過去語~高校生編⑦「進むべき道と己の心」~

春休み・・・。
もう(高校来て)二回目なわけだが、特にコレと言って何かがあるわけでもなく日はすぎていった。
とりあえずオレが考えていたことは二つ
春休み前に自宅のトイレにポチャンした携帯を買いなおすこと
もう一つは進路についてだ
今の今まで特に何も考えてこなかった
また今度、今度、今度今度今度今度今度・・・・・・・
そうやって先延ばしにした挙句、もう三年生になっていた。
流石にそろそろ『今度』など言ってられない。
できるだけ早く、できるなら春休み中に目標を見据えておきたかった。
とりあえず深く考えず、この時は「就農」でいいかな~。と軽く考えていた。
でも、本当にソレで良いのか・・・オレは自分が迷っていることを自覚しつつも考えないようにした。


携帯は「P902IS」というのに買い換えた。
コイツとはこの先もっとも長く付き合うことになるのだが・・・。
この時のオレはまだ知らない。
そして春休みの終わりが見えてきた。
進路についてはもう深く考えるのを止めておいた
何だか、自分の決断にどんどん自信が持てなくなってきたからだ
本当にオレはこの後どうなるんかな~?ソレだけが頭や心の中を駆け巡り、日々を消化していった。


三年生に進級したがクラス替えも無いし、教室も一階下りただけなので特別何かが変わったわけでは無かった。
あったとすれば、やっぱり二年生の最後に単位が足りず辞めていった連中が何人か居たくらいだ。
またこの一年で大分人数が減ったな~と思った。
一年生の時は一人辞めただけでクラスがざわめいたもんだが・・・
今となってはみんなソレに慣れてしまっていた。
ソレがあたかも当たり前のように・・・。
むしろ個人的に辞めていった連中と仲が良かった訳でもない。
五月蠅い連中だったので居なくなってせいせいしてたくらいだ
何だか酷い風に聞こえるかもしれないが、コレが現実だった。
周りに迷惑をかけるような馬鹿は辞めていってもらって結構
コッチとしても願ったり叶ったりだ
そうやってダークサイドに落ちそうなことを考えながら、オレは担任の山本の話を聞いていた。
担任も変わらなかった所為か、進級した気は起きなかった


オレは進級してイキナリ躓いた・・・
希望した委員会に入れなかったのだ。
オレが希望したのは言うまでもなく「図書委員会」だ。
去年やった限りではあの空間を気に入っていた。
司書の先生と何気ない話をしながら過ごす放課後の時間が好きだった
去年は何だかんだで九月くらいまでまともに仕事をしていなかったので、今年こそは最初から最後まで付き合おうと思っていたのに・・・。
ジャンケンに負けてその委員を逃した。
委員になったのはもうサボること前提でなった奴らだった
サボったりするんならオレにやらせろよ・・・。
オレはずっとソレばかりを考えていた。
しばらく機嫌が悪かったのは言うまでもないことだと思う。
それから・・・。
オレは図書室に通うことは無くなった。


三年生になる前からだったが、そろそろ池田とかと一緒に帰るのも時間が合わないので別々に帰るのが当たり前になっていた。
朝は未だに池田と一緒に登校していたので、オレは「もう帰りは一人で帰るからな。」と池田に伝え、一人で帰るようになった。
一人だと楽だった。
時間の融通が利くから寄り道も自分の好きな所に行ける。
今まで池田の気まぐれで色々な道を登校させられていたのでオレはかなり学校周辺の道に詳しくなっていた。
当の本人である池田はノリでやってるので一回しか通らなかったらもう忘れてしまうのだが・・・。
オレは一回でも通ればその道の繋がりを大体把握できる
なので、あそこに寄るならこの道が早い。とか・・・。
ココとココに寄るならいつもの通学路じゃなくて用水路側から行った方が効率良いな。とか・・・。
今日はゆっくり音楽聴きながら静かに帰りたいな~。じゃああそこの裏道通れば何も通らないから静かだな。とかとか・・・。
通学路と言う名のレパートリーは増え続ける一方だった
そして荒れた道も通る上に距離もあるので、自転車がよくパンクした。
それでもオレは楽しくて止められなかった
特に用事があるわけでもないのに店に入って商品を見てるだけで一日の疲れを忘れられた。
高校生活で楽しかったことは何ですか?
と聞かれたらまず最初に出てくるのはこの寄り道だったと答えられる。
それだけ時間とか忘れて自転車を走らせていたのだ。
そしてそうやって少しづづ忘れようとしていた。
進路について・・・。


GW前に遠足「ディズニーランド」に行ったりした。
色々乗って楽しんだ。
何か駿一の奴が当日にイキナリ「はしか」に罹って欠席したりしてた。
勿体ない奴だな~と思った。
そしてあんま関係無いが、この後オレは再度「キングダムハーツ」シリーズにハマリだした。
タイミングがガチすぎるが、きっとそうなんだろう。
GW中はやりまくっていた。
何かずっと家に引き篭もって何してるんだよって感じだったが・・・。
反省はするが後悔はしてないって感じである。


その後中間テストがあり、結果はいつもどうりで・・・。
それは良いが「進路講話」なるものが近づいていた。
オレは焦った。
まるで進路なんて考えてない!
とりあえず何でもいいから話は聞かないとな~と思い、話に来る学校のリストに目を通した。
無難な所で農業系大学の項目を見るも何かパッとしない所ばかりだった。
つか、遠い。
東京なんてココからどれだけかかるんだよ。って思ったし、そうじゃなくてもほとんど県外・・・。
話になんないな・・・これじゃ、進学は無理か・・・。
と思った矢先、オレの目に飛び込んできた学校があった。


「埼玉県農業大学校」


そういえば、二年生の時に泊り込みでやった農業研修の時に先輩が話してた場所・・・。
場所は鶴ヶ島・・・知らないけど埼玉県書いてるから一応県内だな。
オレは何かの運命を感じ、とりあえずここの説明を聞いてみようと思った。
コレが農業大学校との始めての出会いだった。


どうやら説明を聞きに来たのはオレだけだった。
どんだけみんな農業に関心ねぇんだよと思った。
周りの農業学校には人っ子一人居やしない。
農業が廃れていくのはこうやって若者の関心が薄くなっていってるからじゃないのかと本気で感じた瞬間である。
まあそんなことはさておき・・・。
オレはその学校の説明を聞いてみる。
すると、オレにおあつらえ向きな専攻があることが分かった。


「基本技術科特産コース果樹専攻」


コレは早速ビンゴか?
オレはその先生に質問をした。
育成作物の中に「ブドウ」はないか?と・・・。
実はこの高校には「ブドウ」が無い。
オレは農業を勉強したいんじゃない
果樹、主に「ブドウ」の栽培技術を勉強したい!と言うのが正しい。
なのにこの高校には「ブドウ」は無い。
入る前から知ってはいたが・・・。
ココにきてソレって不味いよね~と思い始めていた。
だって就農するにしたって栽培技術まるで知らないのにできるわけないな~
って話である。
実はそうでもないのだが・・・この時のオレはまるで何も分かっていなかった
もしこの大学校に進学するなら「ブドウ」がなくてはダメだ。
じゃないと行く意味無いし・・・。
先生はこう言った。


「ブドウもありますよ。」


と・・・。
オレはそれを聞くとホッとすると共に、コレも何かの巡り合わせかもしれない
と考えた。
すると先生は続けて説明し始めた。
どうやらこの専攻は特殊な専攻で、座学つまり普通授業は学校で受けるが、実習は各研究所で行うらしい
果樹の研究所「久喜」にあるようだ。
それなら通える。
もうコレはココに行けって言ってるんじゃないか?
オレはそんなことを一人考えつつ説明を聞き続けた。
もう半分以上、この学校で良いだろうと思い始めていたのだ。


六月に入ると恒例の「三者面談」が始まった。
オレは初日からだったので、昼を適当に食べてどっかで暇を潰そうと考えた。
コレといって何も考えず校内を歩き回り、気付いた時にはある部屋の前に来ていた


「図書室」


そういえばしばらく来てなかった・・・。
自然とドアノブに手が伸びて、ドアを開けた。
目の前に広がるのは懐かしい風景
ああ、懐かしいな・・・そう思っているともう一つ懐かしい声が飛んできた
「あら、どうしたの?エラク久しぶりだけど・・・。」
「え?あ、ああ。ちょっと色々あったから。」
「もう三年生だからね。考えなくちゃならないことだらけだもの。しょうがないわよ。」
「今日も全然人居ないな。」
「まあいつものことだからね。」
「それに三面期間中だからか?」
「それもあるかも・・・。みんな待ってる時間を読書に使えばいいのに・・・。」
「オレはその口だけどな。まだ少し時間があるんから、ちょっと本を読んでくな。」
「そう?じゃあ、ごゆっくり。」
オレは何気ない、そして懐かしかった会話を止めて鞄から本を取り出し、しばらく読みふけた・・・。
思ったより時間が過ぎるのは早かった
一時間あったと思ったが100ページも読めないうちにその読書タイムは終わった
本を鞄にしまうと周辺を見回した。
誰も居なかった
隣の部屋からタイピングの音が微かだが聞こえる・・・。
オレは挨拶して行こうかとも思ったが、邪魔しちゃ悪いと思い静かに立ち上がった。
そのまま出て行こうとした時・・・


「ちょっと待って!」


後ろから呼び止められた。
振り向くと何か手に小さな包みを持った司書の先生が・・・。
「コレ。」
「何だ?コレ・・・。」
「餞別。去年は結構頑張ってくれたから、そのお礼よ。」
「え?でも・・・。」
「いいから貰っておきなさい。」
「・・・ありがとう。じゃあ貰っておくよ。」
「ところで福島君はどっちにするの?」
「え?どっちって??」
「就職か、進学か。」
「進学のつもりだけど。」
「じゃあ、勉強頑張らないとね!」
「それなら問題無いさ。」
「え?」
「オレ、こう見えても成績はトップだからさ。」
「そう・・・じゃあ、大丈夫かもね・・・。」
「ああ。」
そう言ってオレは図書室を後にした。
最後のは冗談で言ったつもりじゃなかったんだが・・・。
普通に笑ってやがった・・・。
次来る時は「成績表」と合格の話を持って来よう
そう心に誓ってからオレは自分の教室へ向かった。


面談ではオレはこう言った。
「今の所は農業大学校あたりに行きたいと思ってる。」
そしたらいつもより数倍以上真面目な格好をした(正直あまり似合ってない)山本にこう返された。
「見学とかには行ったか?」
あ、ソレはまだだな。
進路については漠然とした目標を設けたが、その手の基本情報については未だ調べてはいなかった
見学なんて考えてもいない。
とりあえずまずは自分の目で見て来い。そう言われて面談の方はあっさり終わった。
よくよく考えたら、場所も行き方もまるで分からなかった
ああ、オレって本当に無計画・・・。


家に帰ってオレはネットで軽く「大学校」のホームページを見てみた。
最寄り駅と見学会か何かの情報を調べた
見学会のようなもの・・・。
土日に開かれてる見学会みたいなのを見つけた。
コレは調度良いのを見つけたぞ。
そう思ったオレはスグに電話して予約を取り付けた
夏休み中に泊り込みの体験入学もあったがソッチには参加する気は無かった。
あまり泊り込みというのが好きではないのだ・・・。
最寄り駅は二つあったが、駅からの距離を考えて「笠幡」という駅を選んだ。
結構歩くようだが、地図で見る限り「笠幡」から歩いていく道しか載ってなかったのでオレはソッチから行くことにした。


見学会の当日は曇りだった。
雨が降るかもしれないのでとりあえず傘は持った。
最寄り駅からまず「久喜」まで伊勢崎線で行き、そこから宇都宮線に乗り換え「大宮」まで「大宮」から埼京線に乗り換えて「川越」へ、最後に川越線に乗り換えて「笠幡」へ
この間約一時間半
げ~むが弾む弾む。
しかし、ココからが問題だった。
オレは始めての土地に方向感覚が狂っていた。
まるで逆方向にしばらく進んでしまっていたようだった。
何で間違いに気付いたかと言うと・・・。
あまりにも最初に聞いてた所と違いすぎたからだ。
大学校は田んぼの中にあるとか何とか・・・
オレの周りには田んぼなんて無かった。
むしろ山っぽいのが見えたんだが・・・。
携帯の地図で検索してみても学校っぽいのは見当たらない。
コレは間違ってるなと確信し、とりあえず駅まで引き返した。
それからは道行く人に道を聞いては目的地を目指した
時間に相当余裕を持ってきたのでそこら辺は問題なかったのが救いだった。
そしてどうにか目的の「農業大学校」に辿り着いた・・・。
とりあえず最初に思ったことは・・・。


広おおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおぉぉぉぉおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっぉぉぉおおおおおおいい!!!


この時は外周を回って北門の方から入ったんだが・・・。
それの所為かとても広いのが分かった。
歩いても歩いても門が見えてこないのだ・・・。
どこのアニメの豪邸だよ・・・。
とりあえず用務員の人が居たもんだからその人に職員室の場所を聞いて何とか見学会の会場まで到着を果たした。
それでもまだ時間的には多少余裕があった。
「やっぱ時間はギリギリじゃなくて余裕を持ってないとダメだな~。」
と素直に自覚する自分が居た。
それから、何人か来て説明会が始まった。
まずは「進路講話」で聞いたのと同じような説明を受けてから校内見学をした。
施設もちゃんとしてたし、本当に敷地が広かった
コレは最初覚えるのが大変そうだぜ・・・。
そう思ってもおかしくない広さだった。
でもオレは確信した。
ココならきっと今よりも専門的な勉強ができる。
少なくとも高校よりもレベルの高い実習を体験できるハズだ。
説明会からの帰り道、オレは決心した。
オレは「農業大学校」を目指す!
そして今よりデカイ男になってやるんだ!
進路が決まった
六月中旬のことだった・・・。


三年初の成績はかなり良かった
コレで一応数字上はかなり良い学生に見える。
数字のアドバンテージとは凄いものだ。
一瞬で人は納得してくれるんだから。
そんなのは正直違うとは思うのだが・・・。
まあ利用できるなら利用しておこう。
そんな感じで成績の方は考えた。
あとは当日の試験内容がどうなるかだな・・・。
そんな事を考えつつオレはクラスを見回す。
周りの奴らのほとんどは就職のために会社見学の準備をしてるらしい。
視線を移し窓の外に広がる青空を眺めた。


本当にコレで良いのか?


ふと一瞬心を掠めた迷いを振り払い、まっすぐに空を見つめた。
兎に角、オレの未来を掴むために今は・・・今は・・・
この道を進もう。
そうやって自分を納得させ、考えるのを止めた。
明日から、最後の夏休みが始まる。




過去語~高校生編⑧「最後の行事と推薦入試」~へ続く。。
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[ 2007/04/09 00:00 ] 小説(完全版) | TB(0) | CM(0)

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