来れば読んでおいてほしいですね。。
それでは長々と失礼しました!!
次回は「蓮篇」のまとめでお会いできたら幸いです!!
とりあえず頑張って年内には「蓮篇」完結させますんで気長に読んでやってください!!
ではまた次回の総集編でノシシ


ページ数 184(余白上下左右25、文字数×行数42×32、用紙横、縦書き)
文字カウント 82872
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[ 1991/04/02 00:00 ] 小説(完全版) | TB(0) | CM(0)

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